最終更新:ID:3r39Celhpg 2015年10月09日(金) 15:37:08履歴
マクレーン夫妻の不幸から始まり、連鎖した一連の事件。
妻エリンを殺害したのは、夫ナサニエルの狂気ではなく、復讐に燃える青年が放った一匹の獣であった。
不幸にも死んだ妻の幸運は、
最期の瞬間まで、愛し続けた黒猫を恨まずに済んだことであろう。
幸運にも生き延びた夫の不幸は、
生き延びたが故に狂気と恐怖と猜疑心に苛まれ続ける羽目になったことであろう。
妻は死に、夫は妻殺し容疑で逮捕され、死刑判決を受けて刑務所へ。ありふれた事件、ありふれた結末、どこにでもあるような一つの家庭を襲った悲劇。しかし、”ありふれた日常”という水面に投じられた”獣 -怪物-”は、容易くそれらを崩し壊す。
死刑囚殺しの汚名を着せられ、それでもなお、逃げ続けたナサニエル。兄の身を案じ、その容疑を晴らしたい一心で、妹ミランダ・サクソンはジョシュア・マリアン探偵事務所へ足を踏み入れる。それこそが、すべての始まりであった。
廻り回る運命の歯車。足掻く人間を笑い踏みつけ、神は高らかな哄笑と共に悲劇の糸を意図的に紡ぎ往く。
悲劇の糸が手繰り寄せたのは、かつて尊い犠牲により消し去られた神。舞い戻りし神は盲目白痴を狂愛す混沌の怒りを買い、かつてと同じように神の鎖によりて、一人の娘へ繋ぎ止められる。
世界の安寧は保たれたままに見えた。……ひとまずのところは。
どうせ上書きされるものを記録しても時間の無駄だわ。
これにてこの記録はおしまい、次の実験を始めましょう。
PCより
PLより
「うわ、っとと!」
「のわっ!?」
不意に、路地から出てきた背の高い人影にぶつかる。
ちょうど買い出しに出た帰りで、紙袋を抱えていたのが拙かった。
思いのほか勢いよくぶつかったせいか、体勢を崩してそのまま尻もちをついてしまう。
我ながら情けねぇ。
「やっべ、おっちゃん大丈夫かー? ごめん、ぶつかっちった」
「あ? ああいや、問題ねぇよ。こっちこそ悪かっ……」
あわてたように手を差し出してくる相手の方を見て、思わず言葉が詰まる。
黒い短髪に、肌の色からして東洋人なのだろう。日本人、そんな単語が連想される。上背がかなりあるが、こちらに向けられた声は若い少年のそれだ。
しかし、何よりも目を引くのは、そいつの顔や差し出した腕などの露出した肌に刻まれている、夥しいまでの刺青。この分では、全身にくまなく彫り込まれているのではないだろうか。
「えっと、」
呟かれた声で、そいつのことを凝視していたことに気付く。
こちらに差し出した腕を所在なさげに彷徨わせている、どことなく不安そうな表情。
……ったく、餓鬼相手に気ぃ遣わせてどうする。
「ああ、悪い。ありがとな」
下がりかけていた手を掴み返し、体を起こす。赤い刺青の入った右手を引き上げる力は、ずいぶんと強かった。
「ところで、ずいぶんと急いでたみてぇだが、何してたんだ?」
ばつの悪い気持ちを隠すようにして、紙袋の様子を確かめながら尋ねる。
「あー、いや、仕事探してたんだ。どっかで働けないかなーって思ってんだけど……」
なかなか見っかんなくってさー、と困ったように頬を掻く。
確かに、アジア系民族に風当たりの強いこの国では、東洋人であるそいつは仕事を探すことすら難しいだろう。
加えてその見た目だ。真っ当な職場なんぞ期待できそうにもない。
「……お前、特技とかは」
「力仕事ならまかせろー!」
即答かよ。しかも脳筋系か。
まあ、正直うちの事務所は男手が足りねぇ。俺以外にはメイド服着た男が一人だけだ。
……自分でいってて頭痛くなるな、これ。
とにかく、働けるってんなら雇わない手はねぇわな。
懐から取り出し名刺を、半ば押し付けるようにして手渡す。
「暇があったらここに来い。仕事回せるかもしれねぇ」
「へ?」
事務所の住所や連絡先が書かれたそれを、そして俺を、交互に見つめている。
「……おっちゃん、珍しい人なんだなー」
「あぁ? 何がだよ」
「いや、俺みたいのでも普通に相手にしてくれてるっていうか。仕事までくれるって言うし」
「別に生まれがどこだろうがどうでもいいだろ。それに、日本人の一人や二人、住み込みで雇えるだけの金はあんだよ」
「いや、生まれとかじゃ……、住み込み? いや、俺いま帰る家あるぞ?」
「ん……ああ、そうか。そりゃ悪かった」
何だって住み込みなんて先走ったことを言ってんだ、俺は。
「変なおっちゃんだなー………あ!」
そいつは誰かの名前を呼んだかと思うと、一目散に走り去っていく。
フードをかぶった赤毛の少女に手を振りながら駆け寄るそいつを、まるで子供のようだと思った。
そして日常は、何事もなく平穏に続く。
「のわっ!?」
不意に、路地から出てきた背の高い人影にぶつかる。
ちょうど買い出しに出た帰りで、紙袋を抱えていたのが拙かった。
思いのほか勢いよくぶつかったせいか、体勢を崩してそのまま尻もちをついてしまう。
我ながら情けねぇ。
「やっべ、おっちゃん大丈夫かー? ごめん、ぶつかっちった」
「あ? ああいや、問題ねぇよ。こっちこそ悪かっ……」
あわてたように手を差し出してくる相手の方を見て、思わず言葉が詰まる。
黒い短髪に、肌の色からして東洋人なのだろう。日本人、そんな単語が連想される。上背がかなりあるが、こちらに向けられた声は若い少年のそれだ。
しかし、何よりも目を引くのは、そいつの顔や差し出した腕などの露出した肌に刻まれている、夥しいまでの刺青。この分では、全身にくまなく彫り込まれているのではないだろうか。
「えっと、」
呟かれた声で、そいつのことを凝視していたことに気付く。
こちらに差し出した腕を所在なさげに彷徨わせている、どことなく不安そうな表情。
……ったく、餓鬼相手に気ぃ遣わせてどうする。
「ああ、悪い。ありがとな」
下がりかけていた手を掴み返し、体を起こす。赤い刺青の入った右手を引き上げる力は、ずいぶんと強かった。
「ところで、ずいぶんと急いでたみてぇだが、何してたんだ?」
ばつの悪い気持ちを隠すようにして、紙袋の様子を確かめながら尋ねる。
「あー、いや、仕事探してたんだ。どっかで働けないかなーって思ってんだけど……」
なかなか見っかんなくってさー、と困ったように頬を掻く。
確かに、アジア系民族に風当たりの強いこの国では、東洋人であるそいつは仕事を探すことすら難しいだろう。
加えてその見た目だ。真っ当な職場なんぞ期待できそうにもない。
「……お前、特技とかは」
「力仕事ならまかせろー!」
即答かよ。しかも脳筋系か。
まあ、正直うちの事務所は男手が足りねぇ。俺以外にはメイド服着た男が一人だけだ。
……自分でいってて頭痛くなるな、これ。
とにかく、働けるってんなら雇わない手はねぇわな。
懐から取り出し名刺を、半ば押し付けるようにして手渡す。
「暇があったらここに来い。仕事回せるかもしれねぇ」
「へ?」
事務所の住所や連絡先が書かれたそれを、そして俺を、交互に見つめている。
「……おっちゃん、珍しい人なんだなー」
「あぁ? 何がだよ」
「いや、俺みたいのでも普通に相手にしてくれてるっていうか。仕事までくれるって言うし」
「別に生まれがどこだろうがどうでもいいだろ。それに、日本人の一人や二人、住み込みで雇えるだけの金はあんだよ」
「いや、生まれとかじゃ……、住み込み? いや、俺いま帰る家あるぞ?」
「ん……ああ、そうか。そりゃ悪かった」
何だって住み込みなんて先走ったことを言ってんだ、俺は。
「変なおっちゃんだなー………あ!」
そいつは誰かの名前を呼んだかと思うと、一目散に走り去っていく。
フードをかぶった赤毛の少女に手を振りながら駆け寄るそいつを、まるで子供のようだと思った。
そして日常は、何事もなく平穏に続く。
『あ、あの!』
「おー?」
その声が、自分に向けて放たれたものだとわかったのは何故だろう。
ほかに道を歩いてる人もたくさんいて、自分の隣にいる彼女だって、すぐにはその声に気付かなかったのに。
振り向いた先にいたのは……何だろ、黒っぽい帽子と短いマントみてーなものを羽織った女の子だった。帽子の端から覗く黒い髪。見たことないような、変なかっこ。
こっちを見て、驚いたような、戸惑ってるような表情を浮かべている。まるで、自分でも声をかけた理由がわかってないみたいに。
俺たちが足を止めてるのに気づいたのか、その子は慌てて頭を下げた。
「ぁ……えっと、その……失敬! 同郷の方かと思い、つい……」
どことなくぎこちない言葉と発音の仕方を聞いて、俺が振り向いた理由がわかった。
さっきの言葉、日本語だったんだな。
「んっと、つまり……仕事探してるのなー」
場所を移して、適当なとこに腰を落ち着かせて話を聞くと、どうもそういうことらしかった。
日本からもう一人の同行人とこの国にやってきたが、宿も取れず、仕事もない。
少ない手持ちのお金をどうにかやりくりしていたけど、流石に限界が近く、手分けして宿と働き先を探しているのだという。
けれどやっぱり仕事は見つからず途方に暮れていたところに、目の前を通りかかった日本人らしき人物を見て「思わず声をかけてしまった」らしい。
「いやはや、お恥ずかしい……。彼女にはお世話になってばかりですし、小生も何かお役に立たねば……」
焦りを含んだ声で呟きながら、腰に差した細長い袋をしきりに撫でている。何かの癖なのだろうか。
さてさて、俺の手元にあるのは小さな紙きれ。こっちの言葉で、どこかの住所と、その名前が書かれてる。
目の前にいるのは、変なかっこの女の子。着ているものも薄汚れて、どこかやつれたような顔をしている。右も左もわからないこの土地にいる。
隣にいるのは、愛しい人。優しいあの子は心配そうに見ている。手厳しいあの子なら何て言うかな?
何をすべき?
何がしたい?
……、ん。よっし! 決定!
「ここ、行ってみなよ。日本人でも―……すみこみ?で働かせてくれるんだって!」
「ぷぇ?」
おっちゃんにもらった紙切れを差し出すと、変な声を出された。
それからじっと紙切れを、そこに書かれた文字を目で追っていく。今気付いたけど、文字読めるのかな?
「あ、やっぱこっちの言葉わかんな……」
と、手帳を取り出したかと思うと、ものすごい勢いで書き込み始めた。
……あれ、もしかしてこの紙切れ、渡す必要ないの?
「ありがとうございます! このご恩は……む、どうかしたでありますか?」
「んーん、何でもない」
手帳に書き写す発想はなかったとか、文字読めるんだとか、思ってないし。
……別に悔しくないし。
「? ……あ、今のは! 小生、これで失礼するであります!」
深く頭を下げると、すごい勢いで走っていった。
そのまま通りを曲がって、姿は見えなくなる。
誰かと話す声がするから、手分けしていたっていう同行人を見つけたのかな。
――やりましたよ! 親切な方が良き職場を教えてくださって……何を持っているので?
――そこの路地にいた猫よ。今夜の食事代を浮かそうと思ったの。
――お待ちくだされ! 小生すんごい情報持って来たので猫鍋(物理)はやめて!
――あら、そちらも何か聞けたのかしら? 私の方は、襟巻を巻いた女性に誘われて……
――本当ですか!? ああ、今日は良き日であります!
なんか楽しそうだなー。
まあ、立ち聞きしててもしょうがないし、背を向けて家までの道を歩き始める。
……なんだか、変な感じだ。
何でだろうって思ったけど、勝手に頭が答えを出す。
「こっちに来てから、俺以外の日本人に会ったの初めてなんだ」
口に出したその言葉は、思ったよりピンとこない。けど、それ以外のことは思いつかなかった。
隣にいる彼女なら、何かわかるのかな? 俺よかずっと頭いいし。
そんなことを考えながら、歩いていく。
そして日常は、何事もなく平穏に続く。
「おー?」
その声が、自分に向けて放たれたものだとわかったのは何故だろう。
ほかに道を歩いてる人もたくさんいて、自分の隣にいる彼女だって、すぐにはその声に気付かなかったのに。
振り向いた先にいたのは……何だろ、黒っぽい帽子と短いマントみてーなものを羽織った女の子だった。帽子の端から覗く黒い髪。見たことないような、変なかっこ。
こっちを見て、驚いたような、戸惑ってるような表情を浮かべている。まるで、自分でも声をかけた理由がわかってないみたいに。
俺たちが足を止めてるのに気づいたのか、その子は慌てて頭を下げた。
「ぁ……えっと、その……失敬! 同郷の方かと思い、つい……」
どことなくぎこちない言葉と発音の仕方を聞いて、俺が振り向いた理由がわかった。
さっきの言葉、日本語だったんだな。
「んっと、つまり……仕事探してるのなー」
場所を移して、適当なとこに腰を落ち着かせて話を聞くと、どうもそういうことらしかった。
日本からもう一人の同行人とこの国にやってきたが、宿も取れず、仕事もない。
少ない手持ちのお金をどうにかやりくりしていたけど、流石に限界が近く、手分けして宿と働き先を探しているのだという。
けれどやっぱり仕事は見つからず途方に暮れていたところに、目の前を通りかかった日本人らしき人物を見て「思わず声をかけてしまった」らしい。
「いやはや、お恥ずかしい……。彼女にはお世話になってばかりですし、小生も何かお役に立たねば……」
焦りを含んだ声で呟きながら、腰に差した細長い袋をしきりに撫でている。何かの癖なのだろうか。
さてさて、俺の手元にあるのは小さな紙きれ。こっちの言葉で、どこかの住所と、その名前が書かれてる。
目の前にいるのは、変なかっこの女の子。着ているものも薄汚れて、どこかやつれたような顔をしている。右も左もわからないこの土地にいる。
隣にいるのは、愛しい人。優しいあの子は心配そうに見ている。手厳しいあの子なら何て言うかな?
何をすべき?
何がしたい?
……、ん。よっし! 決定!
「ここ、行ってみなよ。日本人でも―……すみこみ?で働かせてくれるんだって!」
「ぷぇ?」
おっちゃんにもらった紙切れを差し出すと、変な声を出された。
それからじっと紙切れを、そこに書かれた文字を目で追っていく。今気付いたけど、文字読めるのかな?
「あ、やっぱこっちの言葉わかんな……」
と、手帳を取り出したかと思うと、ものすごい勢いで書き込み始めた。
……あれ、もしかしてこの紙切れ、渡す必要ないの?
「ありがとうございます! このご恩は……む、どうかしたでありますか?」
「んーん、何でもない」
手帳に書き写す発想はなかったとか、文字読めるんだとか、思ってないし。
……別に悔しくないし。
「? ……あ、今のは! 小生、これで失礼するであります!」
深く頭を下げると、すごい勢いで走っていった。
そのまま通りを曲がって、姿は見えなくなる。
誰かと話す声がするから、手分けしていたっていう同行人を見つけたのかな。
――やりましたよ! 親切な方が良き職場を教えてくださって……何を持っているので?
――そこの路地にいた猫よ。今夜の食事代を浮かそうと思ったの。
――お待ちくだされ! 小生すんごい情報持って来たので猫鍋(物理)はやめて!
――あら、そちらも何か聞けたのかしら? 私の方は、襟巻を巻いた女性に誘われて……
――本当ですか!? ああ、今日は良き日であります!
なんか楽しそうだなー。
まあ、立ち聞きしててもしょうがないし、背を向けて家までの道を歩き始める。
……なんだか、変な感じだ。
何でだろうって思ったけど、勝手に頭が答えを出す。
「こっちに来てから、俺以外の日本人に会ったの初めてなんだ」
口に出したその言葉は、思ったよりピンとこない。けど、それ以外のことは思いつかなかった。
隣にいる彼女なら、何かわかるのかな? 俺よかずっと頭いいし。
そんなことを考えながら、歩いていく。
そして日常は、何事もなく平穏に続く。
七日間、お疲れ様でした。
振り返ってみると一日一日の濃度が濃く、一言ではとても言い表せません。
ダイスの女神に翻弄されたり自分たちの意思でアクセルべた踏みしたりと、
予想外の方向にルートを開拓して突き抜けていった最終到達点は、
大団円ではないものの、幸せな結果にまとまっていたように思います。
また、死亡したのでなく、いなくなったのでなく、
『初めから存在しなかった』という形になった出来事、人物。
PCたちの探索する世界から消えてしまった葛切頼道とセバスさんを、
PLとしてしっかりと胸に刻み、忘れないようにしていきたいと思えるセッションでした。
皆様とご一緒できて、とても楽しかったです。
またどこかでお会いした時は、よろしくお願いいたします。
振り返ってみると一日一日の濃度が濃く、一言ではとても言い表せません。
ダイスの女神に翻弄されたり自分たちの意思でアクセルべた踏みしたりと、
予想外の方向にルートを開拓して突き抜けていった最終到達点は、
大団円ではないものの、幸せな結果にまとまっていたように思います。
また、死亡したのでなく、いなくなったのでなく、
『初めから存在しなかった』という形になった出来事、人物。
PCたちの探索する世界から消えてしまった葛切頼道とセバスさんを、
PLとしてしっかりと胸に刻み、忘れないようにしていきたいと思えるセッションでした。
皆様とご一緒できて、とても楽しかったです。
またどこかでお会いした時は、よろしくお願いいたします。
PCより
PLより
皆様、七日間のセッションお疲れ様でした!
一日一日の濃度の高い、とても楽しいセッションでした。
最初は平和だったのにどんどん悪い方向へ突き進み続け、
最後にセバスさん、頼道さんが存在ロストしてしまうというとんでもない結末になってしまいましたが…。
このことを忘れることは出来ないでしょう。
ピンポイントで襲ってくるファンブルの恐怖も。(白目)
また、古都子さん。最後に子供たちを出していただいて本当に感激しております。
まさか登場するとは夢にも思わなかったので…。嬉しいサプライズでした。
飛び入りでしたが、皆様とご一緒出来て本当によかったです。
また、どこかでお会いするときまで。
「これでよし…っと」
荷物をまとめ終え、一息つく。
体を休めるためにベッドに腰掛け、視界を落とす。
するとキラリ、と存在を主張するかのように右手の指輪が光る。
セトの指輪。
あの新月の晩、アナスタシアを助けるために藁にもすがる思いで嵌めた指輪。
結果として助けることは出来た。しかし、
「代償……か」
嵌めた者にあの獣を呼び出し、操る力を与える。そして死ぬまで取り外せず、代償がやってくる。
それがこの指輪の力だった。
いつどのように代償が来るかは分からないと爺さんたちには言われた。
誰に来るのか分からないとも。やはり自分か、はたまた身の回りの人間か。
「…付けちまったんだ、使えるだけ使わせてもらう」
明日か、来年か、何十年後か。
代償とやらがやってくるまで、それまででも。
俺が守りたいと思うもののために。
「さって、そろそろ行きますかねぇ」
その言葉に部屋の片隅で大人しくしていた獣が反応し、追従する。
どこにでもいるような犬の姿に変貌しながら。
一人と一匹は宿を後にする。
大事な子供たちが待つ、あの街を目指して------------------
荷物をまとめ終え、一息つく。
体を休めるためにベッドに腰掛け、視界を落とす。
するとキラリ、と存在を主張するかのように右手の指輪が光る。
セトの指輪。
あの新月の晩、アナスタシアを助けるために藁にもすがる思いで嵌めた指輪。
結果として助けることは出来た。しかし、
「代償……か」
嵌めた者にあの獣を呼び出し、操る力を与える。そして死ぬまで取り外せず、代償がやってくる。
それがこの指輪の力だった。
いつどのように代償が来るかは分からないと爺さんたちには言われた。
誰に来るのか分からないとも。やはり自分か、はたまた身の回りの人間か。
「…付けちまったんだ、使えるだけ使わせてもらう」
明日か、来年か、何十年後か。
代償とやらがやってくるまで、それまででも。
俺が守りたいと思うもののために。
「さって、そろそろ行きますかねぇ」
その言葉に部屋の片隅で大人しくしていた獣が反応し、追従する。
どこにでもいるような犬の姿に変貌しながら。
一人と一匹は宿を後にする。
大事な子供たちが待つ、あの街を目指して------------------
皆様、七日間のセッションお疲れ様でした!
一日一日の濃度の高い、とても楽しいセッションでした。
最初は平和だったのにどんどん悪い方向へ突き進み続け、
最後にセバスさん、頼道さんが存在ロストしてしまうというとんでもない結末になってしまいましたが…。
このことを忘れることは出来ないでしょう。
ピンポイントで襲ってくるファンブルの恐怖も。(白目)
また、古都子さん。最後に子供たちを出していただいて本当に感激しております。
まさか登場するとは夢にも思わなかったので…。嬉しいサプライズでした。
飛び入りでしたが、皆様とご一緒出来て本当によかったです。
また、どこかでお会いするときまで。
実績追加条件:Gallery Modeを開放する。
“事務所の眠れる所長”
Joshua Marian -ジョシュア・マリアン-
Chapter.1“来訪”から登場。
事件終息後も変わらず同じ場所に事務所を置いている。
何度かパロマから事務所移転の打診を受けているようだが
今の街も静かでなかなか乙なものだと考えているらしく、首を縦に振らない。
幽霊所員のおかげか、人気がほとんどなくなった静かな街であっても
変わらず依頼人は訪れ、奇怪で不可思議な事件が舞い込んでくるらしい。
とはいえ離れた街からくる依頼人が増えたためか
必然的に出張が増えたそうで、本人はその点に関しては不服なようだ。
“忠実なる使徒”
Paloma Blanche Comme Neige -パロマ・ブランシュ・コム・ネージュ-
Chapter.1“来訪”から登場。
事件終息後もパロマの仕事は変わることはない。
普段と変わらず事務所でジョシュア・マリアンに仕えながら日々を過ごしている。
とはいえ、ほとんど人気の無くなった街での生活は不便極まるものではあるらしく
何度となくジョシュアに移転の打診をしているのだが
のらりくらりとかわされてしまい、未だ移転作業には移れずにいるようだ。
“水の鎖 / 告知天使”
Asche Zindell -アッシェ・ジンデル-
Chapter.1“来訪”から登場。
事件終息後はアシュレイ・ジンデルに連れられ、あちこちを旅行している。
彼の傍にいるという願いのみならず、妻となれたアッシェは、それ故に不安も大きい。
いつか、足元から幸せが根こそぎ崩れていくのではないか?
恐怖と疑念をひっそりと心の内に飼いながら、彼女は今日も微笑む。
煤と灰で描かれた子供たちの楽園では掴みとれなかったその手を、
今度は離さぬよう祈りと願いを秘めて。
“兄の身を案じる若き夫人”
Miranda Saxon -ミランダ・サクソン-
Chapter.1“来訪”から登場。
事件終息後、ジョシュア・マリアンにより報告を受けた彼女は
幼なじみエミリア・スタンスフィールドの末路と兄の仕打ちを知る。
猫へ姿を変えた人間、猫に化けていた怪物、ミランダの知る現実とは
大きくかけ離れた話――物語――であったが、彼女はそれを真摯に受け止めた。
そして見事依頼を成し遂げてくれた者たちを労わるとと共に
きっちりと報酬を彼らに支払い、自身の日常へと再び戻るのであった。
“セト神”
瀬戸 武巳 -セト タケミ-
Chapter.1“来訪”から登場。
事件終息後も変わらず街で骨董屋を営んでいる。
商品が多い上に、下手に動かすと危険な代物が犇めいているからだ、とは本人の弁。
店は繁盛しているとは言い難いが、シビル・トーマス・スタンスフィールドのように
“個人的な事情”から不可思議な品を求めて店を訪れる客は、今日も後を絶たない。
“先見の識”
Othinus Midgardsormr -オティヌス・ミドガルズオルム-
Chapter.1“来訪”から登場。
全てが終わった後、何事もなかったかのように日々を過ごす。
時折見せる憂いを帯びた瞳は、ここではないどこか遠くを見つめている。
オティヌスの目的は何であったのか。彼女はどのような結末を望んだのか。
それを知る者はおらず、また、オティヌス自身も語ろうとはしない。
彼女は今日も、誰にも見通せぬ遥か先の未来のために策略を巡らせる。
“狩り立てる恐怖”
Freke Sturluson -フレキ・ストゥルルソン-
Chapter.1“来訪”から登場。
全てが終息した後も、フレキは変わらずオティヌス・ミドガルズオルムの傍に仕えている。
主たる灰からの命令であることも大きいが、それを抜きにしても
彼自身、オティヌスには何かしらの情を抱いているようだ。
情の名を知ろうとはせず、フレキは今日もあちこち飛び回り、あるいは連れまわされる。
ひとえにオティヌスの笑顔の為に。それが彼の務めであり、喜びでもあるから。
“曇らぬ不変の忠誠心”
Chiquita -チェキータ-
Chapter.1“来訪”から登場。
Chapter.3“絶望”にて死亡。
Chapter.6“災厄”にて再登場。
書き換えられた世界で、チェキータはアナスタシア・ローリーが
生まれた時からずっと彼女に仕え続けている。
小さく幼い主に、時折、彼女の父であるエドワード・ミシェル・ローリーの面影を重ねながら
日々の成長を心中で一番喜んでいるのは、他ならぬチェキータであろう。
アナスタシアだけではなく、彼女にはまだまだ手のかかる妹分もいる。
チェキータは今日も、二人の少女の成長を陰ながら見守り続ける。
“世間知らずな娼婦”
Sara Spearing -サラ・スピアリング-
Chapter.1“来訪”から登場。
Chapter.6“災厄”にて死亡。
“パンドラの甕”
結城 朱三 -ユウキ アケミ-
Chapter.1“来訪”から登場。
書き換えられた世界で、朱三は紆余曲折を経つつも頼もしい協力者として、共にあの災厄の花を封じた。
彼との間に深く深く掘り下げられた溝は上書きによってなかったことになっている。
だが、
朱三は覚えてはいなくとも知っている。
結城猶心が二度に渡り殺害されたことも。……抹消された“彼ら”のことも。
“黒猫に憑かれた死刑囚”
Nathaniel MacLean -ナサニエル・マクレーン-
Chapter.1“来訪”から登場。
ナサニエルは事件終息後、消息を絶った。
警察は彼を“あの事件”により死んだものとみなし、秘密裡の捜索を全て中止。
日々、さまざまな事件が起こる中で、ナサニエルの存在は埋没していくこととなった。
ところで、多くの人間が死んだ静かな街で最近、猫専門のペットショップがオープンしたそうだ。
店主は少しばかり抜けているが心持ちの良い穏やかな青年であり、評判は良い。
彼の傍には、恥ずかしがり屋で背の高い、猫背の女性が静かに寄り添っているらしい。
“花嫁になれた黒猫”
Emilia Stansfield -エミリア・スタンスフィールド-
Chapter.1“来訪”から登場。
事件終息後、ナサニエル・マクレーンに憑いていた黒猫エミリアもまた、共に姿を消す。
黒猫は、あの血の雨からナサニエルを守り続けた。
片目を抉られようとも。殺されようとも。怯えられ罵られようとも。
見守ることしかできぬ安全な場所で心苦しく過ごすよりも、
どれほど辛くともナサニエルの傍にいられる幸福を、彼女は選んだ。
その、痛いほどに真っ直ぐで一途な想いの結末は――・・・・。
“土の鎖 / 讃岐造之媼”
中禅寺 右京 -チュウゼンジ ウキョウ-
Chapter.2“不穏”から登場。
事件終息後も変わらずあの場所で古書店“みやび”を営んでいる。
どんなことがあろうとも、結城夫妻に対する右京の態度は一貫して変わらない。
夫妻とその子供・朱音の成長を見守り続ける彼女の眼はとても優しく、穏やかだ。
その瞳の優しさは、どことなく、わが子を見守る母親のそれに似ている。
“災いと悲しみを招く者”
結城 猶心 -ユウキ ナオミ-
Chapter.2“不穏”から登場。
Chapter.3“絶望”にて死亡。
Chapter.6“災厄”にて再登場。
Chapter.6“災厄”にて再死亡後、蘇生。
書き換えられた世界においても、消えてしまった“彼ら”を記憶している数少ない人物。
封ぜられた“神”の影響か“視る力”が強まり、自身の過去などについても知ることとなる。
とはいえ、知ることはできても理解が追い付いておらず、本人もやや混乱しているようだ。
そして何よりも、“神”を封ぜられたことで胎児に影響は出ないか。
それが彼女の胸を占める大きな不安であるが、今はただ、祈ることしかできない。
“幼き無限の可能性”
結城 朱音 -ユウキ アカネ-
Chapter.2“不穏”から登場。
無垢な幼子は街を見舞った災害も、世界の危機も知ることはない。
父と母の腕に抱かれ、愛に包まれながら、朱音は今日も無邪気に笑っている。
幼い彼女が辿ることになる未来は、まだ、誰にもわからない。
幼子というものは誰しもが、無限の可能性を秘めているのだから。
“陽の鎖 / 偉大なる冒険家の父”
Mika Groaly / Edward Michael Raleigh -ミカ・グローリー / エドワード・ミシェル・ローリー-
Chapter.2“不穏”から登場。
事件終息後、結城夫妻の傍で変わらず無邪気に笑っているミカがそこにはいた。
過去を思い出すことは新たな生が終わるまで訪れることはなく、
新たな生の終わりが訪れることもない彼は、忘却の中で永遠に近い生涯を過ごすことになるだろう。
……彼の主が、見限らぬ限りは。
“獣の主”
Sibyl Thomas Stansfield -シビル・トーマス・スタンスフィールド-
Chapter.2“不穏”から登場。
Chapter.3“絶望”にて死亡。
“指輪の持ち主に従うもの”
Typhonian Beasts -テュフォンの獣-
Chapter.2“不穏”から登場。
Chapter.2“不穏”にて死亡。
Chapter.3“絶望”にて別個体が登場。
Chapter.6“災厄”にて死亡。
Chapter.6“災厄”にて別個体が登場。
指輪の所有権がアレックス・ウォーレンに移ったため、彼に忠実な獣となる。
今後は彼の呼び声に従い、彼の号令で牙を剥く忠獣としてあり続けるだろう。
アレックスが指輪の所有権を失う、その時まで。
“正体不明”
Creature -怪物-
Chapter.3“絶望”に登場。
ローリー家を突如急襲し、多数の使用人に死傷者を出し、
アナスタシア・ローリーの母、エリザベス・ローリーを殺害した怪物。
その正体は依然として不明であり、何故、ローリー家を急襲したのか……。
全ての謎が解き明かされる日が来るのかは、まだ誰にも分からない。
“陰の鎖 / 戦死者を選定する女”
Elizabeth Raleigh -エリザベス・ローリー-
Chapter.3“絶望”から登場。
全ての事件が終息した後、エインヘリャルを導くワルキューレの一人としてヴァルハラへと帰還。
主神・オーディンの主命が下るまでの間、エインヘリャルたちを持て成す務めへと戻った。
“全にして一、一にして全なる者”
Yog-Sothoth -ヨグ=ソトース-
Chapter.3“絶望”から登場。
突如として空に現れたその玉虫色の輝きは、
現れた時と同じように忽然と姿を消していた。
自らの意思で現れたのか、それとも何者かに呼びだされたのか。
それすらも、定かではない。
“火の鎖 / アリストテレスの心無き者”
Goyus Dalahiedo -ガユス・ダラハイド-
Chapter.4“儚望”から登場。
事件終息後、事務所へ帰宅したガユスを待っていたのは
相棒デビット・ヤング・ヘニングが作った大量の借金であった。
それだけならまだしも、挙句の果てには諸事情により事務所が爆破され、
再び宿無しに戻ったガユスはしばらくの間実家――もとい叔母セリーナ――の元へ
身を寄せることにしたようだ。
“セティの兄”
Kaamenwarthy -カーメンワーティ-
Chapter.5“静寂”から登場。
一時的に“借りたもの”を武巳に返したため、獣の姿に戻っていたが
事件終息後、再び武巳から“借りる”ことで人の姿に戻った。
その後も変わらず、弟に手を焼きつつ武巳の店で働いているようだ。
“神”
正体不明 -アンノウン-
Chapter.6“災厄”から登場。
ロリータ・ゴアと彼女に手引きされた者らにより、
アフォーゴモンの鎖を用いて結城猶心の内に封印される。
しかし、封印とは一時的なもの。
いつの日か、また、それは人々の前に姿を現すことだろう。
封ずる者あれば、破る者もまたいるのだから。
“七つの死に至る罪・嫉妬”
Lolita Gore -ロリータ・ゴア-
Chapter.7“終末”に登場。
現れた花――“神”――をアフォーゴモンの鎖により封印することに成功した
ロリータは、その後、再び普段通りの日常――研究へ没頭する日々――へ戻った。
しかし、何もかもが普段通りというわけではなく、その研究内容に変化があったようだ。
彼女は彼女の愛する盲目白痴への愛ゆえに、それに関わる全ての者を赦さない。
それは盲目白痴の妻たるあの“神”さえも、例外ではないのだ。
“金の鎖 / 灰より孵りし銀”
Fraxinus Excelsior -フラクシヌス・エクスケルシオル-
Chapter.7“終末”に登場。
事件終息後、その場を訪れた混沌の例に漏れず、シオルはいつの間にか姿を消していた。
喜ばしいことであるかはさておいて、風の噂によれば息災であるそうだ。
しかし、何故、彼はロリータ・ゴアに協力したのか。
その真意は不明なままである。
“合わせ鏡”
Lieve -リーヴェ-
Chapter.7“終末”に登場。
事件終息後、ジャックとアニタを連れて現在住み暮らしている街へ戻る。
呼び出しがかかった時、とうとう自分は死ぬのかと一瞬冷や汗を掻いたというのは本人の弁。
急に置き手紙もなく子供二人を連れだして出かけてしまった彼に、
“二人の双子の兄”は大変心配したようだ。
“木の鎖 / 幼い赤頭巾”
Anita -アニタ-
Chapter.7“終末”に登場。
事件終息後、ジャックと共にリーヴェに連れられて現在住み暮らしている街へ戻った。
無邪気な赤頭巾は、例え世界が危機に瀕している現場に居合わせようとも変わることはない。
最近は、アレックス・ウォーレンが連れ帰った“犬”という新しい遊び相手が出来たようだ。
“木の鎖 / 笛吹き少女”
Jack -ジャック-
Chapter.7“終末”に登場。
事件終息後、アニタと共にリーヴェに連れられて現在住み暮らしている街へ戻った。
無邪気な赤頭巾に振り回されつつも、何だかんだで幸せに日々を過ごしているようだ。
最近はアレックス・ウォーレンが連れ帰った“犬”とじゃれつく妹を見て
気が気ではない様子。苦労性――もとい苦労人の性か。
“街の住人達”
Extra -エキストラ-
レネが出逢った通行人――――Chapter.1“来訪”に登場
見張りを担当した警察――――Chpater.3“絶望”に登場
皆様、予備日含め実に1週間という長い時間に渡りお付き合いただき、ありがとうございました。
最初から最後まで山あり谷あり、KP・PLそしてPC共々苦難の連続でありましたが
無事にエンディングを迎えることができたのは、ひとえにPLの皆様、
そしてPCの皆様のおかげであることに変わりはありません。重ね重ねありがとうございます。
今回は女神の殺意が普段以上に割り増しになっていたようで、
1日1回ほどの頻度、かつ、狙い澄ましたかのようなタイミングでファンブルが発生し、
あれよあれよという間に坂道を転げ落ちて行く展開となりました。
序盤の楽しいやり取りは何処へやら、ドシリアスどころの騒ぎではなく……。
いつの間にやら黒猫もアラン・ポーも何処かへいってしまうどころか、
NPCのヘイトが凄まじいことになっていたり、世界規模の危機に瀕していたりと
チェス盤をひっくり返すどころか叩き割る勢いの連続でしたね……。
オノレ女神……。(ギリィ
そんな超展開とも合わせてSANチェックもあれよあれよと積み重なり
大変IaIaできる仕様へと様変わりしておりました。
とにもかくにも、繰り返しになりますが、
最後までお付き合いいただきました5人のPLの皆様、そして7人のPCの皆様には
改めて感謝を。本当に本当にありがとうございました。
また機会がございましたら、不出来なKPでございますが
懲りずにお付き合い頂けるととても幸せです!!
最後に。
最中さんへ。
お久しぶりに会え、また、一度はお会いしてみたいと思っていた頼道君と今回自卓にて
初めて顔を合わせることができ、とても嬉しかったです!!
最後はあのような展開になってしまいましたが……例え存在そのものが消えたとしても
彼が歩んだ道、言葉、存在はKPの胸に、脳裏に、しっかりと焼きつけさせていただきました。
後日談でも何かしらの形で彼に触れるような内容を書かせていただくかもしれません。
もしもまた何処かでお会いできましたら、懲りずにお付き合いただければ幸いです。
(それにしてもライスさん、相も変わらず苦労されていそうな……(後日談読了)
まほろさんへ。
冬虫夏草から続投のレネくん、および久々のアシュパパ参戦に胸が躍りました。
本編開始前に電撃結婚などという超展開からスタートした辺り、流石アシュパパだなとry
動物や事件を取り巻く出来事に胸を痛めたり、物思いにふけるレネくん。
嫁とハネムーンを楽しみつつ、一歩引いた位置で事件や他探索者を見守るアシュパパ。
親子PCでありましたが、本編中でのスタンスも実に対照的なのが印象に残っております。
今後も自卓でまたお会いする機会がございましたら、ぜひともよろしくお願いします。
とりあえずこのお二方には嫁ないし婿の存在は必須と言うことは学びました。(
テレッテさんへ。
冬虫夏草から続投のアナスタシアちゃん、および前回はNPCであったセバッさんという組み合わせ。
無茶ぶりロリ主人と振り回される執事が見られる……かと思いきや、
ダイスの女神に振り回され、シリアスという大海原に放り出される二人。
特にセバッさんは、主関係でかなり追いつめられていた感で本当に申し訳なく……。
新(というわけでもありませんが)従者チェキータはセバッさんの志を、
例え覚えていなくても引き継いでアナスタシアちゃんを見守っていってくれると思います。
アナスタシア・ローリーの冒険譚はまだまだ続くことを期待しております。
ヨシタローさんへ。
冬虫夏草から続投のおっちゃん。PLとしてもKPとしても何度となく巡り逢うと
不思議な感慨と共に愛着も湧いてくるもので……本当におっちゃん大好きです。
何だかだで本編中、一番女神にもてあそばれていたのはおっちゃんな気もします……。
今回は前回とは異なり、割とおっちゃんのSANもガツガツ減っていた感。
これを機にSANが減っていく喜びに目覚めてくださることを期待しry(蹴
本編外でのアッシェとの絡みもKPとしてとても楽しくRPさせていただきました。
また機会が合いましたら、よろしくしていただけると嬉しいです。
チャコさんへ。
現在CPでもお世話になっておりますが、PLとしてのチャコさんとお会いするのは
恐らく「Veritas vos liberabit」以来でしょうか……?
あの時も苦難やら何やらの連続でございましたが、
それに負けず劣らずの苦難および超展開の連続でしたね……。主に女神のせいで(
途中参入という形ではございましたが、最後までお付き合いただきまして本当にありがとうございます。
ジャックくんの眩しい笑顔()が暫くは焼き付いて離れそうにもありません。
また自卓でお会いすることがございましたら、その時もどうぞ、よろしくお願いいたします。
“事務所の眠れる所長”
Joshua Marian -ジョシュア・マリアン-
Chapter.1“来訪”から登場。
事件終息後も変わらず同じ場所に事務所を置いている。
何度かパロマから事務所移転の打診を受けているようだが
今の街も静かでなかなか乙なものだと考えているらしく、首を縦に振らない。
幽霊所員のおかげか、人気がほとんどなくなった静かな街であっても
変わらず依頼人は訪れ、奇怪で不可思議な事件が舞い込んでくるらしい。
とはいえ離れた街からくる依頼人が増えたためか
必然的に出張が増えたそうで、本人はその点に関しては不服なようだ。
“忠実なる使徒”
Paloma Blanche Comme Neige -パロマ・ブランシュ・コム・ネージュ-
Chapter.1“来訪”から登場。
事件終息後もパロマの仕事は変わることはない。
普段と変わらず事務所でジョシュア・マリアンに仕えながら日々を過ごしている。
とはいえ、ほとんど人気の無くなった街での生活は不便極まるものではあるらしく
何度となくジョシュアに移転の打診をしているのだが
のらりくらりとかわされてしまい、未だ移転作業には移れずにいるようだ。
“水の鎖 / 告知天使”
Asche Zindell -アッシェ・ジンデル-
Chapter.1“来訪”から登場。
事件終息後はアシュレイ・ジンデルに連れられ、あちこちを旅行している。
彼の傍にいるという願いのみならず、妻となれたアッシェは、それ故に不安も大きい。
いつか、足元から幸せが根こそぎ崩れていくのではないか?
恐怖と疑念をひっそりと心の内に飼いながら、彼女は今日も微笑む。
煤と灰で描かれた子供たちの楽園では掴みとれなかったその手を、
今度は離さぬよう祈りと願いを秘めて。
“兄の身を案じる若き夫人”
Miranda Saxon -ミランダ・サクソン-
Chapter.1“来訪”から登場。
事件終息後、ジョシュア・マリアンにより報告を受けた彼女は
幼なじみエミリア・スタンスフィールドの末路と兄の仕打ちを知る。
猫へ姿を変えた人間、猫に化けていた怪物、ミランダの知る現実とは
大きくかけ離れた話――物語――であったが、彼女はそれを真摯に受け止めた。
そして見事依頼を成し遂げてくれた者たちを労わるとと共に
きっちりと報酬を彼らに支払い、自身の日常へと再び戻るのであった。
“セト神”
瀬戸 武巳 -セト タケミ-
Chapter.1“来訪”から登場。
事件終息後も変わらず街で骨董屋を営んでいる。
商品が多い上に、下手に動かすと危険な代物が犇めいているからだ、とは本人の弁。
店は繁盛しているとは言い難いが、シビル・トーマス・スタンスフィールドのように
“個人的な事情”から不可思議な品を求めて店を訪れる客は、今日も後を絶たない。
“先見の識”
Othinus Midgardsormr -オティヌス・ミドガルズオルム-
Chapter.1“来訪”から登場。
全てが終わった後、何事もなかったかのように日々を過ごす。
時折見せる憂いを帯びた瞳は、ここではないどこか遠くを見つめている。
オティヌスの目的は何であったのか。彼女はどのような結末を望んだのか。
それを知る者はおらず、また、オティヌス自身も語ろうとはしない。
彼女は今日も、誰にも見通せぬ遥か先の未来のために策略を巡らせる。
“狩り立てる恐怖”
Freke Sturluson -フレキ・ストゥルルソン-
Chapter.1“来訪”から登場。
全てが終息した後も、フレキは変わらずオティヌス・ミドガルズオルムの傍に仕えている。
主たる灰からの命令であることも大きいが、それを抜きにしても
彼自身、オティヌスには何かしらの情を抱いているようだ。
情の名を知ろうとはせず、フレキは今日もあちこち飛び回り、あるいは連れまわされる。
ひとえにオティヌスの笑顔の為に。それが彼の務めであり、喜びでもあるから。
“曇らぬ不変の忠誠心”
Chiquita -チェキータ-
Chapter.1“来訪”から登場。
Chapter.3“絶望”にて死亡。
Chapter.6“災厄”にて再登場。
書き換えられた世界で、チェキータはアナスタシア・ローリーが
生まれた時からずっと彼女に仕え続けている。
小さく幼い主に、時折、彼女の父であるエドワード・ミシェル・ローリーの面影を重ねながら
日々の成長を心中で一番喜んでいるのは、他ならぬチェキータであろう。
アナスタシアだけではなく、彼女にはまだまだ手のかかる妹分もいる。
チェキータは今日も、二人の少女の成長を陰ながら見守り続ける。
“世間知らずな娼婦”
Sara Spearing -サラ・スピアリング-
Chapter.1“来訪”から登場。
Chapter.6“災厄”にて死亡。
“パンドラの甕”
結城 朱三 -ユウキ アケミ-
Chapter.1“来訪”から登場。
書き換えられた世界で、朱三は紆余曲折を経つつも頼もしい協力者として、共にあの災厄の花を封じた。
彼との間に深く深く掘り下げられた溝は上書きによってなかったことになっている。
だが、
朱三は覚えてはいなくとも知っている。
結城猶心が二度に渡り殺害されたことも。……抹消された“彼ら”のことも。
“黒猫に憑かれた死刑囚”
Nathaniel MacLean -ナサニエル・マクレーン-
Chapter.1“来訪”から登場。
ナサニエルは事件終息後、消息を絶った。
警察は彼を“あの事件”により死んだものとみなし、秘密裡の捜索を全て中止。
日々、さまざまな事件が起こる中で、ナサニエルの存在は埋没していくこととなった。
ところで、多くの人間が死んだ静かな街で最近、猫専門のペットショップがオープンしたそうだ。
店主は少しばかり抜けているが心持ちの良い穏やかな青年であり、評判は良い。
彼の傍には、恥ずかしがり屋で背の高い、猫背の女性が静かに寄り添っているらしい。
“花嫁になれた黒猫”
Emilia Stansfield -エミリア・スタンスフィールド-
Chapter.1“来訪”から登場。
事件終息後、ナサニエル・マクレーンに憑いていた黒猫エミリアもまた、共に姿を消す。
黒猫は、あの血の雨からナサニエルを守り続けた。
片目を抉られようとも。殺されようとも。怯えられ罵られようとも。
見守ることしかできぬ安全な場所で心苦しく過ごすよりも、
どれほど辛くともナサニエルの傍にいられる幸福を、彼女は選んだ。
その、痛いほどに真っ直ぐで一途な想いの結末は――・・・・。
“土の鎖 / 讃岐造之媼”
中禅寺 右京 -チュウゼンジ ウキョウ-
Chapter.2“不穏”から登場。
事件終息後も変わらずあの場所で古書店“みやび”を営んでいる。
どんなことがあろうとも、結城夫妻に対する右京の態度は一貫して変わらない。
夫妻とその子供・朱音の成長を見守り続ける彼女の眼はとても優しく、穏やかだ。
その瞳の優しさは、どことなく、わが子を見守る母親のそれに似ている。
“災いと悲しみを招く者”
結城 猶心 -ユウキ ナオミ-
Chapter.2“不穏”から登場。
Chapter.3“絶望”にて死亡。
Chapter.6“災厄”にて再登場。
Chapter.6“災厄”にて再死亡後、蘇生。
書き換えられた世界においても、消えてしまった“彼ら”を記憶している数少ない人物。
封ぜられた“神”の影響か“視る力”が強まり、自身の過去などについても知ることとなる。
とはいえ、知ることはできても理解が追い付いておらず、本人もやや混乱しているようだ。
そして何よりも、“神”を封ぜられたことで胎児に影響は出ないか。
それが彼女の胸を占める大きな不安であるが、今はただ、祈ることしかできない。
“幼き無限の可能性”
結城 朱音 -ユウキ アカネ-
Chapter.2“不穏”から登場。
無垢な幼子は街を見舞った災害も、世界の危機も知ることはない。
父と母の腕に抱かれ、愛に包まれながら、朱音は今日も無邪気に笑っている。
幼い彼女が辿ることになる未来は、まだ、誰にもわからない。
幼子というものは誰しもが、無限の可能性を秘めているのだから。
“陽の鎖 / 偉大なる冒険家の父”
Mika Groaly / Edward Michael Raleigh -ミカ・グローリー / エドワード・ミシェル・ローリー-
Chapter.2“不穏”から登場。
事件終息後、結城夫妻の傍で変わらず無邪気に笑っているミカがそこにはいた。
過去を思い出すことは新たな生が終わるまで訪れることはなく、
新たな生の終わりが訪れることもない彼は、忘却の中で永遠に近い生涯を過ごすことになるだろう。
……彼の主が、見限らぬ限りは。
“獣の主”
Sibyl Thomas Stansfield -シビル・トーマス・スタンスフィールド-
Chapter.2“不穏”から登場。
Chapter.3“絶望”にて死亡。
“指輪の持ち主に従うもの”
Typhonian Beasts -テュフォンの獣-
Chapter.2“不穏”から登場。
Chapter.2“不穏”にて死亡。
Chapter.3“絶望”にて別個体が登場。
Chapter.6“災厄”にて死亡。
Chapter.6“災厄”にて別個体が登場。
指輪の所有権がアレックス・ウォーレンに移ったため、彼に忠実な獣となる。
今後は彼の呼び声に従い、彼の号令で牙を剥く忠獣としてあり続けるだろう。
アレックスが指輪の所有権を失う、その時まで。
“正体不明”
Creature -怪物-
Chapter.3“絶望”に登場。
ローリー家を突如急襲し、多数の使用人に死傷者を出し、
アナスタシア・ローリーの母、エリザベス・ローリーを殺害した怪物。
その正体は依然として不明であり、何故、ローリー家を急襲したのか……。
全ての謎が解き明かされる日が来るのかは、まだ誰にも分からない。
“陰の鎖 / 戦死者を選定する女”
Elizabeth Raleigh -エリザベス・ローリー-
Chapter.3“絶望”から登場。
全ての事件が終息した後、エインヘリャルを導くワルキューレの一人としてヴァルハラへと帰還。
主神・オーディンの主命が下るまでの間、エインヘリャルたちを持て成す務めへと戻った。
“全にして一、一にして全なる者”
Yog-Sothoth -ヨグ=ソトース-
Chapter.3“絶望”から登場。
突如として空に現れたその玉虫色の輝きは、
現れた時と同じように忽然と姿を消していた。
自らの意思で現れたのか、それとも何者かに呼びだされたのか。
それすらも、定かではない。
“火の鎖 / アリストテレスの心無き者”
Goyus Dalahiedo -ガユス・ダラハイド-
Chapter.4“儚望”から登場。
事件終息後、事務所へ帰宅したガユスを待っていたのは
相棒デビット・ヤング・ヘニングが作った大量の借金であった。
それだけならまだしも、挙句の果てには諸事情により事務所が爆破され、
再び宿無しに戻ったガユスはしばらくの間実家――もとい叔母セリーナ――の元へ
身を寄せることにしたようだ。
“セティの兄”
Kaamenwarthy -カーメンワーティ-
Chapter.5“静寂”から登場。
一時的に“借りたもの”を武巳に返したため、獣の姿に戻っていたが
事件終息後、再び武巳から“借りる”ことで人の姿に戻った。
その後も変わらず、弟に手を焼きつつ武巳の店で働いているようだ。
“神”
正体不明 -アンノウン-
Chapter.6“災厄”から登場。
ロリータ・ゴアと彼女に手引きされた者らにより、
アフォーゴモンの鎖を用いて結城猶心の内に封印される。
しかし、封印とは一時的なもの。
いつの日か、また、それは人々の前に姿を現すことだろう。
封ずる者あれば、破る者もまたいるのだから。
“七つの死に至る罪・嫉妬”
Lolita Gore -ロリータ・ゴア-
Chapter.7“終末”に登場。
現れた花――“神”――をアフォーゴモンの鎖により封印することに成功した
ロリータは、その後、再び普段通りの日常――研究へ没頭する日々――へ戻った。
しかし、何もかもが普段通りというわけではなく、その研究内容に変化があったようだ。
彼女は彼女の愛する盲目白痴への愛ゆえに、それに関わる全ての者を赦さない。
それは盲目白痴の妻たるあの“神”さえも、例外ではないのだ。
“金の鎖 / 灰より孵りし銀”
Fraxinus Excelsior -フラクシヌス・エクスケルシオル-
Chapter.7“終末”に登場。
事件終息後、その場を訪れた混沌の例に漏れず、シオルはいつの間にか姿を消していた。
喜ばしいことであるかはさておいて、風の噂によれば息災であるそうだ。
しかし、何故、彼はロリータ・ゴアに協力したのか。
その真意は不明なままである。
“合わせ鏡”
Lieve -リーヴェ-
Chapter.7“終末”に登場。
事件終息後、ジャックとアニタを連れて現在住み暮らしている街へ戻る。
呼び出しがかかった時、とうとう自分は死ぬのかと一瞬冷や汗を掻いたというのは本人の弁。
急に置き手紙もなく子供二人を連れだして出かけてしまった彼に、
“二人の双子の兄”は大変心配したようだ。
“木の鎖 / 幼い赤頭巾”
Anita -アニタ-
Chapter.7“終末”に登場。
事件終息後、ジャックと共にリーヴェに連れられて現在住み暮らしている街へ戻った。
無邪気な赤頭巾は、例え世界が危機に瀕している現場に居合わせようとも変わることはない。
最近は、アレックス・ウォーレンが連れ帰った“犬”という新しい遊び相手が出来たようだ。
“木の鎖 / 笛吹き少女”
Jack -ジャック-
Chapter.7“終末”に登場。
事件終息後、アニタと共にリーヴェに連れられて現在住み暮らしている街へ戻った。
無邪気な赤頭巾に振り回されつつも、何だかんだで幸せに日々を過ごしているようだ。
最近はアレックス・ウォーレンが連れ帰った“犬”とじゃれつく妹を見て
気が気ではない様子。苦労性――もとい苦労人の性か。
“街の住人達”
Extra -エキストラ-
レネが出逢った通行人――――Chapter.1“来訪”に登場
見張りを担当した警察――――Chpater.3“絶望”に登場
◆実績のロックが解除されました◆
黒猫:エンドロールをスキップせずに最後まで見る。
皆様、予備日含め実に1週間という長い時間に渡りお付き合いただき、ありがとうございました。
最初から最後まで山あり谷あり、KP・PLそしてPC共々苦難の連続でありましたが
無事にエンディングを迎えることができたのは、ひとえにPLの皆様、
そしてPCの皆様のおかげであることに変わりはありません。重ね重ねありがとうございます。
今回は女神の殺意が普段以上に割り増しになっていたようで、
1日1回ほどの頻度、かつ、狙い澄ましたかのようなタイミングでファンブルが発生し、
あれよあれよという間に坂道を転げ落ちて行く展開となりました。
序盤の楽しいやり取りは何処へやら、ドシリアスどころの騒ぎではなく……。
いつの間にやら黒猫もアラン・ポーも何処かへいってしまうどころか、
NPCのヘイトが凄まじいことになっていたり、世界規模の危機に瀕していたりと
チェス盤をひっくり返すどころか叩き割る勢いの連続でしたね……。
オノレ女神……。(ギリィ
そんな超展開とも合わせてSANチェックもあれよあれよと積み重なり
大変IaIaできる仕様へと様変わりしておりました。
とにもかくにも、繰り返しになりますが、
最後までお付き合いいただきました5人のPLの皆様、そして7人のPCの皆様には
改めて感謝を。本当に本当にありがとうございました。
また機会がございましたら、不出来なKPでございますが
懲りずにお付き合い頂けるととても幸せです!!
最後に。
最中さんへ。
お久しぶりに会え、また、一度はお会いしてみたいと思っていた頼道君と今回自卓にて
初めて顔を合わせることができ、とても嬉しかったです!!
最後はあのような展開になってしまいましたが……例え存在そのものが消えたとしても
彼が歩んだ道、言葉、存在はKPの胸に、脳裏に、しっかりと焼きつけさせていただきました。
後日談でも何かしらの形で彼に触れるような内容を書かせていただくかもしれません。
もしもまた何処かでお会いできましたら、懲りずにお付き合いただければ幸いです。
(それにしてもライスさん、相も変わらず苦労されていそうな……(後日談読了)
まほろさんへ。
冬虫夏草から続投のレネくん、および久々のアシュパパ参戦に胸が躍りました。
本編開始前に電撃結婚などという超展開からスタートした辺り、流石アシュパパだなとry
動物や事件を取り巻く出来事に胸を痛めたり、物思いにふけるレネくん。
嫁とハネムーンを楽しみつつ、一歩引いた位置で事件や他探索者を見守るアシュパパ。
親子PCでありましたが、本編中でのスタンスも実に対照的なのが印象に残っております。
今後も自卓でまたお会いする機会がございましたら、ぜひともよろしくお願いします。
とりあえずこのお二方には嫁ないし婿の存在は必須と言うことは学びました。(
テレッテさんへ。
冬虫夏草から続投のアナスタシアちゃん、および前回はNPCであったセバッさんという組み合わせ。
無茶ぶりロリ主人と振り回される執事が見られる……かと思いきや、
ダイスの女神に振り回され、シリアスという大海原に放り出される二人。
特にセバッさんは、主関係でかなり追いつめられていた感で本当に申し訳なく……。
新(というわけでもありませんが)従者チェキータはセバッさんの志を、
例え覚えていなくても引き継いでアナスタシアちゃんを見守っていってくれると思います。
アナスタシア・ローリーの冒険譚はまだまだ続くことを期待しております。
ヨシタローさんへ。
冬虫夏草から続投のおっちゃん。PLとしてもKPとしても何度となく巡り逢うと
不思議な感慨と共に愛着も湧いてくるもので……本当におっちゃん大好きです。
何だかだで本編中、一番女神にもてあそばれていたのはおっちゃんな気もします……。
今回は前回とは異なり、割とおっちゃんのSANもガツガツ減っていた感。
これを機にSANが減っていく喜びに目覚めてくださることを期待しry(蹴
本編外でのアッシェとの絡みもKPとしてとても楽しくRPさせていただきました。
また機会が合いましたら、よろしくしていただけると嬉しいです。
チャコさんへ。
現在CPでもお世話になっておりますが、PLとしてのチャコさんとお会いするのは
恐らく「Veritas vos liberabit」以来でしょうか……?
あの時も苦難やら何やらの連続でございましたが、
それに負けず劣らずの苦難および超展開の連続でしたね……。主に女神のせいで(
途中参入という形ではございましたが、最後までお付き合いただきまして本当にありがとうございます。
ジャックくんの眩しい笑顔()が暫くは焼き付いて離れそうにもありません。
また自卓でお会いすることがございましたら、その時もどうぞ、よろしくお願いいたします。
もしも彼らがあの事件の最中、死んでしまっていたら。自分は果たして、どうしていただろうか? ジョシュア・マリアンは自問自答する。
答えは決まっていた。
自分はそれでも何もしなかっただろう。何故かと問われれば、こう返そう。
“だって僕には何もできないから”。
介入するのは簡単だ。自分の意思ひとつでそれはどうとでもなるのだから。しかし介入したとして。その先に待ち受ける結末を、果たしてジョシュアが変えられただろうか? 望むような結末を得られただろうか? そう考えたとき、ジョシュアは首を横に振らざるを得ない。自分にはそんなことはできない。そんな力はない。
ジョシュアは俗にいう宿命論者であった。
人の運命は、生まれてから死に至るまで、その思考、行動、結果すべてはあらかじめ決められているものだと考えていた。実際そうであることも、知っていた。だからこそ余計に、彼の考えとその事実とが合わさって、それは彼に“自ら動く”という行為をひどく億劫なものと認識させていた。
どうせ変えられぬ結末を変えるための無駄な努力をして、なにになるというのか。そういうのは、他人に任せておけばいいのだ。
だが同時にそれを咎める自分もいる。
本当に自分には何もできないのか? 何か出来たことがあったのではないか? 答えはとうの昔に出ている。出ているはずなのに、その思いは後から後から、こんこんと泉から湧き出る水のようにあふれる。人はそれを、罪悪感と名付けた。
何も知らなければ幸せに生きていられたかもしれないのに。
時として、人は無知を罪だという。
また時として、人は無知を純粋さの表れであるという。
果たしてどちらが真実であるのか、ジョシュアには分からない。無知であること、いないこと、どちらが良いことなのかも分からない。前者のような気もするし、後者のような気もする。両方のような気もするし、どちらでもないような気がする。ただ、分かることがあるとするならば……。
「人とはどこまでも利己的だ。そう思わない? パロマ」
「唐突ですね」「如何なさいましたか」「「我が主」」
主の問いに、パロマは普段通りの笑みを浮かべたまま、小首をかしげる。言葉の意味を掴みあぐねている顔。ジョシュアは続けた。
「果たしてあの――そうだね、わかりやすく形容しようか――【あの花】は本当に災厄であったのだろうか?」
忠実な白き従者は途端に口をつぐむ。彼(あるいは彼女、またはそのどちらでもない)は知っている。【あの花】は災厄の花などではないことを。
【あの花】に罪はない。生まれながらにして無原罪たるそれに罪などあろう筈もない。
穢れを知らぬ無垢なる宇宙。名状し難くも恐るべき宇宙の原罪そのものたる、彼の盲目白痴と対なるものにして妻。宇宙の原罪そのものの対たるそれが、宇宙の無原罪そのものであることは疑いようもない純然たる真理だ。
では、
【あの花】の罪を決めたのは誰か?
【あの花】を災厄と“決めつけた”のは誰か?
それこそ、【人間という生き物 -ヒト-】に他ならない。
「人とはどこまでも利己的な生き物だ」
繰り返し、ジョシュアは呟く。
「そのものの本質なんて関係ない。“それ”が自分たちにとって良いものか、悪いものか。それが全てだ」
目を閉ざし、目蓋の裏側の昏い闇へ目を向ける。
変わる変わる流れて行く、過去の懐かしき景色。手を伸ばせば届きそうなのに、それは所詮、目蓋の裏に描かれた幻でしかない。
「お休みになられるのですか」
「うん、ちょっとね」
目を閉じたジョシュアを見て、パロマが尋ねる。傍から見れば今のジョシュアは確かに、寝ようとしている人間にも見えるかもしれない。
本当はそんなつもりはなかったのだけれど。パロマの言葉に、それもいいかもしれないと思った。言われてみれば、ほんの少し、眠たい気がする。
「ゆっくりお休みください」
「うん、おやすみ」
昏い闇からも目をそむけ、ジョシュアはまどろみの中に沈みゆく。
そっと、柔らかな毛布がかけられる。暖かい。もぞもぞと、身を縮こまらせて、ジョシュアはソファに毛布に包まり、ソファに埋もれる。
そうしてとても懐かしい夢を見た。
◆実績のロックが解除されました◆
冤罪:アフォーゴモンの鎖による封印に成功する。
「あっ……」
ふとした瞬間の、気の緩みだった。
さっくりと、包丁が左手人差し指の先を切断した。それはやわらかい粘土にナイフを入れるかのような感触がした。けれども実際に切断されたそれは、粘土とは少し違う。どちらかというと、砂糖菓子や石、宝石の切断面に似ていて、真っ平らだ。
きらきらふわり、切断面から淡い光の粒子が立ち上る。痛みはない。ぼんやりと立ち上る粒子を眺めながら、物思いに耽る。
ここ1、2週間の間で、実に様々なことがあった。始まりは何だっただろうか。特別なことは何もしていなかった筈なのだけれども。
気が付いたら、大好きな人の奥さんになれた。隣にいることを許され、共にあることを許され、一緒にいてほしいと願われ。それはとても幸せで、素敵なこと。
――――こんなに幸せで、いいんだろうか?
時折、あの日々を過ごした自分に尋ねてみる。幼い自分は、その度にほんの少しばかり悲しそうな顔をして、首を横に振る。それを見て、そうですよね、と納得する自分。そしてその度に早く離れなくては、離れなくては、という焦燥感に似た思いに駆り立てられる。
思うだけで、行動に移せた試しはない。
動かなかったわけではない。動こうと思う度、このままいなくなろうと思う度、全てを見透かすような瞳がこちらに向けられた。そうして決まって、形の良い唇が「お出かけかな?」と極めて優しい色を伴ってその言葉を発する。そうすると、足の先から体が凍り付いて、動けなくなっていくような錯覚を覚える。うまく言葉を返すことができず、言葉を探して黙りこくっているうちに「それじゃあ一緒に行こうか」当然のように紡がれる言葉。それに、首を縦に振ることしかできない。
今日もまた、その隣からどこかへ羽ばたくことも叶わずにいる。
隣にいたいと願う心と、ここにいてはいけないと思う頭。
そして何より――このままここにいてはいけません、アッシェ――頭の中で時折響く、鋭さと優しさを伴った警告の声。それは男のようにも女のようにも聞こえ、老人のようにも子供のようにも聞こえる。幼い頃――具体的には9歳の頃――から聞こえ続けて来た天使の声。告知天使の警告。従った方がいいのは、長くはないが短くもない30余年で十二分に学んできた。
今もそれは、絶えず聞こえている。
「…………」
包丁を脇に置いて、切り落とされた指先を摘み上げる。左手の上に自分が乗せられるだなんて、きっと人差し指は考えてもみなかっただろう。しげしげと、なんとはなしに指を観察してみる。
切断面はつるりとしており、天井からの光を反射し、滑らかな断面特有の光沢を放っていた。切り離された指自体は硬化しており、先ほどまでの肉特有の柔らかさはすでに欠片もない。ところどころ、断面の淵のあたりなどからぱきりと細いひび割れが走っている様など、まさしく乾いた粘土と形容するのがふさわしい。
右手で指をつまみあげ、断面同士をくっつけてみる。
「……くっつかないなあ」
切り離されたそれは、切り離された時点でアッシェの身体とは別の何かに早変わりしてしまったかのようであった。そもそも人間の指は切断されたら縫合でもしない限りつくわけもない。そんなことは分かり切っていたのだが、人間ではない自分ならばそんな常識を覆せやしないだろうかと淡い期待をしていたのも事実であった。切れた指が、通常のそれとはまったく異質のものであったことにも起因する。
人間の指は切れたら骨と肉と脂肪が覗き、ぽたぽたと生温かな血潮が零れ、焼けるような激しい痛みを神経が訴えてくるものなのだ。
アッシェの指はどうだろう? 痛みはなく、血もなく、切断面は白くてつるりと滑らか。到底人間とは思えないし、自分が人間とは何か違う生き物になりつつあることを、アッシェ自身も自覚していた。
「……くっつけなくちゃ」
自然と口をついて出た言葉。
そう、くっつけないと。あの人に見られたら――――見られたら? 見られたら、そう、心配をかけてしまう。……けれども、それだけだろうか…?
頭の警告が、より強く響いた気がした。何となく、頭が酷く痛む気がする。
ふらふらと指を片手に、とりあえず手当て道具を求めてキッチンからリビングへ移動。
瞳 が 合 っ た 。
「アッシェ、」
声がぱたりと止んだ。
そしてそれっきり。もう二度と聞こえることはなかった。
◆実績のロックが解除されました◆
すいそう:Gabrielの聲が聞こえなくなる。
漸く変な邪魔も横やりも入らず、ゆっくり暮らしていけるのかと思った矢先の出来事だった。此処まで来るといっそ、そういう星の元に生まれてしまったのだと思った方が、諦めがつくくらいだと、朱三は溜息をつく。
居候先の古書店“みやび”。店主の右京は前と変わらず朱三やナオミと接してくれている。ありがたい話ではあるが、同時に、彼女に対してささやかな申し訳なさを感じてもいた。
今回のことで、朱三は店主にかなり迷惑をかけていた。畳も一枚ダメにしてしまった。気にしなくていいと右京は言っていたが、この時代、しかもこの国で替えの畳を仕入れるのはなかなか――いや、かなり――骨が折れることだろう。畳については、あとで自身の伝手でも使って仕入れるつもりだった。(俺の懐から金が抜けるわけじゃないし、安い物安い物。)
そちらの問題については何とかなるとして……。もう一つの問題はナオミにあった。
ここ最近――正確にはあの一連の事件が終息して以来――ナオミはずっと、うなされていた。眠ろうと床について暫くすると、腕の中から聞こえてくる苦しげな声。視線をそれとなく下ろせば、ナオミが自分の二の腕を掴み、自分で自分を抱きしめるようにして、苦しげに貌をゆがませ、うなされている。
起こしていいのか、どうか。逡巡の後、そっと抱き寄せて背を叩いてやる。子供をあやすように。そうすると、多少なりともその苦しげな声や表情は緩和されているような気がした。単なる願望を現実に反映して、そう見えているだけなのかもしれない。
何か悪い夢でも見ているのだろうかと、翌朝、ナオミに尋ねてみたこともあったが当人はけろりとしており、不思議そうな顔で朱三を見てくるのみだった。つまり、覚えていない。こうなってしまうとそれ以上追及するのも忍びない。それに、うなされている事実を伝えれば、ナオミに性格上、考え込んだ挙げ句、変な方向へ思考が飛びかねないことも考慮して、朱三は口をつぐむしかない。
「……ほんっと、どうしたものかなぁ〜?」
「何がです?」
不意に背後から聞こえた聴きなれた――愛しい――声に、心臓がどきりと跳ね上がる。
「ナオミちゃんが可愛すぎて日々が幸せなんだけど辛いなぁ〜って?」
「そう、そのまま幸せの海で溺死すればいいと思うよ」
反射的に違う言葉を返す。今考えていたことではないにせよ、事実であることに違いないそれは、口から淀みなく紡ぎだされた。
深く追求するでもなく、ナオミは一つ頷いて納得したような顔で言葉を返してくれる。もしかしたら気がつかれているのかもしれないが、ナオミは不必要に追及してこようとする性格ではない。仮に気がついていたのだとしても、今の時点でこれ以上、尋ねられることはないだろう。
「はぁい、そうしますねぇ?」
そっと腕を引いて抱き寄せて、閉じ込める。顔を覗きこめば、やれやれ、とでも言いたげなナオミと視線がかち合った。
「好きですね」
「好きですよぉ? ナオミちゃんが」
「……そういうことをしれっと言えるところが…」
大分慣れてしまったように思えても、こういう言葉にはまだ弱いらしい。俯いて落ちつかなさそうに前髪を弄るその仕草は非常に初々しいものがある。
経験豊富な割に、そういう方面でナオミは非常に初心であった。知識や経験の面は培われていても、冷めきった関係であったためか、心に響くものがなかったせいでそういう方面での成長は促されなかったためだろう。その辺はナオミを取り巻いていた冷めた人間関係に感謝してもいいくらいだ。(赦しはしないが。)
「そ、それよりもっ」
上ずった声でナオミが顔をあげる。その頬は、ほんのりと林檎色に色づいている。そういえば、頬が赤く染まって見えるのは、皮膚の内部の拡張した血管が透けて見えている状態だからなのだという。つまり今その皮膚の下の血液は……
「……じゅる」
どうにもこのところ、酷く渇いて仕方がない。以前よりは食事の頻度を増やしている筈なのだが……飢えは感じずとも、酷い渇きを覚える。まだ足りない、まだ足りない、と自分の中の何かが訴える。こんなものじゃ足りない、あの時はあんなにたくさん食べられたのに――――
「……みさん、朱三さん、聴いてます?」
「はっ……すみませぇん、聴いてませんでしたぁ」
「…聴けよ」
ジト目で睨まれる。謝罪代わりにキスを送ってみたが「誤魔化されませんからね」とつれない言葉が返ってきた。
「えーっとぉ、それでぇ、何のお話でしたっけぇ?」
「……ですから、ちょっと刀の扱い方を教えてほしいんですってば」
「刀のぉ? そういうのは俺、専門外なんですけどぉ……急にどうしたんです〜?」
「…さる御方から頂いたんですけれど、俺、刀なんて使ったことなかったから」
「……誰からもらったんです?」
今更のように、ナオミが大切そうに抱えていた細長い袋に気がつく。
紫色の上等な布で作られている袋。金と銀で美しい金魚の刺繍が優雅に布の池を泳いでいる。袋の口の部分は折りたたまれており、その上から中身を縛るようにくるくると紐飾りが蝶々結びにされている。
「それは……言えませんけれど」
そっとナオミの白くすべらかな手がそれを撫でる。
その仕草が酷く愛おしげなものに見えて、酷く癇に障り、ぐい、と乱暴な所作で手首をひっつかむ。
「刀に嫉妬? それとも俺に刀をくださった方に嫉妬?」
「両方」
「困った人」
からから、とさして気にした風もなくナオミは笑い、そのまま朱三の頬を撫でる。
「大丈夫大丈夫、俺の大事な旦那様は朱三さんだけですから」
「知ってますよぉ?」
「知っててこれか、ますます困った」
「だってナオミちゃんは俺のものですしぃ。……で、念のために聞きますけどぉ、その刀は普通の刀なんですよねぇ?」
「……いうなれば、妖刀…?」
「持ってて大丈夫なのか、それ」
思わず真顔になる。妖刀と言えば、瀬戸とかいう碌でもない爺さんの碌でもない店の碌でもない品物が真っ先に思い出された。あれは酷かった。触れようとした途端、朱三は危うく喰われるところだったのだ。逆に脅し返してやった為に事なきを得たが。
「大丈夫です、彼はとても静かな方ですから」
「“彼”?」
「……目が怖いですよ、朱三さん。それについては後で、ゆっくりお話ししますから。扱えないなら扱い方を知っている人でも教えてくださいよ」
「……ナオミちゃんにそんな危ない物振ってほしくないなぁ…。それに、ナオミが戦わなくったって俺が守りますよぉ?」
「それでも、です。…今回の件で俺もちょっと色々反省したんですよ」
「……仕方ないですねぇ」
不承不承、朱三は頷く。こうなったナオミは梃子でも動かないくらいに頑固者であることは、重々承知していたからだ。そんな朱三に、ナオミはほんの少しばかり申し訳なさそうな顔をしながら「ありがとう」とその頭を撫でるのだった。
――――それでぇ、その刀、名前とかあるんですかぁ?
――――ありますよ。
――――へぇ、どんな?
――――この刀の名前は……
歩き作りあげた道はかき消され
前へ進むことすら叶わず
何処へも往けず、行けず、逝けぬ人
それなら、せめて
歩き続ける彼らを見守る“瞳”を
私は貴方に授けましょう
◆実績のロックが解除されました◆
妖刀 葛切頼道:譛郁ョ�蜻スから妖刀“葛切頼道”を授かる。
「ふう……」
これでまんべんなく朝ご飯は行き渡った筈だ、と青年は店内を見渡す。ある程度の広さと高さを持った硝子ケースの向こう側で、可愛らしい子猫達が餌を我先にと競って食べ合うほほえましい光景。すっかり成長しきった大人猫達の方は心得ている、とばかりに落ちついて自分自身に与えられた取り分を食べていた。
「ふふっ……」
目を細めてその光景を見ながら、青年は一度、店の奥へと引っ込む。
店から居住スペースへ移動すると、ベーコンの焼ける香ばしい匂いが鼻孔をくすぐった。淹れ立ての珈琲の匂いもする。ぐうぅ……と鳴く腹の虫に、自分も朝食がまだであったことを思い出すと同時に、恥ずかしさで頬に熱が集まる。腹をさすって俯いていると、ととと……、と静かな足音が聞こえてきた。
顔を上げると、エプロン姿の彼女が立っている。
黒く豊かな長く伸ばされた髪に、白い肌。前髪まで長く伸ばしているものだから、その瞳の色は見ただけでは分からないが、青年はその前髪の下にとてもきれいなサファイアが嵌めこまれていることを知っている。背はナサニエルよりも高い。常時猫背なものだから正確な背まではわからないが、しゃんと背筋を伸ばしたなら、今よりももっと高いであろうことは容易に想像がつく。
「ごめんね、待たせちゃったかな…?」
「!」
ほんの少し、申し訳なさそうにナサニエルが尋ねると、びくんっと過剰に肩を揺らし、女性はぶんぶんと首を横に振った。何処となく、水にぬれた猫が身震いする仕草に似ている。
「そっか。ご飯、できたばっかり?」
「……」
今度はこくこくと首が縦に何度も振られる。あんまり勢いよく振られるものだから、そのうち首がもげやしないかと心配になる。そんなことはないと思いたいが。
「わかった。いつもありがとう」
「…!」
ぴたりと首の動きが止まり、かあぁ、と頬が朱色に染まる。言葉なくとも表情の変化がめまぐるしくて、とても分かりやすい。そんな所も可愛らしいと思う。
「ふふふ。待たせちゃってごめんね。それじゃあ、一緒に食べよう?」
手を差し出す。
「! ……」
そろそろと、おっかなびっくり、差し出した手の上に重ねられる細く柔らかな手。きゅっと悪戯心混じりに握り返せば、ひときわ大きく肩が跳ねた。
「ほら、はやく。折角君が作ってくれたご飯が冷めちゃう」
笑んで、その手を優しく引く。引かれるままに女性はついてくる。
リビングダイニングまで続く長くもない廊下を歩きながら、今日はどんなメニューを出そうか、どんなお客様が来るだろうか、と話し合う。あっという間に廊下は終わり、席について朝食を突きながら、話の続き。女性は微笑んだまま、青年を見つめている。青年は出来たての朝食に舌鼓を打ちながら、あれやこれやと話しかける。
今日の朝食はガスハウス・エッグにフレッシュ・サルサ、それからベーコン。付け合わせに珈琲。それから色鮮やかで新鮮なフルーツ。すぐに全部平らげたら、テーブルに突っ伏してのんびりと開店時間まですごす。洗い物をする彼女の背中を眺めながら。
かちゃかちゃと食器がこすれ合う音に耳を傾けながら、その背中に声をかける。
「僕、いいのかな。こんなことしてて」
「……」
「偶に想うんだ。僕はね、本当はまだあの血の雨の中を彷徨っていて、今見ているのは疲れて倒れた僕が見ている夢で、目が覚めたらまた恐怖と絶望に打ちひしがれるんじゃないかって」
「…………」
「ねえ、これは本当に現実? それとも…夢なのかな。どう想う――エミリア」
洗い物を終えた彼女――エミリア――はエプロンで濡れた手を拭いながら、少し難しげに口を曲げて考え込む仕草を見せる。
それから少し考えて、何を思ったのだろうか。青年に近づくと、ぎゅむっ、と遠慮なしにその頬をつねる。
「いたたたっ、痛い、痛いよっ、エミリア!!」
「……」
その反応を見てにこっと笑い、頷いてエミリアが離れる。
「……もう…そういうのは無しだよ……ひどいなぁ」
目のふちに涙をにじませつつも、青年はどこか安堵したように小さく笑いながら頬をさすった。
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新規開店・Cat shop“BAST”:Emilia Stansfieldを祓わず、かつ、Nathaniel MacLeanを見逃す。
ティースプーンにジャムを一匙。桜色の唇がそれを食む。口内いっぱいに広がる甘やかな香りと味。今日のジャムも素晴らしい出来だった。
しかしながら、その素晴らしいジャムを作り上げた当の本人は出来栄えにちっとも満足できていません、と言いたげな不機嫌そうな顔で鼻を鳴らすのみだった。もっとも、彼女――名はロリータ・ゴアという――は、いつだって不機嫌そうな顔をしていた。不機嫌そうな顔に、半分閉じた目蓋は、睡眠不足のせいで不機嫌です、と言いたげにも見えるが彼女はそもそも睡眠不足というものとは無縁の生き物だった。故、その表情は睡眠不足からくるものではない。
「不機嫌ソウダネェ、ロリータ」
ロリータの隣に腰かけていた南瓜頭が、頬杖をついて彼女の横顔を眺めながらそう言った。
「あたくしは普段通りよ、ジャァック」
くだらない、と言いたげにロリータはまた一つ鼻を鳴らした。そうしてもう一匙、ジャムを掬って口に含むと、そのまま紅茶に口をつける。紅茶の風味とジャムの風味が織りなすハーモニー。きっとそこらの人間だったならば思わず顔を綻ばせたであろうそれも、ロリータの顔を綻ばせるまでには至らない。
「ホントニソウカナァ? 普段以上ニ不機嫌ニ思エルケドナァ」
「その心は?」
「キヒヒヒヒヒッ、ソレハダネェ……現在進行形デキミガ僕ノ足ヲ全力デ踏ミ躙ッテルカラダヨ!!」
スゴク痛インダケド!! と喚く南瓜頭もといジャックの声は悲壮感と苦痛に満ちている。しかし、そんな声とは相反して、南瓜に彫られた顔には変化があるはずもない。南瓜頭は声と正反対のにんまり笑顔を浮かべたままであった。
表情と声のミスマッチが、なんとも言えない笑いを誘う。傍から見ればまさしく、南瓜頭のピエロと言ったところか。
「あなたって本当に愉快だわ、ジャァック?」
眉一つ動かさず、ロリータは踵に無遠慮かつ無慈悲に力を込める。それだけであら不思議、南瓜からはとてつもなく情けない声が上がった。
「八ツ当タリハ本当ニ止シテオクレヨロリータァアアァ!?」
「でもちょっと耳障り」
ぱっ、と足がどけられる。ジャックは素早く足をあげると、ふーふー、と熱でも冷ますかのようなしぐさをして見せる。その南瓜頭の中身があるのか、それとも南瓜頭が息をしているのかは傍からはわかりかねるが、息が吹かれる度にテーブルクロスの裾がかすかに揺れているところを見る限り、単なるふり、というわけではないようだった。
そんなジャックを尻目に、ロリータは両肘をテーブルの上について手を組み、その上に顎を乗せる。物憂げに伏せられた目蓋は、平均よりも整った部類に入る彼女の容貌と相まって様になっていた。
「まあ、機嫌が悪いのは認めましょう」
「……最初カラソウ言エバイイノニ」
「何か言った?」
「イイエナンニモ!」
「あっそう」
表情こそ常と変らぬロリータであったが、実のところ、ジャックの指摘通り非常に不機嫌であった。不愉快、と表した方がより適当かもしれない。
「あなたといい、“あいつ”といい、あの爺といい……あたくしを不機嫌にさせる天才ばかりで喜ばしい限りなのだわ」
「アノ方ヲ“アイツ”呼バワリスル君ノ大胆不敵ナ態度ニ僕ハイツモ心臓ガバクバクシテイルヨ」
「貴方に心臓なんてあったのね」
「酷クナイ!? アルヨ!? 僕ハ別ニ畑カラ逃ゲテ来タワケジャナインダカラネ!!」
「あら、そうだったの?」
再び酷いだなんだと泣きわめき始めるジャックの足をヒールで踏み躙りながら、ああ実に不愉快だとロリータはぶすくれた。
そう、不愉快極まりない。
結局自分は良いように利用されたに過ぎないのだ。あの忌々しい北欧の主神によって。(もっとも、ロリータからしてみればかの主神とて爺――人間の延長線上に存在しているにすぎないのだが、それはさておいて。)
そもそもあの“男”は実に趣味が悪いと言える。狼に噛み砕かれた肉体の代わりを求めて宿ったのがハイイロと、そして実に実に認めたくはないが“あの御方”が気に入っている娘とは。その娘自体もなかなか面倒な呪いが掛けられているようだが、それはさておいて。
あらゆる意味において器とするには問題だらけのものを“敢えて”選び宿った理由がロリータには理解できなかった。あるいは始めからああではなかったのかもしれないが、現状維持で器を捨てない時点でどちらにせよ同じことなのだ。今の状況を甘んじて受け入れるのだとしても、やはりその思考は理解できない。理解できないからこそ、趣味が悪い、としか表現できない。あの男の考えることはいつだって理解不能だ。
だが今回の件について、あの主神が何を目的としていたかは分かっているつもりだ。
「そんなに林檎が欲しかったのね」
「ンー…? アア、オーディンカイ?」
「ええ、そうよ」
「ソウナンジャナイカナ? トハイエ……アノ林檎ハ手ヲ出シチャ駄目ナヤツダト思ウンダケドネェ」
「でしょうとも。けれどあの男が何かを恐れ遠慮するなんてことないんじゃないかしら。無粋な奴だもの」
再びの沈黙。
暫く間を空けてから、ジャックがゆっくりと、言葉を選ぶように口を開いた。
「デモ、結局君ハ――」
ロリータは初めて満面の笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、そうよ?」
女性とはつくづく恐ろしいものだと、ジャックは溜息をついた。
彼の目的すらも利用する為に利用“されてあげた”んだろう?
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最後に嘲笑うのは?:封印の為にLolita Goreの手を借りる。
チャプター1
チャプター1 -来訪- をクリア
チャプター2
チャプター2 -不穏- をクリア
チャプター3
チャプター3 -絶望- をクリア
チャプター4
チャプター4 -儚望- をクリア
チャプター5
チャプター5 -静寂- をクリア
チャプター6
チャプター6 -災厄- をクリア
チャプター7
チャプター7 -終末- をクリア
OVERWRITE
Secret End「閉鎖花」を観る
黒猫
エンドロールをスキップせずに最後まで見る
シャッタードメモリーズ
回想イベント:母親の死の真相を見る
繝ィ繧ー繝サ繧ス繝医�繧ケ
繝ィ繧ー繝サ繧ス繝医�繧ケの存在を感知する
思わぬ再会
PCが親密な関係にある故人と再会する
闇より出でし絶望
結城 朱三を激昂状態にする
ハレ時々血の雨
血肉の雨を降り注がせる
マジ災厄なんですけど
繝ィ繧ー繝サ繧ス繝医?繧ケを再び感知する
最後に嘲笑うのは?
封印の為にLolita Goreの手を借りる
冤罪
アフォーゴモンの鎖による封印に成功する
すいそう
Gabrielの聲が聞こえなくなる
妖刀 葛切頼道
譛郁ョ�蜻スから妖刀“葛切頼道”を授かる
新規開店・Cat shop“BAST”
Emilia Stansfieldを祓わず、かつ、Nathaniel MacLeanを見逃す
マシンガン・ケリー
機関銃系統の武器でエンゲージ内の味方ごと攻撃する
Bullseye!!!
拳銃での攻撃で特定の標的に弾丸を命中させる
大和魂
日本刀の近接攻撃で1人以上のエネミーの首を切り落とす
剣戟の響き
グングニルを7本全て命中させる
英雄の館
チャプター7の戦闘で犠牲者を1人以上出す
執事は常に冷静たれ
職業:執事のPCで決定的成功を3回出す
SAN値直葬
一度の正気度チェックで正気度を0にする
ライス・イズ・ビューティフル
会話で米関係の話題選択し、二人以上に布教する
壁ドン代行承ります
ハネムーンイベントをスキップせず見続ける
ケッコンカッコガチ
PCがPCかNPC一人以上にプロポーズをし成功させる
独身貴族
PC1人を除き全員が所帯持ちとなる
思わぬ再会
前作のPCを使用し、特定PCとの会話を発生させる
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