アクセス規制を受けた方のための本スレ転載用スレッド

  • 61蘇芳#すおうAG - 11/05/11 04:29:37 - ID:Q/JhosmfDw

    「私は苦手なので、嘘はジャンさんの担当です」
    私は嘘は苦手。
    だけど私には「言っちゃいけないこと」がたくさんある。
    パパやママの顔を覚えていること。
    私は夢を覚えていること。
    他にもたくさん、ジャンさんに教わった。
    私は「半端な義体」だから。
    ジャンさんは「実験中の技術」は信用できないから、できるだけ条件付けの要らない子を選んだといっていた。
    ジャンさんは絶対成功しないといけないから、って。
    私は嘘は苦手。
    だから嘘はつかない。
    代わりに黙ってにこにこするだけ。
    ジャンさんはそれでいいと言ってくれたから。
    みんなを騙しても、ジャンさんがそれで喜ぶなら。
    私はずっと笑っていよう。


    「トリエラは死が怖いのね。私には日々の暮らししかないから」
    日々の暮らししかないから、なんなのだろう。
    私だって死ぬのは怖いのに。
    トリエラだけが怖がっているような言い方をしてしまった。
    私はうそつきだ。
    覚えていないけれど、私の心の底には誰かがいて、その誰かを失った悲しみは澱になって私の心に沈んでいる。
    条件付けで表面的には忘れても、心の底の澱までは消せない。
    だから私がいなくなれば、トリエラやヘンリエッタやリコの心に澱が残るはず。
    それが怖い。
    残された人の心を思い悩むことはできるのに、自分自身のこととして死を怖いと感じない私が怖い。
    けれど、恐怖は口に出したら広がるばかりだから。
    せめて私だけは泰然としていよう。

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