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著者:11-780氏

今にも泣き出しそうな女の子が座っている。
私の幼馴染、秋山澪。
外は真っ白な世界で、締め切った部屋に、空調の音だけが響いている。
張り詰めた空気だった。

「このまえの、こたえ」
「……うん」

震える声で澪は言う。
まるで死刑宣告を受ける被告人みたい。
それも、悪いことなんてなにもしていないのに、
きっとこれから私が言うことが、世界のおわりを告げる審判だと
勝手に決め付けている、冤罪者だった。

私は澪が、とびきりの笑顔を取り戻せると確信して、その言葉を告げる。

「……え、」

けれど澪は、なにを言われたのかわからないといった表情で、私を見て、
だから私は、もう一度、それを口にする。

「えと、」

それでも澪は、やっぱり状況が飲み込めないらしかった。
おかしいな、こんなはずじゃ、なかったんだけど。

「なんだよう、嬉しくないのかー?」

澪の反応が思惑とちがくて、私はちょっとだけふてくされたみたいに言う。
早く、笑ってほしかった。張り詰めた空気なままなのは嫌だった。

「ううん、ちがう、でも、」
「私は本気だからな」

悩みに悩んで出したこたえだった。あの日から一週間、ずっと考えて、
眠れない夜もあって、澪ともろくに話もできない、つらい日々だった。
それを乗り越えて、決心して、私は今日ここに居る。
きっと澪はまだひとりだった。誰からの声もとどかず、誰の姿もかすんで
見えてしまう、鈍色の世界に、ひとりで居るつもりだ。
今、そこに手を伸ばして、澪に触れてあげられるたったひとりの人間が、
元居た場所へと連れ戻した。それに気づかせたくて、私は、
澪の肩に手をやり、じっと目を見つめる。


「うん、律、ありがと……、わ、だめ、だめっ……」

すると澪は一瞬ほころびを見せて、けれど次には堰を切ったように涙を溢れさせる。

「わ、なに泣いてんだよっ」
「ちがうんだ、うれ、しくて、」

私はロマンチストにはなれないと思った。
こんなに泣いている澪に、気の利いた言葉ひとつも出てこない。
だから代わりに澪を、抱き寄せた。

「ごめん、しばらく、とまんない、かも」

全部流れ出てしまえばいいと思った。きっとこれは、澪の不安とか、恐さだとか、
そういうものが、今まで溜め込んでた分、爆発しちゃったものだから、
涙といっしょに追い出してしまって、そうしてからっぽになった部分を全部、
私で埋めてほしかった。

「いいよ」

温かい、澪のからだ。
一生離さないでやろうと思う。

その日は一晩中、澪といっしょだった。






このページへのコメント

あれ・・・目から汗が・・・

0
Posted by 京汰 2010年03月12日(金) 18:12:51 返信

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