最終更新:ID:3r39Celhpg 2015年12月21日(月) 00:18:40履歴
或る日、或る時、或る場所で、陸のお姫様は海の王子様に恋をした。
けれども王子様は酷い人で、お姫様を捨てて海の底へ。
しくしく悲しく毎日祈るお姫様、とうとう耐えられなくなって、心を海へ、投げ捨てた。
或る日、或る時、或る場所で、陸のお姫様は心をぽつんと落っことした。
拾ったのは通りすがりの柘榴の実。
柘榴はお姫様に心を返すため、仲間たちと一緒にあっちへこっちへ。
杏を名乗る柘榴の実
頼り甲斐ある仮面のヒーロー
ほんとうは優しい女王様
痛みを抱えた橙色のお花の蕾
柘榴は仲間たちと一緒にあっちへ、こっちへ。
そしてとうとうお姫様の居場所が分かった柘榴は、仲間たちと一緒にざぶんと海へ飛び込んだ。
心を返してもらったお姫様、漸く眠れると一安心。
今度は失くさないと柘榴と仲間たちに約束し、大事に大事に心を抱きしめて、深い深ぁい眠りについた――・・
「・・――めでたし、めでたし」
「姉さん、それは何の物語?」
「“13晩目”の土産話だ」
「へえ、“13晩目”の。そういえばあの子、失敗したんだって?」
「ああ、“2晩目”が邪魔をしたそうだ」
「おやおや、それはいけない子。お仕置きしなくちゃね」
「ああ、でも、喜ばしい報告もあるぞ」
「喜ばしい報告?」
「“殻ノ子供(欠番)”が見つかったそうだ」
「……へえ、それはそれは」
双子(ふたり)は顔を見合わせて笑った。
PCより
PLより
そして、目を覚ました。
飛び起きた僕はベッドの上で悲鳴を上げる。
恐ろしい夢を見たから、ではない。
夢から覚めた先にも、恐ろしい現実が続いていると気付いたから。
カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。
ヤドリギの心臓を拾った夜、心臓を抜き取られる夢を見た。えぐり取られた心臓が、どこかへ持ち去られていく夢。
けれど、それよりも。
心臓を抜き取られる夢よりも、心臓がいなくなった現実が、堪えがたく恐ろしかった。
あぁ、鼓動が耳を塞ぐ。頭蓋を満たす。脳を掻きまわす。カルディアがいないのに、呑気に動き続ける自分の心臓が耳障りだ。
この音を、心臓を黙らせるものはどこかにないのか。明かりのない部屋の中、身体を何かにぶつけることも厭わずおぼつかない手つきでベッドの周りを探る。不意に、固いものを爪先がはじく。
とっさに指を絡めたそれは、武骨な刃を持つナイフの柄。
あの日、海に向かう僕に父さんが手渡したナイフ。
口の端を釣り上げ、笑みを浮かべる。
ナイフを胸に突き立てた。血は流れない。当然だ。刺さるべき場所に心臓はない。深々と刃を飲みこんだその傷口が、ひび割れとともに広がっていく。ナイフを捻り、傷口を抉る。ふと気づく。刃の先から、蜜が滴っていた。噎せかえるような匂いを放つ、粘ついたそれ。ああ、これは毒だ。僕を融かし崩していく甘く愛しい猛毒。その甘い毒に舌を絡め、啜り、突き立てていく。甘い毒はひび割れに染みわたり、砕けた僕をドロドロに融かしていく。毒を啜る。ああ、これでいい。毒を呷る。何もできない僕などいらない。毒を飲み干す。カルディアのいない世界など生きている意味がない。
そうして、僕は完全に形を失う。何も考えることはなく、伸ばす腕も、動く足も持たず、ここで融けてなくなっていく――――
ヤドリギの心臓を抱き、海の底に眠った少女の祈りを思い出した。
救いを齎す孤独に、誓った言葉を思い出した。
触れ合いの中で感じた、あの子の心音を思い出した。
そして、目を覚ました。
ベッドから体を起こした僕は、小さく呼吸を始める。
胸元に手を当て、鼓動を探る。一人分の心音が、そこにあった。笑ってしまうくらい頼りない、とるに足らない僕の音。
それでも足りない。
この胸にあの子の心音が伝わらないのなら、意味はない。
一つだけじゃ足りない。
あの子の心音を聞くまで、僕は死んだも同然だ。そしてもう、死に飽きた。
「僕の心臓を、カルディアを取り戻す」
頼りない心臓を頼りに、大切な心臓を探し始めた。
飛び起きた僕はベッドの上で悲鳴を上げる。
恐ろしい夢を見たから、ではない。
夢から覚めた先にも、恐ろしい現実が続いていると気付いたから。
カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。カルディアがいない。
ヤドリギの心臓を拾った夜、心臓を抜き取られる夢を見た。えぐり取られた心臓が、どこかへ持ち去られていく夢。
けれど、それよりも。
心臓を抜き取られる夢よりも、心臓がいなくなった現実が、堪えがたく恐ろしかった。
あぁ、鼓動が耳を塞ぐ。頭蓋を満たす。脳を掻きまわす。カルディアがいないのに、呑気に動き続ける自分の心臓が耳障りだ。
この音を、心臓を黙らせるものはどこかにないのか。明かりのない部屋の中、身体を何かにぶつけることも厭わずおぼつかない手つきでベッドの周りを探る。不意に、固いものを爪先がはじく。
とっさに指を絡めたそれは、武骨な刃を持つナイフの柄。
あの日、海に向かう僕に父さんが手渡したナイフ。
口の端を釣り上げ、笑みを浮かべる。
ナイフを胸に突き立てた。血は流れない。当然だ。刺さるべき場所に心臓はない。深々と刃を飲みこんだその傷口が、ひび割れとともに広がっていく。ナイフを捻り、傷口を抉る。ふと気づく。刃の先から、蜜が滴っていた。噎せかえるような匂いを放つ、粘ついたそれ。ああ、これは毒だ。僕を融かし崩していく甘く愛しい猛毒。その甘い毒に舌を絡め、啜り、突き立てていく。甘い毒はひび割れに染みわたり、砕けた僕をドロドロに融かしていく。毒を啜る。ああ、これでいい。毒を呷る。何もできない僕などいらない。毒を飲み干す。カルディアのいない世界など生きている意味がない。
そうして、僕は完全に形を失う。何も考えることはなく、伸ばす腕も、動く足も持たず、ここで融けてなくなっていく――――
ヤドリギの心臓を抱き、海の底に眠った少女の祈りを思い出した。
―――砕けて融けた自分が、一つずつ形を取り戻していく。
救いを齎す孤独に、誓った言葉を思い出した。
―――立ち上がるための脚が、支える腕が、言葉を紡ぐ頭が作られていく。
触れ合いの中で感じた、あの子の心音を思い出した。
―――空っぽのはずの左胸に、懐かしい音が響いた。
そして、目を覚ました。
ベッドから体を起こした僕は、小さく呼吸を始める。
胸元に手を当て、鼓動を探る。一人分の心音が、そこにあった。笑ってしまうくらい頼りない、とるに足らない僕の音。
それでも足りない。
この胸にあの子の心音が伝わらないのなら、意味はない。
一つだけじゃ足りない。
あの子の心音を聞くまで、僕は死んだも同然だ。そしてもう、死に飽きた。
「僕の心臓を、カルディアを取り戻す」
頼りない心臓を頼りに、大切な心臓を探し始めた。
入院やらなにやらの事後処理で、僕たちが帰国したのは予定より一週間も過ぎてからだった。店の方には帰国前に連絡を入れたものの、若干文句を言われてしまった。いなくても回りはしたものの、それなりに面倒だったらしい。閉めてていいって言ったんだけどなぁ……。
もうしばらく休むかもしれない、と言おうと思ったがやめた。準備にはまだかかるし、こっちの体制も整っていないのだ。何より、そんなこと言えば袋叩きにあいそうだ。
こちらの準備は二つ。
一つは情報を集めること。『天使の教会』の本拠地はこの町の地下にあるという。しかし、その規模も、正確な位置も不明。無策のままの突貫では、カルディアのもとに辿り着けるかもわからない。少しでも情報を集めなければならない。あの子を取り戻すために。全部を片付けるために。そのためには……ああ、やっぱり店は開いておいた方がいいな。あそこから入る情報も、馬鹿にはできないのだ。
二つ目の準備は、何というか……グルナドの回復待ちだ。
カルディアが僕たちの前から姿を消して以来、グルナドは不安定になっている。自傷癖はもちろんのこと、記憶の混濁、夜中に目が覚めれば絶叫、底抜けに明るいかと思えば、次の瞬間には地の底に沈むほどに落ち込む。はっきり言ってしまえば、壊れきっている。狂人のそれだ。それでも、カルディアに対する執着だけは、こびりついているようだけど。
「まったく、困ったお兄ちゃん……じゃなかった、困った息子だ」
旅行中の癖で、ついつい呼び間違えてしまった。早いとこ元に戻さねば。
敬愛する友人である双子様にあやかり双子の弟などと名乗ったものの、どうにも座りが悪い。あちらと違い偽物の双子だし。親子とか同一人物より、通りは良いだろうけど。
「……いやいや、それは…」
脳裏をよぎるその考えを追い出すように頭を振る。第一、勝手をし過ぎて顔を合わせにくいし、あちらからもどう思われてるか……。
悶々と悩んでいると、ふと影が落ちる。
見上げると……グルナドが、壊れていた男が、そこにいた。その眼は普段のあの子に似ていて、どこか違う。動ける日なのか、と思う暇もなく、無言のまま何かを投げ渡される。
ずしりと重たい感触とともに手に収まったのは、僕が渡したナイフ。いつか姉さんに折檻された際、彼女がこちらに忘れていったものだ。お守り代わりにともっていたけど、結局使わずじまい。まあそれが一番なんだろうけど。
「……四の五の言ってる場合でも、なりふり構っていられる状態でもないか」
なりふり構わない、というのはここ最近で意識するようになった僕の行動指針の一つだ。何の力も持たない僕は、方法を選り好みせず、ただ目標をなすために動けばいい。
―――例えば、こんな事態に直面した時は。
「……ミナト――いや、ニュクス。ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
愛する彼女に声をかける。抱いた願いをかなえるために。
さて、久々に家族会議を始めよう。
グルナドもプラムもニュクスもカミラさんもフェスさんも少年も双子様も姉さんも義兄さんもみんなに声をかけて。
我らが家族を取り戻す時間を、始めよう。
もうしばらく休むかもしれない、と言おうと思ったがやめた。準備にはまだかかるし、こっちの体制も整っていないのだ。何より、そんなこと言えば袋叩きにあいそうだ。
こちらの準備は二つ。
一つは情報を集めること。『天使の教会』の本拠地はこの町の地下にあるという。しかし、その規模も、正確な位置も不明。無策のままの突貫では、カルディアのもとに辿り着けるかもわからない。少しでも情報を集めなければならない。あの子を取り戻すために。全部を片付けるために。そのためには……ああ、やっぱり店は開いておいた方がいいな。あそこから入る情報も、馬鹿にはできないのだ。
二つ目の準備は、何というか……グルナドの回復待ちだ。
カルディアが僕たちの前から姿を消して以来、グルナドは不安定になっている。自傷癖はもちろんのこと、記憶の混濁、夜中に目が覚めれば絶叫、底抜けに明るいかと思えば、次の瞬間には地の底に沈むほどに落ち込む。はっきり言ってしまえば、壊れきっている。狂人のそれだ。それでも、カルディアに対する執着だけは、こびりついているようだけど。
「まったく、困ったお兄ちゃん……じゃなかった、困った息子だ」
旅行中の癖で、ついつい呼び間違えてしまった。早いとこ元に戻さねば。
敬愛する友人である双子様にあやかり双子の弟などと名乗ったものの、どうにも座りが悪い。あちらと違い偽物の双子だし。親子とか同一人物より、通りは良いだろうけど。
―――それにしても、双子様か…
「……いやいや、それは…」
脳裏をよぎるその考えを追い出すように頭を振る。第一、勝手をし過ぎて顔を合わせにくいし、あちらからもどう思われてるか……。
悶々と悩んでいると、ふと影が落ちる。
見上げると……グルナドが、壊れていた男が、そこにいた。その眼は普段のあの子に似ていて、どこか違う。動ける日なのか、と思う暇もなく、無言のまま何かを投げ渡される。
ずしりと重たい感触とともに手に収まったのは、僕が渡したナイフ。いつか姉さんに折檻された際、彼女がこちらに忘れていったものだ。お守り代わりにともっていたけど、結局使わずじまい。まあそれが一番なんだろうけど。
―――姉さん、あちらの世界……ふむ
「……四の五の言ってる場合でも、なりふり構っていられる状態でもないか」
なりふり構わない、というのはここ最近で意識するようになった僕の行動指針の一つだ。何の力も持たない僕は、方法を選り好みせず、ただ目標をなすために動けばいい。
―――例えば、こんな事態に直面した時は。
「……ミナト――いや、ニュクス。ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
愛する彼女に声をかける。抱いた願いをかなえるために。
さて、久々に家族会議を始めよう。
グルナドもプラムもニュクスもカミラさんもフェスさんも少年も双子様も姉さんも義兄さんもみんなに声をかけて。
我らが家族を取り戻す時間を、始めよう。
PCより
PLより
卵を二個片手で割り、熱したフライパンの上で混ぜた後、塩コショウを少し入れて混ぜた。
それを二枚のトーストの上に均等に乗せ、レタス一枚とハムを一枚、この二つに乗せた後、
トーストをもう一枚重ねて完成だ。
子供の頃、朝早くからいなくなってた父の代わりに作った簡単な朝ごはん。
幼い頃から作っていたから習慣になっている。しかし、それにも少し変化があった。
「シエラ、朝飯だ」
私は、新しく増えた同居人に作った物を渡す。
「ありがとう、アデルちゃん」
彼女がそう言った後で私も座り、食事をし始める。
今回の出来事は私を少し変えた。いや…かなり変えたと言っても過言じゃない。
彼女の顔を窺いながら私は緊張しながら朝ご飯を食べる。
食べ終わってから、彼女が私に言う。
「美味しかったわ。まるで小さな小さなレストランね」
「そうか…。それはよかった」
そう笑顔で彼女のその答えに私の顔が綻んだ。
内心ホッとした。これで不味いなんて言われたらレストランをやろうという決意が台無しになるところだった。
二人で食べ終わった後、私は準備を始める。
シャツの上に特注品の防弾チョッキを着て、軍服を着用し、最近使いだした改造したバックの中に
ライフルの銃弾を二箱、閃光手榴弾を数個、サバイバルナイフ等を自分で作ったバックのスペースに器用に入れる。
彼が残してくれたギターのケースの中にライフルを入れ、そしてあの愛しい少女からもらったデリンジャーを懐に忍ばせ
出掛ける準備を完了させる。
これにはシエラも苦笑いしているが、私はいたって真剣だった。
これ以上、あの時の出来事を起こさせない為にも、シエラやばあさんを守る為にも
そして…あの愛しい少女の笑顔と約束を守る為にも…。
シエラを連れて私は今日といずれ来て欲しいと考えている『小さな小さなレストラン』を守るため戦いに行く。
アデルチャン、カイモノニイクノニソレハオオゲサヨ…
ウルサイ。ネンヲイレテダナ…
それを二枚のトーストの上に均等に乗せ、レタス一枚とハムを一枚、この二つに乗せた後、
トーストをもう一枚重ねて完成だ。
子供の頃、朝早くからいなくなってた父の代わりに作った簡単な朝ごはん。
幼い頃から作っていたから習慣になっている。しかし、それにも少し変化があった。
「シエラ、朝飯だ」
私は、新しく増えた同居人に作った物を渡す。
「ありがとう、アデルちゃん」
彼女がそう言った後で私も座り、食事をし始める。
今回の出来事は私を少し変えた。いや…かなり変えたと言っても過言じゃない。
彼女の顔を窺いながら私は緊張しながら朝ご飯を食べる。
食べ終わってから、彼女が私に言う。
「美味しかったわ。まるで小さな小さなレストランね」
「そうか…。それはよかった」
そう笑顔で彼女のその答えに私の顔が綻んだ。
内心ホッとした。これで不味いなんて言われたらレストランをやろうという決意が台無しになるところだった。
二人で食べ終わった後、私は準備を始める。
シャツの上に特注品の防弾チョッキを着て、軍服を着用し、最近使いだした改造したバックの中に
ライフルの銃弾を二箱、閃光手榴弾を数個、サバイバルナイフ等を自分で作ったバックのスペースに器用に入れる。
彼が残してくれたギターのケースの中にライフルを入れ、そしてあの愛しい少女からもらったデリンジャーを懐に忍ばせ
出掛ける準備を完了させる。
これにはシエラも苦笑いしているが、私はいたって真剣だった。
これ以上、あの時の出来事を起こさせない為にも、シエラやばあさんを守る為にも
そして…あの愛しい少女の笑顔と約束を守る為にも…。
シエラを連れて私は今日といずれ来て欲しいと考えている『小さな小さなレストラン』を守るため戦いに行く。
アデルチャン、カイモノニイクノニソレハオオゲサヨ…
ウルサイ。ネンヲイレテダナ…
この数日間お疲れ様でした。古都子さんの卓は初めてで物語が進んで行くにつれてドンドン深みに嵌って行ってしまいました。
その結果、R-18行為をし始めたり、自分の性癖を開拓して行ったり
問答無用で調教しようとしたり等してしまい、他のPLの人達にも迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。
けど、またこんな感じの卓をみんなで出来れば嬉しい限りです。
最中さん、グルアプリでまたお会いした時にはこの調教師をまた温かく見守ってください。
家寺さん、今度お会いしたらブロッケンjrかジェイドを作っておきますので会いたいです!
ヨシタローさん、アリーシャでまたアデルと会った時はたくさん調教してあげますね(ゲス顔
そしてKP、古都子さん。続編の卓が出たらまた参加希望を出させてください。その時はもちろんアデルで頑張ります。
今回は本当にありがとうございました。
その結果、R-18行為をし始めたり、自分の性癖を開拓して行ったり
問答無用で調教しようとしたり等してしまい、他のPLの人達にも迷惑をかけてしまい申し訳ありませんでした。
けど、またこんな感じの卓をみんなで出来れば嬉しい限りです。
最中さん、グルアプリでまたお会いした時にはこの調教師をまた温かく見守ってください。
家寺さん、今度お会いしたらブロッケンjrかジェイドを作っておきますので会いたいです!
ヨシタローさん、アリーシャでまたアデルと会った時はたくさん調教してあげますね(ゲス顔
そしてKP、古都子さん。続編の卓が出たらまた参加希望を出させてください。その時はもちろんアデルで頑張ります。
今回は本当にありがとうございました。
PCより
PLより
倒れてた人は全員手遅れで、何もできなかった
みんなが傷ついても、動けなかった
せめてと手を伸ばしたけど、届かなくて
逆に足を落とされた
また何もできなかった
ちっぽけで、未熟で、あの時と何も変わってない
こんな思いはもうイヤだって、そう思ってたのに
今の私じゃダメ
だからもっと力が欲しい
私の足を戻した、あの子みたいな力が………
Cast -登場NPC-
“影”
Armonia Willstatter -アルモニア・ヴィルシュテッター-
第1の晩から登場。
事件が一応の終わりを見せた後、帰国の為に方々手を尽くすことになる。
今回の件については彼なりに責任を感じているようで、
帰国後は天使の教会について独自の伝手で調査を始めているようだ。
“13晩目 / 死神”
Cardia -カルディア-
第1の晩から登場。
第6の晩にて撤退。
その後の消息は不明。
“幸せの青い鳥”
有里 湊 -アリサト ミナト-
第1の晩から登場。
事件終息後、アメリカへ帰国した湊はカルディアの行方を追う
アプリコットの傍で、彼の望むままに行動している。
とはいえ、湊の中にいるもう一人の御蔭か、
最近は幾分か容赦と言うものをしてもらえているようだ。
“2晩目 / 女教皇”
Sierra Holdsworth -シエラ・ホールズワース-
第1の晩から登場。
事件終息後、彼女はゼノヴィアに一時の別れを告げ、
アーデルハイト・ヴァルテンブルクと共にアメリカへと渡った。
天使の教会と決着をつける為に。
彼女の大切なものを、守るために。
“白き乙女”
Cecilia -シシーリア-
第1の晩から登場。
第6の晩にて永遠の眠りに就く。
200年近くに及ぶ長い長い、人の身にあまりある時を経て
執念よりも深く、呪いよりもおぞましい彼女の愛は昇華される。
海の底、罪を抱えて眠る乙女の顔は、とても安らかなものであろう。
“哀れみ深き友”
Ruth Conner -ラス・コナー-
第2の晩から登場。
アルモニアと共に事件終息に努めた彼はその後、
イギリスにて天使の教会について独自の調査を続けている。
しかし、教会の本拠地がアメリカであることもあってか
調査に限界を感じており、近々アメリカに渡ろうかと思案しているようだ。
“殻ノ子供”
るり -少年-
第2の晩から登場。
事件終息後はアプリコットとグルナドに手を引かれる形でアメリカへ渡る。
全てを受け入れた上で超然としていた少年は、再び舞い戻った地で何を思うのか。
今はまだ、誰にも分からない。虚(から)の殻が辿る、その結末も。
“敬虔にして無知なる信徒”
Valeria Castledine -ヴァレリア・キャッスルダイン-
第3の晩から登場。
第6の晩にて死神に殺害される。
“深淵を知る老いた魔女”
Zenobia Holdsworth -ゼノヴィア・ホールズワース-
第5の晩から登場。
シエラにより、事件に巻き込まれずに済んだ老女は、
そのまま出動要請を受けた警官隊に保護される形となった。
旅の無事を祈りながら、魔女は大切な孫娘の帰る場所を守り続けている。
“廻る悲劇の歯車”
Death -死神-
第6の晩に登場。
カルディアを連れ、撤退。
その後の消息は不明。
Special Thanks
-シナリオ製作者-
Vector様
-PL & PC-
最中様
グルナド・ピースリー
アプリコット・ピースリー
裸の蛙様
Adelheid Wartenburg -アーデルハイト・ヴァルテンブルク-
ヨシタロー様
Alycia Craine -アリーシャ・クレイン-
家寺様
ロビン・マーカー
- Thank you for playing!! -
皆様、6日間お付き合いいただきまして、ありがとうございました!
無事に思い描いていたエンディングまで到達できたのは、ひとえに皆様の御蔭であることは言うまでもありません。
途中、山あり谷あり
ダイスの女神も比較的今回は大人しめでいてくれて良かったです……。
今回の卓は「天使の教会」を廻る物語の序章的な位置づけであり、
今後はそちらを中心にもそもそと卓を展開していく形になるかとは思います。
もしも次の卓、あるいは次の次の卓でお会いすることがございましたら、その時はよろしくお願いいたします。
もしも私の卓を楽しんでいただき、気に入っていただけたのならば、それに勝る喜びはございません。
それでは、いつかまた廻り逢うその日まで暫しのお別れです。
繰り返しになりますが、6日間、お付き合いいただきまして本当にありがとうございました!
最後に。
最中さんへ。
「黒猫」「まどろみの窪」から継続してのお付き合い、ありがとうございます!
某城卓以来となりますアプリコットさんと、新たに参入した
KPのテンションが無駄に上がったのはご愛嬌でございます。
今回の結末を経てグルナドくんの精神をへし折ってしまったような気がしないでもないですが……。
そこは、ほら、あれです。何処ぞの白いマスコットキャラの皮かぶった営業のセリフではないですが
絶望と希望の相転移。両者ともにつり合いが取れているものだとKP考えております故、
大きな絶望の分、大きな希望がやってくると思います。
だからとりあえずイキテネ! グルナドくん!!
裸の蛙さんへ。
今回初めてお目にかかりましたが、改めまして、参加してくださりありがとうございます!
本編でのアリーシャちゃんとアデルさんのやりとりは画面越しにによによしながら見させていただいておりました。
初めは超然としていたアデルさんでしたが、話が進むごとに抱え込んでいた闇、心の傷がじわじわ表に出てくると、
最初とはまた違った印象を受けていきました。
最後までアデルさんを見守った上で最初からログを見直してみると、これまでとはまた違った印象を受けるとともに
視点から彼女を見ることができ、一粒で二度おいしい素敵な探索者だなぁ、としみじみ思わされました。
今後も機会がありましたらアデルさんでいらっしゃってくださるとのことでしたので、
お会いできる日をとても楽しみにしております!!
ヨシタローさんへ。
「まどろみの窪」から継続してアリーシャちゃんということでしたが、
今回は……色々な意味でお疲れ様です、アリーシャちゃん……。(
前回も周囲に振り回されてなかなかお疲れ気味でしたが、今回もアデルさんという女性に
結末も、前回のような悲しい別れではなく、しんみりとはしておりましたが
この先の再会を想わせるような終わり方をしており、二人の関係にほっこりさせられていたKPです。
後日談に漂う、そこはかとない闇落ちフラグっぽい何かを感じ取りつつも、
無事に二人が微笑みあう再会の未来を是非掴みとっていただけたらな、と思います。
祖国に帰ればお父さんと、そしてマリーちゃんとの再会があるでしょうから、
大好きなお父さんと、そして大切な親友に甘えて少しのんびり羽を伸ばしてくれたらなぁ、と思います。
家寺さんへ。
今回家寺さんとは初めて卓を囲ませていただきましたが、参加してくださりありがとうございました!
全体を通して物静かながら一歩下がった位置で皆を見守り、事件が起これば積極的に前へ出て行動する様子は
さながらPT全体のお父さんのような存在のようでした。
うちの子供(NPC)たちはどうにも変に斜に構えていたり、つんけんしていて可愛げがなく申し訳ございません。
とさながら父の如く心を砕いてくださっていたのはとても嬉しく思っております!(あの子ら共々)
本編ではKPが未熟なこともあり、あまり活躍の場を作れず大変申し訳ない限りでございます……。
もしも懲りずに参加してくださいましたら、その時は是非是非、よろしくお付き合いただければと思います!
(ジョジョが一番好きとのことでしたが、これはつまりそのうちジョジョキャラの探索者が…と期待してもry(殴
“シエラ”って。
そう呼ばれる度に、私はとても嬉しくなるの。単純だって、思われるかもしれないわね。けれども、だって、これはおばあちゃん――ゼノヴィア・ホールズワース――が私につけてくれた名前なんだもの。嬉しくないわけがないわ。
この名前は、あの人に愛されている名前。
この名前は、あの人を愛している名前。
大切な、大切な、私だけの名前。あの人が私のためだけにつけてくれた、大切な愛しい名前。私だけの魔法の詞(ことば)。私の大切な魔法使い。
あるシンデレラは、魔法使いのお婆さんの魔法で王子様と結ばれて幸せになれたというわ。
私は、私に魔法をかけてくれた魔法使いのお婆さんのそばにいることを選んだシンデレラ。灰の代わりに、血と肉と臓物と、悲嘆と絶望と痛苦と、それとそれとが雑じりあう世界に生きていた私に“ふつう”のお洋服を着せて、“ふつう”に生きることの喜びを教えてくれたお婆ちゃん。
綺麗なドレスなんて、いらないの。
ガラスの靴も、なくていい。
王子様なんて、いなくて構わない。
ただ、ただね。
魔法使いのお婆ちゃん、あなたがいてくれれば、私はそれで十二分に幸せなの。
ただ、あなたが、あなただけがいてくれれば。
この気持ちをなんて呼ぶのかしら。
この気持ちはなんて名前なのかしら。
私はまだ、その名前を知らない。もしかしたら一生知ることもないのかもしれない。それでもいい。
この果敢無い幸せを守って逝けるなら、私は何だって構わないの。
ごめんね。
本当は、本当は、そう言いたかった。そう言えなかった。今もこの喉元で、「やり直したい」「伝えたい」と叫ぶ気持ちはここにいる。
ごめんね、ごめんね、ごめんねって。言いたいよ。言いたかったよ。でも言えなかった。言ってはいけなかった。
言えば楽になれるって知っていた。言えばグルナドと一緒にいられただろうことを知っていた。心の底から叫べばきっと手を引いて抱きしめて離さないでいてくれたであろうことは、わかっていた。きっと、今からでも遅くはないことも、知っている、わかってる。
だから言わなかった。言えなかった。言いたかったけれど、言いたくなかった。きっとこの先も私は言わない、伝えない。
私は私が幸せである為に、私の幸せの為に、目先の幸せを敢えて手放した。
私は私が幸せである為に、私の幸せの為に、あなたの幸せを握りつぶした。
初めて会ったとき、アプリコットに似ているグルナドに驚いたの。とってもとっても驚いたの。けれども違うんだって、すぐに分かったよ。似ているだけ。おんなじものなんて何一つないんだと、いつか誰かが教えてくれたから。
私のことを見て、天使って手放しで褒めて撫でて抱きしめてくれたよね。初めてそういわれたとき、本当は嫌だったの。天使って言葉、嫌いだった。大嫌いだった。グルナドにも、プラムにも、それからアプリコットにも。そんなつもりないんだってわかってても、この人たちは何も知らないんだってわかってても、でも、嫌だった。心の底からその言葉が嫌いで嫌いでたまらなかった。
いつからだったかな。その言葉が嬉しくなったのは。もう覚えてないけれど、いつからか、あなた達にそう呼ばれることはとても嬉しく思えた。きっとあなた達の目から見える私がとてもきれいに見えたから。本当の私はきれいじゃないけれど、でも嬉しかった。子供は単純だから、褒めてもらったことのない私はそんな小さな言葉の積み重ねさえもうれしかった。
そうしていつからか、あなた達が私の幸せ“そのもの”になった。
そうしていつからか、グルナドは私にとっての幸せ“そのもの”になった。
ねえ貴方が私の幸せなんだ。
ねえ貴方が私の全てなんだ。
ねえ貴方がいない世界なんていらないんだ。
だから私は言わないよ。たった4文字の魔法の言葉は、ずっとずっと、隠したままで。4文字先の幸せは、敢えて選ばないよ。
ごめんね。きっと今あなたは不幸なんだと思うけれど、ごめんね、ごめんね、私は幸せでいたいから、私の為にあなたを不幸にする。惜しみなく愛情を注いで愛してくれていたからわかるよ、あなたは今とても不幸で苦しくて死んでしまいたいのでしょう。知ってるよ、あなたの気持ちと私の気持ちは似ているから。
でも似ているだけで、ほんとうは違うんだろうね。
私はあなたが生きていればそれでいい。私が生きている間にあなたが死ななければそれでいい。
あなたはきっと最期まで、私と一緒にいることが幸せなんだろうね。何があろうとも。
ねえ、ちゃんとわかってるよ。伝わってるよ。誰よりも愛してくれたあなたで、誰よりも大切なあなただから、こんなにもこんなにも痛いくらいに気持ちが伝わって、だからそれが苦しくて、けれどもあなたが生きているからこその苦しさだと思うと、この上なく幸せなんだ。
こんな幸せ、あなたは知らないでしょう。
ぱちぱちと炎が爆ぜる音。ぱきりと薪の立てる今生へ別れを告げる断末魔。熱い熱い炎にくべられて、文字通り身を焦がすほどの責め苦を味わっている薪を、湊はぼんやりと眺めていた。
夜の帳が下りたアパートの一室は、とても静かだ。まるで自分以外の生物が全て死に絶えてしまったのではないか…そんな錯覚を覚えるほどに。
夜とは死である。
いつか誰かが言っていた言葉。いつか誰かが教えてくれたこと。いったいあれは誰であっただろうか。ぼんやりする頭で思い出そうとするが、おぼろげな輪郭が描かれるよりも早くその姿は霧散して、するりと手をすり抜けていく。
(まあ、いいか)
早々に思考を放棄し、湊はソファの上で毛布に包まった。今晩はここで一夜を明かすつもりだった。寒くて敵わない夜。一人寂しく休もうにも、入った瞬間に体温を殺してしまいそうなベッドに潜り込むのには少しばかり勇気が足りず、暖炉のそばのぬくもりは魅力的過ぎた。
同居人二名はきっとぬくぬくと互いの温度を――・・・・そこまで考えて、そんな甘やかな関係ではない二人だったことを思い出す。
特に、あの瑠璃色の子供は。
例えるならば、それは甘い甘い猛毒。近世イタリア貴族のボルジア家秘蔵のカンタレラ……そんな言葉がぴったりに思えた。
カンタレラの語源にはいくつが説があるが、19世紀の毒物学者フランダンはイタリア語で「歌を歌わせる」という意味であるとしていた。ああ、まさしく。飲み干した人間に否応なしに“愛”という歌を歌わせるあの瑠璃色の劇薬は、まさに現代のカンタレラという名を冠するに相応しいのではないか。などとロマンティックな想像を張り巡らせてはみるものの、あの瑠璃色を取り巻く環境も、関係も、人間も、何もかも、世間一般の謳うロマンスからはかけ離れているのであった。
不意に、空気が揺れ、きぃ……と扉がかすかに開き軋む音が静かな室内に響く。それから、くすんくすん、と誰かが鼻を鳴らす小さな音。視線を向ければ、件の瑠璃色がそこにいた。
くすん、くすん。小さく鼻を鳴らしながら、よろよろと頼りない足取りで部屋を出てくる。苦しそうに腹を抑えながらこちらへ歩いてくる子供の顔は、普段の蒼白さからより一層生気を欠いたかのようにひどいものだった。
「………大丈夫?」
咄嗟に口をついて出た言葉。言ってから後悔する。見るからに大丈夫ではない相手に、大丈夫かどうかなんて尋ねてどうするのか。そんなの、
「……だ じょう、ぶ…です…」
そう返すしかなくなるに決まっているではないか。
くすんくすんと鼻を鳴らしながら子供が一歩踏み出す度、ぽたぽたとその足取りでも残すかのように滴るそれ。嫌なことを思い出し、湊は思わず顔を顰める。が、それも一瞬のことで、すぐさま立ち上がるとタオルやら何やらをてきぱきと用意するために動いた。
「お風呂、入ったら?」
「………」
湊がそう勧めれば、子供は泣き腫らした顔で困ったように動きを止めてしまう。何か変なことでも吹き込まれたのかもしれない。
「……具合、今はどんな感じ?」
「…おなか くる、し ……の、と… かわ ぃ…た…」
嘆息しつつ、代わりに体調を尋ねれば、掠れた声で舌をもつれさせながら子供はぽつりとそう零す。まあそうだろうな、と子供の惨状を改めて見直しながら湊は頷いた。
「お風呂、入ろう。それからゆっくり休むといいよ」
「……でも、」
「あの部屋の“ケダモノ”には後始末、自分でさせておくからしばらくは眠れるよ」
ぽん、と形の良い頭をひと撫でしてやってから、さて、まずは子供を風呂に入れてやらねばなるまいと少し思案する。湯船を張るべきか、シャワーで軽くさっと流してやるべきか……そこまで考えて、こういったことで頼れそうな人物を思い出す。少し不安はあるが、子供の面倒は彼に任せようと連絡を取ることにした。
「………同じようにハマらなきゃいいんだけど…」
ぼやくような呟きに「それは無理じゃないかなあ」と愉快そうな少年の声が返ってきたので、とりあえず軽く叩いておいた。即座に返ってくる「痛い」という抗議の声は無視する。それがどれほど難しいことか、言われなくても自分がよくわかっていた。
抗議の声を無視しながらちらり、と盗み見れば、瑠璃色の劇薬(カンタレラ)はぼんやりと暖炉の前に突っ立って燃える炎を眺めているのだった。
お腹がくるしい。体が重くて、怠い。起き上がるのも億劫で、ベッドの上でもだもだと無作為に時間を過ごす。
だあれもいないベッド。一人寒しい。
「………あは、」
小さく笑う。零れ落ちた乾いた笑いを聞く人間はここにはいない。
常人よりはるかに優れた聴覚が、階下の音を拾い上げる。大事な心臓を取り戻すための、家族会議の真っ最中らしい。
「そうそう、がんばって。がんばれ、がんばれ」
だあれも聞いちゃいない言葉。なんて空しい。
漸く起き上がるだけの気力を取り戻し、棒切れみたいに頼りない腕を支えに体を起こす。ぐ、と腹に力が入って、どろりと押し出されていく体液が与える不快感に眉根を寄せる。それでも我慢しなくちゃあ、ならない。少なくともここにいる間は。少なくとも、彼らのそばにいる間は。少なくとも、彼らの大事な心臓が、帰ってくるまでは。
我慢して、我慢して、我慢して。
――――その先には、何がある?
終わりのない暗い闇。永遠の孤独。きっと自分が何かもわからなくなって、自分が何かも忘れてしまって、そのまま消えてしまって。だあれの記憶にも、残ることはできなくなって。
想像すると、恐ろしくって恐ろしくって恐ろしくって……。
「……ぐす、」
喉が塞いで、鼻の奥がつんとして、目頭が熱くなって、じわじわと雫があふれて零れる。
仕方がないこと。わかってる。そうしようと決めた時から、その結末は定められていたもの。それでも、それでも……どうして自分なんだろう、とふとした拍子に思うのだ。ここで、こうして、生きているはずなのに。そうして一度その考えに絡め取られれば、囚われて、身動きの一つもできなくなる。
このままここで、眠ってしまおうか。
前にも後ろにも進まずに、立ち止まって、殻の中で、永遠に。それは、ああ、なんて、素敵な夢。そうできたら、素敵だろうに。
けれども進まないことを、ほかならぬ自分自身が、許してくれない。ああ、進まなくちゃ、でも――――・・・・。
『ずっと、一緒にいてやるから』
そんな時に頭に響く、魔法の言葉。
『最期は、己(おれ)も一緒に逝ってやるから』
自分の何もかもを絡め取って覆い隠して、どこへも行けなくしてしまおうとするそれらを解き引き千切ってくれる、愛しい人の魔法の言葉。
『独りになんて、してやらん』
不器用なあの人の、精一杯の優しい言葉が、腕を引っ張って立ち上がらせてくれる。
『だから……もう、泣くな』
「……うん、泣かないよ」
言葉に背を押されるようにして、しっかりと今度こそ立ち上がる。階下の真剣な、それでいて優しく温かな人たちの声に、寂しさを感じることはない。愛によってはぐくまれた絆で繋がれたあの人たちの仲間に入ることは一生涯不可能であろうことに、嘆くこともない。
「………私は、今はいない、心臓の代わり。代用品。人工心肺」
言い聞かせるように呟く、その声に悲嘆の色は一切ない。事実だけを、淡々と、淡々と。あの人たちは君は君だというけれど、それでも心のどこかでは代用品にしているのだ。傷ついた心に沁み込む毒薬(ポワゾン)。それが自分だ。量を間違えれば致死に至る劇物も、工夫次第では良薬になることだって、ある。
あの心臓と、彼らが再会するその時まで。彼らを生かし、届けるのが自分の役目。仕事。
大丈夫、何も悲しいことはない。いつだって、いつだって、大切なあの人は心の中(すぐそば)にいるのだから。
でも、
ごめんなさい、愛しい人。
今だけは、どうか、泣かせてほしい。
彼らの愛に触れて、知ってしまった孤独の苦しさを流す為に。
彼らに愛されて知ってしまった、求められる喜びを流す為に。
今だけは、どうか。
「……ぐすっ…知らなけ、れば ひっく… 良かっ、た…」
いつか、どこかで、誰かが呟いたような言葉が、嗚咽に混じって口から零れ落ちる。
自分だけを本当の意味で求めて抱きしめてくれる腕は、此処にはなかった。
強い強い願いを感じた。願いを通り越し、欲望へと昇華されつつある醜く浅ましくも愛しい想いを感じた。
引き寄せられるままに訪れたその場所で見つけた、懸命に花開こうと生きる花の蕾。
花の求めるままに甘い水をくれてやった。綺麗な綺麗なおぞましい花が咲くように。喜んで水を啜る花を眺めていた。
後は、どんな花が咲くか、待つだけ。
そのはず、だったのだけれど。
「……あーあ」
人気のない路地に降り立ち、青年は溜息をつく。
足元には、空しく転がされた銀色の指輪が一つ。微かに届く日の光を反射して、寂しく輝いていた。それを無造作に拾いあげ、手の上で転がす。
「折角あげたのにー」
唇を尖らせ、拗ねたようにそう零す青年の口元には、態度とは裏腹の楽しげな笑みが浮かんでいた。
「酷いことするもんだ」
手の中の指輪をぎゅっと握りしめ、そうしてゆっくりと手を開く。開いた掌から、さらさらと零れ落ちる銀色の砂。それは地面に零れ落ちる前に、空気に溶けるようにして消えてしまう。
まるで夢か、幻のように。
「横取りってよろしくないと思うんだよねー、僕」
だから、
「お仕置き、かなっ」
くすくすと楽しげに笑いながら、青年は足取りも軽やかに歩きだす。
「もう、種は撒いていたし、ね」
くすくす、くすくす。
一歩進むごとに青年の姿は縮んでいく。
「後は、花を咲かせるだけ」
くすくす、くすくす。
輪郭が丸みを帯び、それは可憐な少女のものへと。
「あまぁい柘榴は美味しかったかい?」
くすくす、くすくす。
いつしかそこには、銀色の髪をなびかせながら歩く少女が一人。
「可哀想な、パラノヰア」
くすくす、くすくす。
くすっ
くすくすくすくすくすくすくす
くすくすくす
くすくすくすくすくすくすくすくすくす
くすくすくす
くす
くすくす
くす
くすくすくすくすくすくすくす
くすくすくすくすくす
くすくすくすくすくすくすくすくすくす
どんっ
「……ぁ……」
キキィイィイイイイイ
ぐちゃっ
「あはっ」
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