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呼び方(唯×梓)



ゆいあずシリーズ EP2
※『EngageRing』の続き





恋人同士になって数週間、私たちは変わらず日々を過ごしていた。

でも、変わらないなんて言うと他の先輩たちは顔を真っ赤にして
『変わりすぎだーー!」って否定するんだけどね。
・・・・・・・・なんでだろ?


そしてこれは、そんな私たちの変わらない日々に訪れたちょっとした変化だった。





放課後、いつもの練習前のティータイム・・・・・・・のはずだったんだけど、今日はめずらしく唯先輩と二人きり。
他の先輩たちは用事があるようで遅れてくるそうだ。
今私たちは長椅子に寄り添いながら座っている。
唯先輩と過ごす静かな時間・・・・・・。いつもは二人っきりじゃないからこういう時間がすごく嬉しい。


唯先輩は今、私の髪を優しく撫でている・・・・。
いつもはツインテールにしてるけど、今は外している。唯先輩曰く、外した方が撫でやすいそうだ。
私はこうやって撫でられるのがすごく好きだ。
理由は簡単、すごく気持ちいいからだ、やっぱり愛する人にされるのは一味違う。



私は撫でられる気持ちよさからか唯先輩の肩に頭を乗せて目を閉じている。



そんな時だった。



「あ、そうだ・・・・・・あずにゃん?」



唯先輩が優しい声で私に問いかける。



「なんですか・・・・・・唯先輩?」



私は肩に頭を乗せ目を閉じたまま答える。



「あのね・・・・・・・その・・・・・・お願いがあるんだけど・・・・」


(ん?・・・・・・・お願い・・・・なんだろ?)



私は目を開けチラッと唯先輩の顔を見る。
唯先輩はちょっとだけ頬を赤く染め私の目を見つめてくる。



(う・・・・・・・)



ちょっと可愛いと思ってしまった私を誰が責められよう。
しかたないのだ・・・・・・・たぶん惚れた弱みだよね。



「は、はい・・・なんですか?」



私は平静を装って唯先輩に返事をする。



「あのぉ・・・・そのぉ・・・・・・・」


(なんだろ? 歯切れが悪い・・・・・・・・はっ、ま、まさか・・・・・別れ話とか)



結果から言えばそれは大きな間違いだった。
次に唯先輩から発せられた言葉は、私の考えとはベクトルが真逆だった。



「あのね・・・・・・・・・・・私のこと・・・・・・・・その・・・・・・・・・・”唯”って呼んでみてほしいなって・・・」


(・・・・・・・・・・・?)



ごもごもと小さな声で私に告げる唯先輩。
聞こえなかった訳じゃないけど最初私は何をいっているのか分からなかった。
分からないなら聞けばいい、ということで唯先輩に問いかける。



「あの?・・・・・・それってどういう・・・・」



唯先輩はさらに顔を赤くし、もう一度、今度ははっきりと私に告げる。



「だ、だから・・・・私のこと・・・・唯って呼び捨てで呼んでほしいなって・・・」



もじもじとしている唯先輩はそれはもう可愛いんだけど・・・・・・
そんなことよりも今は・・・・



「え・・・えぇぇ!・・・・・そ、そんな・・・む、無理ですよ・・・・・呼び捨てだなんて」



そうだよ・・・・まだ心の準備が・・・・・

それに先輩を呼び捨てで呼ぶなんて、ちょっとだけ抵抗感があった。



「ううう・・・・・・・だって・・・・・・恋人同士になったんだし・・・・・呼んでもらいたいなって」



目をウルウルさせてそんなことを言われては、もうお手上げだった。


(・・・・唯先輩ってホントずるいよね・・・・・・・)

「わ、わかりましたよ・・・・・だからそんな顔しないでください」


「ほ、ほんと? わ〜〜い♪ だからあずにゃん好き〜〜」



さっきのウルウルなんてなんのその、すぐさま笑顔になる唯先輩。



(ホントにずるい人・・・・・・わざとやってるんじゃないかなぁ・・・・・)

「じゃ、じゃあ・・・・・いきますよ?」


「う、うん」


唯先輩は頬を赤く染め、私の言葉を待っている。



「・・・・・・ゆ・・・・・・・・・ゆ、唯・・・・・」



は、恥ずかしい・・・・・・・・

唯先輩はというと、私の言葉に満面の笑顔を見せている。



「あ、あ、あずにゃ〜〜ん♪」



そして、強いくらいにギュッと抱きしめてくる。



「ちょ、ちょっと唯先輩っ!・・・・く、くるしいですよ」


「ぶー! 違うでしょ・・・・ゆ・い!」


「う・・・・・・・・ゆ、唯・・・・」


「えへへ〜」



うう・・・・・・こんな笑顔をみせられては、私は何も言えなくなってしまう。
私がこんなにドギマギしてるっていうのに、当の本人はいつもの調子・・・・。
ホントずるい。



そんな時だった。私の中に小悪魔が舞い降りたのは・・・・・・・。
いつもの仕返しにちょっと意地悪してやろうと思う。



私は唯の腕を放し、唯の目を見つめる。
そして、唯にニッコリと微笑む。



「ねえ・・・・・・・唯?」



「は、はい・・・」



自分でもらしくないかなって思うくらいの口調で唯に問いかける。
でもいいよね?恋人同士なんだし。
唯も私の様子に驚いているようだ。



「唯ばっかりずるいよね? 私のことも”あずさ”って呼んでよ」


「え、えぇぇっ! そ、そんな・・・・あずにゃん?」



私は唯の頭を抱き寄せ、私の顔に近づける。距離は10cmもない。
私は唯の目を見つめる。唯の目にも私が映っている。
唯は瞳を潤ませ、茹蛸のように顔が真っ赤だ。



「あ・ず・さ」


「うう・・・・・・・あ、あず・・さ・・・・・」


瞳をギュッととじプルプルと震える唯は、なんていうか・・・・小動物みたいだった。
まさに犯罪的な可愛さだった。



(もう・・・・・・我慢できない・・・)



私は、唯の可愛らしい唇に自分の唇を強く押し付ける。



「んっ!?・・・んん」



驚いた唯だったけど、私は考える暇を与えない。
唯の少し開いた唇から、舌を差し入れる。
そして、ちょっと激しいくらいに唯の口内を蹂躙していく。



「ちゅ・・・・・・・じゅる・・・・・ちゅ・・・ちゅう」

「ちゅう・・・・んんっ・・・・・・・ちゅ・・・・あ、あず・・・」



唯は最初、私の舌を押し返そうと必死だったけど、やがてあきらめたのか
おずおずと私の舌に自分の舌を絡めてきた。



「ちゅう・・・・・・・・ン・・・・ちゅ・・・・・・じゅる」

「くちゅ・・・・ちゅ・・・・・・・ちゅる・・・・・・・ん」



そして長いキスも終わり・・・・私たちはゆっくりと離れる。
大量の唾液の糸がてらてらと光輝いている。
糸が切れ、床に滴り落ちる。



「はぁ・・・・ふぅ・・・・・・・唯」

「はぁ・・・・はぁ・・・・あずさぁ」


瞳を潤ませ、ハァハァいっている唯はすごく色っぽかった。
私は息を整え、ゆっくりと唯を押し倒していく・・・・・・・・。
唯も抵抗しようとはせず、私に身を任せている。


唯のシャツのボタンに手を掛け一つ一つゆっくりと外していく・・・・。
そんな私を真っ赤な顔で見つめる唯。





そして最後のボタンを外そうとした瞬間・・・・・・・・・。





”ガチャっ”っと音楽室の扉が開かれる。



「「えっ!?」」



私たちは慌てて扉の方を見る。



「ごめんなさい、遅れちゃって・・・すぐにお茶の用意・・・・・・する・・・・・か・・・・・・・・ら」



扉を開け、中に入ってきたのはムギ先輩・・・・
でも、ムギ先輩の眼前に広がっているのは、今から行為におよぼうとしている私たち。


「あ、あのっ!これは・・・・ムギ先輩?」


「む、ムギちゃん?」


私たちの方を向いて固まってままのムギ先輩。
少し様子がおかしい・・・・。
そう思った私は、ゆっくりとムギ先輩に近づく。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「む、ムギ先輩・・・・?」



私はムギ先輩の顔を覗き込む。
すると・・・・



「・・・・・・・・・・・」


「む、ムギ先輩っ!?」



私は驚いた。なぜならムギ先輩は立ったまま気絶していたからだ。
・・・・・・・・鼻血を垂らしながら。
それもとてもすがすがしい顔をして、もう思い残すことは何も無いって感じの顔だった。


「ちょ、ちょっとムギ先輩っ! し、しっかりしてくださいっ!」


「む、ムギちゃんっ!」


唯も衣服の乱れを直し、ムギ先輩の肩を揺さぶっている。


「・・・・・・・・・・・・・・・ハッ!・・・・・・・・・わ、私はいったい何を・・・・・・?」


ムギ先輩がようやく目を覚ます。


「は、はぁ・・・・・よかった」


「も、もうムギちゃんいきなりだったからビックリしたよ・・・・・・」


「あ、あら・・・・唯ちゃん、梓ちゃん? それにしても私どうしたのかしら? 扉を開けたとこまでは覚えてるんだけど・・・何かあったような?」


どうやら目を覚ましたムギ先輩は、記憶が曖昧なようだ。


「あ、あのっ! べ、別になにもなかったですよっ! ホントっ!」


「そ、そうだよムギちゃんっ! ぜんぜん何もないよっ!」


さっきのことを思い出されても面倒なので、必死にごまかす私たち。


「そ、そう? あ、そうだ・・・・お茶とお菓子用意するね?」


「あ、はいっ! お願いします!」


「は、はやく食べたいなぁ〜」


どうやら乗り切れたようだ。
しかしムギ先輩・・・いったいどうして気絶を?
もしかしたらさすがのムギ先輩でもさっきのは刺激が強すぎたのかもしれない。


いつものようにティータイムの用意をしていくムギ先輩。
そんな後ろ姿を見つめていると唯が私に耳打ちしてくる。


「あ、あの・・・・あずにゃん?・・・・・その・・・・・・名前で呼び合うのは二人っきりの時だけにしようね?」


そんな可愛いことを言ってくる唯。


「ふふ・・・・・いいですよ・・・・・・唯・・・」


私も同じように耳元で囁く。


「も、もうっ!・・・・・・あずにゃんったら!」


真っ赤な顔ではにかむ唯先輩は、それはもう可愛かった。



ちょっと意地悪してみたくなって、こんなことになっちゃたけど。
まあ・・・・いつも以上に可愛い唯先輩を見れたのでよしとしようと思う。






おしまい





あとがき
というわけで『EngageRing』の続編でした。
これからもEngageRing後の話をちょくちょく短編で書いていこうかと思ってます。
まあそうじゃない話も書きたいけど・・・・ゆいあず限定で

まだまだ稚拙で精進の必要な私ですが、暖かい目で見守ってやってくださいませ。

では

このページへのコメント

すっげぇぇうめぇぇぇぇ

さっきから見てるけど文才ありすぎ!
特にムギがこわれたりするのが好き
面白い!

表現がうまい!
まぢ尊敬!

0
Posted by 2828さん 2011年09月29日(木) 21:46:17 返信

楽しくニヤニヤ読ませていただきましたっ。
いやぁ・・・意地悪あずにゃんいいですなぁ・・・。
作者様の話や文体が自分にガチっときます。いつも幸せをありがとうございます。

0
Posted by ぽむ 2009年07月24日(金) 20:54:04 返信

たまには攻めな梓も素晴らしいと思うんだ。

二人称まで『唯』と呼んでるあずにゃんカッコイイよw
で、二人のイチャラブX指定編マd(ry

0
Posted by 名無し 2009年07月21日(火) 22:49:35 返信

読ませてもらいました!!!
すっごく最高です!!唯憂派でしたが唯梓もかなりいですね。ニヤニヤが止まりませんでしたwww

続き楽しみにしてます\(^o^)/

0
Posted by かすみん 2009年07月21日(火) 21:20:08 返信

いままで梓澪派だったのですが、
これはなかなかw
ほんと2828がとまりませぬ

0
Posted by RS 2009年07月20日(月) 14:48:24 返信

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