最終更新:ID:10ZRTxpdJw 2009年10月25日(日) 22:05:16履歴
「あっついよぉ〜!みぃ〜お〜!」
分かってるよ。
暑いってことくらい。
「なんとかしてよぉ〜。」
なんとかできるんならとっくにやってるよ。
溜息をひとつついて、私も呟く。
「あつい…。」
って言ってるのにこいつは・・・。
「だぁぁぁぁぁ!!もうっ!暑苦しいからひっつくな!」
さっきからぺたぺたひっついてくる。
「だってあちぃんだもん。」
ぶ〜と言いながら、またひっついてくる。
はぁ、とまた溜息をつく。
なんでこんなことになったんだろ。
数時間前のことを思い出す。
******************
「暑いなぁ…。ただいま」
返事はない。
そうだ、今日はお母さんとお父さんはPTAの旅行に行ったんだっけ。
とりあえず部屋に向かい、荷物を置く。
・・・・・・・・
寂しくない寂しくない寂しく…
ガチャ
!?
あ、あれ…、私、鍵、閉め、忘れた…?
とたとたとた…
あ、足音が、近付いて、く、る。
あああああ足が、うご、動かない…。
とたとたとた…とた
あ、足音が、と、とまっ…
「あっ!いたいた、みぃ…
いやぁぁぁぁぁぁっぁぁぁxっぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
*******************
「あっはは!いやいや、驚かせちゃってごめんな、澪。」
私は体育座りで涙目。
律はあははと軽い調子で謝ってくる。
「いやぁ…、でも、澪も悪いんだぞ!ちゃんと鍵かけないから!」
そう言われると返す言葉が見つからなくて、私は床を睨みつける。
「みぃお!拗ねるなよ!」
取り繕うように律が言う。
はっ!そう言えば…。
「…なんで律はうちに来たんだ?」
「澪が1人でいると思うと心配で。」
「嘘だろ」
「なんで?」
「顔見ればわかるよ。」
律の顔には書いてある。
嘘だって。
大体なんで今日、私が1人だなんて分かるんだよ?
「何年幼馴染やってると思ってるんだよ。で、どうしたんだ?」
改めて尋ねると、律は少し頬を染めた。
「い、いやぁ…。澪に会いたくなったんだよ。」
いったい何を言い出すのかと思えば…って
「えええええええぇぇええぇえぇ!?」
ななななな、何を言い出すんだ!?
りりりり、律の奴!
頬に感じる妙な感覚…って
「律?痛い!」
目の前に広がるしてやったりな律の顔。
私の頬をつまんでいる。
「うそだよ〜ん。」
唖然とする私。
満足げな律の顔。
「さっきは見破られちゃったから、今度は本気でやってみた。」
あんな顔されたら騙されないわけないだろ。
「律、そろそろ手を離せ。」
騙されたことに少しの苛立ちと寂しさを感じた。
律が手を離す。
自分から言ったことなのに、なんか少し寂しかった。
「で、結局どうしたんだよ?」
話を元に戻す。
「いやぁ。実は今日、お父さんもお母さんもいないんだ。」
「PTAか?」
「うん!多分そう!」
「私んちもそうなんだ。」
「う〜ん、それでな。あたし、すっかり忘れちゃっててさ。」
「ま、さか?」
「あたし鍵とか持ち歩かないからさぁ…。」
「え?いや、でも、聡はいるだろ?」
「今がチャンスとばかりに友達んちに泊まりに行ってて…。」
「…」
「澪以外に頼る人がいないんだ!」
「…。はぁ。」
「もしかして、嘘ついたこと怒ってる?ごめん!謝るから!」
顔の前で両手を合わせて必死に話す律を見て、笑みが零れる。
「はぁ、もう。ほんとしょうがないな、律は。」
律はぱぁっと表情を明るくする。
「これだから、澪大好きぃ!!」
そう言って抱きついてきた律。
胸がドキってなった。
「あ、暑いな。絶対室内温度上がったぞ。」
ごまかすように言いながら、私はリモコンに手を伸ばす。
「おっ!エアコンつけてくれるのかぁ!今日みたいな天気だと必須だよな!」
ポチ。
「あ、あれ?」
「ん〜?どうした〜?」
「…つかない。」
「え…?」
****************
私の部屋のエアコンは壊れていた。
そんなこんなで冒頭に戻るわけだけど、私がいろいろ回想している間にエアコン問題は解決した。
幸い、リビングのエアコンは無事だったのだ。
「ふぁぁ〜極楽極楽。」
律はそう言いながらソファに腰掛ける。
「どこのおじさんだ。」
私も律の隣に腰かけた。
「あ、そだそだ。澪しゃ〜ん。」
「ん?」
「服貸して?」
「いつものでいいか?」
「うん。よろしく〜」
あまりにも律はよく泊まりに来るから、律のお泊まりセットは一通り揃っている。
私も着替えて来よう。
リビングから出ると地獄のような暑さが私を迎え入れた。
「あつ…。」
憂鬱な気分になりながらも、私は階段を上った。
************
「ほら、持ってきたぞ。」
律にいつものようにお泊まりセットを手渡す。
「おー澪、遅かったなぁ。」
「え、あ、いや…。」
「まぁこの暑さだしな。服がはり付いたんだろ。」
ニッっとこっちに笑顔を向けながら律は言う。
それは半分当たってて、半分外れだった。
律のこと考えてたら遅くなったなんて、言えるわけないよ。
「んーやっぱりエアコンは快適だねぇ。」
律の声で現実に引き戻される。
って、律!!
「なんでお前はここで着替え始めるんだ!!」
いつもはお互いにお風呂入った時に着替えるじゃないか!
ん?お風呂?
「だってぇ〜エアコンのおかげで着替えやすくなってるんだぞ。それに、女同士なんだし、そんな恥ずかしがるようなもんでもないだろ?
い、いや確かにそうなんだけど…。
なんかさっきから妙に律のこと意識しちゃって…じゃなくて。
「その前にシャワーでも浴びて来いよ。汗が引いたって言ってもそのままじゃ気持ち悪いだろ?」
「それもそうだな!澪も一緒に入るか?」
半裸の律が私に尋ねる。
「私は律の後に浴びるよ。」
律がこの部屋を出ていくのを見届けて、私は自分に問いかける。
私、どうしちゃったんだろ?
なんか変だよ。
いつもは抑えられるのに…。
止まらない。
止まれなくなってる。
律が、律のことが、愛おしくて愛おしくてしょうがなくなってる。
エアコンが効いているはずなのに、顔が、体が熱くなるのを感じた。
「かっ!顔洗ってこよう!」
自分に言い聞かせるように、わざと大きな声を出す。
冷たい水が気持ちよかった。
ザァーッ
あれ?
雨、降ってる?
窓を開けると、昼間の天気が嘘のように雨が降っていた。
この音にも気づかないなんて、本当にどうかしてる。
窓を閉め、リビングに戻り、ソファに体育座り。
頭に流れる律の言葉。
「澪大好きぃ!」
鳴り止まない。
律が言ったこの言葉はきっと私のものとは違う。
だけど、この上なく嬉しくて。
この言葉がきっと私をおかしくさせてる。
分かってても、期待しちゃうんだよ?律。
**************
「うはぁー気持ちよかったぁ!」
律がお風呂から上がってこちらへやって来る。
トレードマークのカチューシャを外してて。
垂れる前髪。
乾ききってない髪。
少し上気した顔。
……やばい。私、やばい。
このままいたら、本当にやばいよ。
「あ、そーだ!澪、」
「次は私の番だよな!」
何かを言おうとした律を遮って私はお風呂へ向かおうとした。
…そのとき。
カーテンの向こうがピカッと光り、同時にゴォーンとけたたましい音が響いた。
「やぁぁあぁぁぁぁぁあぁ!?」
そして、電気が消えた。
雷が落ちたんだ。
私はその場にうずくまってかたかたと震えた。
雷が、暗闇が、怖かった。
ふって感じた律の匂い。
「まったく、雷が鳴ってることに気付かなかったのかー?」
すぐ近くに感じる律の吐息。
「澪は鈍感だなー。」
後ろから、抱きしめられた。
「大丈夫。私がいるよ。」
全身で感じた安心感。
そして、溢れ出した想いが、涙になって頬を伝わった。
「ぐすっ、り、律…。」
私が呼べば、
「ん、怖かったんだよな。もう大丈夫だよ。」
返事をくれる。
それにまた涙が込み上げる。
「え?」
頬に違和感を覚えた。
でもそれは、さっきのとは違くて。
律の頬が、私の頬に当たっていたんだ。
「澪。」
律が私を呼ぶ。
律は頬を離した。
「澪は泣いてる所も可愛いよ。だけど…」
律はそこで言葉を止める。
頬に暖かいものを感じた。
「だけど、笑ってる時が1番可愛い。」
律が、私の涙を舐めとっていた。
律の言葉とその行動に嬉しさ、恥ずかしさ、いろんな感情が混ざり合って、込み上げてくる。
「澪。」
舐めるのを止め、律が私を呼ぶ。
「澪はさ、鈍感だから知らなかったと思うけど…」
律がさっきより強く私を抱きしめた。
「あたし、澪が好きなんだ。」
耳を疑った。
「大好きなんだ。」
幻聴かと思った。
夢かと思った。
「友達としてじゃなくて…」
律が私と同じ気持ちを抱いてるなんて、全く思ってなかった。
「や、やっぱり気持ち悪いよな。」
「・・・くない。」
「え?」
「気持ち悪くなんかない。」
さっきとは違う涙がまた溢れて。
止まらなくて…いいよね?
律の腕の中で向きを変える。
「私も、私も同じなのっ!」
律の胸に顔をうずめ、抱きついた。
「み、みお…?」
伝えよう。
今まで抑えてきた気持ちを、ありったけの想いを。
「律…。私も律のことが好きっ!…大好きなんだ!」
律が震えてるのが伝わってきた。
かすかに漏れる嗚咽。
私は顔を離す。
「律。」
さっき律がしてくれたことを今度は私がする。
律の涙はしょっぱくて、切なくて、嬉しかった。
「澪。」
目が合った。
なんでだろ、懐かしい感じがする。
停電は未だに回復しなくて、部屋は真っ暗。
なのに、律の姿ははっきり見える。
なんでだろ、不思議だな。
垂れた前髪に隠れているけど、律の目は真っ赤で。
それに負けないくらい頬も赤く染まっていて。
すごく、愛おしかった。
「…好きだよ、律。」
律の可愛い唇に、私の唇を寄せる。
律の唇は柔らかくて。
気持ちよくて。
気が変になりそうだった。
律をもっと欲しくなった。
「律…。」
お泊まり用の律の少し大きめのTシャツの裾に手をやった。
「みお…?」
体温が上がってる気がするのはエアコンが止まったからなのか、それとも…。
「律、いいよね?」
同意を求めるように律を見上げる。
律は優しく微笑んで、私に唇を寄せる。
「ん!?」
律の舌が入ってきて思わず声が漏れた。
私も必死に舌を伸ばす。
お互いの舌が絡み合う。
漏れる声、絡み合う音、零れる唾液。
全てが私を刺激する。
頭がじぃんってなって。
「んん・・・りつぅ。」
もうなにも考えられない。
今はもう、律しか見えない。
律のシャツを捲りあげようとした。
パッ
いきなり周囲が明るくなった。
とっさに唇を離す。
明かりに照らされて、恥ずかしさが体中を駆け巡った。
うぁぁーー。
私、なにをしてるんだ!
「あっは!で、電気回復したみたいだな!」
律が明るく言って、私から体を離す。
私はさっきと違った意味でなにも考えられなくなってる。
フッとまた電気が消えた。
え?また停電?
あ、でもエアコンは動いてる。あれ…?
「澪…。」
後ろから律が混乱してる私の耳元で囁いた。
「続き、しようよ。」
「あ…。」
律が私の耳を口に含むから、私はさっきの感覚を思い出していくんだ。
耳から口を離した律の方に向き直して、私と律は3度目のキスをした。
さっきと同じ、いや、それ以上に深い、深い。
律が好き。大好きだ。
頭の中が律で埋まってく。
律が欲しい。
もっともっと…。
私はその感情に身をゆだねた。
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(*´ω`*)百合カワユス
早く続けて!