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事件

第一世代姉妹と第一次図書館襲撃事件

 第一世代キュトスの姉妹は、人間の後期石器時代に目覚めたとされる。当時、彼女らのうち温厚な性質の者は、そのもって生まれた神通力によって「大地の女神の71の化身」として古代人たちの崇敬を受けていた。しかし、人間の文明が発達しその知恵、技術が強力になってくるにつれて、大部分の姉妹は人間に対する圧倒的な強者ではなくなってしまい、やがて彼女らの超常の力と老いを知らぬ美貌は人間たちの嫉みを引き起こすこととなった。そして【魔女】に対する本格的な迫害が始まった。

 上位の有力な姉妹らはこれを重く見、力のない姉妹の保護の役割を自らに課す一方、人間たちに対抗できる独自の知識を求め、八方に散らばり世界の数多の勢力を訪ね歩いた。そしてこの時の姉妹の分散が、後の姉妹分裂抗争の火種となったのである。

イストリン
 Cu1-2イストリンに率いられた姉妹は、地上において勢力を保とうとするエフラスの眷属と接触。アヴロニアより伝承される神秘の技術の提供と引き換えに、アヴロノに対する惜しみない協力を約束し、Cu1-7シャーネスは妖精戦争時代のアールヴ山脈の砦、後の星見の塔の守護の任を受けた。

ディスペータ派(ルスクォミーズ派)
 知識を得るためにおよそ考えうる最も極端で過激な手段に出たのが、Cu1-5ディスペータである。彼女は高名な賢者(種族を問わず)を訪ね歩き、この世の最上の知識の在り処を聞いてまわったが、賢者らは口を揃えてこう答えた。

「それは【神々の図書館】である。しかし、そこには紀元神以外立ち入ることは許されない」

 どのような知恵者に聞いてもこの答えが返ってくるので、上古の姉妹の中でも最も勇猛で知られたディスペータは、実力で【図書館】の書物を強奪することを画策、姉妹より有志を募り実行した。
第一次図書館襲撃事件梗概

実行犯は以下の通りである。 この作戦による戦果は莫大であったが、損害もまた甚大だった。戦闘員は全員討死、うちルスクォミーズとバイエルンを除く全員が復活不能の完全な存在抹消に追い込まれ、首謀者ディスペータは処刑された。その結果、姉妹の歴史の中でも有数の量の欠番が生じ、キュトス数の均衡はひどく乱れ、ヘリステラアーズノエルが直々に【バランサー】の補佐をしなければならないほどであった。

 事件の後、姉妹の統率を計らなければならない上位姉妹の立場でありながらキュトス数の均衡を乱したとして、生存したカタルマリーナとアーズノエル、ルスクォミーズは図書館襲撃に関わらなかった上位姉妹に激しく糾弾された。これが【九姉評議会】の興りであり、ルスクォミーズが九姉に対する叛意を抱いたきっかけともなったのだった。

図書館襲撃事件のその後

 第一次図書館襲撃事件の顛末により、その後のキュトスの姉妹の在り方は大きく変化した。

【九姉】体制

 20番以上の上位姉妹のうち戦闘力の高い者の半数以上が復活不能になった事を受けて、ヘリステラとアーズノエルは自分たちの防衛に積極的な姉妹の大半を星見の塔に招集、今後の防衛体制を話し合った。その結果案出されたのが、当時から姉妹の間だけでなく大陸諸世界にその名を轟かせていた1番から9番の姉妹を、姉妹の選任の防衛者にして支配者として擁立することであった。これが即ち【九姉】であり、姉妹の最高意思決定機関として【九姉評議会?】が設立されたのである。

 しかし、Cu1-5ディスペータとCu1-8ティエポロスの二名が損失された以上、その体制の実質的な確立は5番と8番の姉妹の新生を待たなければならなかった。

Cu2-5、呪姫エトラメトラトン

 図書館襲撃事件から二十八年後(これは比較的早い部類に入る)、アーズノエルは5番の姉妹の新生を確認。ヘリステラによって速やかに捕捉された彼女は、自らをエトラメトラトン、即ち上代アヴロニア語?で「永遠の呪いの化身」と名乗った。彼女はヘリステラに出会うと、わっと抱きついて泣き出した。

 黒地に銀糸の文字がびっしりと刺繍された見事なドレスをぼろきれのような外套の下に隠した、人間ならば十四歳程度に見受けられる彼女は、寂れた農村の青年にはまるで落ち延びてきたどこか遠い国の姫君のように見えたようであった。青年は一目で恋に落ち、二人は愛を育んだが、その愛が真正なことと、自分が魔女であることを知っていた彼女は、絶望して青年に「恋を忘れる呪い」をかけた。歳月を経て、自分と引き離される悲しみを青年に味わわせたくなかったからである。これが彼女の生まれて初めての呪いであり、その呪いの文句はまるで心からの愛の言葉のように彼女の口から紡がれ、その声は美しく響いた。

 その様を千里眼により見ていたアーズノエルは、彼女の呪い(のろい・まじない)の才に瞠目し、これを最大限に活かすことを決断、エトラメトラトン当人といまだ生まれぬ8番を欠き、補員であるCu1-10ルスクォミーズを含んだ八人による【九姉評議会】によってこれが決議された。カタルマリーナ、エル・ノエルら碩学の姉妹によって英才教育を施されたエトラメトラトンは、見る見るうちにその霊力を伸ばし、数年と立たぬうちに他の九姉に引けをとらぬ実力者へと成長した(これは、人間とは違う時を生きるキュトスの姉妹としてはあまりにも異常すぎるスピードである。このような天才が、キュトスの姉妹の間に再び生まれることはキュトスの終焉の時までついになかった)。

 エトラメトラトンの呪いが強力なのは、彼女の智慧によるところも大きいが、何よりも、彼女の順良な性格からくる呪いの対象への深い理解と愛、そして姉妹を傷つけた対象への強い憎しみとの葛藤という、常人ならば発狂しかねないほどの精神的負荷から生まれるあまりにも暴力的で鋭利な精神エネルギーのすべてが、その呪術に注ぎ込まれることによる。このような強大な情動が生み出す恐るべき妄執は、呪いの術を通じて対象を忌まわしい破滅の運命に導く。無論、一度呪いを放った彼女本人も心に底知れぬ深い傷を追うのだが、それでも彼女は姉妹を迫害から護るという自らの責務を休むことはなかった。

 呪いに呪われた魔女、それこそがつまり『呪姫』エトラメトラトンの正体である。

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