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著者:別2-381氏



一日二度ある沢ちゃんとの別れ。
その一度目を済ませた私たち四人は、談笑しながら廊下をのんびりと歩き、音楽室に向かう。
廊下の右側に横二列、縦二列。澪とムギが前列で、その後ろに私と唯。

(横顔が見れないのが残念だけど、後姿もアリかな)
艶やかな澪の長髪が、歩調に合わせて揺れている。小学校に通っていた頃は、よく触らせてもらった記憶がある。
最後に触ったのはいつのことだろう。中学校に上がる頃には、意思表示や抵抗(ちょっぴり乱暴だけど)を私にだけは出来るようになっていた。
すると、五年生の時?……ずっと傍にいたのに、それってなんだか寂しいな。

「りっちゃん?どうかした?」
「え!?あ、ああっと……」
表情に出てしまったらしく、唯が心配して声を掛けてくれた。
去年起こった私と澪の騒動以降、少し敏感になっているのかもしれない。
あの件で私はたくさん迷惑を掛けた。でも優しい皆はあの後すぐに許してくれた。
だから、こうして変わりなく音楽室まで帯同できている。本当にありがとう。

(……あ!)
そういえばあの日、からかって澪の髪を触ったんだ。「ポニテー」とかいって……バカ。
でも良かった、触ってた。私ってどんだけ記憶力が乏しいんだろう。
自重するのは後にして、まず先に杞憂であることを唯に伝えないといけない。
「ふー……なーんでもないざます!」
「ぷふっ。あらぁ!それならよかったですわぁ、ウフフフフー」
「あはは、なんだぁ?その笑い方は」
一緒にボケ合え、自分のことのように私を思ってくれる唯が、私は大好きだ。

ふと前を見ると、澪とムギも二人で何かを話している。……澪は、あの日のことをどう思っているんだろう。実は未だに話せていない。
お互い意識はしていないけれど、なんとなくその件についてはいつも敬遠している気がする。トラウマってこういうことをいうのかな。
仲直りは自然にしていた。軽音部同様、二人の関係も変わっていない。このままずっと――

「……」


「気をつけて帰るのよぉ」
「ありがとうございました」
「沢ちゃんばいばぁい」
山中先生に昇降口まで見送られて、私たちは校舎を出ました。
「今日のお菓子美味しかったねぇ!チップルチップルー」」
「ワッフルですよ?」
「そうだっけ?」
「……もう、しっかりしてくださいよ?」
「えへへー」
唯センパイと並んで歩くと自然と話が盛り上がります。年上の雰囲気を醸し出してないからか、こうして会話も気遣いなくできています。
もう少し先輩としてあるべき姿が見たいけど……そういうのは、やっぱり違うかな。

「ねぇねぇ、あずにゃん?」
「はい?」
「どこか寄って帰ろうよ」
「またお茶ですか!?」
「ハンバーガーでもいいよ?」
「そういう問題じゃなくて……」
「うぅ……だめぇ?」
「ひっ!……わ、分かりました。いいですよ」
センパイに甘えられるといつも挫けてしまします。今の表情は卑怯です。
母性本能を擽られる?ってこういうことなのかな。
「やったぁ!ねぇねぇ、今からお茶飲み行こぉ?」
すると唯センパイは後ろに振り返り、他の先輩方にも誘いを掛けました。
(え!?二人じゃないんだ……)

「うん!行こぉ行こぉ!」
「よぉっしゃあー!」
ムギ先輩が可愛らしい笑顔を私たちに向けています。こういう誘いがくると、考慮せずに承諾する傾向があるように思えます。
第一印象は物静かなお嬢様だったので、入部してからはあまり話しかけられませんでした。
しかし合宿で、実は子供っぽい一面があることを知り、今ではとても仲良くさせてもらっています。
「律先輩と澪先輩はどうしますか?」
「……悪いんだけどさ、これからちょっと、用事があるんだ」
「そうなんですか。なら仕方ないですね。澪先輩は?」
「ごめん。私も……今から用事があるんだ」
「え、謝らないで下さい!また今度、五人で行けばいいんですよ」
結局、律先輩たちは足早に帰り、三人で喫茶店に行くことになりました。二人の先輩方がいないのは寂しいですが、仕方ありません。
気を取り直して、センパイを慰めながら駅に向かいましょう。
「それじゃあ行きましょうか……え?」
私の目に映る唯センパイは、なんだかとても悲しそうでした。


ハンバーガーショップの店内は夕方なのに意外と空いていた。携帯電話の液晶画面を確認すると、沢ちゃんと別れてからだいぶ時間が経っていた。
食欲のない私は窓際の席を確保し、レジで商品を注文する二人を余所目に、悩む。
「はぁ……」
帰った二人は今頃どうしてるだろう。一緒に帰宅したのかな?もしかして……心配かけない為に二人で帰っただけだった……?
「唯ちゃん?」
「はっ!あ、ご、ごめんね!」
「どうかしたんですか?」
あずにゃんが心配そうな目で私を見ている。ああ、後輩に心配かけるなんてダメだなぁ……私。
「い、いやぁ!お腹が空いちゃってねっ」
「え?さっき食欲ないっていってませんでした?」
「あれ?そ、そだっけ?」

「……もう!いい加減にしてください!何かあったんですか?!」
「そ、そんな怒らなくても……」
「怒ってません!ただ、唯センパイが急に悲しそうな顔をしたから……心配しているだけです」

りっちゃんと澪ちゃんは子供の頃からの幼馴染で、私が軽音部に入部した時も、当然二人は仲良しだった。
だからというのも変だけど私の中で二人は、初めて会った頃から私と和ちゃんの等身大のように映っていた。
でも私たちと、りっちゃんと澪ちゃん――同じように思えていた二組は、違うことに気づいた。
去年の秋。りっちゃんと澪ちゃんがケンカをした。二組は同じだと考えていた私は、凄い衝撃を受けた。
私たちはケンカをしたことがない。でも、あの二人は今、ケンカをして離れ離れになっている。正直、怖かった。
境遇が似ているのに、どうして二人がああなってしまったのか理解が出来なかった。
でも、澪ちゃんが仲直りの行動を起こすとすぐに二人の関係は元に戻った。

だけど、私は未だに怖い。

「二人がまたケンカしちゃったらどうしよう、そう考えちゃうの……」
「唯ちゃん……」
「で、でも、今日は何もなかったですよ?」
「ううん、あったの……」

りっちゃんは今日、思いつめたような表情で澪ちゃんを見ていた。
「うん……」
さっきも、澪ちゃんが「用事がある」と断った時に、りっちゃんが驚いていた。
「え?あの、それがどうかしたんですか?」
「多分ね、りっちゃんは澪ちゃんと一緒になりたくなくて断ったの」
「そうしたらね、澪ちゃんもようじがあるっていって……!」
「唯ちゃん」
名前を呼ばれた方を見ると、ムギちゃんが目に涙を浮かべて笑っていた。
「唯ちゃんは、優しいのね」
「ど、どうしたのムギちゃん!ご、ごめんね、私がこんなこと、話したから……!」
鏡を見なくても涙が溢れているのが分かる。我慢していたのに、止まらない。
「唯ちゃんは二人を見ていて、仲が悪いと思ったことが一度でもある?」
「ううん、一度もない」
「じゃあ、心配要らないんじゃない?二人は仲良しなんだから」
「で、でも、前も仲良しだったのに……ケンカが」
「変わってないじゃない」
「え?」
「ケンカをしても、二人は変わってない」

「本当の友達ならばね。何が起きても、何も変わらないの」

りっちゃん、澪ちゃん。ごめんなさい。私、二人を信じていたはずなのに心のどこかで疑っていたの。
でもね、ムギちゃんにいわれて気づいたの。
二人に何があっても、何も変わらないってこと。
私たちは、本当の友達。

だから放課後ティータイムは、何が起きても、何も変わらないんだね。


夕焼け空が薄紫色に変わっても、律は黙っていた。隣に座る私から声を掛けてもいいのだが、何となくそういう空気じゃない。
時間だけが刻々と過ぎていく。
この公園に来たのは何年ぶりだろう。小学生の頃以来かな?曖昧だけど。
でも確かなのは、最後に来た日も律と一緒だったこと。この公園に私は、律としか来たことがないから。……律が同じかどうかは知らないけど。
考えてみれば、私たちが友達になってからすごい時が過ぎたんだ。それならこれくらいの間は、ほんの一時にすぎない。

小学校に入学した当初から顔馴染みではあったが、れっきとした友達になったのは……そうだ、この公園で律に会った時。
ああ、懐かしいな。
「ふふっ……あ」
つい笑みが零れてしまった。おそるおそる隣を見ると、律もこっちを見ていた。
「どうかした?」
「え?あ、ああ……別になんでも」
「ふぅん、そっか」
いつもなら、問い質してくるのに。やっぱり思いつめてるんだな……それなら、よし。

「あ、あの、さっきの」
「澪ごめん!」
急に立ち上がったかと思いきや、私の目の前に立ち、前屈みになる律。
「おい、どうした」
「あの日のこと!本当にごめんなさい!」
「な、ななななにが!?」
「私、あの時おかしくって!だから、ごめんなさい!」
「い、いいんだよ?誰にでもそういう時は、ああ、あるからな」
「でも、本当に私どうかしてたんだ……」
「そうかなー?い、いつもあんな感じなのだよ、律は」
「え?いや、そんなわけないよ!」
「はあ?いつも私を、こ、怖がらせておいて何を……」
律が呆けた顔で私を見ている。原因不明の律の表情は、次第にいつもの惚けた顔に戻ってきて。
「あーっと……何のことでしょ?」
ムギ、ありがとう。


from りっちゃん
subject RE:
澪に謝ろうと思う。曖昧なまま終わりにしたくないからさ。
ムギにはたくさん話聞いてもらっちゃって…ありがとう。
今度何かおごる!絶対!


from 澪ちゃん
subjct 無題
いよいよ今日なのか。正直上手くいくかどうか不安だよ。

私が緊張して変な態度とったら、律の悩みを払拭できないまま終わりそう(>_<)
・・・でも、うん。ムギにいわれたとおりにすれば、大丈夫、な、はず!

いつもいつも迷惑掛けてごめんな。今度二人でお茶でも行こう(o^_^)b



夜の公園に沸く女の子の笑い声。
少し……近所迷惑かもしれないけど、近隣の住民の方々、どうか二人を温かい目で見守ってあげてください。
「よかったね。りっちゃん、澪ちゃん」
今度は五人で、お茶会に行きましょう。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ところで、澪の話は何だったんだ?」
「何だっけ?」
「さっき言いそびれたやつ」
「ん?ああー、ふふっ、あれはただの作り話だよ」
「ふぅん、そっか」

「ん?作り話!?おい澪、どういうことだ!?」
「……し、しまったぁぁあああ!」


〜fin〜

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