けいおん！でエロパロ保管庫

作者注：本作品は『歌に込めた想い　Side:梓唯』の続編です。
　先に下記をお読みいただかないと分からない内容もあります。
　歌に込めた想い　Side:梓唯


私は憂に手を引かれて唯先輩の部屋を出た。
憂はなんにも言わないで。唯先輩のマンションのエレベータのボタンを押す。
私達が３人で乗ってきた時のままだったのか、ドアはすぐに開いた。

「あー・・・憂？」
でも帰りのエレベータには２人。私は前を歩くポニーテールに声をかけた。
「なぁに？純ちゃん？」
「こういうの、一般的になんて言うか知ってる？」
「えっ・・・」
ポニーテールが揺れて、私の方に振り返る。

泣きそうになんなよ。憂らしくないよ。

「『雨降って地固まる』だよ。」
「あっ・・・そうか。そうだよね！」
憂はちょっと笑顔を見せた。

・・・うーむ。スベったか。
憂がちょっとしか笑顔を見せないということは、ほんとは全然つまらないってことだ。
エレベータの中、二人とも黙ったまま。
エレベータを降りるところで、私はつぶやく。
「ねぇ、憂？」
「今までさ、私の部屋で遊んだことないでしょ？」
「あ・・・うん。そういえば。」
憂はなんのこと？みたいな顔をしている。
「あのさ・・・私の部屋、汚くって他人を呼べる状況にないんだよね。」
「私、宿題も忘れがちだしさー。」
憂はまだ私の言いたいことが分からないみたいで、リスみたいに首を傾げている。
しょうがない、もうちょっとはっきり言おう。
「もし唯先輩の世話焼かなくてよくなってヒマになるようだったら、私の面倒、見てくれない？」
「う、うん。純ちゃんが良ければかまわないけど？？？」

・・・うーん。強敵だな。
私はかまわずに続ける。
「ありがと。それでさ、憂。もし迷惑じゃなかったら。」

「私の貧相な胸でよかったら、貸すけど？」

私はそこで立ち止まり。
憂の表情が見えないようにそっぽを向いたまま、両手を広げて憂を待つ。
多分、憂は今自分がどんな顔をしているか、誰にも見られたくないはずだから。
「・・・！純ちゃぁん・・・」
憂は私の胸に飛び込んできて、号泣し始めた。
「これでっ・・・よかった・・・んだよね・・・梓ちゃんとおねぇちゃん、お似合いだもの。・・・私とおねぇちゃんは姉妹なんだもの。」

「でも・・・私っ・・・私ね？・・・おねぇちゃんのこと、大好きだったの。」
「梓ちゃんみたいに『愛してる』の好きかどうか分からないけど・・・ほんとにほんとに好きだったの。」

馬鹿言え。『好き』に種類なんかあるもんか。
私は心の中でつぶやいた。だって声に出したってしょうがないから。
憂の涙を止めるのに何の役にも立たないから。
ここまでは『好き』で、こっからが『愛してる』。好きな気持ちに線が引けるなら、誰も苦労しやしない。
代わりに私は黙ったまま、憂を抱きしめて、ひとしきり頭を撫でてやる。

でも憂の涙が止まらないから、私は何か言ってみることにした。
「まぁ、その、なんだ。」
「・・・何が良くて何が悪かったなんて誰にも分からないけどさ、憂。まぁ、悪いことばっかりじゃないって。」
なんて無責任なセリフ。
「・・・梓が大きく間違ってんのは、憂は完璧なんかじゃないってことなのよね。」
「憂って、確かに他の事は何でもこなす完璧超人だけど、おねぇちゃんの事になるとてんでダメだから。」
「うん・・・ごめんっ・・・ね。わたし、変わらなくっちゃ、ね。」
まぁ、そんなとこが可愛いんだけどさ。

「謝るとこじゃないでしょ。私、憂の笑顔が大好きなの。だから泣き止んだら、笑ってね。」
私なら憂を絶対泣かせたりしないから。
そんなセリフを今言うのはズルすぎるから、また次の機会に取っておいた。
今まで待ってたんだから。
もうちょっとくらい憂の涙が乾くのを待ったって大したことない。

Ｕ＆Ｉ・・・ねぇ。
私は心の中で平沢唯の最高傑作を歌ってみた。

・・・
キミがそばにいるだけでいつも勇気もらってた
いつまででも一緒にいたい
この気持ちを伝えたいよ

晴れの日にも雨の日も
キミはそばにいてくれた
目を閉じればキミの笑顔、輝いてる

・・・憂、やっぱおねぇちゃんの事になるとダメダメじゃん。
これが恋の歌じゃなくって何なのよ。

でも。
雨が降った後には必ず。お日さまが照るに決まってる。
私はちょっと憂を抱く腕に力を込めると、ビートルズのあの曲をそっと口ずさむ。
大丈夫。今のままの憂が好きな人はすぐそばにいるよ。
ジョンとポールも言ってた。

“Let it be.” （そのままでいいよ）・・・ってね。





歌詞引用：
歌：放課後ティータイム
「Ｕ＆Ｉ」作詞：平沢唯　　作曲・編曲：前澤寛之
上記より一部引用

#1 歌に込めた想い　Side:梓唯
#2 歌に込めた想い Side：純憂