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著者:8-754氏


お姉ちゃんはいつも私の布団に入ってくる。

ずっとそれは普通のことで、ほかの家の兄弟や姉妹も同じようなものなのだとずっと思っていた。
起きたときお姉ちゃんの匂いがして、ふわふわの寝顔が間近にあるとなんだか凄く嬉しくて、ちょっとドキドキする。
そして、今日もお姉ちゃんの笑顔が見れるんだと安らかな気持ちになる。
それが私の日常だった。


中学にあがる頃になると、いろいろな人たちと接する機会も増えたけど、どうやら私たちは世間で言うところの普通の姉妹ではないらしい。
とても仲が良い姉妹。
もっと違う言い方をすれば、シスコンなのだと知った。
私にとってお姉ちゃんって何なんだろう。
ただ、大好きで、大切で、誰よりも可愛い女の子。
傍にいるだけで心が暖かくなる特別な存在。
たとえ全世界を敵に回しても、守ってあげたい。

それは、家族だから、姉妹だから当たり前だと信じて疑わなかった。

この頃は学校で友達と話していると、よく色恋沙汰の話になる。
「憂は好きな人とかいないの?」
「ああ、だめだめ。この子シスコンでお姉ちゃんにべったりだから」
「もー、憂ってばそっち関係はおこちゃまなんだから」
友達は言いたい放題だ。別にその通りだし、反論は出来ないけれども。
「ファーストキスもまだなんでしょ」
困った笑いを浮かべて控えめに相槌を打てば、大抵矛先は反れてくれる。
女の子ってこの手の話好きだよね。いや、私も嫌いじゃないけれど、未知の事柄が多すぎて付いていけない。
それなりに盛り上がっていく会話を聞きながら頭に浮かぶのは、お姉ちゃんの顔だった。


お姉ちゃんは、キスとかしたことあるのかな。

さすがに四六時中べったり傍にいるわけじゃないから、お姉ちゃんのすべてを知っているわけじゃない。
私の知らないところで、私の見たことのない表情をしたお姉ちゃんが誰かと唇をあわせる――――想像しただけで、胸が苦しくなった。
頭の中の見知らぬその誰かに嫉妬している自分がたまらなく醜く思えて、とてつもない嫌悪感に苛まれる。
ふと、思った。私がその誰かだったとしたら。
きっと、その唇は柔らかくて甘いアイスの味がする。
妄想にしてはリアルに感じられるその感覚で思い出した。小さな頃の遊びのキスもカウントするのなら、私のファーストキスはお姉ちゃんだ。
幼稚園に上がったばかりくらいだったっけ。

「すっごくだいすきなひとにはちゅーするんだって」

お姉ちゃんはおそらくその日初めて知った知識を自慢して、口先を少し尖らせて私の口に触れさせた。
私はよくわからない行為をよく分からないまま受け入れて、満足げに笑うお姉ちゃんの顔と「うい、だーいすき」の一言が嬉しくて
「ういも、おねえちゃんだいすき」と同じようにキスを返した。

今まで忘れてたのに、急に鮮明に思い出せるなんて凄いな。

「ただいまー」

玄関をあけると自分と同じくらいのサイズの靴が転がっていたから、お姉ちゃんはきっといつものようにくつろいでいるに違いない。

離ればなれになっていた靴を仲良く並べて居間に行くと、案の定お姉ちゃんが眠っていた。
無防備に薄く開いた唇。Tシャツの裾からのぞく白いお腹。
やれやれと傍にあったタオルケットをお姉ちゃんのお腹にかけてあげる。

「もう、そんな格好で寝てたら……」

風邪を引くよ、と続けるつもりだった台詞は、先ほどの見知らぬ誰かの想像を思い出してしまいかき消された。

視線はだた一点に集中して、それ以外見えない。
キスしたいな。
そう思うよりも先に、唇を重ねていた。

ほんの数秒にも満たない接触。
幸い、お姉ちゃんは一ミリも起きる気配はない。
それなのに私ときたら、勝手に盛り上がってうるさい心臓とみるみる内に上昇していく体温に大慌てで自室へと向かった。

柔らかかった。でも、甘くはない。
少し泣きそう。口を押さえた両手が小刻みに震える。今までこんなに動揺したことってあったかな。


大体、なんでお姉ちゃんにキスなんかしちゃったんだろう。

―――――ああ、そうか。
私、お姉ちゃんのこと特別な意味で好きなんだ。
改めて心の中で答えを出すと、今までモヤモヤとしていた心の隙間に最後のかけらがすとんときれいに嵌った気がした。

あれ、でもこれって気づいちゃいけないことだったんじゃないかな。

自分たちは姉妹で、どう考えても血は繋がってる。つまり、同性愛で近親相姦。
二重のタブーを犯していることになるのだ。
でも、好きなのに嫌いになんかなれるわけはないし。

「うーいー?帰ってきたのー?」

悶々と一人で頭を抱えていると目を覚ましたらしいお姉ちゃんが二階へと上がってくる足音が聞こえた。
どうしよう、どうしよう。半ばパニック状態の私の気なんか知りもしないで、部屋のドアが開いた。

「憂、どうしたの!?具合でも悪いの?」

心配そうに駆け寄って来て私の肩を抱く。
まずい。今までは平気だったのに、好きだって自覚したせいかドキドキがとまらない。
このままじゃ……

「憂?」

すぐそばに、お姉ちゃんの顔。息がかかるほど近くに。
大丈夫、平常心を保つことくらい簡単なこと。今まで何年間もそうして暮らしてきたじゃない。
それに相手はお姉ちゃん。相当わかりやすく明言するなりしない限りわからない。

でも、もし急に歯止めが利かなくなっちゃったら……?
さっきみたいに衝動的に体が動いてしまったら―――――

私はなんだか急に怖くなって、ぎゅっと自分を抱きしめた。





「そろそろ、自分のお部屋がほしいな」

お父さんもお母さんも、滅多に言わない私のわがままに少し驚いていたけれど「もうそんな年なのよね」と納得したように頷いて意見を受け入れてくれた。
元々年頃になれば部屋を分けるつもりだったらしく、ちゃんと空き部屋は用意されていたことも知っていたし、話はとんとん拍子に進んでいった。

唯一不服そうだったのはお姉ちゃん。

「だって、憂と一緒に寝れないじゃん」

二段ベッドの上と下で分かれてはいたけれど、お姉ちゃんは相変わらず、よく寝ぼけて私の布団に入り込んできていた。
お姉ちゃんは何も知らない。
あの日のキスも、私がお姉ちゃんにどんな気持ちを抱いているのかも。

知られたら二度と口を利いてもらえなくなってもおかしくはないようなことをたくさん考えてるんだよ。
日に日に妄想はエスカレートしていくし。
そんな人間の布団の中に不用意に潜り込んできて、何かされたらどうするの。
心の準備が出来ているなら別だけど、夜目が覚めて寝乱れたお姉ちゃんのお腹とか腰とかチラチラと見え隠れする肌が自分に密着している時のあの感じ。
自覚していなかったとはいえ、今までよく襲わずに我慢できてるよね。
我ながらたいした精神力。

「でも、一人部屋だと使えるスペースも広くなるよ」
「そうだけどー……ま、いっか。寂しくなって一緒に寝たくなったらそっち行くね」
「うん!」

ごめんね、お姉ちゃん。
この決断は、私のためでもあるけど、お姉ちゃんのためでもあるんだよ。

私にお姉ちゃんを襲わせないで。傷つけさせないで。
ずっと一緒にいるために、ほんの少しだけ離れていて。


大好き、お姉ちゃん。


――――――本当に大好きで、ごめんなさい――――――

このページへのコメント

本当に大好きで、ごめんなさい←切neee

0
Posted by 通りすがり 2009年12月01日(火) 05:45:49 返信

唯と結ばれてほしい…

0
Posted by 名無しの… 2009年09月13日(日) 16:05:28 返信

ういが切ないです!
お姉ちゃんが大好きって気持ちが伝わってきました!!
続編希望です

0
Posted by りん 2009年08月21日(金) 15:30:22 返信

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