2chエロパロ板のけいおん! 作品のまとめサイトです。

著者:◆C/oSFSeeC2氏


その日はたまたま、みんなそれぞれ用事があって。
私は部室で1人、軽音部のみんなを待っていた。

ガチャ。
聞きなれた部室の扉の音がした。
「あら?珍しいわね。ムギちゃん、1人?」
さわ子先生はあたりを伺うようにして入ってきた。
「あ、先生。みんな何だか用事があって遅れるみたいで・・・」
ラッキー。先生と二人きり、なんて。
「あらそう。ねぇ、悪いけどお茶淹れてくれない?」
「あ、はい。」

良かった。真っ赤になってるの気づかれなくて。
私はそそくさとティーポットのところに行くと、いつものようにさわ子先生用のティーカップを出して、一番おいしい紅茶を淹れた。
さわ子先生のところへ持っていく。先生は山ほどの資料を積んで何か書類を書いていた。
「お仕事ですか?」
聞きながら、ティーカップを邪魔にならないように気をつけて置く。
「そうなのー。あたしイマイチ職員室じゃ集中できないのよねー。静か過ぎるし、お淑やかにしてなきゃなんないし。ここなら適度に音鳴ってるし、自分が出せるし、ちょうどいいのよ。」
「それもどうかと思いますけど・・・」
言葉とは裏腹に私はなんとなく嬉しくなって満面の笑みを浮かべて言った。

「あー、生き返るわぁ。ムギちゃんのお茶、いっつもおいしー!」

しやわせ・・・とつぶやいて無防備な笑顔を見せる先生。
先生はいつもそう。私がいつもあなたへの一杯は特別な想いを込めて作っている事も知らず。
私は先生の邪魔をしないように少し離れた席に座って先生を見ていた。
一生懸命な顔。時々眉をひそめて考える。何か思いついたようにまた書類に向かう。
あんな真剣な眼で見られたら、私、どうなっちゃうかな。私がこんな風に想っていることなんて何も知らないんだろうな。ねぇ、先生、いつか先生の車に乗せてもらった時、私が助手席でどんなにドキドキしてたか知っていますか?

そのうち、先生はふ、と顔を上げた。
「・・・静かねー・・・。」
先生はニヤニヤしながら私の方を見た。
「そうですねぇ・・・あっ。」
私はようやく彼女の意図するところを理解した。
「・・・何か弾きましょうか?」
先生は我が意を得たり、との表情で頷いた。
「悪いわね、なんか催促しちゃったみたいで。」
・・・みたいじゃなくて、その通りなんですけど。
「ムギちゃん、ピアノのコンクールで賞取ったことがあるんですって?一度ムギちゃんのソロ、聞きたかったのよね。」
え。
「・・・よくご存知ですね。」
「そりゃあ、愛するムギちゃんのことだものー。」
えええ?
・・・まずいわ。ドキドキ、聞こえちゃってないかしら。顔、熱い。きっと真っ赤になってる。
「せ、先生・・・それって・・・」
「これでも担任なんだから。色々知ってるのよ?・・・澪ちゃんのスリーサイズとか?」

・・・なんだ。
それはそうよね。先生にとって私は3年2組38人のうちの1人。38分の1。
「・・・な、何かリクエスト、ありますか?」
努めて平静を装って言った。だって何か言わないと泣いちゃいそうだもの。
「そうねぇ・・・じゃ、『誰でも知ってるクラシック』でどう?」
「・・・簡単そうで難しいリクエストですね。」
・・・どうしようかな。選択肢が広すぎて困っちゃう。
せっかくだからピアノの旋律がきれいな曲がいいな。
それでいてBGMとして聞けるような・・・あ。
私はオルゴールでよく使われるあの曲を選んだ。
切なく甘く、時に激しいメロディ。
曲の合間にちょっと先生を確認。眼をつぶって聞いてくれてる。
・・・嬉しい。この曲が終わるまでは先生を独り占めできる。
そしてこの曲が終わったら、私の気持ちを告げよう。そのために選んだ曲だもの。
私が弾き終わると先生は立ち上がって拍手してくれた。
「すごーい。ムギちゃん、さすがねー。」
「ふふっ、ありがとうございます。・・・でも先生。」
「全然仕事してませんでしたね。」
先生はぶーと膨れた。
「・・・いーじゃない。ちょっと休憩してたのよ、休憩。」
軽音部に入って良かった。他じゃ絶対見られない先生の表情。
「あの!さわ子先生?」
先生はいつもの優しい笑顔に戻った。
「なに?」
どきん。どきどきどきどき。
「あのっ・・・今の曲の曲名、何ていうかご存知ですか?」

「もちろん!私だって音楽教師なんですからね!」
先生は腕組みをしてえっへん!と胸を張った。
「ザ・ヴィーナスの『キッスは目にして!』でしょ!」
私はいやんいやん、とかぶりを振る。
「違いますっ!違わないけど違いますっ!」
「えええっ!」
先生・・・そんなに驚くところじゃないと思います。
「じゃ、じゃあアレンジがちょっと違うと思ったけど、まさか『メタルハート』?アクセプトの?」
「アレンジという問題以前に、全く違ってたと思いますけどっ。メタルハートでは途中でちょっと使われてるだけですっ!・・・もう少し古い方向でお願いします!」
「まさかムギちゃんがアクセプト知ってるとは思わなかったわ・・・やるわね、あなた!」
びし!と親指立ててぐっじょぶ!みたいな。
「古いっていうと・・・嘉門達夫の『アソコに毛が生えた』はいつだったっけ?」
私が涙を浮かべて睨みつけると彼女はようやくはた、と手を打った。
「あ、あー。『情熱の花』ね?ザ・ピーナッツの!」
「・・・せ・ん・せ・い。」
「や、やーねぇ。分かったわよ。ベートーベンの『エリーゼのために』でしょ?」
いぢわる。
「・・・分かってたんなら最初から言って下さい。」
すぅ・・・と深呼吸。
「じゃあ、第二問です。エリーゼとは誰でしょう?」
「エリーゼ?」
「先生。」
私は彼女が何かを思いつく前に言った。
「・・・私、本気ですから。」
お願い。茶化さないで。私だけですか、本気なの。
「・・・本気だから、困るのよ。」
・・・え?
「エリーゼの本当の名前はテレーゼ・マリファッティ。ベートーベンと恋に落ちた女性ね。」
先生はまっすぐ私を見て言った。
「でも、恋人になったり、結婚したりすることはなかった。なぜなら彼女は貴族でベートーベンはそうでなかったから。だからこの『エリーゼのために』は明るく楽しい旋律と激しく悲しい旋律が繰り返し現れるのよね。」
先生。反則です。なんで急にそんなに優しく微笑むんですか。
「せ、正解です。じゃあ第三問。先生はベートーベンとテレーゼのこと、どう思いますか?」
先生が珍しくまっすぐ私を見ているから。私は目を逸らしてしまう。
「・・・憧れるわ。」
え?思わず逸らした視線を戻す。
「障害が多いからこそ燃え上がるのよ。何もかも捨てて恋に落ちられたらいいのにね。」
先生は大人の笑顔。悔しいけど、素敵。
「せ、せんせぇっ・・・」
思わず声が上ずる。
「・・・第四問です。わ、私のこと、どう思いますか?私、先生のこと・・・」
さわ子先生はすっときれいな指を伸ばして私の唇を止める。
「ムギちゃん。」
先生はうっとりする位優しい微笑みをくれた。
「いい子だから、それ以上は言っちゃダメ。それ以上言ったら、苦しくなるわよ。」
「先生・・・だって・・・」
「言ったでしょ、憧れるって。憧れるのは実際にはそうできないから。私はあなたの先生なのよ?」
ずるいわ。そんな大人の回答。
「でも、先生、私・・・」
さわ子先生はふ、と目を逸らした。
「・・・あなたが私をどう思っていても私があなたをどう思っていても、あなたは生徒で私は先生。」

そんなこと、言われたって。私、先生みたいに大人じゃないもの。
「先生。」
私は唇を押さえていた先生の手を取った。きっと耳まで赤くなってる。
「・・・私っ、やっぱり3年2組の38人のうちの1人じゃ嫌です。2組の38分の1じゃなくってっ・・・」

「あなたの1分の1になりたいんです。」

「卒業式が終わったら、私が大人になったら、そしたらお返事聞かせてもらえますか?」
・・・言っちゃったぁ。
目に涙を浮かべてる私。
それなのに先生は相変わらず大人の顔。
「・・・ばか、ね。言っちゃダメって言ったのに。」
「先生、約束して下さい。私が大人になったら、ちゃんと答えてくれるって。」
「いいわよ。ムギちゃんが大人になったら、ね。」
悔しい。ちょっと仕返ししちゃえ。
「先生。でも子供には子供にしかできないことがあるんですよ?覚悟してください、ね?」
私はいたずらっぽい笑みを浮かべてウィンク。
「へっ?覚悟って・・・?」
私は同じく首をかしげる先生にかまわず続けた。
「先生・・・私まだ子供なので。恋多き年頃ですから。」
せっかくのチャンスだもの。一撃必殺の上目使い。そっと先生に寄り添ってみる。
「先行予約を入れておいていただけないでしょうか?」
「え?」
あ、先生真っ赤になってる。ふふっ、慌てさせちゃった。
「CDだって先行予約しますよね?私だって予約しないと・・・誰かに買われちゃうかもしれませんよ?」
ぺろっと舌を出して唇を舐める。うん。準備OK。
「たとえば、私の初回限定版。一枚しかリリースしないので、売り切れに気をつけて下さいね?」
私は先生を見上げたまま、目をつむった。
「ず、ずるいわよ、ムギちゃん。」
先生が大人の回答ばっかりするからですよ。
先生だからって諦められるくらいならとっくに諦めてるもの。
・・・まだかな。私はちょっとだけ薄目を開けて様子を伺う。
先生がうろたえている姿がうっすら見える。
「何?何よ・・・途中までは大人の女って感じで行けてたのに・・・」
「どうしよう、これ・・・食べちゃってもいいのかしら?・・・誰も見てないわよね?・・・待て待て、私は教師、私は教師、私は教師。」
うふふ。迷ってる迷ってる。口に出ちゃってますよ、先生。
その時だった。
先生の手が私の頬に触れる。
「・・・もー。しょうがないわねぇ。・・・このことは誰にも内緒よ?」
どきん。
どきどきどき。心臓の音、すごい。部室、こんなに静かだったかしら。
先生の吐息を唇に感じて、私は体を堅くした。

「おいーっす!」

その時。部室のドアが開いて、律っちゃんが入ってきた。続いて澪ちゃんも。
それを背中で感じつつ、私がつむっていた目を開けると先生はすでに机の上の書類に向かっていた。
「えーーーっと。ここがこうだからアレがアレで・・・えー・・・」
もう。
涙目で先生を睨みつける。
先生のへタレ。
私は目で先生に訴える。
だって。今のはしょうがないでしょ、今のは。
先生が目で言い訳してる。

「おー。さわちゃん、お勤めご苦労様でーっす。ムギー。今日のおやつは何ー?」
律っちゃんはそんなこととも知らず。
いつものように明るい笑顔で席につく。
もう。律っちゃんだけ今日はおやつ抜き!
もうちょっと遅く来てくれれば既成事実できちゃったのに。
・・・なんてね。そう、悪いのはヘタレな先生だものね。
「・・・今日はマドレーヌよ。今用意するわね。」
「おう、やっりぃ!早く早くぅー!」
私は手早くお茶とマドレーヌを用意して机に持っていく。
「・・・いつも悪いな、ムギ。」
澪ちゃんがみんなの分を置くのを手伝ってくれる。
「ううん、いいのよ、私が好きでやってるんだから。」
「おぅ、紅茶うんめー!・・・ムギはいいお嫁さんになれるなっ!」
律っちゃんったら。そういうこと言っちゃダメ。
澪ちゃんがすごく複雑そうな顔してるよ?
・・・ごめんね、澪ちゃん。今日だけだから、ね。
「うふふ、ありがと。じゃ、律っちゃんがもらってくれる?」
「へっ?・・・もらってくれるって、いや、お前、そんな・・・」
「あら・・・嫌?」
私は優しく微笑みかける。
だめね、律っちゃん。顔真っ赤よ?
他の子だったら、そんな態度取られたら誤解しちゃうよ?
「いや、その・・・嫌っていうか・・・だけど、お前そんな突然・・・」
がたん。澪ちゃんが椅子から立つ。
「・・・律。話がある。ちょーーーっと来い。」
「へっ・・・で、でも澪さん?・・・いや、あの・・・これは決してそういうんじゃなく・・・」
「いいから来い。」
律っちゃん、そこで目、泳がせちゃダメ。
真剣な瞳で「お前だけだよ。」って見つめれば、澪ちゃんだって一発で骨抜きなのに。
「あの・・・マドレーヌー・・・」
「後にしなさい!」
澪ちゃんは律っちゃんの耳を引っ張って強制連行。
律っちゃんの悲鳴を残して二人は部室を出て行った。
ほんとなら、ついてって仲直りのシーンを録画したいところだけど。
ごめんね、ごめんね、律っちゃん。すぐ仲直りできるよね?
全部、ヘタレな先生が悪いの。

「ねぇ・・・先生?」
「はっ・・・はいっ!」
すっかり慌ててる先生の顔。
「まだまだ子供な私ですけど・・・」
私はとっておきの笑顔を先生に向ける。
「案外、早く売れちゃいそうだと思いません?」

どうせ私は子供。まだ約束、ほしい年頃なんです。
「・・・ご予約は、お早めにどうぞ?」

このページへのコメント

麦サワー、美味しいです。この後、先生はどうしたのでしょう〜?

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Posted by 推奨します 2010年11月10日(水) 20:48:00 返信

さわムギGJ!
新鮮でいいですね、萌えます

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Posted by *** 2010年11月03日(水) 00:14:49 返信

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