『ロッキンオフ ○月号 ロックの未来は君達に託した! 桜高軽音部1万字インタビュー』
先日三枚の衝撃的なシングル、『Cagayake ! Girls』、『Don’t Say “Lazy”』、『ふわふわ時間』をドロップし、
世のロックファンの度肝を抜いた新人ガールズロックバンド、桜高軽音部。
今やラジオで彼女達の曲が流れない日はなく、ネット上では彼女達の名を目にしない日もない。
そんな話題の超大型ニューカマーが初めてロキノフに登場! 本誌編集長直々の、魂心のインタビューをご覧あれ。
編:――まず初めに著者の個人的な話から入らせてもらおうと思う。
シングル『ふわふわ時間』のライナーノーツを書こうとして、いきなりその後の2日間、アシッドで落ち始める時のような状態がずっと続いて、
すべての意識が高速でぐるぐる回り続けて、ずっと話してるか、ずっと歩いてるかしかできなくなった
。結局、自分と誰かを傷つけることにしかならないセックスとドラッグに逃避して、どこまでも嫌なやつに徹することで、どうにか凌いだ。
50時間以上かけて、僕が書けたのは一言だけ。「助けて」。そして、気が付けば、スタッフの何人かが同じような状態に陥っていた。どういうことだ?
でも、秋山澪は、こんな苦しみにずっとひとりで耐え続けてきたのだ。なのに、俺は何をしていたんだろう?
だけど今こうして俺達の傍には桜高軽音部のCDがあり、目の前では初々しいメンバーの4人が、
傑作を作り上げたミュージシャンにのみ許される充実感を湛えた表情をしている。そう、彼女達は苦しみを乗り越えたのだ。
そうか、わかったよ澪、俺達も絶対にこのタイトロープからおっこちないようにする。誓うよ。
唯:「ねえ……なんかこの人、いきなりひとりごと喋り始めたよ?」
紬:「アシッドってなんのことですかね? 新しい紅茶の銘柄かしら?」
律:「ちょっと危ないんじゃないか。このインタビュアー……」
澪:「私……苦しみに耐え続けていたんだ……」
編:――取り乱して済まなかったね。
さて、『Cagayake ! Girls』、『Don’t Say “Lazy”』、『ふわふわ時間』……と、
ここまで質の高いニューエイジでモダンなロックアンセムをシーンにドロップする――しかも三枚連続で――
なんて、新人バンドとは思えない、この恐ろしいまでの推進力は一体どこから来てるのかな?
唯:にゅーえいじでもだんなろっくあんせむ……ってなんのことだろう? 律ちゃんわかる?
律:さぁ……。
紬:とりあえず凄くよい曲ってことですよ、きっと。
澪:……なんか他人にそこまで自分達の曲を褒められるのは少し恥ずかしいな。
……と、とりあえず今は一生懸命やろうってみんなで決めていて……がんばって制作しました。
編:――それにしても現代のジャパニーズロックにおいて、ここまであけすけにセックスとドラッグの快楽を謳ったアンセムもなかなかお目にかかれないと思うんだけど……。
唯律紬澪:はぁ?
編:――まず『Cagayake! Girls』、これは享楽的なセックスに溺れるティーンネイジャーの破滅的なスクールライフの典型について謳った曲だよね?
律:どう解釈したらそんな曲になるんだ……。
澪:せ、セックス……///
唯:『きょうらくてき』ってどう意味なんだろう?
紬:(まさかメンバー全員処女だなんて言えませんよね……)
編:――しかも『男子禁制のプリ帳〜』なんて同性愛というタブーにまで踏み込んでいる。
律:ど、同性愛!?
唯:へぇ〜、私、そんなことについて歌ってたんだ〜。
澪:唯、そこは否定しないと……。
紬:いいんです! 愛の形は色々です!
編:――このあたりのリリックは、君達の実体験から来たものなのかな?
律:だから全員処じ(ry
澪:せ、セックス……///
紬:まだペッティングまでしかしてないですけれどね♪
唯:セックスかぁ……どんな感じなんだろう?
編:――そして、『Don’t Say “Lazy”』は男子上位の社会に堂々とNO!を突きつけた革新的なウーマンリヴアンセムだよね。
リードボーカルを取る澪ちゃんのハッキリとした社会への声明なわけだ。
律:(このインタビュアー、どんだけアンセムって言葉好きなんだよ)
澪:……あのー、どう解釈したらそういう曲になるのでしょうか。
編:――え、だってこの曲は『セックスの時、女がマグロだって別にいいじゃない。見えないところでガンバッテるんだから』っていう曲じゃないの?
澪:せ、セックス……///
律:こいつダメだ、はやくなんとかしないと……。
唯:ねぇームギちゃん、『マグロ』ってどういう意味だろうね?
紬:少なくとも唯ちゃんはマグロではないから心配無用ですよ♪
編:――そして、『マグロだっていいじゃない。だからLazy(怠け者)なんて言うな』っていう自立した女性としての確固たる男性への主張と同時に、
でも実は『だって本当はCrazy』とか『ヤる気はメーター振りきって――』っていう隠しきれない性欲との葛藤をも謳っている。
ここまで奥の深い苦悩をあけすけに表明したのは僕の知る限りトム・ヨークと君達だけだ。
律:もうなんでもいいです……。
澪:わ、私の隠しきれない……せ、性欲///
唯:『トム・ヨーク』って新しいお菓子の名前かなあ。おいしそうだね!
紬:私も聞いたことがないです。今度執事に手配させてみますね♪
編:――そして、『ふわふわ時間』! これは完全にドラッグソングだよね!
薬に関してはとかく煩い日本で、よくレコ倫の規制を潜り抜けたものだと思うよ。
澪:なんでそうなるんでしょうか……。(歌詞を書いたのは私だし……)
編:――だって『ふわふわ時間』っていうのは、アシッドキメて、ラリってる時間っていう意味じゃないの?
律:た、確かにふわふわしそうだけど……。
唯:アシッドってふわふわするんだ〜!
じゃあ私、よく和ちゃんとかに「唯はふわふわしてて心配」って言われるから、それはアシッドキメてるって意味だったんだね!
紬:唯ちゃんはいつもラリラリです♪
澪:わ、私そんなつもりで歌詞を書いたんじゃないんです!
こ、これは勇気の出せないちょっと恥ずかしがりやな女の子の恋を応援する歌で……。
律:(お! 澪がちゃんと反論した!)
編:――えー、だって『お気に入りのウサちゃん抱いて』なんて歌詞、今どき小学生でも恥ずかしくて歌わないでしょう。
これこそまさにドラッグの霧の中で見た幻覚を歌ってると僕は解釈したんだよ。
そうだよね、確かにアシッドキメてるとありもしない幻覚が見えてくるものだし。
澪:…………。
律:(あ、澪の中で何かが壊れた)
唯:私はいまでもよくぬいぐるみとか抱いて寝るよ〜。でも、最近はギターも抱いてるかな〜。
紬:可愛い女の子を抱いて眠るのもいいかもしれませんよ?
編:――それに中間部のラップなんて、まさにラリってないと歌えないような痛さ丸出しな感じだったし。
澪ちゃん、きっとレコーディングの時からかなりキメてたんでしょ?
澪:…………。
律:(これは駄目だな。あと一か月は再起不能だ……)
唯:寝ちゃお寝ちゃおーって感じだよねー。
紬:そうですね♪ 寝ちゃいましょうか(性的な意味で)
編:――とにかく! この3曲にはこれまでの腑抜けた日本のロックにはなかった純度100%の衝動が詰まってるよ!
セックスだってクスリだってヤりまくりたいという純粋な衝動!
たとえ性欲を持て余し過ぎて同性に走っても構わない! キメすぎて居もしないウサちゃんが見えてきても構わない!
そんなドロドロに溶けだしてきたマグマのような衝動が!!
律:(私……ロッキンオフとか毎月買ってたくらいのファンで、今日のインタビューは凄い楽しみにしてたのに……なんじゃこりゃ)
澪:あはは……どうせ私は淫乱でヤク中のメンヘルのレフティベーシスト……。帰りに猟銃買って帰ろうっと……。
紬:「同性でも構わない」というところは、ぜひぜひ大きく扱ってくださいね♪
唯:そっか〜、セックスとかクスリとかいっぱいやれば本格派のロックバンドとして認められるんだね〜。
さっそく帰ったら憂に頼んで、家の正露丸全部飲ませてもらおうっと。
編:――それでは最後に、全国のファンのみなさんにメッセージを。
律:えーと……こんなインタビューで私達のCDを買ってくれる人がいるのかどうかわからないけど……とりあえず澪はいい子ですので……ヨロシク。
澪:……セックスの歌なんかじゃないもん。……ドラッグの歌なんかじゃないもん。……メンヘルじゃないもん。
唯:ライヴもやるんで見に来てね〜。私のカスタネットソロもあるよ〜。
紬:私と一緒に寝てくれる可愛い女の子のグルーピー募集中です♪
こうしてインタビューはグダグダのまま終わる。
なお、このインタビューは目の肥えたロックファンの間でも話題を呼び、桜高軽音部のCDはさらに飛ぶように売れたという。
そしてその年の学園祭ライヴの会場となった体育館には、
天性の破滅型ロックプリンセス、秋山澪の姿を一目見ようと全国から集まったファン、
そして彼女をなんとか上客として獲得したいと踏んだ売人達、
そして紬のグルーピーになることを志望する多くの麗しき女子が、長蛇の列をなしたという。
紬:最終的に勝ち組は私だけですね♪
終わり
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