2chエロパロ板のけいおん! 作品のまとめサイトです。

著者:青太郎氏


 ……朝か。それにしてもなんだこの痛み。頭が頭痛だ。頭がパーンしそうだ……。
それにすんげえだるい。何この倦怠感。あと腰いてえ。
「ぬおっ」
 何で俺すっぽんぽん? WHY? なぜ?
 おかしいな。酒飲んで俺、それからどうしたっけ……?
 横でもぞもぞ動くものがあり、布団をめくれば、
「う〜ん、朝……?」
 憂がまるで冬眠から目覚めたクマのように這い出てきた。寝ぼけ眼が俺をとらえると、
とたんに「にんまり」という擬音がつきそうな笑みを伴ってすりよってきた。ってお前も裸かい。
「お兄ちゃんおはよう。昨日はすごかったね」
 ああ、そうですか。これがあの『酔った勢いで……』ってやつですね、わかります。わかりたくないけど。
「そうかい。腹にかかってる液体については見なかったことにするよ」
「もう。自分でかけたくせに」
 記憶にございません。
「でも激しいのもいやじゃないから……」
 そんな頬を染められても……。しかし一体どんなプレイをしたのやら。
くそ、頭が痛くなるばかりでまるで思い出せない。しかし今日が休日で助かった。ゆっくり休養していよう。
「…………唯、やめろ」
 布団を持ち上げれば、俺のマイサンにおイタしている唯がおったとさ。
「なんでこんなにしぼんでるの?」
「そんな悲しそうな顔するな」
 なんか俺がすごくアレな人に見えるじゃないか。


 最終章


「よっ」
「あ、おにいちゃんだー」
 とたとた寄ってくる憂をよっこらしょと抱きあげる。うんうん、この感触はいいものだ。
「ちゃんと面倒見のいい妹やってたんだな」
「うん!」
 えへんと胸を張る憂いに苦笑しつつ、俺は頭を撫でる。
「でももう少し俺を自由にしてほしいな」
「それはだめ」
「どうして」
「だっておにいちゃんしらないおんなのひととすぐなかよくなるでしょ」
「そんな気はないんだけどな」
 小さな手が俺の両頬をはさむ。幼い視線とぶつかる。
「おにいちゃんはういだけみてればいいの」
「お姉ちゃんが怒るぞ」
「だいじょうぶ。おねえちゃんとはんぶんこするから」
「そうかい」
 憂をおろし、俺は手を振る。
「また後でな」
「うん、ばいばい」




「で、お前は何やってるんだ」
「ざりがにつり」
 糸を垂らしているこいつの眼差しは真剣そのものだ。これを褒めるべきか否か……難しいところだ。
「……そのバケツ一杯のザリガニさんを唯ちゃんはどうするつもりだい?」
「のどかちゃんにあげるの」
「……きっと喜ばないと思うぞ」
「だいじょぶ」
 何が大丈夫なのかわからないが、つっこんだら負けのような気がしたのでスル―。
「もういっぱいだー」
 一匹の入る隙間もなくなったところで唯は釣りをやめた。俺は一仕事終えたそいつを膝に乗せて座る。
「ギターは楽しいか」
「うん、ふくきせたりね、ごはんたべさせたりね……」
 つっこんだら負け、つっこんだら負け……。
「そうか。それはよかった」
「おにいちゃんはたのしい?」
「お前らのおかげで何とかな」
「そうか。それはよかた」
 軽く小突くと、唯ははにかんで俺の胸に顔をうずめた。その短い髪を、ゆっくり撫でる。
「えへへ」
「お前と憂に会えてよかった」
「うん、よかた」




「…………あれ」
 起きると誰もいなかった。つつ……まだ二日酔いが残ってやがる。
だるさと腰がマシになっただけでもよしとしよう。
「あ、起きたんだね」
 がちゃりとドアが開き、お盆を持った憂が入ってきた。
「おかゆ作ったんだけど食べられる?」
「ああ、わるい」
「いいよ。口にあうといいんだけど……」
 ふぅふぅして冷ましてもらえるのはいいんだが、そろそろさじを渡してもらえませんかね。
「はい、あーん」
「……しなきゃだめ?」
「だ・め」
 うぅぅ……。しかたあるまい。俺は差し出された美味しそうなおかゆを迎えるために口を開いた。
「あーん」
「あ、あーん」
 おいしゅうございました。
「十年か。昔は片膝にのってたのになあ」
「十年も待ってたら大きくもなるよ」
 あぐらをかいた俺の足の上にのっている憂が小さく笑う。十年……ずいぶん待たせたな。
「ほら、おっぱいだってこんなに」
「よしなさい」
 見せようとする憂の手をとめ、そのまま抱きしめる。あのころから変わらずのぬくもり……。
「十年も待たせたんだよな」
「うん」
「すまん」
「だってそういう約束だったから」
 そこで憂は頬を膨らませて、
「ちゃんと責任とってよね。ずっとお兄ちゃん一筋だったんだから」
「モテて苦労した口か」
 奇遇だな、俺もだ。
「大変だったんだよ。スカートめくりはされるし、からかわれるし……ラブレターも……」
「俺も服を取られたりストーカーにもあったり、身の毛がよだつような贈り物をされたこともあったな」
 どれも今ではいい思い出に……ならんな、ちっとも。
「お互い苦労するな」
「それだけされてよくいままで無事だったね……」
 困ったような顔した憂に首を傾げつつ、俺は再び横になった。


「おー」
「……何してる」
「一人で寝てたらさびしいかろうと思って」
「降りろ」
「ほーい」
 息苦しさで起きるのはたいていこいつが原因なんだよな、まったく。
「憂は?」
「買い物」
「そうか。……だいぶマシになってきたな」
 頭痛も気にならない程度にまで落ち着いた。やけ酒なんてするもんじゃないな。
あれ、でもなんでやけ酒したんだっけ……?
「ねえ」呼ばれてみれば、唯の珍しい真面目顔。どうした。
ついに自分のあまりのなまけっぷりが危険と感じたか。
「キスしよっか」
 俺の疑問と唯の突進はほぼ同時で、そうなると衝突するのは唇だけじゃないわけで……。

 ガチッ

「――ッ!? いったぁぁぁぁあい〜〜!」
 涙目になってゴロゴロする唯のそばで、俺はうめきながら悶絶。
ぬぉぉおぉおお。いてえ。歯と同時に頭痛もキツいのがきた……。
「いはいろおにいひゃん……!」
「こっちのセリフだバカタレ」
 よよよ、と泣きついてきたこいつを条件反射で撫でている自分がなんとも複雑。
「ったく、いつも突然で強引だな、お前は」
「でへへ。照れますなあ」
「褒めてねえよ!」
 だからこいつの演奏はいつもピーキーなのかとどこかズレた納得する俺。
「まったく。そんなんだからいつまでも下手なんだよ」
「ぶーぶー。そんなことないもーん」
 ため息しつつも撫で続け、
「だから……うまくなるまで教えてやるよ」
 すると恐ろしいほど瞳を輝かせて、
「じゃあずっとうまくなんなくていいや!」
「おいこら」
 

 ――――時というのは残酷で。


「おーい、無理してめかしこまなくていいぞー」
「だってこれひょっとしたら結婚式のスライドショーに使われるかもしれないよ。ちゃんとしなきゃ」
「ええっ!? ならわたしもとっときの服きてこよっと!」
「お前ら日が暮れるぞ!」
 家の前で写真撮るだけなのに何やってんだか。俺は平沢家を見上げる。
この数カ月、すっかり入り浸っている。もう家の隅々が自宅のように感じてしまう。
「見て見て! どぉう?」
「あー、七五三?」
 がっくり肩を落とし「無念なり……」と去る姉と入れ替わるように妹が現れ、
「どう、かな」
 そんなに恥ずかしそうにするなら最初から着なければいいものを。
「……綺麗なドレスだが今回は自重しようか」
「もう。分からずや」
 俺に何を分かれと。そして分かってどうしろと。


 ――――記憶は薄れ、人は老いる。


「まったく。写真一枚撮るのにどんだけ時間かけてんだ」
「ちぇっ、いいじゃんべつに」
「唯、お前シャッター係な」
 口先尖らして不平を言う子にはおしおきです。
「そんな殺生な!」
 おろおろする唯を尻目にカメラをチェック。よし、バッチリ。
「でもどうして急に写真撮ろうと思ったの?」
 三脚を憂から受け取る。ドッキングモード、ドッキングモード。
「忘れたくないからな。今のお前らも、俺自身も」
 

 ――――けれど。


「ほら、準備できたぞ。唯、沈んでないで早く来い」
「わあい」
 こいつの浮き沈みの激しさにすっかりなれた俺は、唯が収まっているのを確認してタイマーをセット。
「ほら、撮るぞ」
 二人の間に入り、時を待つ。まっすぐ前を見ていると、両頬に柔らかい感触。懐かしいというか、なんというか……
 カシャリ。
 ……ま、いっか。


 ――――不変もまたそこに存在する。



 エピローグ

 決着のついていない過去がまだ俺にはあるわけで、
それをどうにかしないといけないと今更ながら思ったわけで……。
 まあ、動機はそんなもんだ。

 とある酒場でしばらく待っていると、やがてそいつは来た。
店内には俺しかいないのに、やたらきょろきょろしている。
「俺しかいねえし俺しかこねえよ」
「…………」
 いつものしかめっ面をさらにしかめて、さっさと背中を見せるそいつをひきとめる。
帰られちゃ困るんだよ。
「どんな罵倒も暴力も構わない。だけど――」
 俺は用意した日本酒と杯を取り出す。結局こういうことしか思い浮かばなかった。
仲直りの握手とか、プレゼントとかなんて俺たちには似合わないし、そんなことじゃこの溝はうまらんだろ。
「一献だけ付き合え」
 しぶしぶいやいや座ったそいつは乱暴に杯を手にし、酒を注ぐ。
俺もそれに倣う。乾杯なんてあるわけはなく、しばし睨み合って、それからほぼ同時に口をつけた。
「……不味い酒だ」
「まったくだ」
「だが――」
 しかめっ面がわずかに綻ぶ。久しく見ていない、昔はよく見ていたその表情が、
俺にはひどく貴い。これだけで、ここに呼んだ価値があったというものだ。
「ああ」




            ――――悪くない。

 
  


 ギタールート  〜ハッピーエンド〜 
    

【おしまい】
 

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