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著者:3-655◆Joc4l4klOk氏


「ケンカ? 律と澪が?」
「うん、ふぉおなの。いひなりだったから私びっくりしひゃって」
両の頬を丸々といっぱいにして、唯はちっとも驚いたようには思えない口ぶりで話す。
冬服で過ごすのが心地よくなってきたある日、数日ぶりに和は、幼なじみの唯と一緒の
帰り道になった。
再びシーズン到来ののぼりを見つけて、これは買わねばとすばやい足取りで購入して
きた肉まんを頬張りながら、唯は続ける。
「突然ね、はふ、澪ちゃんが大声出しちゃって。私ケンカなんて見たこともしたことも
ないからちょっと怖かった」
「そうなの……、ほら、こぼれるよ」
バランス悪く崩れそうになった餡をあわててぱくりと口でキャッチし、唯ははにかむ。
にしても、あの軽音部でいさかい事とは。
そういうものとは無縁の5人(6人か?)と思っていただけに、不安になる。
しこりが残っていたりしないのだろうか。
「あ、そうだ。……はい、和ちゃん。ほかほかだよ〜」
「……いらないって言ったのに」
まあまあまあまあ、と食べかけの肉まんをずいと差し出してくる唯。
根折れて、一口だけ口に含む。
「うん、おいしおいし」
「でしょー!? あーむ」
和の素っ気無い返事に顔をほころばせて、ぱくぱくと残りを食べる唯。
正直、ここ数年なんの変化もない、いつもどおりのコンビニ肉まんの味だったのだが、
この子にとっては至福の味らしい。
「で、軽音部はだいじょうぶなの?」
自ら話を戻す。放っておくと肉まんに頭の中を占拠されかねない。
「へ? うん、だいじょぶだいじょぶ。なんかね、律ちゃんも澪ちゃんも前より仲良さげ
なんだー」
食べ終わった肉まんの袋を適当にくしゃくしゃと畳んで、制服のポケットにしまう唯。
たぶん、あれが発掘されるのは数日後だろう。いつものことなので、ことさら注意
しないことにする。
「雨降ってじ高まる、ってやつだねー」
「『固まる』ね」
おそらく『地』も正しく変換できていないだろう。隆起してどうする。


しかし、律と澪が、か。確かにこの間も様子が変だった。
律はもともとテンションの高い子だけれど、喫茶店や教室でのあの澪への絡み方は
そういうもので説明のつくものではなかった。
……もしかして。
「あのさ、唯」
「んー?」
妙にふらふらした足どりの唯に話しかける。何をしているんだろう。
「……もしかして、律と澪のそれって、私が関係してたりするのかな……?」
「えー、なんでー?」
少し視線を下に向けて、何やら一生懸命な唯。
原因が判明した。どうやら、市松模様の敷石の「白」の面だけ踏んで歩くルールらしい。
「いや、澪と私がいっしょにいるのが、律的に気に入らなかったのかな、とか」
「えー、どうしてー? だって律ちゃんもぉ、澪ちゃんもぉ、よっ、和ちゃんも、みんな
友達じゃん」
「……そうよね」
唯に聞いたのは無意味だったか、とため息をもらしつつ、ある意味唯の方が正しい
のかもしれないと、和はくすりと笑う。
「あー……」
今度は、唯がため息を漏らした。
横断歩道だった。

信号が青に変わる。
「たぶんね、律ちゃん風邪だったから、それで様子がおかしかったのかも」
唯には珍しく、少し真剣な表情で語る。
風邪、か。確かに体調が辛いときはつまらないことでイライラしたり、弱気になったり
するかもしれない。
「まあ何にせよ、仲直りしたのなら良かったわ」
「うんっ。えへへ、よっ」
小さく掛け声を上げて、歩道の縁石の上に飛び乗って歩き始める唯。
ギターケースを抱えて、両手でバランスを取りながら歩くその姿は非常に危なっかしい。


「ほら、車来るでしょ。降りな」
「わっ」
唯の袖をぐいと引っ張って降ろす。勢いそのままに、唯は和の右腕に抱きついてくる。
「えへへー」
何がそんなに嬉しいのか、へらへらと笑顔を浮かべる唯。
「唯、あんた太った?」
「ふ、ふぇっ!? なんで! どうしてそんなことを言うの和ちゃん!」
あたふたと慌て出す唯に、いや別に、と短く返す和。
同じ制服を着ているのに、なぜこの子はこんなに柔らかいんだろう。
「別にじゃわっかんないよぉ」
ずりずりと頬を摺り寄せてくる唯の頭を、はいはいと撫でる。
まるで犬みたいな手触りの髪の毛は、これも何故だかぽわぽわ暖かい。どうでもいいが、
この子は基礎体温が高そうだ。

「そう言えば、和ちゃんとケンカってしたことないねぇ」
「私が一方的に怒ってるけどね」
「えっ、あれって結構その、ホンキなの?」
和の胸元で急にオロオロし始める唯。その様子を見て、和はぷっと吹き出し、
「そんなことないない。でも、もうちょっとシャキッとしてほしいわね」
「ふむ、じゃあシャキッとする! シャキッ!」
なぜか右手を額に当てて敬礼する唯。ついに和は声を出して笑い始めた。
「もー、なんで笑うのー」
「あはは、ごめん」
真面目なのにーと口を膨らませる唯。その頬をつついてやろうかと思ったがやめた。

唯とケンカか。今までもなかったし、これからも起こりそうにないなあと、和は少し
赤らみ始めた空を見上げながら思う。
「あっ、和ちゃん喫茶店だよ! お茶していこうよぅ」
「さっき肉まん食べたでしょ。夕飯食べられなくなっちゃうよ」
「だーからお茶だけー」
言うより先に、喫茶店のドアに手をかける唯。
多分、10年たってもこのペースなんだろうなあとため息をつきながら、和は少し
笑って唯の後を追った。

「あ、イチゴとオレンジジャムのクッキーもお願いします!」
「……お茶だけじゃなかったの?」

  • END-

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