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著者:別1-370氏


「あっついよぉ〜!みぃ〜お〜!」

分かってるよ。
暑いってことくらい。

「なんとかしてよぉ〜。」

なんとかできるんならとっくにやってるよ。
溜息をひとつついて、私も呟く。

「あつい…。」

って言ってるのにこいつは・・・。

「だぁぁぁぁぁ!!もうっ!暑苦しいからひっつくな!」

さっきからぺたぺたひっついてくる。

「だってあちぃんだもん。」

ぶ〜と言いながら、またひっついてくる。



はぁ、とまた溜息をつく。
なんでこんなことになったんだろ。


数時間前のことを思い出す。


******************



「暑いなぁ…。ただいま」

返事はない。
そうだ、今日はお母さんとお父さんはPTAの旅行に行ったんだっけ。
とりあえず部屋に向かい、荷物を置く。


・・・・・・・・



寂しくない寂しくない寂しく…


ガチャ



!?



あ、あれ…、私、鍵、閉め、忘れた…?


とたとたとた…


あ、足音が、近付いて、く、る。


あああああ足が、うご、動かない…。


とたとたとた…とた



あ、足音が、と、とまっ…



「あっ!いたいた、みぃ…


いやぁぁぁぁぁぁっぁぁぁxっぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!!!!!



*******************



「あっはは!いやいや、驚かせちゃってごめんな、澪。」

私は体育座りで涙目。
律はあははと軽い調子で謝ってくる。

「いやぁ…、でも、澪も悪いんだぞ!ちゃんと鍵かけないから!」

そう言われると返す言葉が見つからなくて、私は床を睨みつける。

「みぃお!拗ねるなよ!」

取り繕うように律が言う。
はっ!そう言えば…。




「…なんで律はうちに来たんだ?」

「澪が1人でいると思うと心配で。」

「嘘だろ」

「なんで?」

「顔見ればわかるよ。」

律の顔には書いてある。
嘘だって。
大体なんで今日、私が1人だなんて分かるんだよ?

「何年幼馴染やってると思ってるんだよ。で、どうしたんだ?」

改めて尋ねると、律は少し頬を染めた。

「い、いやぁ…。澪に会いたくなったんだよ。」

いったい何を言い出すのかと思えば…って

「えええええええぇぇええぇえぇ!?」

ななななな、何を言い出すんだ!?
りりりり、律の奴!

頬に感じる妙な感覚…って

「律?痛い!」

目の前に広がるしてやったりな律の顔。
私の頬をつまんでいる。

「うそだよ〜ん。」

唖然とする私。
満足げな律の顔。

「さっきは見破られちゃったから、今度は本気でやってみた。」

あんな顔されたら騙されないわけないだろ。

「律、そろそろ手を離せ。」

騙されたことに少しの苛立ちと寂しさを感じた。
律が手を離す。
自分から言ったことなのに、なんか少し寂しかった。

「で、結局どうしたんだよ?」

話を元に戻す。



「いやぁ。実は今日、お父さんもお母さんもいないんだ。」

「PTAか?」

「うん!多分そう!」

「私んちもそうなんだ。」

「う〜ん、それでな。あたし、すっかり忘れちゃっててさ。」

「ま、さか?」

「あたし鍵とか持ち歩かないからさぁ…。」

「え?いや、でも、聡はいるだろ?」

「今がチャンスとばかりに友達んちに泊まりに行ってて…。」

「…」

「澪以外に頼る人がいないんだ!」

「…。はぁ。」

「もしかして、嘘ついたこと怒ってる?ごめん!謝るから!」

顔の前で両手を合わせて必死に話す律を見て、笑みが零れる。

「はぁ、もう。ほんとしょうがないな、律は。」

律はぱぁっと表情を明るくする。

「これだから、澪大好きぃ!!」

そう言って抱きついてきた律。
胸がドキってなった。


「あ、暑いな。絶対室内温度上がったぞ。」

ごまかすように言いながら、私はリモコンに手を伸ばす。

「おっ!エアコンつけてくれるのかぁ!今日みたいな天気だと必須だよな!」

ポチ。

「あ、あれ?」

「ん〜?どうした〜?」

「…つかない。」

「え…?」



****************


私の部屋のエアコンは壊れていた。
そんなこんなで冒頭に戻るわけだけど、私がいろいろ回想している間にエアコン問題は解決した。
幸い、リビングのエアコンは無事だったのだ。

「ふぁぁ〜極楽極楽。」

律はそう言いながらソファに腰掛ける。

「どこのおじさんだ。」

私も律の隣に腰かけた。

「あ、そだそだ。澪しゃ〜ん。」

「ん?」

「服貸して?」

「いつものでいいか?」

「うん。よろしく〜」

あまりにも律はよく泊まりに来るから、律のお泊まりセットは一通り揃っている。
私も着替えて来よう。
リビングから出ると地獄のような暑さが私を迎え入れた。

「あつ…。」

憂鬱な気分になりながらも、私は階段を上った。


************


「ほら、持ってきたぞ。」

律にいつものようにお泊まりセットを手渡す。

「おー澪、遅かったなぁ。」

「え、あ、いや…。」

「まぁこの暑さだしな。服がはり付いたんだろ。」

ニッっとこっちに笑顔を向けながら律は言う。
それは半分当たってて、半分外れだった。

律のこと考えてたら遅くなったなんて、言えるわけないよ。


「んーやっぱりエアコンは快適だねぇ。」




律の声で現実に引き戻される。
って、律!!

「なんでお前はここで着替え始めるんだ!!」

いつもはお互いにお風呂入った時に着替えるじゃないか!
ん?お風呂?

「だってぇ〜エアコンのおかげで着替えやすくなってるんだぞ。それに、女同士なんだし、そんな恥ずかしがるようなもんでもないだろ?


い、いや確かにそうなんだけど…。
なんかさっきから妙に律のこと意識しちゃって…じゃなくて。

「その前にシャワーでも浴びて来いよ。汗が引いたって言ってもそのままじゃ気持ち悪いだろ?」

「それもそうだな!澪も一緒に入るか?」

半裸の律が私に尋ねる。

「私は律の後に浴びるよ。」

律がこの部屋を出ていくのを見届けて、私は自分に問いかける。
私、どうしちゃったんだろ?
なんか変だよ。
いつもは抑えられるのに…。

止まらない。
止まれなくなってる。

律が、律のことが、愛おしくて愛おしくてしょうがなくなってる。


エアコンが効いているはずなのに、顔が、体が熱くなるのを感じた。

「かっ!顔洗ってこよう!」

自分に言い聞かせるように、わざと大きな声を出す。

冷たい水が気持ちよかった。


ザァーッ


あれ?
雨、降ってる?
窓を開けると、昼間の天気が嘘のように雨が降っていた。
この音にも気づかないなんて、本当にどうかしてる。



窓を閉め、リビングに戻り、ソファに体育座り。
頭に流れる律の言葉。

「澪大好きぃ!」

鳴り止まない。

律が言ったこの言葉はきっと私のものとは違う。
だけど、この上なく嬉しくて。

この言葉がきっと私をおかしくさせてる。


分かってても、期待しちゃうんだよ?律。


**************


「うはぁー気持ちよかったぁ!」
律がお風呂から上がってこちらへやって来る。
トレードマークのカチューシャを外してて。
垂れる前髪。
乾ききってない髪。
少し上気した顔。

……やばい。私、やばい。

このままいたら、本当にやばいよ。

「あ、そーだ!澪、」

「次は私の番だよな!」

何かを言おうとした律を遮って私はお風呂へ向かおうとした。


…そのとき。


カーテンの向こうがピカッと光り、同時にゴォーンとけたたましい音が響いた。

「やぁぁあぁぁぁぁぁあぁ!?」

そして、電気が消えた。


雷が落ちたんだ。


私はその場にうずくまってかたかたと震えた。
雷が、暗闇が、怖かった。



ふって感じた律の匂い。

「まったく、雷が鳴ってることに気付かなかったのかー?」

すぐ近くに感じる律の吐息。

「澪は鈍感だなー。」

後ろから、抱きしめられた。

「大丈夫。私がいるよ。」

全身で感じた安心感。
そして、溢れ出した想いが、涙になって頬を伝わった。

「ぐすっ、り、律…。」

私が呼べば、

「ん、怖かったんだよな。もう大丈夫だよ。」

返事をくれる。

それにまた涙が込み上げる。

「え?」

頬に違和感を覚えた。
でもそれは、さっきのとは違くて。
律の頬が、私の頬に当たっていたんだ。

「澪。」

律が私を呼ぶ。
律は頬を離した。

「澪は泣いてる所も可愛いよ。だけど…」

律はそこで言葉を止める。
頬に暖かいものを感じた。
「だけど、笑ってる時が1番可愛い。」

律が、私の涙を舐めとっていた。
律の言葉とその行動に嬉しさ、恥ずかしさ、いろんな感情が混ざり合って、込み上げてくる。


「澪。」

舐めるのを止め、律が私を呼ぶ。

「澪はさ、鈍感だから知らなかったと思うけど…」

律がさっきより強く私を抱きしめた。



「あたし、澪が好きなんだ。」

耳を疑った。

「大好きなんだ。」

幻聴かと思った。
夢かと思った。

「友達としてじゃなくて…」

律が私と同じ気持ちを抱いてるなんて、全く思ってなかった。

「や、やっぱり気持ち悪いよな。」

「・・・くない。」

「え?」

「気持ち悪くなんかない。」

さっきとは違う涙がまた溢れて。
止まらなくて…いいよね?
律の腕の中で向きを変える。

「私も、私も同じなのっ!」

律の胸に顔をうずめ、抱きついた。

「み、みお…?」

伝えよう。
今まで抑えてきた気持ちを、ありったけの想いを。

「律…。私も律のことが好きっ!…大好きなんだ!」

律が震えてるのが伝わってきた。
かすかに漏れる嗚咽。

私は顔を離す。

「律。」

さっき律がしてくれたことを今度は私がする。
律の涙はしょっぱくて、切なくて、嬉しかった。

「澪。」

目が合った。
なんでだろ、懐かしい感じがする。
停電は未だに回復しなくて、部屋は真っ暗。
なのに、律の姿ははっきり見える。
なんでだろ、不思議だな。

垂れた前髪に隠れているけど、律の目は真っ赤で。
それに負けないくらい頬も赤く染まっていて。

すごく、愛おしかった。



「…好きだよ、律。」

律の可愛い唇に、私の唇を寄せる。


律の唇は柔らかくて。
気持ちよくて。
気が変になりそうだった。

律をもっと欲しくなった。

「律…。」

お泊まり用の律の少し大きめのTシャツの裾に手をやった。

「みお…?」

体温が上がってる気がするのはエアコンが止まったからなのか、それとも…。

「律、いいよね?」

同意を求めるように律を見上げる。
律は優しく微笑んで、私に唇を寄せる。

「ん!?」

律の舌が入ってきて思わず声が漏れた。
私も必死に舌を伸ばす。
お互いの舌が絡み合う。
漏れる声、絡み合う音、零れる唾液。
全てが私を刺激する。
頭がじぃんってなって。

「んん・・・りつぅ。」

もうなにも考えられない。
今はもう、律しか見えない。

律のシャツを捲りあげようとした。




パッ



いきなり周囲が明るくなった。
とっさに唇を離す。
明かりに照らされて、恥ずかしさが体中を駆け巡った。

うぁぁーー。
私、なにをしてるんだ!

「あっは!で、電気回復したみたいだな!」

律が明るく言って、私から体を離す。
私はさっきと違った意味でなにも考えられなくなってる。



フッとまた電気が消えた。


え?また停電?
あ、でもエアコンは動いてる。あれ…?


「澪…。」

後ろから律が混乱してる私の耳元で囁いた。

「続き、しようよ。」

「あ…。」

律が私の耳を口に含むから、私はさっきの感覚を思い出していくんだ。
耳から口を離した律の方に向き直して、私と律は3度目のキスをした。
さっきと同じ、いや、それ以上に深い、深い。

律が好き。大好きだ。

頭の中が律で埋まってく。
律が欲しい。
もっともっと…。

私はその感情に身をゆだねた。

このページへのコメント

(*´ω`*)百合カワユス

0
Posted by (*´ω`*) 2009年11月19日(木) 17:23:44 返信

早く続けて!

0
Posted by ななす 2009年10月27日(火) 20:00:54 返信

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