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今巷では律×紬がアツいと聞いて、思いつくままにかいてみた。
なお、タイトルが気になった方はグーグル先生辺りにでも教えてもらってください。




四月の魚


「ちぃーっす」
律の声が音楽室に響いた。
春休み。
長期休暇中に予定されている練習の日だ。
とはいえ、梓からは家の用事で来れるかわからないと連絡を受けているし澪は春期講習で遅れる、唯にいたっては風邪をひいた、と妹の憂から今朝方連絡を受けている。
それでもこの音楽室が開いているということはムギが来ているということに違いない。
ま、澪が来るまでムギと駄弁りながらお茶でも飲んで、気が向いたらちょっと練習でもして待つか、と律は考えながら部屋の一歩目を踏み出した。
はたしてその律の予想通り、ムギは広い音楽室に1人座っていた。
「おーっす、ムギ」
部屋に入ったときも反応がなかったことを思い出しながら、律は再度声をかける。
が、机に目を落としたまま何かを考え込んでいるのか、ムギの返事がない。
ムギの顔を覗き込み、律が三度呼びかけた。
「おーい、ムーギー?」
「は、ハイッ!?」
「うわっ!びっくりした・・・」
反射的に返事をしながら立ち上がったムギに逆に律が驚く。
「あ、あれ・・・?りっちゃんいつの間に・・・」
「へ・・・?気づいてなかったのか?部屋に入ってきたときも声かけたのに・・・」
「そうだったの?ごめんなさい・・・ちょっと考えごとしてたから・・・。他のみんなは?」
「澪は春期講習で遅れるってさ。梓は家の用事で来れるかあやしい、唯は風邪ひいたらしい。憂ちゃんがわざわざ電話くれた」
「そうなんだ。じゃあしばらくは2人ってことかな?」
「ま、そういうことになるな」
「そっか・・・」
言いながら律は荷物をソファに投げ置き、続けて自分もそこに寝転んだ。
「澪が来るまで適当にお茶でも飲みながら、ほどほどに練習するって感じでいいんじゃないか?」
「そうね・・・」
「・・・ムギ?」
珍しい、暗に「お茶を飲みたい」と言っているのにムギがお茶を注ぎに行こうとしない。
誰に言われたわけでもなくお茶を入れるのはティーセットを持ってきたムギの役割になっていた。
「ムギどうした?なんか今日変だぞ?」
「え!?あ、お、お茶だったよね。ごめんなさい、今入れるから・・・」
ソファから体を起こしながら言われた律の言葉に、ムギは席を立ってお茶を入れに向かった。
「・・・」
何かおかしい・・・。
ムギの背中を見ながら律はそう思わざるをえなかった。
いつものムギの動きよりぎこちない気もする・・・。
「・・・ムギ、何か悩み事でもあるのか?」
ピクッ!
お茶の準備をしていた手が止まった。
「私でよかったらさ、相談に乗るよ?一応部長ってことになってるし・・・」
後姿のムギの背中が震えているように見える。
「あーでも男絡みとかだと・・・ちょっとアドバイスできないかもなー。なんちゃって・・・。あ、でもムギは男よりも女の子の方が・・・」
「りっちゃん!」
ムギらしからぬ大きな声を出してこちらに振り返る。
ヤバ、冗談で言ったつもりのことで怒らせたか?と思ったのも束の間。
振り向いたムギの両目からは今にも涙が流れてきそうだった。
「ム、ムギ!?」
「りっちゃん!」
再び律の名を呼びながら駆け寄ってきたムギは律に抱きつく。
そのまま2人はソファに崩れる形になった。
「お、おわっ!ム、ムギ、落ち着けっ!お前の趣味は理解してるつもりではいるけど私にだって心の準備というものが・・・」
「私っ・・・!」
しかしムギの口から紡ぎ出された言葉は律が想像しているものとは全く違うものだった。
「私、この部を辞めたくないよっ・・・!」

「辞める・・・?どういうことだよ!?」
とりあえずムギを落ち着かせ、律は椅子に座りなおしている。
もうお茶とかどうでもよくなっていたが、それでもムギは入れかけだったお茶を入れなおし、律と自分の前にティーカップをおいて向かい合うように腰掛けた。
「父が・・・。私が軽音部に入っていることをあまりよく思っていないの。最初は合唱部に入るつもりでいたし、父もそうだと思っていたみたい」
ムギは目をティーカップの中の液体に落とす。
「父は私にもっとおしとやかな趣味をやってほしいみたい。それにもうすぐ、というか、今日から3年生になるし・・・。勉強のほうを疎かにしないためにも3年生になったら部活を辞めなさいって言われてしまって・・・」
「なんとも一方的だな・・・」
率直に感想を述べて律はティーカップに口をつける。
紅茶のいい香りが鼻にひろがり、ほどよく甘い液体が口に流れ込む。
「ムギの言い分は聞いてくれてないのか?」
コクリ、とムギが頷いた。
「もちろん私は父に反論したわ。軽音部には大切な友達がいるし、辞めたくないって。でも聞く耳を持ってくれなかった・・・。そんな友達なんかより自分の将来のことを心配しなさいって・・・」
紅茶を飲んでいた律の左目がピクッと動いた。
しかしムギは気づいていない様子で続ける。
「友達ならまた大学に行って作りなさい言われたの。父にとって私自身のことはどうでもいいの、ただ学歴とか将来嫁ぐ先の相手だとか・・・。そういうことばかりを重要に思っているようで・・・」
カチャッ!
律が荒っぽくティーカップを置き、そのまま立ち上がった。
「行こう」
「え・・・?行くってどこへ・・・」
「ムギんちだよ。直談判しに行く」
状況が理解できないと言った風にムギは律を見上げる。
「どうしても私には納得できない。そりゃあムギの親父さんの言い分もわかるよ。でもな、本人の意思を無視して親の意見を押し付けるなんていいことだとは到底思えない」
未だ見上げたままのムギをさておいて律は続ける。
「『大学に入ってから友達を作り直せばいい』だって?ふざけんなって私は言いたいよ。ムギは軽音部の一員で私の大切な友達だ。それは『作り直す』とかそういうことじゃないんだよ。なんか・・・うまく言葉に出来ないけど・・・でも私はムギがこの部からいなくなるなんてのは絶対に嫌だ」
そこまでを言い切り、律は荷物を持ち上げ、そのままムギの隣に行ってムギの腕をつかんだ。
「ちょ・・・りっちゃん・・・!あの、今父は家にはいなくて・・・」
「なら執事の人でも電話で話すでも何でもいい。とにかくこのままじゃ私の腹の虫が収まらない」
「りっちゃん・・・!待って・・・落ち着いて・・・!」
それでも律はムギの腕をつかんだまま強引にでも連れて行こうとする。
完全に頭に血が上っているようだった、もしかしたら何を言っても効果がないかもしれない。
しょうがない・・・、ムギは最後の切り札の言葉を口にした。
「りっちゃん!今日は何月何日!?」
「4月1日だろ。それが・・・」
そこで初めて律の、ムギの腕を引く力が弱まった。
「・・・ムギ、もしかして・・・」
「ごめんなさい、そういうことなの・・・」
謝るムギの顔はさっきまでの深刻そうな顔と一転していつも通りの、時折見せる少し困ったような、そんな笑顔に戻っていた。
「なんだよ・・・ちょっとエイプリルフールネタにしては冗談きついな・・・」
その場に荷物を下ろし、律はムギの隣に腰を下ろした。
「どうせならもっとどうでもいいようなネタにしてほしかったな・・・」
決まりが悪そうに上げた前髪をクシャクシャといじりながら律は言った。
「本当にごめんなさい、りっちゃんとしばらく2人ってわかったときに時間つぶしの意味もこめて咄嗟に思いついたものだったの・・・」
「思いつきであそこまでリアルな話したのか・・・。じゃあこの部を辞めるって話も親父さんに何かいわれたって話も全部・・・」
「ごめんなさい」
さっきまでより申し訳なさそうにムギが謝った。
「・・・まあいいや。全部作り話だってわかって安心したら怒る気もなくしちゃったよ」
ふう、とひとつ息を吐いて天井を見上げる。
そうしながらでも、ムギが何かを言いたそうにこちらを見つめる視線には気づいていた。
「ありがとう」
予想と違う言葉をかけられ、律の視線が天井からムギへと移った。
「りっちゃんが私のことを本気で心配してくれて嬉しかった。私は大切に思われてる、幸せ者なんだなって」
「よ、よせよ・・・」
決まりが悪そうに律が頬を掻く。
「りっちゃん・・・」
初めて聞いたようなムギの声だった。
思わずムギのほうへ向けた視線が交差する。
気づけば律の手がムギに握られていた。
そのまま見詰め合った時間は数秒のはずだった、が、何時間もそのままだったように感じる。
「私・・・りっちゃんのこと・・・」
両目を閉じたムギの顔が不意に迫る。
「ムギ・・・」
意を決し律も目を閉じる。
ムギと律の唇が触れようというそのとき――
フフッ、という笑い声とともに、律の唇に何かが当たった。
が、それは律が想像してものの感触とは明らかに違う。
「えっ・・・?」
驚いて目を開けた律の唇にはムギの手が当てられ、その先にはいつものムギの笑顔があった。
「ごめんなさい、いくらエイプリルフールでも悪ふざけがすぎちゃったわね」
「え・・・これも・・・?」
「だってりっちゃんには澪ちゃんって言うお似合いの相手がいるんですもの。私はそんな2人を遠くから見ていられれば、それで満足なの・・・」
正面に向きなおしてムギはそう言った。
その瞳はどこか遠くを見つめている。
「本当にそうか?」
その言葉にムギが律のほうを向き直す。
それが早いか――ムギの唇に律の唇が重なっていた。
「ンッ・・・!」
ムギの目が驚きに見開かれる。
が、次の瞬間、律の体は反射的に腕を突き出したムギによって突き放されていた。
「りっちゃん・・・何を・・・」
「本当に見ているだけで満足なのか?」
「そ、そうよ・・・!」
「じゃあさっきなんであんな目をしたんだ?」
「あんな目・・・?」
「遠くから見ていれば満足だ、と言った時、ムギの目はどこか寂しそうに見えた。それを見て思ったんだ。ムギが望んでいることは見ているだけじゃなくて、本当は・・・」
「違うッ!」
普段のムギからは想像もできないような声。
「りっちゃんには澪ちゃんがいる、だから私が入る余地なんてないの!だから・・・だから・・・私は・・・見てるだけで・・・」
「・・・それはムギの本心か?」
「・・・そうよ」
「そうか・・・」
律が一つ息をつく。
「だったら、その『本心』に今日1日嘘をつけばいい」
「え?それってどういう・・・っ!」
ムギの言葉は再び重ねられた律の唇によってさえぎられた。
2度目のキス――しかし今度は抵抗することなく、ムギはその口づけを受け入れた。
「・・・私と澪はただの幼馴染だ」
ムギの唇から自分のそれを離しながら律は続ける。
「でもさっきのムギの目を見たとき、澪とか唯とかに対する感情とは違う何かを抱いている自分に気づいたんだ」
「・・・同情してるってことじゃなくて?」
律は静かに首を横に振る。
「そういうんじゃない。・・・とは言い切れないかもしれないけど・・・。とにかく、ムギのそんな目を見るのは嫌だと思った。なんでそう思ったのか、友達だから?多分違う。それはきっと・・・」
どこか少し恥ずかしそうに律は笑った。
「ムギのことが好きだからなんだと思う」
律の告白を聞いている間、ムギはただただ驚いた顔をしているだけだった。
そして全てを聞き終えたとき
「・・・ありがとう」
ムギは最初にそう言った。
「ありがとうりっちゃん、私も・・・大好き・・・」
そして3度目のキスをしようとしたとき――
階段を昇る足音が近づいてきた。
「やばっ!澪か・・・?こんなとこ見られたら・・・」
そうこう言っているうちに音楽室の扉が開かれた。
「ごめん!遅れちゃって・・・。あれ?どうした、律とムギ一緒のソファーに座ったりして・・・」
衝撃的瞬間を見られることは避けたものの、場所を移動する時間はなく、2人は隣り合って座ったままだった。
ティーカップが対面に置いてあるのに一緒のソファーに座っているのがおかしいと澪は気づいたのだ。
「あ、え、えーっとこれは・・・」
「ちょっとりっちゃんの手相を見ていたの」
しれっとムギはありもしないことを言い出した。
「へえ、手相とか見れたのか。で、律の手相はどうだったんだ?」
「そうですね・・・近いうちに想い人現れるかも、と言った所かしら。実はまだ勉強し始めたばかりなのでよくわかってなかったりするけど・・・」
思わず律は苦笑する。
(おいおい・・・)
うまい嘘をつくためには本当のことを入れろ、とか言われることもあるが、大胆に入れすぎというかなんと言うか・・・。
エイプリルフールだし細かいことはいいか、と考えることをやめた。
「もっと勉強してわかるようになったら、澪ちゃんの手相も見てあげるわ」
「あ、そのときはよろしく」
それにしてもさっきまであんなことをしていたのに恐ろしいほどの切り替えだ、と律は関心せずにいられなかった。
既に冷たくなった目の前の紅茶を飲み干す。
そしてさっきまでのことを思い返す。
エイプリルフールだったが、1つだけ絶対に嘘じゃないことがある。
(それは私のムギに対する気持ち、かな・・・)
「澪ちゃん、お茶は?」
紅茶を準備しながらムギが澪に尋ねる。
「あ、じゃあ一杯だけ」
「ムギ、私もおかわりー」
その律の声にムギは最高の笑顔を返した。
「はいっ!」

このページへのコメント

律ムギに悶える日が来ようとは…GJだ!!

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Posted by 名無し 2009年08月05日(水) 10:16:33 返信

キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
ムギちゃんが乙女でしれっと策士なトコがいいですね〜
りっちゃんもイケメンでいい感じ!
最近自分の中でかなり律ムギがブームでずっと読みたいと思っていた矢先にステキなSSありがとうございました!

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Posted by *** 2009年08月05日(水) 03:00:24 返信

りっちゃんイケメン…!!
これは良い律ムギ。
確かにムギはカップリング少ないよね(笑)

0
Posted by Aki 2009年08月04日(火) 21:36:20 返信

GJ、律ムギいいねぇ。
ムギちゃんはもっと皆と絡むべき。

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Posted by 読み専A 2009年08月04日(火) 21:07:27 返信

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