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著者:198氏


ある日の昼下がり。こちらの地方はまだ梅雨明けが発表されていないけど、夏らしいうだるような暑さだった。
私はまだ大丈夫だけど、
「うぇぇ〜〜〜〜……和ちゃぁぁぁぁん、あついぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……」
私に抱きつきながら、今にも死にそうな声を出している唯は既に大丈夫じゃない。というか、最初から大丈夫じゃない。
昔から暑い時には「あついぃぃぃぃぃぃぃぃ」と唸って、寒い時には「さむいぃぃぃぃぃぃぃぃ」と震える分かりやすいコだからね。
それより、抱きついたら余計に暑くなるんじゃ? というか、私も暑くなってきた。
それでも、私は唯を引き剥がそうなどという真似はしない。するはずがないわ。
このコを受け止めるのは私の役目だから。
よしよし。
幼子をあやすように、私は唯の頭をそっと撫でた。これをするのも何回目か分からない。
「何で夏ってこんなに暑いのぉぉぉぉ……」
「そう言っている人は、冬になると絶対『なんで冬ってこんなに寒いの』って言い出すのよね…」
(けど……)
私に抱きつきながら――不安定な姿勢で足を器用に動かしている唯の横顔を見つめ、次いで空を仰ぎながら私はふぅと溜息をついた。
一つ気になるのは、最近、唯が私に甘えてくる回数が極端に減ったことだ。
幼稚園、小学校、中学校。今まではいつもぼ〜っとしててどこか危なっかしくて、私がいないとどうなるか分からないようなコだった。
でも、高校生になってから――正確には軽音部に入ってから、唯の表情は変わった。
打ち込めるものを見つけた、とても輝いた表情になった。
それはとても良い事なんだ。良いはずなのよ。
…なのに、このモヤモヤした気持ちは何なのかしら……。
今まで隣にいるのが当たり前だったからかな。何だか私からどんどん離れていく気がして不安なのかな……。
「ねぇ、和ちゃん」
不意にかけられた声。体勢が体勢だから、声と共に唯の吐息も耳に入り込んできた。
心地よいくすぐったさだった。
「んっ……。ど、どうしたの?」
一瞬だけ身震いしてしまったのを隠すように、私は早口で返した。
「今日の課題、どうしても分からな――」
「ダメ」
「ぷ〜。まだ最後まで言ってないのに〜」
…まぁ、根本的な所が変わっていないのは不安を覚えるし、同時に安心も覚えるけど。


唯と別れ、彼女の姿が家に消えていったのを確認した私は、モヤモヤしたよく分からない感情を抱きながら帰路についた。
唯は、私は、今後どうなるのかな。
そんな事を考えているうち、私は携帯を手にしていた。
帰ったばかりで迷惑かもだけど、ちゃんとメールしなきゃ。
『サボらないでちゃんとやりなさいよ? どうしても分からない所があったら、メールしてね』
さっきダメって言っておきながら、って感じだけどね。
何やかんやで私はやっぱり唯には甘いみたい。昔も今も、そして多分これからも。
自分自身に苦笑しながら、私は送信ボタンを押した。
教科書や筆記用具を机の上に広げているうち、メールが返ってくる。
『大丈夫だよ!! 今から頑張ってやるから!!』
文章の最後に、鉛筆の絵文字がある。ふふ、唯らしいわ。
『頑張ってね。分からない所があったら悩まないで別の問題からやって頭を整理してからやるのよ。それでも分からなかったら、メールするのよ。最初から私に頼っちゃダメだからね』
再び送信ボタン。
これで私も勉強を始められる。
……はずだった。

20分が経過した。

「……もう、まだかな」
私のノートは真っ白だった。私の視線はノートや教科書じゃなくて、携帯にしか注がれていない。
唯からの返事は、まだ来ない。さっきの一回きりだった。
まだかな…。早く返事くれないと私も安心して勉強を始められない。
(……唯は一度何かにハマると集中力が持続するのよね)
幼い頃からの唯を思い出す。唯の家族の次に、唯の事を知っているのは、私なんだから。
(じゃあ……今は宿題に夢中になってて、メールに気づいていない…のよね、多分)
でも、ちょっとなまけるとそれがずっと続いちゃう。
(…もしかして、またギターをいじってたりごろごろ寝転んでたりするのかな……)
どの可能性も十分にありえるから困る。唯は、昔からそういうコだったから。
(ううん、やるって言ってたもの、信じないとね)
マイナスの思念を振り払うように軽く頭を振り、私はペンを握り締め、ノートに視線を移す。けれど、
(…でも、心配だわ……)
それも五秒と持たない。携帯に視線が流れていってしまう。
どうすればいいのかしら……。またメールをしたら迷惑かしら。でも、すぐに返事が無いのも不安だわ。
あぁ、安心出来ない時間が続くわね……。
(……安心…?)
ノートと携帯を交互にウロウロしていた視線が、初めて別の場所へ向いた。といっても、そこに何もあるわけでもない。虚空だ。
何かに気づいた時って無意識に顔がふっと上がるもの。まさにそれだった。
「唯は私がいないとダメ……じゃなくて、私の方が、唯がいないとダメ、なの……?」
自然と口に出していた。
そう仮定して、今までを――勿論、今日の帰り道に抱いたモヤモヤも含め――全て振り返ると、不思議と辻褄が合う。
いつもマジメでカタい、と言われたこともあるし自分でもそう思っているけど、不思議なことに、唯のそばにいると心が和らぐ。本来の私が出せる。
幼稚園、小学校、中学校、そして今。10年以上も一緒にいたのに、今頃気づくなんて…。でも、唯なら笑って許してくれるかしら?
「……成る程ね。私は、昔から――出会った時からずーっと、唯の事が……」
ノートはまだ真っ白。
でも、今日はもう、真っ白のまま終わるであろうことは明白だった。

このページへのコメント

なんか和らしくてにやけてました。

これの唯編とかよみたいです!

0
Posted by りん 2009年08月23日(日) 19:38:00 返信

GJ!
続きお願いします。

0
Posted by 唯すきー 2009年08月23日(日) 00:32:59 返信

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