2chエロパロ板のけいおん! 作品のまとめサイトです。

著者:12-480氏


終わった・・・。今日この日の為に一学期から計画を練り夏休みも集まり膨大な量の資料をまとめ夜遅くまで学校に残って・・・。
学園祭。
夕刻のアナウンスと共に人が減っていき媒体で彩られた校舎も寂しくなる。
静かな校舎に私の足音が響き渡る。
廊下を歩くと教室から談笑の声が聞こえる。
まったくとため息1つ付いてノックもせずに扉を開ける。
――ガラッ
和「貴方達、生徒はとっくに下校時刻よ?もう帰りなさい?」
不満そうに私を睨みつけしぶしぶとスクールカバンをまとめ教室を後にする生徒。
祭の後の興奮のせいか毎年放送を流しても居残りする人が居る為私が1クラスずつ回ることになった。
次々と教室を空けてはコンセント、照明の点検、生徒に撤収の呼びかけ。生徒会なんて響きだけは格好良さそうだけれど実際は雑務を繰り返すだけ。

和(次は・・・音楽室ね・・・。)
さっき校庭で唯とすれ違ったから誰も居ないだろう。そう思い木製の扉に手を掛ける。
――ガチャリ・・・
微かに甘い香りがする。勝手に持ち込んだ食器棚。4つ繋げた机の上になぜか一箇所にお菓子が集まっている。
広くなった床。ドラムセットがあった場所だけが日焼けせず、木目が濃い。
和「・・・あら。」
紬「・・・あ。」
そんな寂しい風景の中、窓辺に白金のロングヘアーを靡かせ彼女がいた。
和「・・・下校のアナウンス・・・別館には流れてなかったのね・・・。」
関わりはほとんどないけれど彼女が真面目な人だとは雰囲気で分かる。
紬「はい。・・・でも聞こえてました。」
振り返ると夕日の逆光で彼女が見えない。
紬「早く帰らなきゃとは思っていたんだけど・・・。」
本当に申し訳無さそうに謝る彼女。本当はこんな事よくないけれどおもわず口が動いてしまった。
和「5分。」
紬「え?」
和「5分見逃してあげるから時間が来たらすぐ帰るのよ?」
紬「・・・いいんですか・・・?」
これが逆光じゃなければきっと綺麗な笑顔が見れたのだろう。
たった5分の執行猶予。短すぎるかもしれないけれど彼女は素直に喜んでくれた。
和「じゃあまた見回りに来るからゆっくりしてて。」
紬「あ・・・あの?」
和「何?」
紬「・・・ここにいてくれませんか?」
和「・・・まあ、いいけど。」
―――ザザー・・・
秋風が吹き校舎の木々が控えめに歌う。学園祭では立ち入り禁止になっている別館。音楽室は楽器がない以外普段の風景。
和「唯達と一緒に帰らなかったの?」
紬「はい。なんだかこのまま普通に帰るのが名残惜しくて。」
さっきの生徒もそう。校舎から離れ帰宅したら”祭”は完全に終わり日常に戻る。楽しい空間から離れたくなくて・・・。
文化祭に満足する生徒と比例するようにいつまで経っても帰らない生徒がいる。・・・彼女もそうだろう。
紬「・・・すみません、迷惑かけて。」
和「いいわよ。唯の友達なんだから。あと、敬語はよしてね?」
礼儀正しい子なのだろうか。何度か顔はあわせているのに他人行儀な接し方をする。律とは大違いだわ。
和「琴吹さんは
紬「名前でいいでs・・・いいわ。」
和「あ・・・えっと・・・紬?」
紬「うん。」
和「・・・。」
紬「・・・。」
・・・気まずい。正直何を話していいか分からない。唯や澪や律の様に抜けている所がない彼女。
人のフォローをしながら仲良くしていく私には完璧な彼女との接し方に悩む。
和「飲む?」
紬「え?」
和「生徒会の差し入れで悪いけれど。この間ご馳走になったし。」
鞄から冷め切った細缶のお茶を差し出す。
紬「ふふ、ありがとう。」
――カパンッ・・・。
丁寧に缶茶をグラスに移し音も立てずに飲む。かなりのお嬢様の様ね・・・。
和「琴・・・えっと、紬・・・は前からキーボードやっていたの?」
紬「ええ、ピアノを4歳の頃から――。」
和「やっぱり、どうりで上手いと思ったわ。」
紬「でも、ピアノよりキーボードの方が好き・・・かな?」
和「どうして?」
紬「・・・ピアノは一人だから・・・。」
寂しそうに彼女は呟く。脳内で数時間前の講壇を思い出す。
最後の一曲になって唯が現れ、去年も演奏した曲を弾く。
普段の腑抜けた軽音部から想像できない完璧な演奏を披露してくれた。
一年前まではただぼーとしている唯の本当に楽しそうにギターを掻き鳴らす姿。
子供の成長を喜ぶ親のような気持ちに浸ってしまう。
その世界観に引き込まれる観客。演奏が終わったというのに拍手すらも忘れてしまうほど。
その時だ。普段は目立たないキーボードが講壇の中心になった。
紬「あの時・・・もうこれでライブは終わりなんだって思ったらいてもたってもいられなくなって。」
ええ、分かるわ。観客の誰よりも近くで貴方達を見ていたもの。
普段のおっとりしたお嬢様の彼女からは信じられない――汗だくで生き生きとした表情で鍵盤を押さえる姿も。
みんなもそうだけれど誰よりもこの部が大好きなのだと。
紬「・・・ピアノのコンクールはいつも一人で冷たい椅子に座って。始まりから終わるまで孤独で・・・。」
和「・・・。」
和「・・・燃え尽き症候群って奴ね・・・。」
紬「うん、そうね。」
和「私に・・・できる事ある?」
半分社交辞令。半分本気の言葉だった。
え?と言葉と共に手を組んでうーんと悩む。
紬「えーと・・・ナデナデして欲しいなあ・・・。」
和「はあ?」
予想外の言葉に驚く。
紬「私ね、唯ちゃんみたいに幼馴染に甘えるのが夢だったの。」
和「何その地味な夢・・・。」
・・・変わってる子だわ・・・。
紬「ダメかしら?」
和「別にいいけど・・・。」
ポフンっ
特に躊躇することもなく彼女の頭に手を置く。
彼女は嬉しそうに目を細め大人しく私の手に従う。ふわふわで艶のある髪。
和「・・・髪綺麗ね。パーマ?」
紬「ふふ・・・よく勘違いされるけど地毛なの。」
和「唯もくせっ毛だけど紬とは大違いね。」
紬「やっぱり感触とか唯ちゃんと違う?」
和「そうね・・・。目線・・・かな?」
紬「目線?」
和「唯は胸に蹲る様に抱きつくから目線は常に下なの。」
紬「そういえばそうね・・ふふ。」
読めない・・・本当この子はどんな子か分からないわ・・・。
和「・・・満足した?」
紬「・・・。」
和「紬?」
腰を落とし下から潜る込むように上半身に吸い付く。バランスを崩しかけ思わず彼女の腰に手を回す。
静かな音楽室。ぎゅううと背中に強く手を回される。彼女の香り・・・軽音部の甘ったるい匂いは彼女の身に染み付いたお菓子の匂いなのね。
和「・・・唯の真似?」
紬「ええっ」
下から見上げるように満面の笑みを浮かべる彼女。その笑顔に思わず心臓が高鳴る。
和「・・・真面目なようで・・・お茶目な様な・・・。よく分からない子ね。」
紬「・・・自分からこうするのは初めてなの。」
和「そう。」
紬「ちょっとこのままでいい?」
和「・・・ええ。」
そう言って彼女は私の胸の中に伏せた。・・・表情が見えないけれど肩が小さく震えてるような気がした。
グラスの中のお茶は空っぽ。彼女は私と接する事に緊張していたのかしら?それなのに何故私をここに居させたのだろう・・・。
ああ・・・やっぱり苦手だわ。唯と違って何を考えているのか分からない。
だだ1つ分かるのは今――1つの目標だった学園祭ライブが終わり抜け殻・・・とても寂しい気持ちでいること。
腰に回す腕にふわりとかかる彼女の髪の毛がくすぐったい。
繰り返す本館のアナウンスと部室の時計の音。
紬「・・・5分経ったかしら?」
和「・・・ええ。」
名残惜しそうに身体を離し約束どおり荷物をまとめ部屋を出る準備をする。
その背中が捨てられた子犬の様だった。
このまま普通に別れるのが勿体無く感じる。5分の会話では全然彼女の事が分からない。
カランと空き缶をゴミ箱に入れる音が余計に虚しい。
和「・・・後見回りするのは数箇所だけ。」
紬「え?」
和「それが終わったら二人でお茶しない?」
和「貴方・・・紬の話。もっと聞きたいわ。」
何を言っているのだろう。私は。今日初めてまともに会話した彼女に。
紬「・・・ええ。こんな私でよかったら。」
素直に喜ぶその笑顔にまた心臓が高鳴る。
学園祭は終わったけれど私の中で何かが始まる予感がした。


終わり。

このページへのコメント

和紬……新感覚にして至高……

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Posted by 名無し 2009年12月19日(土) 23:59:16 返信

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