2chエロパロ板のけいおん! 作品のまとめサイトです。

著者:1-607氏


二人は何も話さない。
二人はただ楽しむ。

音楽室には、二人だけ。






‐せっしょん!‐






「ふいー。」
あたしはドラムの椅子に座ったまま伸びをする。

なんだかんだで30分くらいぶっ通しか。
時計を見ながらそんなことを考える。

今の今までセッションをしていたあたし達は30分ぶりに会話をする。

「なぁ、どうだった?今の。」

セッションに楽譜はない。
全部がアドリブ。そのとき気が向いたように音楽をしているだけ。
だからいい演奏が出来るときもあれば納得のいかない演奏になってしまうときもある。

「うん?途中から途中まではよかったぞ?」

「つまり、最初と最後は良くなかった・・・と。」
あたしは口を尖らせて嫌な言い回しで澪の発言を繰り返す。

「まぁまぁ。録ったのを後で聞けば良いだろ。」

そう。
元々オリジナル曲のヒントを求めて始めたセッションだった。
打ち合わせで使うだろうということで、その様子をMDで録音していたのだ。

あたし達はスティックやらベースやらを仕舞うと、ベンチのような形をした音楽室の椅子に座り直した。
そして先ほどの自分達の演奏を聞きながらお互いに文句を言い合う。

「大体なー、あそこから無理矢理テンポあげるからこんなグダグダになったんだぞー」
「いいじゃん。速いのが叩きたかったんだから。っていうか澪こそ!」
「なんだよ。」
「速くなったところから!ハーフで乗っかって手抜きしたろ!」
「あんなの律儀に付き合ってたら疲れるだろ。」
「あー今呆れながら言ったな!?違う、違うよ。」
「何が違うんだよ。」
「澪が珍しくピック弾きだったから、どこまでついてこれるかなーって思って速くしたの!えっへん!」
「えっへんじゃない!」

そこでバスッと澪の手刀が決まる。
あたしはあでっなんて言って額を押さえる。

「っていうかさー。なんで今日に限ってピック弾き?」
あたしはずっと引っかかっていたことを聞いてみた。

「澪、普段は指弾きだろ?」
そう、澪は普段はピックは使わない。曲によるけどな。
ピックで弾いた方がいい曲もあれば、指弾きした方がいい曲だってある。
もちろん、そのセレクトだってベーシストの判断、センスってヤツなんだろうけど。


暫し沈黙。
その後返ってきた言葉は意外なものだった。

「ピック弾き、苦手だから・・・。」
「苦手だから?」
「出来るだけ曲で使いたくないんだよ。」
「・・・何言ってんだ?練習なんだから別にいいだろ?」
呆れた・・・。澪の『失敗して恥をかきたくない』って気持ちもわからないでもないが・・・

「メンバーに遠慮してどうすんだよ。」
それがあたしの率直な意見だ。

「遠慮って言うか・・・指弾きの方が慣れてるからそっちにいっちゃうんだよ。」
「うーん、じゃあなんであたしとのセッションはピック使ったんだよ?」

「練習。」
わーお、スパッと言い切りやがった。
もちろん澪のこういうとこ、嫌いじゃないんだけどね。

「自分が今ピック弾きでどこまで弾けるのか、どんなフレーズを思いつけるのか知りたかったんだよ。」

「あー、なるほどね。」
それ以上言い返す言葉がなかったあたしは黙る。
もちろん、澪も何も言わない。


結局、あたし達が再び口を開いたのはMDが終わった後だった。

「なぁ律。唯達、遅くないか?」
「うーん、すぐ帰ってくると思ったんだけどなー。」

いつも通りお茶をして。
さて、練習をしようかってときに唯のギターのストラップが取れたのが始まりだった。

見てみると取れたのはストラップじゃなくて、ストラップピン。
しかもネジ穴がバカになっていて付かない。

買ったばっかじゃ普通こうはならないぞ?と澪が聞くと恥ずかしそうに唯がくねくねしながら言ったんだ。

「えへへー、あのね、ストラップつける金具がネジで止まってるのが凄い意外でねー。
くるくる回すのが楽しくって・・・。その、つい何度もつけたり外したり・・・」

呆れて何も言えなくなるあたし達。
ムギが「確かにそういうのって一度気になると止まりませんよね」なんてフォローに入るが、
それでギターが治るわけもなく。

仕方がなく、ムギと唯は最寄の楽器屋までリペアを頼みに行ったのだ。


「あれから3時間かー。」
澪が天井を見ながらぼやく。

「あれから3時間だよー。」
なんとなくあたしも真似する。


「なあ。さっきの、セッションの話なんだけどさ。」
澪がこんな切り替えし方をするときはいつだってちょっと重たい話だ。
あたしは知ってる。
でも、気になるから「ん?何?」なんて言って先を促す。

「『このスピードについてこれるかなー』って、あたしを試したのか?」
なんだよ、やけにつっかかるじゃん、澪のヤツ。
言い終わると同時にあたしを見つめる。
というか睨んでる。・・・ちょっと怒ってるな、こりゃ。

「別にそんな嫌な意味じゃないよ。ただ・・・」
「ただ?」
「ピック弾きの状態であのドラムパターンに乗っかって、澪がどんなベース弾くか興味があったんだよ。」
「なんだそれ。」

「でも結果は散々だったねー。」
あたしは溜息をつきながら言う。

「散々って、どういうことだよ。」
もちろん、澪は食って掛かってくる。

「だって、あしらわれちゃうんだもん。つまんなーい。」
「言ったろ。あんなスピードに律儀について行くつもりはない。例えルートで弾いてもめんどくさい。」
「うっわ、ひでぇ。」
「大体、そんなの暑苦しくてあたしは好きじゃない。」

「あ・・・はい。すみません。」
ここまで言われるともう謝るしかない。

「あ、でも勘違いするなよ?律のドラムは好きだから。」
「ばかやろー、ドラムだけじゃないだろ。澪さんは律さんが大好きなんだろー?」
「バカはお前だ。それとこれとは話が別だ。」

またもやスパッと一刀両断。
でも否定はしないんだよね、この人。

「・・・ああいうベースがあたしのベースなんだ。・・・それじゃ駄目か?」
そう言う澪の目からは先ほどの怒りの色はとっくに消えていて。
今度こそあたしを見つめていた。

「駄目、なわけないだろ。」
普段は騒がしいくせに、こんなことしか言えない自分が酷く情けない。
咄嗟に視線を逸らした瞬間、何故か『あぁ負けた』と思った自分がいる。

「っていうかさー、澪。」
澪を想う気持ちがデカすぎて、処理しきれなくなった感情の塊が
あたしの口を突いて出た。

「学校ではあんまり可愛くすんなって言ってるだろ。襲っちゃうぞ?マジで。」
言った直後に唇を重ねている自分もちょっとズルいよな。
でも、無理なもんは無理。
我慢できません。

あたしはいとも簡単に澪を押し倒す。
椅子の上だから、服は汚れないよな?
変なところで冷静な自分がちょっとおかしくて、口元だけで笑った。

小さな力で抵抗する澪。
そんなんで振り払えるワケないの、わかってるくせに。
なぁ、澪だって本当はしたいんだろ?

バタン!

「おまたせー!ギター治ったよ!」

「遅くなってごめんなさい!」

扉を開けながらムギと唯が同時に喋る。
二人の視界に広がるのは言い訳不可能な現場。
そう、決定的な現場。

・・・バタン。


ドアが再び閉まった。
二人はどうやら廊下に出たようだ。

「うふふふふふふふふふふふふふふふふふ・・・」

なんだろう、ムギが不気味に笑っているような・・・
しかし今はそんなことよりも気にすべきものがある。

あたしは恐る恐る澪に視線を戻した。


「律?学校ではこういうことすんなって言ってるだろ。ぶっ殺すぞ?マジで。」
ですよねー。



この後、あたし達の仲が公認のものになったことは言うまでもないだろう。
この直後、あたしが澪に半殺しにされたのも、言うまでもないだろう。

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