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著者:別1-362氏


やけに視点が低い。目に映るもの全てが巨大に見える。
自分の頭上に広がる天井は、吹き抜けかと思うくらい遥か遠くにあるようだった。
ガリバー旅行記を思い出しながらガラス扉に移る自分の姿を見て、納得した。
幼稚園児の私がそこにいる。
でも、私自身に発言権はなくて、そこに存在している小さな私は自分の中にいる私の存在に気が付いていない。
私自身の口が動いている感覚があるのに、私の意思は反映されない言葉が紡ぎだされていく。

「ういは、おおきくなったら、おねえちゃんのおよめさんになるの」

「そう。憂ちゃんは本当にお姉ちゃんが大好きなのね」

先生がニコニコ微笑みながら頭を撫でてくれる。
ぼんやりとしか見えないけど、包み込むような優しい雰囲気は紬さんに似ているような気がした。


ひんやりとした空気の流れに、意識が現実へと引き戻される。
すぐそばに布団の塊があるのに、私はそれをかけずに横になっていた。
眠りに付くときには必ず掛け布団を被っているし、そこまで寝相は悪くない。
にもかかわらず、何故そんな不自然な状況なのだろう。

首に巻いていたマフラーで、疑問はすぐ解けた。
たしか、クリスマス会が終わって、お姉ちゃんと一緒に寝てたんだっけ。
お姉ちゃんの両手には私が買った手袋が着けられていた。

ありがとうって笑ったお姉ちゃんも可愛かったなあ。

中途半端に覚醒してしまった頭で先ほどの夢を思い出す。
あれは実際にあった出来事だ。物心付いたときからずっと将来の夢は変わっていない。
今でこそ声高に宣言することはなくなったけれど、心の中では揺らがない気持ちが常に熱を持っている。
お姉ちゃんは、きっと覚えてる。今でも本気でそんな夢を持ってるなんて思いもしないだろうけど。
決して叶うことのない、現実的ではないその願望を捨てられる日なんてくるのだろうか。

妹という立場は、思っているよりもずっと複雑。
最も近い肉親であるが故に、気まずさが怖い。
もし、告白して気持ち悪いと思われてしまったとき、同じ屋根の下で今までと変わらない生活を
何食わぬ顔で送らなければならないなんて想像しただけでも息が詰まる。
無害な妹のままでいれば、一緒にいられる。
だから、私は良い妹を演じきる覚悟を決めた。

きっと、いずれお姉ちゃんが恋人を連れてくる日が来る。

――――憂。私、この人とおつきあいしているの。

昔は考えただけで涙が出てきたけれど、どう転んでも自分が与えることの出来ない「世間一般で言うところの」幸せを
その人がお姉ちゃんに惜しみなく与えてくれるというのなら、私は喜ばなくては。
そう自分に言い聞かせて笑顔を向ける練習をしたけれど、すこし手が震えるのは未だに押さえられない。



「憂?どうしたの?」

しがみつく手が震えているのに気が付いてしまったのだろうか。珍しくお姉ちゃんの目も覚めてしまった。

「どうもしないよ、お姉ちゃん。まだ夜だから、起きなくてもいいんだよ」

今が冬でよかった。震えているのは寒いからだと誤魔化せる。
様子がおかしいと思われないように、出来る限りの優しい声で答えた。
月明かりのなか、きっと表情までは読み取ることが出来ないはず。

「ふとん、私が独り占めしちゃってたんだね。ごめん、寒かったでしょ?ほら、こっちおいで」

まだはっきりと起きたわけではないのだろう。眠たそうに目をこすりながら布団を半分めくる。
少し戸惑いながらも嬉しさが勝ってしまい、素早くお姉ちゃんの隣に潜り込と大好きな匂いが鼻を掠めた。

「やっぱり二人一緒に布団に入ってるためにはこうしないとね」

独り言のようにつぶやいて、背中に腕が回された。
柔らかな体が密着する感覚に頭がとろけそうになる。

お姉ちゃんはずるい。

いつだって私が心細かったり寂しかったり悲しかったりしたとき、なにも言わないのにこうしてくっついてきてくれる。
温かい体温と心臓の音が静かに重なり合う音を感じながら、ようやく穏やかな気持ちで眠りへと落ちていく感覚に身を任せると
まどろみの中で夢と現実の境界線が分からなくなっていく。

「ういー、結婚したら上の名前がその人と一緒になるんだって」
「うん」
「でも、わたしもういも変わらないね」
「なんで?おむこさんもらうから?」
「ういはわたしとけっこんするからだよー」

当たり前のように満面の笑顔を見せるお姉ちゃんに私は力一杯頷いた。

このページへのコメント

初めて百合SSで泣いた

0
Posted by あ 2010年07月30日(金) 01:07:12 返信

憂のせつなさで俺の涙腺がマッハで頂点

0
Posted by ま 2010年01月31日(日) 21:29:06 返信

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