志希「咲く前の花は、つぼみっていうんだ。それは、まだどんな花になるか分からない、希望の象徴。あたし、一ノ瀬志希と4人の女の子が歌うよ。そう、みんなにお知らせね。イベント『つぼみ』は近日開催だよ。『この場所から 君へとうたうよ』」
夕美「誰でも、心の中に一つの種を持ってるんだ。それは、様々な色や形をしていて、花になる日を待ってるの。私、相葉夕美が、仲間のみんなといっしょに伝えるね。ファンのみなさんにお知らせです。イベント『つぼみ』、近日開催だよ。『歩んできた時《みち》 忘れないように』」
事務所に集まった、周子、みく、楓、夕美、志希。
一同はプロダクションの代表として、フェスに出場し、
「つぼみ」を歌うことになった。ステージで
花開くまでは、まだつぼみの5人だが、本番では
色とりどりの花を咲かせることを誓うのだった。
一同はプロダクションの代表として、フェスに出場し、
「つぼみ」を歌うことになった。ステージで
花開くまでは、まだつぼみの5人だが、本番では
色とりどりの花を咲かせることを誓うのだった。
──事務所
周子「おはよー。どーもー、おひさー。」
みく「おはよう! 周子チャン! 楓さんも夕美チャンも、Pチャンも待ってたよ!」
楓「おはようございます。これで、みんな揃いましたね。打ち合わせを始めましょうか。」
夕美「ほら、志希ちゃん。起きてっ。打ち合わせが始まるよっ!」
志希「むにゃー……ふわぁーーーーーあ。んー、起きた! おはよー!」
[おはよう]
周子「で、今日はなんの打ち合わせで集合だっけ? ていうか、このメンツ、見覚えある気がする。」
夕美「みんなでレコーディングと打ち上げしたよねっ。みくちゃんからもらったネコミミ、大切にとってあるよ!」
みく「ほんと? みくも夕美チャンからもらったお花、飾ってあるよ!」
楓「なつかしいわ……レコーディング、楽しかったですね。なぜか、打ち上げの記憶は曖昧ですけど……。」
志希「あたしもなんか気持ちよかったことしか覚えてないにゃー。」
みく「志希チャンも楓さんも! もー、あのときは大変だったんだから! あんな危ない打ち上げなんてもうナシだからね!」
夕美「それで、そのメンバーで集合ということは、つまり……?」
[5人で歌ってもらう]
周子「へー。あたしら5人でかぁ。いいじゃん。でも、もうちょっと教えてよ。」
(詳細を説明した……)
みく「へー、5人でフェスに出るんだ! プロダクション代表としての選出なら、頑張るしかないにゃあ〜!」
楓「代表なんて、なんだか気が引き締まりますね。過大評価にも思えますけど……選ばれたからには、ベストを尽くしましょう。」
夕美「そっか、ユニット制じゃないからリーダーもなしなんですね。個人個人、頑張らなくちゃ!」
志希「そーお? あたしは気楽でいいと思うなー。LIVEをエンジョイしてさー……。」
みく「志希チャン! 今回はちゃんとやらなきゃダメなのにゃあ!」
志希「ふぁーい。」
夕美「でも、嬉しいなぁ……。」
楓「夕美ちゃん、いいことでもあった? すごく幸せそうな顔をしているようだけど。」
夕美「えぇ。『つぼみ』っていうすてきな歌をうたう機会をもらえて、こうしてステージで披露する機会がもらえて、ファンのみんなにも聞いてもらえると思ったら……嬉しくって。」
周子「ふーん、夕美ちゃんはマジメだねー。でも、この歌でイベントに出られるなんて思ってなかったから、あたしもちゃんとしなきゃかなー。代表らしいし。」
志希「ん〜……つぼみかぁ……あー、いい歌だよね。詩にもメロディにも、自然と気持ちが入るっていうか。不思議なんだけど……ヤな感じじゃなーい。」
みく「うんうん! それに、花咲くいまの季節にぴったりな歌だし!」
楓「花は、つぼみからひらく瞬間が最も美しいそうです。私たちも同じように、美しく咲きたいですね。」
夕美「つまり……私たちはみんなまだ、つぼみなのかな?」
みく「……かもしれないにゃ。」
周子「だとしたらさ。まだつぼみのあたしたちもだけど、いっちょこのステージで大輪の花、咲かせちゃおうよ! ねっ!」
志希「おー!」
楓「えぇ。」
夕美「はいっ!」
みく「にゃー!」
周子「おはよー。どーもー、おひさー。」
みく「おはよう! 周子チャン! 楓さんも夕美チャンも、Pチャンも待ってたよ!」
楓「おはようございます。これで、みんな揃いましたね。打ち合わせを始めましょうか。」
夕美「ほら、志希ちゃん。起きてっ。打ち合わせが始まるよっ!」
志希「むにゃー……ふわぁーーーーーあ。んー、起きた! おはよー!」
[おはよう]
周子「で、今日はなんの打ち合わせで集合だっけ? ていうか、このメンツ、見覚えある気がする。」
夕美「みんなでレコーディングと打ち上げしたよねっ。みくちゃんからもらったネコミミ、大切にとってあるよ!」
みく「ほんと? みくも夕美チャンからもらったお花、飾ってあるよ!」
楓「なつかしいわ……レコーディング、楽しかったですね。なぜか、打ち上げの記憶は曖昧ですけど……。」
志希「あたしもなんか気持ちよかったことしか覚えてないにゃー。」
みく「志希チャンも楓さんも! もー、あのときは大変だったんだから! あんな危ない打ち上げなんてもうナシだからね!」
夕美「それで、そのメンバーで集合ということは、つまり……?」
[5人で歌ってもらう]
周子「へー。あたしら5人でかぁ。いいじゃん。でも、もうちょっと教えてよ。」
(詳細を説明した……)
みく「へー、5人でフェスに出るんだ! プロダクション代表としての選出なら、頑張るしかないにゃあ〜!」
楓「代表なんて、なんだか気が引き締まりますね。過大評価にも思えますけど……選ばれたからには、ベストを尽くしましょう。」
夕美「そっか、ユニット制じゃないからリーダーもなしなんですね。個人個人、頑張らなくちゃ!」
志希「そーお? あたしは気楽でいいと思うなー。LIVEをエンジョイしてさー……。」
みく「志希チャン! 今回はちゃんとやらなきゃダメなのにゃあ!」
志希「ふぁーい。」
夕美「でも、嬉しいなぁ……。」
楓「夕美ちゃん、いいことでもあった? すごく幸せそうな顔をしているようだけど。」
夕美「えぇ。『つぼみ』っていうすてきな歌をうたう機会をもらえて、こうしてステージで披露する機会がもらえて、ファンのみんなにも聞いてもらえると思ったら……嬉しくって。」
周子「ふーん、夕美ちゃんはマジメだねー。でも、この歌でイベントに出られるなんて思ってなかったから、あたしもちゃんとしなきゃかなー。代表らしいし。」
志希「ん〜……つぼみかぁ……あー、いい歌だよね。詩にもメロディにも、自然と気持ちが入るっていうか。不思議なんだけど……ヤな感じじゃなーい。」
みく「うんうん! それに、花咲くいまの季節にぴったりな歌だし!」
楓「花は、つぼみからひらく瞬間が最も美しいそうです。私たちも同じように、美しく咲きたいですね。」
夕美「つまり……私たちはみんなまだ、つぼみなのかな?」
みく「……かもしれないにゃ。」
周子「だとしたらさ。まだつぼみのあたしたちもだけど、いっちょこのステージで大輪の花、咲かせちゃおうよ! ねっ!」
志希「おー!」
楓「えぇ。」
夕美「はいっ!」
みく「にゃー!」
レッスン場を手配したり、アロマを準備する夕美。
周子と志希は、夕美に気配りをする理由を問いかけた。
すると夕美は、5人揃って花を咲かせたいから、と
微笑む。夕美の気配りは親愛なるメンバーへの優しさ
だった。
周子と志希は、夕美に気配りをする理由を問いかけた。
すると夕美は、5人揃って花を咲かせたいから、と
微笑む。夕美の気配りは親愛なるメンバーへの優しさ
だった。
──事務所
志希「ぐでーん。ふにゃふにゃふにゃー。」
周子「いやいや志希ちゃん、やる気失いすぎでしょ。『おー!』とか、さっき元気よく言ってたじゃん。プロデューサーがいなくなったとたんにそれ?」
志希「だってわかんないんだもん。何をどうするの? 定量化も数値化もできない、定義できないスローガンを掲げるのは日本人の悪い癖だよー。」
周子「よし、こういうときは常識人の夕美ちゃんに聞いてみよう!」
志希「あ、かわした!」
周子「まーまー! ……というわけで夕美ちゃん、どう思う? つぼみから花咲こうって、具体的にどうすんのかなー。」
夕美「えっ、えぇっ? 私に聞かれても?!」
志希「夕美ちゃんが答えらんなかったら、終わりだよー。」
夕美「うーん……。そうだなぁ……これは私の考えだけど、いいかな?」
周子「どーぞどーぞ。なんかあるなら言ってみてー。」
夕美「花を咲かせるっていうのは、たとえ話でしょう? 私たちで考えたら、いつもよりもっとステージを楽しむとか、いきいきとした姿を見てもらうとか、そういうことじゃないかなぁ。」
志希「ふむふむ。ふむ?」
夕美「でもそのためには、しなきゃいけないことがあると私は思ってて。」
周子「しなきゃいけないこと?」
夕美「それは、なにかチャレンジするとか、興味がなかった部分に興味を持ってみるとか、できないことをできるようになったりとか……。そういうことが大事なのかなって思うんだ。……あっ、その、なんか偉そうにごめんねっ。そんなことを、ただぼんやり考えてたってだけでっ!」
周子「へー。いやー、さすが常識人だわ。ちゃんと真面目にどうするか考えてたんだ。」
志希「ふむふむ、ふむふむ……。んー……Challenge, Interest, and Do it!」
周子「あいかわらずなに言ってんのかたまにわかんないけど、分かったならよかったわ。じゃ、それを目指して……まずはレッスンでもやりますかねー。」
周子「って、そもそもレッスン場を押さえてなかったか。やるなら明日からかなー。」
夕美「あっ、レッスン場なら、もう準備してあるよ。行こっか!」
──レッスンルーム
志希「ふんふん……くんかくんか……なんかこの部屋、ぴしっとする! 刺激的〜!」
夕美「あっ、気づいた? 志希ちゃんやみんなが集中してレッスンできるように、ペパーミントのアロマを用意しておいたの。」
周子「へー。レッスン場の手配といい、アロマの用意といい、ほんとに夕美ちゃんは出来た子だよねー。なんでそんなに優しくしてくれるの?」
夕美「特別優しくしているつもりはなかったんだけど……そうだなぁ、野に咲く一輪の花はすてきだけど、五輪揃って咲いてたら、もっとすてきだと思うんだ。私はステージでそういう景色が見たいの。そのためには、自分だけがきれいにできても、ダメだから。みんなで頑張りたいじゃない?」
周子「なるほどね。いやー、心がキレイすぎる。それにちゃんと考えてるなー。」
夕美「……っていう理由は、いま考えたんだけどね。レッスンルームの手配とか、アロマの準備とかは、ただそうしたくてなんとなくやってただけなんだ。」
周子「あ、そうなん? やっぱりそうだよね。頭より体が先に動くタイプだもんね? ……ま、それが夕美ちゃんらしさってことなんだろうけど!」
夕美 「えへへ……さて、そんなわけだから、みんなといっしょにレッスンも頑張りたいなっ。ねぇ、志希ちゃん……志希ちゃん?」
志希「つーん。」
周子「なにやってんの?」
志希「しき、ミントかいだ。つーんとした。つーん。」
夕美「だ、大丈夫!?」
志希「大丈夫、大丈夫ー。ちょっと脳がすっきりしすぎてるだけだからー!」
夕美「ふふっ。志希ちゃんも考えるより先に動くタイプなのかな? じゃあ、似たもの同士、レッスンも頑張ろうねっ!」
志希「おっけー!」
夕美「周子ちゃんも!」
周子「はいよー。」
志希「ぐでーん。ふにゃふにゃふにゃー。」
周子「いやいや志希ちゃん、やる気失いすぎでしょ。『おー!』とか、さっき元気よく言ってたじゃん。プロデューサーがいなくなったとたんにそれ?」
志希「だってわかんないんだもん。何をどうするの? 定量化も数値化もできない、定義できないスローガンを掲げるのは日本人の悪い癖だよー。」
周子「よし、こういうときは常識人の夕美ちゃんに聞いてみよう!」
志希「あ、かわした!」
周子「まーまー! ……というわけで夕美ちゃん、どう思う? つぼみから花咲こうって、具体的にどうすんのかなー。」
夕美「えっ、えぇっ? 私に聞かれても?!」
志希「夕美ちゃんが答えらんなかったら、終わりだよー。」
夕美「うーん……。そうだなぁ……これは私の考えだけど、いいかな?」
周子「どーぞどーぞ。なんかあるなら言ってみてー。」
夕美「花を咲かせるっていうのは、たとえ話でしょう? 私たちで考えたら、いつもよりもっとステージを楽しむとか、いきいきとした姿を見てもらうとか、そういうことじゃないかなぁ。」
志希「ふむふむ。ふむ?」
夕美「でもそのためには、しなきゃいけないことがあると私は思ってて。」
周子「しなきゃいけないこと?」
夕美「それは、なにかチャレンジするとか、興味がなかった部分に興味を持ってみるとか、できないことをできるようになったりとか……。そういうことが大事なのかなって思うんだ。……あっ、その、なんか偉そうにごめんねっ。そんなことを、ただぼんやり考えてたってだけでっ!」
周子「へー。いやー、さすが常識人だわ。ちゃんと真面目にどうするか考えてたんだ。」
志希「ふむふむ、ふむふむ……。んー……Challenge, Interest, and Do it!」
周子「あいかわらずなに言ってんのかたまにわかんないけど、分かったならよかったわ。じゃ、それを目指して……まずはレッスンでもやりますかねー。」
周子「って、そもそもレッスン場を押さえてなかったか。やるなら明日からかなー。」
夕美「あっ、レッスン場なら、もう準備してあるよ。行こっか!」
──レッスンルーム
志希「ふんふん……くんかくんか……なんかこの部屋、ぴしっとする! 刺激的〜!」
夕美「あっ、気づいた? 志希ちゃんやみんなが集中してレッスンできるように、ペパーミントのアロマを用意しておいたの。」
周子「へー。レッスン場の手配といい、アロマの用意といい、ほんとに夕美ちゃんは出来た子だよねー。なんでそんなに優しくしてくれるの?」
夕美「特別優しくしているつもりはなかったんだけど……そうだなぁ、野に咲く一輪の花はすてきだけど、五輪揃って咲いてたら、もっとすてきだと思うんだ。私はステージでそういう景色が見たいの。そのためには、自分だけがきれいにできても、ダメだから。みんなで頑張りたいじゃない?」
周子「なるほどね。いやー、心がキレイすぎる。それにちゃんと考えてるなー。」
夕美「……っていう理由は、いま考えたんだけどね。レッスンルームの手配とか、アロマの準備とかは、ただそうしたくてなんとなくやってただけなんだ。」
周子「あ、そうなん? やっぱりそうだよね。頭より体が先に動くタイプだもんね? ……ま、それが夕美ちゃんらしさってことなんだろうけど!」
夕美 「えへへ……さて、そんなわけだから、みんなといっしょにレッスンも頑張りたいなっ。ねぇ、志希ちゃん……志希ちゃん?」
志希「つーん。」
周子「なにやってんの?」
志希「しき、ミントかいだ。つーんとした。つーん。」
夕美「だ、大丈夫!?」
志希「大丈夫、大丈夫ー。ちょっと脳がすっきりしすぎてるだけだからー!」
夕美「ふふっ。志希ちゃんも考えるより先に動くタイプなのかな? じゃあ、似たもの同士、レッスンも頑張ろうねっ!」
志希「おっけー!」
夕美「周子ちゃんも!」
周子「はいよー。」
レッスンをする周子、みく、夕美、今回のLIVEの
目標は、それぞれのつぼみを咲かせること。
普段は積極的に他人と関わろうとしない
自由気ままな周子だが、今回は違った。
周子なりの方法で、仲間を気遣ったのだった。
目標は、それぞれのつぼみを咲かせること。
普段は積極的に他人と関わろうとしない
自由気ままな周子だが、今回は違った。
周子なりの方法で、仲間を気遣ったのだった。
──レッスンルーム
みく「……ワン、ツー、スリー、フォー あ、あれ、次ってどっちだったっけ。えっと……。」
夕美「右から左だよっ。もう一回やる?」
みく「……じゃあ、今のところもう一回お願いにゃ! ……ううん、今のところじゃなくてやっぱり最初っから!」
夕美「最初っからね。でも……大丈夫? みくちゃんさっきからずっと踊りっぱなしだよ?」
周子「ちょっとは休憩したらー?」
みく「うーん、だって振り付けが覚えられてないの、この中だとみくだけだし……。」
周子「そりゃこの中ではの話じゃん? 楓さんと志希ちゃんは?」
夕美「楓さんは別件のお仕事があるから、みんなで合わせるのは前日までできないみたい。志希ちゃんはもうフリ覚えたからって、そこでお昼寝してるよ。」
周子「楓さんはともかく、志希ちゃんは猫っぽいっていうか天才肌だなー。空気読まない辺りもあの子らしいね。」
みく「みくは……負けてられない! もう一回、最初から!」
周子「べつに、そこで張り合わなくったって。志希ちゃんの猫っぽいところもあれはあれでかわいいもんよ?」
みく「そ、そういうことじゃないし! アイドルのお仕事で手を抜くなんてやなの!」
周子「んー、手を抜けって言ってるわけじゃなくって、休憩したらーって言ってるだけなんだけど……。」
みく「だって、やっとできそうになってきたのに、ここで休んだら抜けちゃうかもしれないもん……。」
周子「ま、あたしには関係ないからいいけどねー。」
夕美「周子ちゃん。周子ちゃんのつぼみは、そこにあるのかも。」
周子「え……?」
みく「みく……間違ったこと言ってないもん。頑張らなきゃって思ってるだけだもん。」
夕美「……つぼみ、ね?」
周子「あぁ……こないだの話? 『興味がなかった部分に興味を持ってみるとか』……かぁ。まぁ、そうかな。みくちゃん。あたし、自分で言うのもなんだけど、超マイペースだからさ。どんなときも自分のペースでいたいんだよね。レッスンだって、こうして合同でやってるけど、個人個人で向き不向きがあるし、だからこそ、無理に合わせる必要もないと思ってる。でも、それってレッスンを頑張りたいみくちゃんを否定したいわけじゃなくってさ。あたしなら、休憩挟みつつやるよーっていうだけなんだよ。」
みく「……うん。」
周子「ま、そこはそこであたしも直さなきゃいけないところなんだけど……でも、つらい思いをしてまではやりたくないしさ。仲間がつらそうにしてるのを見るのも、まぁ、いいもんじゃないし。」
みく「……そうだね。」
周子「ぶっ続けで練習してたら効率だって悪くなるじゃん。ほら、記録用のムービー見て、どこが悪かったか確認したら? 身体休めながら覚えたら、休憩も無駄にならないよ。」
みく「それは、そうかも。」
夕美「ねっ。ほら、みくちゃん、このタオル使って! ドリンクもあるから!」
みく「夕美チャン……ありがとにゃ。周子チャンも……ね。」
周子「よしよし。それじゃ、みくちゃんが休んでるあいだに、ちょっくらシューコちゃんが踊ってみますかー。」
夕美「おっ、周子ちゃんの本領、発揮かな?」
周子「よっ、とっ、そらっ!」
みく「ぜ、ぜんぜん踊れてないにゃあ〜!!」
周子「ま、案外そんなもんだよね。あっはっは! だから、焦らずやってこうよ。ね!」
みく「まーったく、仕方ないにゃあ!」
夕美「ふふっ、休憩したら、またみんなでがんばろうねっ。」
みく「……ワン、ツー、スリー、フォー あ、あれ、次ってどっちだったっけ。えっと……。」
夕美「右から左だよっ。もう一回やる?」
みく「……じゃあ、今のところもう一回お願いにゃ! ……ううん、今のところじゃなくてやっぱり最初っから!」
夕美「最初っからね。でも……大丈夫? みくちゃんさっきからずっと踊りっぱなしだよ?」
周子「ちょっとは休憩したらー?」
みく「うーん、だって振り付けが覚えられてないの、この中だとみくだけだし……。」
周子「そりゃこの中ではの話じゃん? 楓さんと志希ちゃんは?」
夕美「楓さんは別件のお仕事があるから、みんなで合わせるのは前日までできないみたい。志希ちゃんはもうフリ覚えたからって、そこでお昼寝してるよ。」
周子「楓さんはともかく、志希ちゃんは猫っぽいっていうか天才肌だなー。空気読まない辺りもあの子らしいね。」
みく「みくは……負けてられない! もう一回、最初から!」
周子「べつに、そこで張り合わなくったって。志希ちゃんの猫っぽいところもあれはあれでかわいいもんよ?」
みく「そ、そういうことじゃないし! アイドルのお仕事で手を抜くなんてやなの!」
周子「んー、手を抜けって言ってるわけじゃなくって、休憩したらーって言ってるだけなんだけど……。」
みく「だって、やっとできそうになってきたのに、ここで休んだら抜けちゃうかもしれないもん……。」
周子「ま、あたしには関係ないからいいけどねー。」
夕美「周子ちゃん。周子ちゃんのつぼみは、そこにあるのかも。」
周子「え……?」
みく「みく……間違ったこと言ってないもん。頑張らなきゃって思ってるだけだもん。」
夕美「……つぼみ、ね?」
周子「あぁ……こないだの話? 『興味がなかった部分に興味を持ってみるとか』……かぁ。まぁ、そうかな。みくちゃん。あたし、自分で言うのもなんだけど、超マイペースだからさ。どんなときも自分のペースでいたいんだよね。レッスンだって、こうして合同でやってるけど、個人個人で向き不向きがあるし、だからこそ、無理に合わせる必要もないと思ってる。でも、それってレッスンを頑張りたいみくちゃんを否定したいわけじゃなくってさ。あたしなら、休憩挟みつつやるよーっていうだけなんだよ。」
みく「……うん。」
周子「ま、そこはそこであたしも直さなきゃいけないところなんだけど……でも、つらい思いをしてまではやりたくないしさ。仲間がつらそうにしてるのを見るのも、まぁ、いいもんじゃないし。」
みく「……そうだね。」
周子「ぶっ続けで練習してたら効率だって悪くなるじゃん。ほら、記録用のムービー見て、どこが悪かったか確認したら? 身体休めながら覚えたら、休憩も無駄にならないよ。」
みく「それは、そうかも。」
夕美「ねっ。ほら、みくちゃん、このタオル使って! ドリンクもあるから!」
みく「夕美チャン……ありがとにゃ。周子チャンも……ね。」
周子「よしよし。それじゃ、みくちゃんが休んでるあいだに、ちょっくらシューコちゃんが踊ってみますかー。」
夕美「おっ、周子ちゃんの本領、発揮かな?」
周子「よっ、とっ、そらっ!」
みく「ぜ、ぜんぜん踊れてないにゃあ〜!!」
周子「ま、案外そんなもんだよね。あっはっは! だから、焦らずやってこうよ。ね!」
みく「まーったく、仕方ないにゃあ!」
夕美「ふふっ、休憩したら、またみんなでがんばろうねっ。」
ネコミミをつけず、レッスンを終えたみく。
だが、志希は、ネコミミのないみくは『みくにゃん』
ではなく、『みく』だとからかう。困惑するみくだが、
たしかに自分らしさに悩んでいたと打ち明ける。
志希と楓から助言をもらったみくは、ステージの上で、
ファンに答えを見つけてもらうことにするのだった。
だが、志希は、ネコミミのないみくは『みくにゃん』
ではなく、『みく』だとからかう。困惑するみくだが、
たしかに自分らしさに悩んでいたと打ち明ける。
志希と楓から助言をもらったみくは、ステージの上で、
ファンに答えを見つけてもらうことにするのだった。
──収録スタジオ
みく「ふぅ……おわったにゃ〜。」
楓「みくちゃん、お疲れさま。今日は午前中から『つぼみ』のヴィジュアル撮影にヴォーカルレッスンと、大変でしたね。」
志希「ハードなスケジュールだよねー。でも、忙しくなってくると、LIVEステージが近づいてきたって気がする!」
みく「ふふっ、そうかも! だんだん、ドキドキそわそわしてくるのにゃ!」
志希「って言うけど、今日のみくちゃんネコミミついてなかったよね? そのせいじゃないの?」
楓「そういえば、グラビア撮影のときも、ついてませんでしたね。いまは……ヘッドホンの邪魔になるから、取ったのかしら?」
みく「わぁぁ! そ、そうだけど! ねこみみがないみくに何か問題でも!?」
志希「ん〜……みみなしじゃ、みくにゃんじゃなくなっちゃうんじゃない?」
みく「えぇ〜じゃあ、何になるって言うのにゃ!?」
志希「みく。」
みく「みくはみくだよ!?」
志希「違うよ! みくにゃんはみくじゃないよ! みくだよ!!」
みく「え、えぇ〜……。」
楓「ふふっ。まるで謎かけみたいですね。」
志希「あ、もしかして、しっぽはついてる?! ちょっと見せてみ……。」
みく「キャー! スカートめくるのやめるにゃあ!! はぁ……みく、なんか疲れた。」
楓「ふふっ。みくちゃんと志希ちゃん、仲良くていいですね。」
志希「にゃは〜。」
みく「まぁ……はい……。どうも……。」
楓「でも、さっき志希ちゃんが言っていたこと、意外と的を得ていますよね。」
みく「さっき志希チャンが言ってたことって……ねこみみをつけてないみくはみくかってこと?」
楓「えぇ。そんなこと、考えたことありませんか?」
志希「考えたことあるに決まってるよ! だってみくちゃんマジメだもん!」
みく「うっ……。たしかに、今回のステージ、みくはずっと悩んでたの。イベントのグラビアは耳もしっぽもナシ、歌はみくらしさとは全然違う、きれいな歌……。ソロで、自分の曲をもらうときはみくらしさを出せるけど、みんなと歌うときはどうしたらいいか……それこそ、どんな顔して歌ったらいいかなって。」
楓「どんなとき、どんな歌であっても、自分らしさを表現したいですよね。」
志希「そんなの、デフォルトにしてればいいんだよー。」
みく「そんなのって言われてもわかんないから!」
志希「んもー。」
みく「みくはねこみみもねこしっぽも無しで、自分らしくいるのって、どうしたらいいかわかんない。もし、それを見つけられたら、つぼみが花になったって言えると思うんだ。」
楓「そうね……正解は分からないけど、みんなと同じ歌をうたって、それでも出てくるところがみくちゃんらしさじゃないかしら。」
みく「5人で歌って、出てくるところ……。」
志希「でもそれは、5人を同時に観察できる人間しか発見できないよね。ってことはつまり、ファンしか気づけないことなんだなー!」
楓「自分らしさが自分には見えない……ふふっ。やっぱり謎かけみたいですね。」
みく「……じゃあ、みくは、ファンの猫チャンたちに見つけてもらうにゃ! みくの、みくらしいところを……ステージの上で!」
みく「ふぅ……おわったにゃ〜。」
楓「みくちゃん、お疲れさま。今日は午前中から『つぼみ』のヴィジュアル撮影にヴォーカルレッスンと、大変でしたね。」
志希「ハードなスケジュールだよねー。でも、忙しくなってくると、LIVEステージが近づいてきたって気がする!」
みく「ふふっ、そうかも! だんだん、ドキドキそわそわしてくるのにゃ!」
志希「って言うけど、今日のみくちゃんネコミミついてなかったよね? そのせいじゃないの?」
楓「そういえば、グラビア撮影のときも、ついてませんでしたね。いまは……ヘッドホンの邪魔になるから、取ったのかしら?」
みく「わぁぁ! そ、そうだけど! ねこみみがないみくに何か問題でも!?」
志希「ん〜……みみなしじゃ、みくにゃんじゃなくなっちゃうんじゃない?」
みく「えぇ〜じゃあ、何になるって言うのにゃ!?」
志希「みく。」
みく「みくはみくだよ!?」
志希「違うよ! みくにゃんはみくじゃないよ! みくだよ!!」
みく「え、えぇ〜……。」
楓「ふふっ。まるで謎かけみたいですね。」
志希「あ、もしかして、しっぽはついてる?! ちょっと見せてみ……。」
みく「キャー! スカートめくるのやめるにゃあ!! はぁ……みく、なんか疲れた。」
楓「ふふっ。みくちゃんと志希ちゃん、仲良くていいですね。」
志希「にゃは〜。」
みく「まぁ……はい……。どうも……。」
楓「でも、さっき志希ちゃんが言っていたこと、意外と的を得ていますよね。」
みく「さっき志希チャンが言ってたことって……ねこみみをつけてないみくはみくかってこと?」
楓「えぇ。そんなこと、考えたことありませんか?」
志希「考えたことあるに決まってるよ! だってみくちゃんマジメだもん!」
みく「うっ……。たしかに、今回のステージ、みくはずっと悩んでたの。イベントのグラビアは耳もしっぽもナシ、歌はみくらしさとは全然違う、きれいな歌……。ソロで、自分の曲をもらうときはみくらしさを出せるけど、みんなと歌うときはどうしたらいいか……それこそ、どんな顔して歌ったらいいかなって。」
楓「どんなとき、どんな歌であっても、自分らしさを表現したいですよね。」
志希「そんなの、デフォルトにしてればいいんだよー。」
みく「そんなのって言われてもわかんないから!」
志希「んもー。」
みく「みくはねこみみもねこしっぽも無しで、自分らしくいるのって、どうしたらいいかわかんない。もし、それを見つけられたら、つぼみが花になったって言えると思うんだ。」
楓「そうね……正解は分からないけど、みんなと同じ歌をうたって、それでも出てくるところがみくちゃんらしさじゃないかしら。」
みく「5人で歌って、出てくるところ……。」
志希「でもそれは、5人を同時に観察できる人間しか発見できないよね。ってことはつまり、ファンしか気づけないことなんだなー!」
楓「自分らしさが自分には見えない……ふふっ。やっぱり謎かけみたいですね。」
みく「……じゃあ、みくは、ファンの猫チャンたちに見つけてもらうにゃ! みくの、みくらしいところを……ステージの上で!」
LIVE前。志希は周子と楓を観察していた。
志希は自分のつぼみを咲かせるため、
何が必要なのかを考えていた。
楓と周子の言葉で、自分には『熱』が足りないと
気づかされた志希。ファンの情熱を感じられる
ステージに立つ瞬間を待ちわびるのだった。
志希は自分のつぼみを咲かせるため、
何が必要なのかを考えていた。
楓と周子の言葉で、自分には『熱』が足りないと
気づかされた志希。ファンの情熱を感じられる
ステージに立つ瞬間を待ちわびるのだった。
──LIVE会場
周子「ついに本番かー。あっという間だったなー。始まる前からもうあたし、感動いっぱい胸いっぱいだわ。」
楓「それなら私も一杯、付き合いましょうか。なんて。うふふ。」
志希「じー……。」
周子「ところが残念、あたしはまだ未成年なんで、一杯お付き合いはできないんだなー。二十歳になったらおいしいお店教えてもらえます?」
楓「もちろんです♪ いっしょに飲める日が楽しみですね。」
志希「じー……。」
周子「こんどこそ、危ない打ち上げじゃなくって、ちゃんとしたお店で……って何よ、志希ちゃん? 会話に混ざりたかったら入っておいでよー。」
楓「なにか、考えごとかしら?」
志希「つぼみについて、考えてたー。」
楓「つぼみについて……?」
志希「『なにかにチャレンジするとか、興味がなかった部分に興味を持ってみるとか、できないことをできるようになったりとか……』ってやつ。」
周子「あぁ、アレね。」
志希「あたしは、アイドルそのものがチャレンジだし、できないことはないから、興味を持ってみることにしたの。みんなに。」
楓「へぇ……それで、どうだったのかしら?」
志希「夕美ちゃんはみんなとの景色をみたいって言ってた。だから、裏方の仕事を勝手にやってる。損得もないし、感謝されるためじゃない。すごくない? みくちゃんは自分らしく歌いたいって言ってた。そう思ってる時点で、もう自分があるよね。でも素直だから、ぜんぜん気づいてない。かわいいよね。」
周子「あー。それ以上先は、いいよ。」
志希「周子ちゃんは自由でいたいって言ってた。でも、まだダンスが覚えられてないみくちゃんのために、わざと踊れないふりをしてた。自分から、嘘をついたよねー。」
周子「あちゃー。やっぱバレてたか……。これだから鼻が利く子は……。」
志希「みんながそれぞれのつぼみを育ててる。楓さんのは聞いてないけど……。でも、あたしはなにを育てたらいいか、わかんない。」
楓「志希ちゃん……。」
志希「今まではどんなことをしたって正解は見えたんだよ。テストだって、勉強だって、研究だって、どんなパズルもすぐに解けて、周りの大人はみんな褒めてくれた。」
周子「でも、ステージ直前になってもまだわかんない、と。」
楓「そう……。なら、志希ちゃん、植物についてのクイズね。種が発芽する条件って知ってる?」
志希「んー、ボタニーは専攻と全然違うけど……酸素と水、それと……光、じゃない、熱だったかなー? それがどうかした?」
周子「……普通それさらっと出てこないわ。」
楓「ふふ。植物の種だって芽が出るためには条件が必要でしょう? 志希ちゃんも、同じかもしれないわ。」
周子「あー。そうね。水と酸素はあっても、熱が足りないとかさ?」
志希「……熱?」
楓「そう。熱が足りないのかも。」
志希「どこでなら、見つけられる? ねぇ、どこにあるの?」
周子「言うてあと6時間後には、もらえるんじゃないかなー。ステージの上で、たくさんのファンからさ。」
楓「えぇ。温かな情熱を、もらえると思うわ。」
志希「……そっか! ステージ! あたしの全身が興奮でいっぱいになる、ステージ! そこでなら、熱がもらえる! つぼみが咲ける!」
周子「なら、いまはなくても、いいんじゃない。」
楓「ステージを、満喫しましょうね。」
志希「うん! 高まってきた! あたし、ステージに立ちたい! はやく! はやくはやくはやく〜!」
周子「ふふふっ、走り回ったって時間は早くやってこないよ〜。」
志希「は〜や〜く〜!」
周子「ついに本番かー。あっという間だったなー。始まる前からもうあたし、感動いっぱい胸いっぱいだわ。」
楓「それなら私も一杯、付き合いましょうか。なんて。うふふ。」
志希「じー……。」
周子「ところが残念、あたしはまだ未成年なんで、一杯お付き合いはできないんだなー。二十歳になったらおいしいお店教えてもらえます?」
楓「もちろんです♪ いっしょに飲める日が楽しみですね。」
志希「じー……。」
周子「こんどこそ、危ない打ち上げじゃなくって、ちゃんとしたお店で……って何よ、志希ちゃん? 会話に混ざりたかったら入っておいでよー。」
楓「なにか、考えごとかしら?」
志希「つぼみについて、考えてたー。」
楓「つぼみについて……?」
志希「『なにかにチャレンジするとか、興味がなかった部分に興味を持ってみるとか、できないことをできるようになったりとか……』ってやつ。」
周子「あぁ、アレね。」
志希「あたしは、アイドルそのものがチャレンジだし、できないことはないから、興味を持ってみることにしたの。みんなに。」
楓「へぇ……それで、どうだったのかしら?」
志希「夕美ちゃんはみんなとの景色をみたいって言ってた。だから、裏方の仕事を勝手にやってる。損得もないし、感謝されるためじゃない。すごくない? みくちゃんは自分らしく歌いたいって言ってた。そう思ってる時点で、もう自分があるよね。でも素直だから、ぜんぜん気づいてない。かわいいよね。」
周子「あー。それ以上先は、いいよ。」
志希「周子ちゃんは自由でいたいって言ってた。でも、まだダンスが覚えられてないみくちゃんのために、わざと踊れないふりをしてた。自分から、嘘をついたよねー。」
周子「あちゃー。やっぱバレてたか……。これだから鼻が利く子は……。」
志希「みんながそれぞれのつぼみを育ててる。楓さんのは聞いてないけど……。でも、あたしはなにを育てたらいいか、わかんない。」
楓「志希ちゃん……。」
志希「今まではどんなことをしたって正解は見えたんだよ。テストだって、勉強だって、研究だって、どんなパズルもすぐに解けて、周りの大人はみんな褒めてくれた。」
周子「でも、ステージ直前になってもまだわかんない、と。」
楓「そう……。なら、志希ちゃん、植物についてのクイズね。種が発芽する条件って知ってる?」
志希「んー、ボタニーは専攻と全然違うけど……酸素と水、それと……光、じゃない、熱だったかなー? それがどうかした?」
周子「……普通それさらっと出てこないわ。」
楓「ふふ。植物の種だって芽が出るためには条件が必要でしょう? 志希ちゃんも、同じかもしれないわ。」
周子「あー。そうね。水と酸素はあっても、熱が足りないとかさ?」
志希「……熱?」
楓「そう。熱が足りないのかも。」
志希「どこでなら、見つけられる? ねぇ、どこにあるの?」
周子「言うてあと6時間後には、もらえるんじゃないかなー。ステージの上で、たくさんのファンからさ。」
楓「えぇ。温かな情熱を、もらえると思うわ。」
志希「……そっか! ステージ! あたしの全身が興奮でいっぱいになる、ステージ! そこでなら、熱がもらえる! つぼみが咲ける!」
周子「なら、いまはなくても、いいんじゃない。」
楓「ステージを、満喫しましょうね。」
志希「うん! 高まってきた! あたし、ステージに立ちたい! はやく! はやくはやくはやく〜!」
周子「ふふふっ、走り回ったって時間は早くやってこないよ〜。」
志希「は〜や〜く〜!」
LIVEが終わり、感想を語り合うみく、夕美、楓。
いつも大人で完璧な姿であることを求められる楓だが、
自分も弱いところはあると打ち明けた。みくと夕美は、
楓のパフォーマンスでファンが喜んでいたと励ます。
みくと夕美の心遣いにより、楓のつぼみは
ほころんだのだった。
いつも大人で完璧な姿であることを求められる楓だが、
自分も弱いところはあると打ち明けた。みくと夕美は、
楓のパフォーマンスでファンが喜んでいたと励ます。
みくと夕美の心遣いにより、楓のつぼみは
ほころんだのだった。
──LIVE終了後
みく「あらためて本番、お疲れ様にゃ〜。」
夕美「いいステージになったよね。みんな、思い思いにパフォーマンスしてたみたい。」
楓「……。」
みく「ん? 楓さん?」
楓「……はぁ。」
夕美「楓さん、客席をじっと眺めて……どうかしたんですか?」
楓「あぁ、ごめんなさい。ちょっと思い出していて。本番が始まる前に、志希ちゃんに言われたんです。『なにかにチャレンジするとか、興味がなかった部分に興味を持ってみるとか、できないことをできるようになったりとか』……って。」
夕美「あ……それ、私が言ったつぼみの話ですね。」
楓「そう……志希ちゃんは、つぼみを咲かせるために、必要なことを考えているって言ってました。そのときは、私も偉そうにアドバイスしたんです。志希ちゃんが珍しく思い悩んでいるようだったから、あなたに足りないものはこれじゃないかしら、なんて。」
みく「そうなんだ。でも、それがどうかしたにゃ?」
楓「内心では、私、困ってたんです。」
夕美「困る……?」
楓「ほかのお仕事が忙しくて、みんなとちゃんとレッスンもできなくて。それでも、周りからは完璧な姿を要求されて。大人に見られて。大人だから、できないことはないと思われていたでしょう。でも、この歳になったって、できないことはたくさんあるんです。悩むことや迷うことだってたくさんあるんですよ。みんなの純粋なまぶしさに嫉妬してしまうことだって……。」
夕美「楓さんが?」
みく「で、でも、ステージは無事に成功したにゃ! 楓さんはプロとして必要なことを、したはずじゃないの?」
夕美「ファンのみんな、笑顔で手を振ってくれていましたよ?」
楓「そう思ってくれたなら、いいんですけど……。私にとってのつぼみは、弱い自分を隠し通すことだったのかもしれません。それが、志希ちゃんに見抜かれてしまうような嘘だったとしても……。」
夕美「人を傷つけない優しい嘘なら、いいと思いますよ。」
みく「そうだよ、楓さん! ファンの笑顔は嘘じゃなかったもん!」
楓「ごめんなさい、2人とも……困らせちゃって。いきなりこんなことを言われたら、戸惑いますよね。でも、聞いてくれて、励ましてくれて、ありがとう。」
夕美「私は……なんだか親近感がわきましたよ。楓さんも悩んだりするんだなぁって。私もよく、悩みがなさそうでいいねって言われますから。」
楓「あら……本当に?」
みく「そんなの、失礼すぎるし!」
夕美「それも、理由が『いつでもお花を育てていて楽しそうだから』って。楓さんの『大人だから』って理由と大差ないですよね。」
みく「どっちもすごい失礼だし!?」
楓「ふふっ。みんな、そんなものなのかもしれませんね。」
夕美「ふふふ、ですねっ。じゃあ、楓さん。いまの、本当の悩みとかって聞かせてもらえますか?」
楓「いまの悩み、ですか? そうね……んんー……あっ。洗剤が切れてるから、買って帰らなきゃってこと、とか?」
みく「なるほどー、ってそれ悩みじゃないし!?」
楓「うふふっ。」
夕美「あははっ。」
みく「あらためて本番、お疲れ様にゃ〜。」
夕美「いいステージになったよね。みんな、思い思いにパフォーマンスしてたみたい。」
楓「……。」
みく「ん? 楓さん?」
楓「……はぁ。」
夕美「楓さん、客席をじっと眺めて……どうかしたんですか?」
楓「あぁ、ごめんなさい。ちょっと思い出していて。本番が始まる前に、志希ちゃんに言われたんです。『なにかにチャレンジするとか、興味がなかった部分に興味を持ってみるとか、できないことをできるようになったりとか』……って。」
夕美「あ……それ、私が言ったつぼみの話ですね。」
楓「そう……志希ちゃんは、つぼみを咲かせるために、必要なことを考えているって言ってました。そのときは、私も偉そうにアドバイスしたんです。志希ちゃんが珍しく思い悩んでいるようだったから、あなたに足りないものはこれじゃないかしら、なんて。」
みく「そうなんだ。でも、それがどうかしたにゃ?」
楓「内心では、私、困ってたんです。」
夕美「困る……?」
楓「ほかのお仕事が忙しくて、みんなとちゃんとレッスンもできなくて。それでも、周りからは完璧な姿を要求されて。大人に見られて。大人だから、できないことはないと思われていたでしょう。でも、この歳になったって、できないことはたくさんあるんです。悩むことや迷うことだってたくさんあるんですよ。みんなの純粋なまぶしさに嫉妬してしまうことだって……。」
夕美「楓さんが?」
みく「で、でも、ステージは無事に成功したにゃ! 楓さんはプロとして必要なことを、したはずじゃないの?」
夕美「ファンのみんな、笑顔で手を振ってくれていましたよ?」
楓「そう思ってくれたなら、いいんですけど……。私にとってのつぼみは、弱い自分を隠し通すことだったのかもしれません。それが、志希ちゃんに見抜かれてしまうような嘘だったとしても……。」
夕美「人を傷つけない優しい嘘なら、いいと思いますよ。」
みく「そうだよ、楓さん! ファンの笑顔は嘘じゃなかったもん!」
楓「ごめんなさい、2人とも……困らせちゃって。いきなりこんなことを言われたら、戸惑いますよね。でも、聞いてくれて、励ましてくれて、ありがとう。」
夕美「私は……なんだか親近感がわきましたよ。楓さんも悩んだりするんだなぁって。私もよく、悩みがなさそうでいいねって言われますから。」
楓「あら……本当に?」
みく「そんなの、失礼すぎるし!」
夕美「それも、理由が『いつでもお花を育てていて楽しそうだから』って。楓さんの『大人だから』って理由と大差ないですよね。」
みく「どっちもすごい失礼だし!?」
楓「ふふっ。みんな、そんなものなのかもしれませんね。」
夕美「ふふふ、ですねっ。じゃあ、楓さん。いまの、本当の悩みとかって聞かせてもらえますか?」
楓「いまの悩み、ですか? そうね……んんー……あっ。洗剤が切れてるから、買って帰らなきゃってこと、とか?」
みく「なるほどー、ってそれ悩みじゃないし!?」
楓「うふふっ。」
夕美「あははっ。」
LIVEが無事に終わり、周子、みく、楓、夕美、志希の
5人とPは、打ち上げを兼ねて遅いお花見を催す
ことにした、レッスンやLIVEを通じて、自分たちの
つぼみを開花させた5人は、温かな心でお花見を
楽しむ。桜色の風の中に、成長した5人の笑顔が
咲き誇るのだった。
5人とPは、打ち上げを兼ねて遅いお花見を催す
ことにした、レッスンやLIVEを通じて、自分たちの
つぼみを開花させた5人は、温かな心でお花見を
楽しむ。桜色の風の中に、成長した5人の笑顔が
咲き誇るのだった。
──楽屋
楓「終わってしまうといつも思いますが、いいLIVEでしたね。プロデューサーさん、いかがでしたか?」
[最高だった]
周子「なんか大げさやね。ふふっ。でも、ステージは何度立っても最高に気持ちいいよ。ホント。」
みく「ステージの上から見たサインライトのお花畑、すっごくきれいだったにゃあ……。」
夕美「そうだねっ。とっても感動的で、ずっと見ていたいなぁって思ったよ。優しい光に包まれてたよねっ。」
志希「ほんと、あったかかったなー。まだ身体にあの熱が残ってるみたいで。やっぱり、ステージって最高に面白いっ!」
みく「そういえば、今日はもうこれで解散なの〜? どうせだから、みんなで打ち上げでもしたいにゃあ〜。」
周子「神様仏様プロデューサー様、なにとぞー。」
[お花見にいこう]
夕美「お花見! いいねっ! ソメイヨシノは散っちゃってるかもしれないけど、ヤエザクラとか遅咲きの桜なら、まだ見られると思うよっ!」
志希「にゃはー! お花見! きっとイイ匂いだよね! はやく! はやくいこ〜!」
楓「はぁ……もうすっかり暖かくなりましたね。陽気に誘われて、桜の花たちも咲き乱れているみたい。」
夕美「暖かくなると、つぼみはひらいて、きれいな花になるんだよねっ。」
周子「つまりー、あたしらも?」
みく「ファンのみんながくれる、温かい声援で、花開いた……かにゃ?」
周子「ふふっ。ちょっと気取りすぎ?」
志希「たまには、いいとおもうにゃー。おかげで、こんな景色を見られてるんだし。んー……景色にプラスして……いい匂い〜♪」
みく「……そうだよね。だってこんなにキレイなんだもん。少しくらい、浸ってもいいよね。」
夕美「みんな、キレイに咲けたから、桜の樹たちも祝福してくれてるんだよ。きっと♪」
(桜吹雪)
楓「あら、いい風……。花びらたちが、踊ってますね。」
志希「わーっ! すごーい! 空が桜色! すごくない!? すごーい!」
周子「落ちた花びらも巻き上げて、風流やねー……。」
楓「……とはいえ、みんな育ち盛りですから、そろそろ花より団子なんじゃないかしら? ということで、ここからは、お楽しみの打ち上げタイム〜♪」
志希「ん! フンフンフン……美味しそうな匂い! なにそれ! なにそれ〜!?」
楓「残念ながら、このお酒は私とプロデューサーさん用です♪ みんなは、ジュースでガマンしてくださいね。」
志希「ちぇーっ。でも……クンクンクン……こっちから美味しそうな匂いが……。」
周子「ウチの実家から送られてきた和菓子、みんなでつまんでよ。ほい、どーぞ。」
夕美「わぁっ、周子ちゃんのお家の和菓子、すっごくおいしいんだよね! ありがとう、周子ちゃん!」
周子「いやいや、こんなもんで喜んでもらえるんなら、いくらでも持ってきますわー。」
志希「ん〜、甘い匂い……はっ! みくちゃんからも美味しそうな匂いする! じゅるじゅる……。うぇへへへ……。」
みく「わかった! わかったから志希チャン! 待って! はい! みく特製のひとくちハンバーグ! どーうぞっ♪」
志希「いっただっきまーす♪ ぱくっ……うむうむうむ……でりーしゃーす♪」
夕美「もうっ、乾杯する前から食べ始めちゃって! ふふっ。仕方ないんだから!」
周子「てゆーか、一口ハンバーグって、ミートボールやん!」
みく「あっ……。それは、その、ね!」
楓「うふふっ。」
夕美「あははっ。」
みく「と、とりあえず気を取り直して! みんな、お疲れさまでしたの、かんぱーい!」
周子「かんぱーい♪」
志希「ふごふごご〜♪」
楓「乾杯♪」
夕美「乾杯♪」
(桜吹雪)
楓「終わってしまうといつも思いますが、いいLIVEでしたね。プロデューサーさん、いかがでしたか?」
[最高だった]
周子「なんか大げさやね。ふふっ。でも、ステージは何度立っても最高に気持ちいいよ。ホント。」
みく「ステージの上から見たサインライトのお花畑、すっごくきれいだったにゃあ……。」
夕美「そうだねっ。とっても感動的で、ずっと見ていたいなぁって思ったよ。優しい光に包まれてたよねっ。」
志希「ほんと、あったかかったなー。まだ身体にあの熱が残ってるみたいで。やっぱり、ステージって最高に面白いっ!」
みく「そういえば、今日はもうこれで解散なの〜? どうせだから、みんなで打ち上げでもしたいにゃあ〜。」
周子「神様仏様プロデューサー様、なにとぞー。」
[お花見にいこう]
夕美「お花見! いいねっ! ソメイヨシノは散っちゃってるかもしれないけど、ヤエザクラとか遅咲きの桜なら、まだ見られると思うよっ!」
志希「にゃはー! お花見! きっとイイ匂いだよね! はやく! はやくいこ〜!」
楓「はぁ……もうすっかり暖かくなりましたね。陽気に誘われて、桜の花たちも咲き乱れているみたい。」
夕美「暖かくなると、つぼみはひらいて、きれいな花になるんだよねっ。」
周子「つまりー、あたしらも?」
みく「ファンのみんながくれる、温かい声援で、花開いた……かにゃ?」
周子「ふふっ。ちょっと気取りすぎ?」
志希「たまには、いいとおもうにゃー。おかげで、こんな景色を見られてるんだし。んー……景色にプラスして……いい匂い〜♪」
みく「……そうだよね。だってこんなにキレイなんだもん。少しくらい、浸ってもいいよね。」
夕美「みんな、キレイに咲けたから、桜の樹たちも祝福してくれてるんだよ。きっと♪」
(桜吹雪)
楓「あら、いい風……。花びらたちが、踊ってますね。」
志希「わーっ! すごーい! 空が桜色! すごくない!? すごーい!」
周子「落ちた花びらも巻き上げて、風流やねー……。」
楓「……とはいえ、みんな育ち盛りですから、そろそろ花より団子なんじゃないかしら? ということで、ここからは、お楽しみの打ち上げタイム〜♪」
志希「ん! フンフンフン……美味しそうな匂い! なにそれ! なにそれ〜!?」
楓「残念ながら、このお酒は私とプロデューサーさん用です♪ みんなは、ジュースでガマンしてくださいね。」
志希「ちぇーっ。でも……クンクンクン……こっちから美味しそうな匂いが……。」
周子「ウチの実家から送られてきた和菓子、みんなでつまんでよ。ほい、どーぞ。」
夕美「わぁっ、周子ちゃんのお家の和菓子、すっごくおいしいんだよね! ありがとう、周子ちゃん!」
周子「いやいや、こんなもんで喜んでもらえるんなら、いくらでも持ってきますわー。」
志希「ん〜、甘い匂い……はっ! みくちゃんからも美味しそうな匂いする! じゅるじゅる……。うぇへへへ……。」
みく「わかった! わかったから志希チャン! 待って! はい! みく特製のひとくちハンバーグ! どーうぞっ♪」
志希「いっただっきまーす♪ ぱくっ……うむうむうむ……でりーしゃーす♪」
夕美「もうっ、乾杯する前から食べ始めちゃって! ふふっ。仕方ないんだから!」
周子「てゆーか、一口ハンバーグって、ミートボールやん!」
みく「あっ……。それは、その、ね!」
楓「うふふっ。」
夕美「あははっ。」
みく「と、とりあえず気を取り直して! みんな、お疲れさまでしたの、かんぱーい!」
周子「かんぱーい♪」
志希「ふごふごご〜♪」
楓「乾杯♪」
夕美「乾杯♪」
(桜吹雪)
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