最終更新:ID:PE5+48BDCA 2009年07月25日(土) 19:59:39履歴
※唯×澪前提で梓→唯
高校に入って初めての文化祭が終了して、数週間が過ぎた頃。
文化祭前のやる気はどこへやら、相変わらずぐうたらな雰囲気の音楽準備室で、私はいつものようにむぎ先輩が用意してくれたケーキを食べていた。
「んん〜、やっぱりむぎちゃんが持ってきてくれるケーキは美味しいねぇ」
「こらこら、いくつ食べる気だ? いくら太らないからって、そんなに食べるとお腹壊すぞ」
「その時はその時だよ。それに、もし気分が悪くなっても澪ちゃんに介抱してもらうから、だいじょーぶ!」
「介抱って……。まったく、どうなっても知らないからな」
もぐもぐとケーキを食べながら、向かいの席に座る先輩たちのやり取りに耳を傾ける。
「………」
最近、私は唯先輩の様子に違和感を覚えるようになっていた。端的に述べると、唯先輩と澪先輩の間に流れる空気がどこかおかしいのだ。
何故かお互い必ず隣の席に座るようになったし、前と比べて二人一緒にいることが多くなったように思う。
この間なんて二人で手を繋ぎながら歩いているのを見かけたし。
「ほら、唯。ほっぺにクリームついてるぞ」
「ふぇ?」
今も私の目の前で、唯先輩の隣に座る澪先輩がクリームを指ですくい上げてやっている。どうするんだろうとじっと見ていると、澪先輩は何のためらいもなくそれを自分の口に運んだ。
「えへへ、ありがとー、澪ちゃん」
唯先輩が嬉しそうに澪先輩に微笑みかける。
それが何だか面白くなくて、苛立ちを抑えようとケーキを食べることに集中するものの、結局二人の妙な空気に耐え切れず、食べ終えると同時に気付かれないようにそっと席を立った。
「あら、どうかしたの?」
紅茶を汲みながら二人の様子を楽しそうに眺めていたむぎ先輩が私に声をかける。「いえ、ちょっと」と曖昧に答えながらその後ろをすり抜け、すでにケーキを食べ終えてソファーに寝そべっている律先輩のところへと歩み寄る。
「……あの、律先輩」
「んぁ? どうしたー?」
律先輩がクッキーを頬張りながら、顔だけをこっちに向ける。って、まだ食べてるんですか。
「最近、唯先輩と澪先輩、おかしくないですか? 妙にべたべたしてるっていうか……」
少しでも苛立ちがおさまるかもしれない、と何も考えずにここ最近の疑問をぶつけた私を、律先輩はきょとんとした顔で見上げた。
「ああ、そうか。梓、知らなかったんだっけ」
――ドクン、と心臓が鳴った。
知らなかった、って……何を? 苛立ちが一気に失せ、代わりに気持ちの悪い焦燥感がこみ上げてくる。
頭に浮かんでくる想像を必死で振り払いながら、思い切って聞き返す。
「何のこと、ですか」
声が少し掠れていた。そんな私の様子に気付くはずもなく、律先輩はにんまりと笑うと、
「いや、実はさ。あいつら、今、付き合ってんだよ」
「――、え?」
視界がぐらりと歪んだような気がした。
心臓の鼓動が急速に速まっていくのを感じる。私はその場に固まったまま、律先輩の顔を凝視する。
「おっ、やっぱ驚いた? てか驚くよな、フツー。私も最初びっくりしたし。澪のやつが唯のこと好きだったのは知ってたけど、まさか両想いだったなんてなー」
「―――」
「って言っても、付き合いだしたのは梓の言うとおり最近なんだけどさ。ほんと、あいつら見てるこっちが恥ずかしくなるくらい、べたべたしてるよな」
律先輩は、何を言っているんだろう。……唯先輩と、澪先輩が、付き合っている? だって、二人は女の子同士で。そんなの、普通じゃなくて。
いや、それよりも。
どうして、私はこんなに傷ついているんだろう。
「あれ? おーい、梓……」
急に黙りこくった私を訝しく思ったのか、律先輩が私の顔の前でぱたぱたと手を振る。
私はというと、正直それどころじゃなかった。
心臓の鼓動はおさまらず、視界も歪んだまま。それどころか全身まで震えだしていた。
「お、おい、大丈夫か!? お前、顔真っ青だぞ!」
律先輩がソファーから起き上がり、私の肩を掴む。ふらつく足を必死で留めながら、ようやく顔を上げた。
「あ……す、すいません。私……」
「あずにゃん、大丈夫!?」
背後からの声に思わず大きく肩を震わせる。振り向くと、心配そうな顔でこっちに走り寄ってくる唯先輩が見えた。
そんな唯先輩の姿を見て、私は――
「わっ……私、今日は帰ります! 本当にごめんなさい!」
頭を下げ、自分の鞄を引き寄せると、そのままドアに向かって走り出す。
「あ、あずにゃん!? 待っ――」
唯先輩の制止の声も聞かず、勢いよく部室を飛び出ると、ドアも閉めずに一気に階段を駆け下りた。
○
あれから無我夢中で走り続けた私は、気が付くと自分の家に着いていた。
「……っ、はぁっ、はぁっ……」
呼吸を整えるよりも早く、自分の部屋のドアを開ける。そのまま鞄を放り投げ、ベッドに倒れこんだ。
「はぁっ、はぁっ……、――っ」
呼吸が整うまでにずいぶんと時間がかかった。
汗で張りついた制服が気持ち悪かったけど、それよりも今はずきずきと痛む胸をどうにかしたくて、思わずぎゅうと胸の辺りを押さえる。
――いつからだろう。気が付くと唯先輩を目で追うようになっていた。
お菓子を食べているとき、練習しているとき、みんなで下校するとき。
唯先輩はいつも私の視線の先にいた。
この気持ちを何て言うのか、きっと私は知っていた。知っていて、でも知らないふりをしていたんだ。認めてしまったら自分が自分でなくなってしまうような気がして。
私はただそれを恐れていただけだ。
「……っ、ふ…う、ううっ……!」
涙がこみ上げてきたかと思うと、次の瞬間にはぽろぽろと零れ落ちていた。シーツが染みになってしまうんじゃないかと思うくらい、次から次へと溢れ出してくる。
どうしてもっと早く自覚しなかったんだろう。こんなことになって、ようやく認めてしまうなんて。
(私、唯先輩のことが、こんなに好きだったんだ――)
○
次の日、私は初めて学校に行きたくないと思った。
親に言って学校に連絡を入れてもらうと、仮病だとばれないようすぐにベッドに潜り込んだ。
別に両親が出かけた後にベッドから出てもよかったんだけど、不思議とそんな気分にはなれず、しばらく本当の病人のようにじっとしていた。
そのままベッドの中でぼーっとしていると――昨日あまり眠れなかったせいだろうか――だんだん眠くなってきて、結局そのまま深い眠りに落ちてしまった。
それから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。
コンコン、という小さなノックの音で私は目を覚ました。
「……ん……?」
ぼーっとする頭のまま枕元の時計を見ると、午後四時半頃だった。どうやらかなり長い間眠ってしまっていたらしい。親が帰ってきたのかなと思い、ゆっくり身体を起こす。
「どうぞ」
「失礼しまーす」
聞き慣れた声に眉をひそめる。ドアがゆっくり開いたかと思うと、そこに立っていたのは――
「やっほー、あずにゃん! 元気してた?」
いつもの緩みきった笑顔で部屋に入ってくる唯先輩に、私はぽかんと口を開けることしかできなかった。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、そのままベッドの側まで歩いてくる。
「いやぁ、今日あずにゃんが部室に来なかったから、心配になって憂にメールしたんだよ。そしたら『梓ちゃんなら風邪で学校休んでるよ』って返事がきたから、せっかくだしお見舞いしようと思って」
「………」
「あ、そうそう。みんなは今日は用事があって来れないんだって。でも、みんな心配してたよ? りっちゃんなんて『梓が体調悪いのに気付かなかった! 部長失格だー!』って、髪の毛ぐしゃぐしゃにしててさー」
「………」
私が何も言えないでいると、唯先輩はいきなり私の顔を覗き込んできて、
「あずにゃん? ひょっとしてまだ調子悪いの?」
「わっ!」
突然の行動に思わず仰け反ると、何故か唯先輩は笑顔になった。
「あははっ! よかったー、元気そうで」
そう言うと、私のベッドに腰を下ろす。
私は正直、複雑な気持ちだった。昨日ようやく自覚したばかりの想いが胸の奥でくすぶっているのもあってか、唯先輩が来てくれたのは純粋に嬉しかったけれど、それと同時にあの気持ちの悪い苛立ちが再燃しているのも感じていた。
それを必死で隠しながら、目だけを唯先輩に向ける。
「あの……すみませんでした。部活休んじゃって」
「ええっ? なんであずにゃんが謝るの? 私だって文化祭前は風邪で寝込んでたじゃん。お互いさまだよ〜」
まさか「仮病です」なんて言えるわけもなく、結局そのまま押し黙ってしまった。ベッドに座ったままぷらぷらと足を動かしていた唯先輩が、「あっ」と思いついたように顔を上げる。
「そういえば、あずにゃんのご両親は? 誰もいなかったから、勝手に上がっちゃったんだけど、よかったのかな?」
どうやら玄関は開いたままだったらしい。我が親ながら、なんて無用心なんだろう。
「別に構いませんよ。今日は二人ともいないんで」
唯先輩は「そっかー」と呟くと、何を思ったのか、いきなり私の方へずいっと身を乗り出してきた。
「あずにゃん、やっぱり元気ないよね? なんかいつも以上に返事が投げやりな気がするもん」
「そ、そんなことないですよ……」
「そんなことあると思いますっ!」
その勢いに気圧されて、思わず「うっ」と呟く。唯先輩は、しばらく私の顔をじとーっと見つめていたかと思うと、やがて乗り出していた身体を元の位置に戻した。
「……ねぇ、あずにゃん」
思わずドキリと心臓が高鳴った。唯先輩に似つかわしくない静かな声。
「風邪って、嘘なんだよね?」
「っ!?」
いきなり真剣な顔つきになったかと思うと、今度は仮病を言い当てられてしまった。予想もしなかった事態に、どう返していいのか分からず、ただうろたえることしかできない。
「嘘なんだよね?」
もう一度聞かれ、仕方なく頷いた。これ以上嘘を貫き通すのは無理だと感じたからだ。
「昨日のことと、なにか関係あるの?」
昨日のこと、とは私が突然部室を飛び出してしまったことだろう。
「……あったら何なんですか?」
唯先輩が目を丸くする。予想以上に冷たい言い方になってしまったことを後悔する反面、私の気持ちも知らずに無神経な質問をした唯先輩への苛立ちも募る。
止めようとしても無駄だったようで、次の瞬間には勝手に口が開いてしまっていた。
「別にどういう理由で学校を休もうが、私の勝手じゃないですか。唯先輩には関係ありませんよ。変に詮索しないでください」
唯先輩の顔がだんだん曇っていくのが分かる。
「……あずにゃん、やっぱり変だよ。いつものあずにゃんなら、そんなこと言わないよ」
「いつも、の……?」
かあっと全身が熱くなった気がした。
「――いつもの私って何ですか!?」
突然した大声を上げた私に、唯先輩は驚いたように目を見開く。脳が沸騰したかのような感覚。
もう止まらなかった。
「何で先輩にそんなことが分かるんですか!? 私の気持ちなんて誰にも分かるはずないじゃないですか! 私が――私がどんな気持ちでいたか知らないくせにっ!!」
それは、八つ当たり以外の何ものでもなかった。
自分が今まで何もしてこなかっただけのくせに。唯先輩への想いを認めるのが怖かっただけのくせに。勝手に自分で傷ついているだけのくせに。
それを、すべて唯先輩のせいにしてしまっている自分が、ひどく憎かった。
「私はっ……! 私は、唯先輩が……ゆい、せんぱ……、の……」
視界がぼやける。瞳から溢れ出した水滴が頬を伝うのを感じて、ようやく、自分は泣いているんだという事実に気付いた。涙でぼやけて、唯先輩の表情が見えない。
「ど、して……なにも、教えてくれなかったんですか……!? なにも、知らなかった……っ、く……澪せんぱ、と……付き合ってる、なんて、……私、知らなかったっ!!」
あらん限りの力を振り絞って叫んだ。自分の気持ちを隠すなんていう考えすら、とっくに消えていた。もう自分が何を言いたいのかも分からない。
「――あずにゃん」
ふと、今まで黙っていた唯先輩が、小さく呟く。次の瞬間、私の身体は唯先輩の腕に包まれていた。
「あ……」
いつもされていたスキンシップとは違って、相手をいたわるような、ただただ優しい抱擁。唯先輩の温かさに、私の全身の熱もゆっくりと冷めていく。
「ごめんね」
耳元で囁かれる優しい声。
「あずにゃんがそんなに傷ついてたなんて、私、全然分からなかった……。ごめん……ごめんね、あずにゃん」
ぎゅう、と強く抱きしめられる。また涙が溢れてきた。
「……私こそ、ごめんなさい……。唯先輩は、悪くなんかないのに、私」
「えへへ、いいよいいよ。全然気にしてないから、だいじょーぶ」
ぽんぽん、と私の背中をさする唯先輩に、今度は私の方から強く抱きつく。久しぶりに触れる唯先輩の身体は、やっぱりどこもかしこも温かかった。
○
唯先輩の胸の中で泣き続け、何分経ったのかも分からない頃、私の涙はようやく収まってくれた。
唯先輩に抱きついていた腕を放し、ゆっくりと顔を上げる。
「……唯、先輩」
「ん?」と優しい顔で私の声に応えてくれる。温もりが名残惜しかったけど、意を決して、私は唯先輩から少しだけ離れたところに座りなおした。
「……私の話、聞いてくれますか?」
我ながら声が震えていたように思う。唯先輩は私と同じようにベッドの上に座りなおすと、「うん」と大きく頷いてくれた。
お互い真正面から向かい合う形になる。
「私、唯先輩が好きです。多分……先輩として好きなのと、一人の女の子として好きなのの、両方です」
さすがにもう唯先輩も分かっていると思ったけど、やっぱりこうして言葉にするのとでは、緊張の度合いが全然違う。
唯先輩はそんな私の緊張なんて何のそので、「えへへ、ありがと」と照れたように笑った。私も釣られて笑う。
「……好きって言っても、気付いたのは昨日なんですけどね。澪先輩と付き合ってるって知って、すごくショックを受けて……それで、ああ私は唯先輩のこと好きなんだ、って自覚しました」
自分で言って、何だかひどく滑稽に思えてきた。でも唯先輩はそんな私を嘲笑することもなく、ただ真剣に聞いてくれていた。
私は心の中で深呼吸をした。
「……先輩。私、けじめをつけたいんです」
「けじめ?」
唯先輩の質問に「はい」と答えると、もう一度大きく息を吸う。
「――唯先輩、好きです! もしよければ、私と……付き合ってくださいっ!」
正座をしたまま、大きく頭を下げた。それ故に唯先輩の表情は分からない。ただ唯先輩が小さく息を呑む音だけが聞こえた。
時間にして、約数秒。
それでも私にはかなり長い時間が経ったように思えた。
「――ありがとう、あずにゃん」
唯先輩の優しい声が頭上から聞こえてくる。でも私は顔を上げない。
「だけど、ごめんなさい。……私には今すっごく好きな人がいるんです。だから――あずにゃんとは、付き合えません」
分かってはいても、やっぱり軽く衝撃を受けてしまう。
少しの間の後、私はようやく顔を上げた。私と目が合うと、唯先輩はいつものように笑う。
「えへへ。あずにゃんのこと、ふっちゃった」
「……ふふっ。ふられちゃいました」
何だか可笑しいやり取りに、思わず笑いがこみ上げてきた。私は笑顔のまま、
「ありがとうございます、唯先輩。こうやってきちんとけじめをつけないと、いつまでも引きずっちゃいそうな気がしたから……」
そう言うと、唯先輩はふるふると首を横に振った。
「ううん。お礼を言うのはこっちの方だよ」
「え?」
「――あずにゃん。私のこと好きになってくれて、ありがとう!」
満面の笑みだった。
その輝きに、思わず見とれてしまう。
「……いいえ、そんな」
ようやく絞り出した声は、自分でもびっくりするくらい震えていた。唯先輩は終始嬉しそうにそんな私の様子を見つめていた。
「よーし。じゃあ、そろそろ帰ろっかな」
「あ……」
ベッドから立ち上がり、脇に置いてあった鞄を手に取る唯先輩。
「先輩!」
どうしても最後に言っておきたいことがあって、私は部屋から出て行こうとする唯先輩を呼び止めた。
「ん? どしたの?」
ドアノブに手をかけたまま、こっちを振り返る唯先輩。
「澪先輩と付き合えて、嬉しいですか?」
自分でも驚くくらい、するりと私の口から出てきた言葉。その言葉に、唯先輩は今までに見たことないくらい幸せそうな笑顔を浮かべると、
「うんっ! お菓子食べてるときより、ずっーっと嬉しいよ!」
とこれ以上ないくらい嬉しそうな声で言った。私の顔にも思わず笑みが零れる。唯先輩は、そんな私を見てますます笑みを深めると、そのまま思い切りドアノブを捻った。
私はその見慣れた後ろ姿に、もう一度声をかける。
「澪先輩と、絶対幸せになってくださいね!」
唯先輩は一度だけ私のほうを振り返ると、
「うん! ありがと〜! また明日ねっ!」
といつもと何も変わらない口調で答えてくれた。私が何を言う暇もなく、そのままバタンとドアが閉じてしまう。すぐにぱたぱたと遠ざかっていく足音が聞こえてきた。
「………」
一人で部屋に残された私は、そのまま後ろからベッドに倒れこんだ。ぼすっという音と共に、身体が沈む。
「あーあ、失恋しちゃったなぁ……」
そう呟いた私の顔は、これ以上ないくらい満面の笑顔だった。
自分の中のわかだまりを全て吐き出したような感覚。まるで心の中にぽっかりと穴があいてしまったかのようだった。
「……ふあぁ」
盛大に泣いてしまったからだろうか、なんだか眠くなってしまった。
明日部活に顔を出したら、まず先輩たちに今日のことを説明しないと。うーん、間違いなく律先輩あたりにいじられるんだろうな。よしっ、その時に備えて体力を温存しておかないと……。
そう思い、私は微笑んだままゆっくりと目を閉じた。
○
私は多分これから先色んな人を好きになって、たくさんの恋を経験するだろう。
でもきっとその度に思い出すんだ。
平沢唯という、ぐうたらでだらしなくてどうしようもない先輩が好きだったということを。
そして、その先輩に見事にふられてしまったということも。
そう。
人生で初めての、この片恋を――。
(あとがき)
初投下です。たまには切ないあずにゃんもいいかなと思って書きました。稚拙な文章で見苦しいところもあったと思いますが、最後まで見ていただいてありがとうございました。
次はギャグっぽいのを書きたいですw
2009/8/6 文章を全体的に修正しました。
高校に入って初めての文化祭が終了して、数週間が過ぎた頃。
文化祭前のやる気はどこへやら、相変わらずぐうたらな雰囲気の音楽準備室で、私はいつものようにむぎ先輩が用意してくれたケーキを食べていた。
「んん〜、やっぱりむぎちゃんが持ってきてくれるケーキは美味しいねぇ」
「こらこら、いくつ食べる気だ? いくら太らないからって、そんなに食べるとお腹壊すぞ」
「その時はその時だよ。それに、もし気分が悪くなっても澪ちゃんに介抱してもらうから、だいじょーぶ!」
「介抱って……。まったく、どうなっても知らないからな」
もぐもぐとケーキを食べながら、向かいの席に座る先輩たちのやり取りに耳を傾ける。
「………」
最近、私は唯先輩の様子に違和感を覚えるようになっていた。端的に述べると、唯先輩と澪先輩の間に流れる空気がどこかおかしいのだ。
何故かお互い必ず隣の席に座るようになったし、前と比べて二人一緒にいることが多くなったように思う。
この間なんて二人で手を繋ぎながら歩いているのを見かけたし。
「ほら、唯。ほっぺにクリームついてるぞ」
「ふぇ?」
今も私の目の前で、唯先輩の隣に座る澪先輩がクリームを指ですくい上げてやっている。どうするんだろうとじっと見ていると、澪先輩は何のためらいもなくそれを自分の口に運んだ。
「えへへ、ありがとー、澪ちゃん」
唯先輩が嬉しそうに澪先輩に微笑みかける。
それが何だか面白くなくて、苛立ちを抑えようとケーキを食べることに集中するものの、結局二人の妙な空気に耐え切れず、食べ終えると同時に気付かれないようにそっと席を立った。
「あら、どうかしたの?」
紅茶を汲みながら二人の様子を楽しそうに眺めていたむぎ先輩が私に声をかける。「いえ、ちょっと」と曖昧に答えながらその後ろをすり抜け、すでにケーキを食べ終えてソファーに寝そべっている律先輩のところへと歩み寄る。
「……あの、律先輩」
「んぁ? どうしたー?」
律先輩がクッキーを頬張りながら、顔だけをこっちに向ける。って、まだ食べてるんですか。
「最近、唯先輩と澪先輩、おかしくないですか? 妙にべたべたしてるっていうか……」
少しでも苛立ちがおさまるかもしれない、と何も考えずにここ最近の疑問をぶつけた私を、律先輩はきょとんとした顔で見上げた。
「ああ、そうか。梓、知らなかったんだっけ」
――ドクン、と心臓が鳴った。
知らなかった、って……何を? 苛立ちが一気に失せ、代わりに気持ちの悪い焦燥感がこみ上げてくる。
頭に浮かんでくる想像を必死で振り払いながら、思い切って聞き返す。
「何のこと、ですか」
声が少し掠れていた。そんな私の様子に気付くはずもなく、律先輩はにんまりと笑うと、
「いや、実はさ。あいつら、今、付き合ってんだよ」
「――、え?」
視界がぐらりと歪んだような気がした。
心臓の鼓動が急速に速まっていくのを感じる。私はその場に固まったまま、律先輩の顔を凝視する。
「おっ、やっぱ驚いた? てか驚くよな、フツー。私も最初びっくりしたし。澪のやつが唯のこと好きだったのは知ってたけど、まさか両想いだったなんてなー」
「―――」
「って言っても、付き合いだしたのは梓の言うとおり最近なんだけどさ。ほんと、あいつら見てるこっちが恥ずかしくなるくらい、べたべたしてるよな」
律先輩は、何を言っているんだろう。……唯先輩と、澪先輩が、付き合っている? だって、二人は女の子同士で。そんなの、普通じゃなくて。
いや、それよりも。
どうして、私はこんなに傷ついているんだろう。
「あれ? おーい、梓……」
急に黙りこくった私を訝しく思ったのか、律先輩が私の顔の前でぱたぱたと手を振る。
私はというと、正直それどころじゃなかった。
心臓の鼓動はおさまらず、視界も歪んだまま。それどころか全身まで震えだしていた。
「お、おい、大丈夫か!? お前、顔真っ青だぞ!」
律先輩がソファーから起き上がり、私の肩を掴む。ふらつく足を必死で留めながら、ようやく顔を上げた。
「あ……す、すいません。私……」
「あずにゃん、大丈夫!?」
背後からの声に思わず大きく肩を震わせる。振り向くと、心配そうな顔でこっちに走り寄ってくる唯先輩が見えた。
そんな唯先輩の姿を見て、私は――
「わっ……私、今日は帰ります! 本当にごめんなさい!」
頭を下げ、自分の鞄を引き寄せると、そのままドアに向かって走り出す。
「あ、あずにゃん!? 待っ――」
唯先輩の制止の声も聞かず、勢いよく部室を飛び出ると、ドアも閉めずに一気に階段を駆け下りた。
○
あれから無我夢中で走り続けた私は、気が付くと自分の家に着いていた。
「……っ、はぁっ、はぁっ……」
呼吸を整えるよりも早く、自分の部屋のドアを開ける。そのまま鞄を放り投げ、ベッドに倒れこんだ。
「はぁっ、はぁっ……、――っ」
呼吸が整うまでにずいぶんと時間がかかった。
汗で張りついた制服が気持ち悪かったけど、それよりも今はずきずきと痛む胸をどうにかしたくて、思わずぎゅうと胸の辺りを押さえる。
――いつからだろう。気が付くと唯先輩を目で追うようになっていた。
お菓子を食べているとき、練習しているとき、みんなで下校するとき。
唯先輩はいつも私の視線の先にいた。
この気持ちを何て言うのか、きっと私は知っていた。知っていて、でも知らないふりをしていたんだ。認めてしまったら自分が自分でなくなってしまうような気がして。
私はただそれを恐れていただけだ。
「……っ、ふ…う、ううっ……!」
涙がこみ上げてきたかと思うと、次の瞬間にはぽろぽろと零れ落ちていた。シーツが染みになってしまうんじゃないかと思うくらい、次から次へと溢れ出してくる。
どうしてもっと早く自覚しなかったんだろう。こんなことになって、ようやく認めてしまうなんて。
(私、唯先輩のことが、こんなに好きだったんだ――)
○
次の日、私は初めて学校に行きたくないと思った。
親に言って学校に連絡を入れてもらうと、仮病だとばれないようすぐにベッドに潜り込んだ。
別に両親が出かけた後にベッドから出てもよかったんだけど、不思議とそんな気分にはなれず、しばらく本当の病人のようにじっとしていた。
そのままベッドの中でぼーっとしていると――昨日あまり眠れなかったせいだろうか――だんだん眠くなってきて、結局そのまま深い眠りに落ちてしまった。
それから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。
コンコン、という小さなノックの音で私は目を覚ました。
「……ん……?」
ぼーっとする頭のまま枕元の時計を見ると、午後四時半頃だった。どうやらかなり長い間眠ってしまっていたらしい。親が帰ってきたのかなと思い、ゆっくり身体を起こす。
「どうぞ」
「失礼しまーす」
聞き慣れた声に眉をひそめる。ドアがゆっくり開いたかと思うと、そこに立っていたのは――
「やっほー、あずにゃん! 元気してた?」
いつもの緩みきった笑顔で部屋に入ってくる唯先輩に、私はぽかんと口を開けることしかできなかった。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、そのままベッドの側まで歩いてくる。
「いやぁ、今日あずにゃんが部室に来なかったから、心配になって憂にメールしたんだよ。そしたら『梓ちゃんなら風邪で学校休んでるよ』って返事がきたから、せっかくだしお見舞いしようと思って」
「………」
「あ、そうそう。みんなは今日は用事があって来れないんだって。でも、みんな心配してたよ? りっちゃんなんて『梓が体調悪いのに気付かなかった! 部長失格だー!』って、髪の毛ぐしゃぐしゃにしててさー」
「………」
私が何も言えないでいると、唯先輩はいきなり私の顔を覗き込んできて、
「あずにゃん? ひょっとしてまだ調子悪いの?」
「わっ!」
突然の行動に思わず仰け反ると、何故か唯先輩は笑顔になった。
「あははっ! よかったー、元気そうで」
そう言うと、私のベッドに腰を下ろす。
私は正直、複雑な気持ちだった。昨日ようやく自覚したばかりの想いが胸の奥でくすぶっているのもあってか、唯先輩が来てくれたのは純粋に嬉しかったけれど、それと同時にあの気持ちの悪い苛立ちが再燃しているのも感じていた。
それを必死で隠しながら、目だけを唯先輩に向ける。
「あの……すみませんでした。部活休んじゃって」
「ええっ? なんであずにゃんが謝るの? 私だって文化祭前は風邪で寝込んでたじゃん。お互いさまだよ〜」
まさか「仮病です」なんて言えるわけもなく、結局そのまま押し黙ってしまった。ベッドに座ったままぷらぷらと足を動かしていた唯先輩が、「あっ」と思いついたように顔を上げる。
「そういえば、あずにゃんのご両親は? 誰もいなかったから、勝手に上がっちゃったんだけど、よかったのかな?」
どうやら玄関は開いたままだったらしい。我が親ながら、なんて無用心なんだろう。
「別に構いませんよ。今日は二人ともいないんで」
唯先輩は「そっかー」と呟くと、何を思ったのか、いきなり私の方へずいっと身を乗り出してきた。
「あずにゃん、やっぱり元気ないよね? なんかいつも以上に返事が投げやりな気がするもん」
「そ、そんなことないですよ……」
「そんなことあると思いますっ!」
その勢いに気圧されて、思わず「うっ」と呟く。唯先輩は、しばらく私の顔をじとーっと見つめていたかと思うと、やがて乗り出していた身体を元の位置に戻した。
「……ねぇ、あずにゃん」
思わずドキリと心臓が高鳴った。唯先輩に似つかわしくない静かな声。
「風邪って、嘘なんだよね?」
「っ!?」
いきなり真剣な顔つきになったかと思うと、今度は仮病を言い当てられてしまった。予想もしなかった事態に、どう返していいのか分からず、ただうろたえることしかできない。
「嘘なんだよね?」
もう一度聞かれ、仕方なく頷いた。これ以上嘘を貫き通すのは無理だと感じたからだ。
「昨日のことと、なにか関係あるの?」
昨日のこと、とは私が突然部室を飛び出してしまったことだろう。
「……あったら何なんですか?」
唯先輩が目を丸くする。予想以上に冷たい言い方になってしまったことを後悔する反面、私の気持ちも知らずに無神経な質問をした唯先輩への苛立ちも募る。
止めようとしても無駄だったようで、次の瞬間には勝手に口が開いてしまっていた。
「別にどういう理由で学校を休もうが、私の勝手じゃないですか。唯先輩には関係ありませんよ。変に詮索しないでください」
唯先輩の顔がだんだん曇っていくのが分かる。
「……あずにゃん、やっぱり変だよ。いつものあずにゃんなら、そんなこと言わないよ」
「いつも、の……?」
かあっと全身が熱くなった気がした。
「――いつもの私って何ですか!?」
突然した大声を上げた私に、唯先輩は驚いたように目を見開く。脳が沸騰したかのような感覚。
もう止まらなかった。
「何で先輩にそんなことが分かるんですか!? 私の気持ちなんて誰にも分かるはずないじゃないですか! 私が――私がどんな気持ちでいたか知らないくせにっ!!」
それは、八つ当たり以外の何ものでもなかった。
自分が今まで何もしてこなかっただけのくせに。唯先輩への想いを認めるのが怖かっただけのくせに。勝手に自分で傷ついているだけのくせに。
それを、すべて唯先輩のせいにしてしまっている自分が、ひどく憎かった。
「私はっ……! 私は、唯先輩が……ゆい、せんぱ……、の……」
視界がぼやける。瞳から溢れ出した水滴が頬を伝うのを感じて、ようやく、自分は泣いているんだという事実に気付いた。涙でぼやけて、唯先輩の表情が見えない。
「ど、して……なにも、教えてくれなかったんですか……!? なにも、知らなかった……っ、く……澪せんぱ、と……付き合ってる、なんて、……私、知らなかったっ!!」
あらん限りの力を振り絞って叫んだ。自分の気持ちを隠すなんていう考えすら、とっくに消えていた。もう自分が何を言いたいのかも分からない。
「――あずにゃん」
ふと、今まで黙っていた唯先輩が、小さく呟く。次の瞬間、私の身体は唯先輩の腕に包まれていた。
「あ……」
いつもされていたスキンシップとは違って、相手をいたわるような、ただただ優しい抱擁。唯先輩の温かさに、私の全身の熱もゆっくりと冷めていく。
「ごめんね」
耳元で囁かれる優しい声。
「あずにゃんがそんなに傷ついてたなんて、私、全然分からなかった……。ごめん……ごめんね、あずにゃん」
ぎゅう、と強く抱きしめられる。また涙が溢れてきた。
「……私こそ、ごめんなさい……。唯先輩は、悪くなんかないのに、私」
「えへへ、いいよいいよ。全然気にしてないから、だいじょーぶ」
ぽんぽん、と私の背中をさする唯先輩に、今度は私の方から強く抱きつく。久しぶりに触れる唯先輩の身体は、やっぱりどこもかしこも温かかった。
○
唯先輩の胸の中で泣き続け、何分経ったのかも分からない頃、私の涙はようやく収まってくれた。
唯先輩に抱きついていた腕を放し、ゆっくりと顔を上げる。
「……唯、先輩」
「ん?」と優しい顔で私の声に応えてくれる。温もりが名残惜しかったけど、意を決して、私は唯先輩から少しだけ離れたところに座りなおした。
「……私の話、聞いてくれますか?」
我ながら声が震えていたように思う。唯先輩は私と同じようにベッドの上に座りなおすと、「うん」と大きく頷いてくれた。
お互い真正面から向かい合う形になる。
「私、唯先輩が好きです。多分……先輩として好きなのと、一人の女の子として好きなのの、両方です」
さすがにもう唯先輩も分かっていると思ったけど、やっぱりこうして言葉にするのとでは、緊張の度合いが全然違う。
唯先輩はそんな私の緊張なんて何のそので、「えへへ、ありがと」と照れたように笑った。私も釣られて笑う。
「……好きって言っても、気付いたのは昨日なんですけどね。澪先輩と付き合ってるって知って、すごくショックを受けて……それで、ああ私は唯先輩のこと好きなんだ、って自覚しました」
自分で言って、何だかひどく滑稽に思えてきた。でも唯先輩はそんな私を嘲笑することもなく、ただ真剣に聞いてくれていた。
私は心の中で深呼吸をした。
「……先輩。私、けじめをつけたいんです」
「けじめ?」
唯先輩の質問に「はい」と答えると、もう一度大きく息を吸う。
「――唯先輩、好きです! もしよければ、私と……付き合ってくださいっ!」
正座をしたまま、大きく頭を下げた。それ故に唯先輩の表情は分からない。ただ唯先輩が小さく息を呑む音だけが聞こえた。
時間にして、約数秒。
それでも私にはかなり長い時間が経ったように思えた。
「――ありがとう、あずにゃん」
唯先輩の優しい声が頭上から聞こえてくる。でも私は顔を上げない。
「だけど、ごめんなさい。……私には今すっごく好きな人がいるんです。だから――あずにゃんとは、付き合えません」
分かってはいても、やっぱり軽く衝撃を受けてしまう。
少しの間の後、私はようやく顔を上げた。私と目が合うと、唯先輩はいつものように笑う。
「えへへ。あずにゃんのこと、ふっちゃった」
「……ふふっ。ふられちゃいました」
何だか可笑しいやり取りに、思わず笑いがこみ上げてきた。私は笑顔のまま、
「ありがとうございます、唯先輩。こうやってきちんとけじめをつけないと、いつまでも引きずっちゃいそうな気がしたから……」
そう言うと、唯先輩はふるふると首を横に振った。
「ううん。お礼を言うのはこっちの方だよ」
「え?」
「――あずにゃん。私のこと好きになってくれて、ありがとう!」
満面の笑みだった。
その輝きに、思わず見とれてしまう。
「……いいえ、そんな」
ようやく絞り出した声は、自分でもびっくりするくらい震えていた。唯先輩は終始嬉しそうにそんな私の様子を見つめていた。
「よーし。じゃあ、そろそろ帰ろっかな」
「あ……」
ベッドから立ち上がり、脇に置いてあった鞄を手に取る唯先輩。
「先輩!」
どうしても最後に言っておきたいことがあって、私は部屋から出て行こうとする唯先輩を呼び止めた。
「ん? どしたの?」
ドアノブに手をかけたまま、こっちを振り返る唯先輩。
「澪先輩と付き合えて、嬉しいですか?」
自分でも驚くくらい、するりと私の口から出てきた言葉。その言葉に、唯先輩は今までに見たことないくらい幸せそうな笑顔を浮かべると、
「うんっ! お菓子食べてるときより、ずっーっと嬉しいよ!」
とこれ以上ないくらい嬉しそうな声で言った。私の顔にも思わず笑みが零れる。唯先輩は、そんな私を見てますます笑みを深めると、そのまま思い切りドアノブを捻った。
私はその見慣れた後ろ姿に、もう一度声をかける。
「澪先輩と、絶対幸せになってくださいね!」
唯先輩は一度だけ私のほうを振り返ると、
「うん! ありがと〜! また明日ねっ!」
といつもと何も変わらない口調で答えてくれた。私が何を言う暇もなく、そのままバタンとドアが閉じてしまう。すぐにぱたぱたと遠ざかっていく足音が聞こえてきた。
「………」
一人で部屋に残された私は、そのまま後ろからベッドに倒れこんだ。ぼすっという音と共に、身体が沈む。
「あーあ、失恋しちゃったなぁ……」
そう呟いた私の顔は、これ以上ないくらい満面の笑顔だった。
自分の中のわかだまりを全て吐き出したような感覚。まるで心の中にぽっかりと穴があいてしまったかのようだった。
「……ふあぁ」
盛大に泣いてしまったからだろうか、なんだか眠くなってしまった。
明日部活に顔を出したら、まず先輩たちに今日のことを説明しないと。うーん、間違いなく律先輩あたりにいじられるんだろうな。よしっ、その時に備えて体力を温存しておかないと……。
そう思い、私は微笑んだままゆっくりと目を閉じた。
○
私は多分これから先色んな人を好きになって、たくさんの恋を経験するだろう。
でもきっとその度に思い出すんだ。
平沢唯という、ぐうたらでだらしなくてどうしようもない先輩が好きだったということを。
そして、その先輩に見事にふられてしまったということも。
そう。
人生で初めての、この片恋を――。
(あとがき)
初投下です。たまには切ないあずにゃんもいいかなと思って書きました。稚拙な文章で見苦しいところもあったと思いますが、最後まで見ていただいてありがとうございました。
次はギャグっぽいのを書きたいですw
2009/8/6 文章を全体的に修正しました。
このページへのコメント
失恋系は嫌いだけどこれはよかった
切ない・・・
片恋…、切なすぎる
GJ
切ない…あずにゃん(涙
おいおい泣かせるなよ。
こういう切ないの弱いんだよー。