2chエロパロ板のけいおん! 作品のまとめサイトです。

著者:11-119氏

空は快晴。熱気で教室の風景が捻じ曲がって見えるくらいの猛暑。
男のいない高校では淑女なんて言葉からかけ離れているくらいだらしのないクラスメイト。
律「いやーしっかし暑ちいなー。」
唯「もーりっちゃんだらしないよー。」
大股広げYシャツの第三ボタンまで開け下敷きを扇子代わりのパタパタする。
一瞬その控えめな胸が見える。思わずそこを凝視すると目が合ってしまった。
律「なんだよ澪ー。」
眩しすぎる笑顔に今自分が思ってしまった事に罪悪感を感じる。
律「あ、ムギーそんな隅っこで着替えてんなよー」
澪「あ・・・」
そういって彼女は他の人の所へいってしまう。馬鹿律。なんでお前はいっつもそうなんだよ。
私はずっとずっと律だけを見てきたのに・・・。


唯「ねえねえ澪ちゃんって恋したことある?」
合宿前の部室。氷が一瞬で蒸発しそうな暑さ。給湯所でアイスティーを用意するムギの隙を見てにはひそひそ話を持ちかけられる。
澪「えっ私!?」
しーと人差し指を口にあてながら頬を赤らめ上目使いでチラっと私を見る。珍しく唯が照れている。
唯「あのさー私さ、りっちゃんが好きなんだよねー・・・。」
澪「え?」
唯「どうすれば両思いになれるのかなー?」
スプーンを咥え上下にパタパタしながら明後日の方向を眺める唯。小動物みたいで可愛い。
まさかの恋の相談に一瞬私の中で時が止まる。カラカラと向こうでムギが氷をかき回す音が聞こえる。
普段の天然おとぼけとは違う恋する乙女の表情をしながら唯は話を続ける。
唯「澪ちゃんは幼馴染だからりっちゃんの事一番知っているだろうしー・・・私ににアドバイスして欲しくて・・・。」
澪「あ・・・ああ。」
精一杯の作り笑いをして返事をする。抱え込む歌詞ノートの中で私の心臓が激しくなる。
唯「えへへ、ありがとうっ澪ちゃん!」
太陽のような笑顔で心から私に感謝する彼女をみて胸がチクっとした。
唯「今まで私の周りってりっちゃんみたいに一緒に騒げる人いなかったんだよねー。」
オヤツを頬張りながら幸せそうに話す唯。確かにそう。
本人は自覚していないけど天然故の万年注意散漫な彼女だと周りは自然と兼保護者役的な友人になってしまう。
唯と律がタッグを組むと私が拳骨するまで誰にもとめられない位暴走する。そんな天真爛漫な二人を見ていると私までなんだか楽しくなってしまうのは認める。
唯も唯で私とは違う場面で律にときめいてそして恋をしていたんだ。

律「唯!今夜いっていいかっ?」
唯「もちろんだよー憂にメールするね!」
律「鍋な!鍋!憂ちゃんに言っておいてっ」
唯「了解です!りっちゃん隊員っ」
今日の部活はこの溶けるような熱さで普段以上にティータイムが長引いていた。目の前に座る律が屈託のない笑顔で唯に話しかける。
もちろん唯はすごく幸せそうだ。最近妙に律は唯の家に遊びに行く。唯の話によると、律は憂ちゃんの料理を凄く気に入ったらしくほぼ毎週平沢家にご飯を食べに行っているらしい。
唯がどんな気持ちで律と一緒にいるのかなんて分からないんだろうな。・・・なんだろう、胸がチクチクする。
律「?どーしたんだ澪ー?」
澪「・・・なんでもない」
律「なんだよー今日澪達もいくかっ?」
澪「・・・私はいい。」
そっけなく返事をしたら律はシュンとした。馬鹿律。食べ物なんかでひょうひょい釣られるなんて小学生か。来週の合宿。
どうせまた律は唯と遊ぶんだろうなあ。もう私なんてどうでもいいのかな・・・。

唯「ほえーライオンさんがいるよー。」
澪「相変わらず凄いなあ・・・。」
夏合宿の本日の締めのお風呂。今年もムギの別荘で合宿する事になった。ムギのまさかの裏切りで今回も結局ほとんど練習もせず遊んでばかりで梓なんか真っ黒に日焼けしている。
脱衣所で裸を見せるのが恥ずかしくてみんなゆっくりと着替える。でも律はどーせ見せるんだから先に脱いだもん勝ちだと言いさっさと服を脱ぎ捨て浴場に走っていった。
本当、中学生の頃から変わってない。羞恥心が消えない私はムギ達と一緒に後から浴場に向かう。
紬「りっちゃん凄いね、私じゃ恥ずかしくて無理だわ。」
梓「唯先輩もまったく気にしてませんけどね・・・。」
唯も人に裸を見られるのを気にしないタイプ。そうゆう所はホント二人は気が合っている。昼間だっていつまでも二人で楽しそうに遊んでいた。やっぱり律は唯みたいに一緒に騒げる人が好きなのだろうな。
ノリが悪くて内気な私なんて一緒にいてもつまらないよね・・・。
ガラッ
温泉の独特の匂いと真っ白い湯気が私達を包む。唯は蛇のように暴れるシャワーと戦い律は湯船で泳いでいた。扉を開けると同時に一番端を確保。
中学の修学旅行でクラスメイトに胸の大きさをからかわられて以来、目立たない所へ座る癖がついていた。一番最後に入ってきた梓も私とは逆端に座る。多分彼女も身体にコンプレックスがあるみたい。
その丁度真ん中に座るムギ。きっとこの不自然なきゃ離間を埋めてくれたのだろう。
身体を洗い全員湯船に漬かる。律は相変わらず一人で泳いでいて、唯と梓は今日の練習の反省。私はさっきからいつの間にか入ってきた怪しげな視線を向ける先生から逃げる。
律「むぎー。」
器用に方向転換し平泳ぎしながら律はムギに向かってくる。先生から逃げながらもつい二人の会話を盗み聞きする。海水浴やバーベキュー、花火、肝試し。
今日一日の出来事など普通の会話だったけどムギは頬を染めて本当に楽しそうに話している。きっと律は一人で居るムギを見かねて話しかけたのだろう。私は先生から逃げるので必死で周りなんか見えてなかった。
好き勝手泳いでいるように見えてちゃんと周りを見ていたんだな・・・。
ムギも律の気遣いが伝わったらしくとても嬉しそうだった。
律「いよっし!早くみんなでUNOやろーぜっ」
澪「ばっ馬鹿律!急に立つなっ」
私の声なんてお構いなしにさっさと脱衣所に向かう律。その後姿を目に焼き付ける。男勝りな口調と性格とは逆に背が小さく華奢な身体。思わず抱きしめたくなる。私の中でこんなのにも大きな存在の律。
石膏像や裸婦の絵を見る中学生の様に私は律の身体を見ていた。

律「・・・。」
唯「りっちゃん眠いのー?」
律「お?・・・まだまだあ・・・。」
澪「ダメだなこりゃ・・・。」
梓「完全に夢の世界ですね・・・」
昼間張り切って遊びすぎたせいか、誰よりも早く虚ろな目で首をこっくりこっくり眠そうにする。
澪「・・・やれやれ。ムギ、寝室はどこ?」
紬「今朝荷物置いた所よ。あれだったら私が運ぶ?」
唯「ムギちゃん力持ちだもんねー。」
澪「いや、律を運ぶのは慣れてるからいいよ。」
紬「・・・あらそう?」
ムギの返事はちょっと残念そうだった。昔から律はどこでも寝る癖があってよく私の家のリビングで寝ていた。慣れた手つきで律を背中に乗せる。う、少し重くなったなあ。密着した背中に感じる律の柔らかさと体温。
ムギの好意を断ったのはこの感触を感じさせたくなかったからだ。久しぶりにおんぶをした。ずり落ちそうになるのを何度も体勢を戻しながら寝室へ向かう。
ガチャ・・・
別荘の寝室。昼間は気が付かなかったが月明かりが丁度良く大窓から入り神秘的な景色を魅せつけてくれた。腰を曲げ布団に降ろす。なんだか背中が湿っている気がする。
律「ん〜・・・」
澪「起こしちゃったか。寝室だから寝ていいよ。」
律「・・・すう、すう・・・ZZZ」
澪(早っ)
律「すぅ・・・。」
澪「・・・。」
気持ちよさそうに眠る律。なんだか寝顔を見るのも久しぶりだ。以前は土日はどちらかの家に一日中居てそのままお泊りだったけぢ最近はみんなと遊んだ後はそのまま解散していた。
律「んー」
ギュッ
澪「!」
目の前の視界が回る。私の首に腕を絡められ抱き寄せられる。静寂な室内。バランスを崩しとっさに私は律に覆い被さるように倒れた。目の前には律の鎖骨。鼓動が早くなる。背中で感じた以上に律の体温が、香りが、伝わる。
律「へへっあったけー・・・」
澪「・・・。」
動けない。早くどかなきゃ。
律「んー・・・」
寝ぼけているのだろうか私の頭をすりすりと撫で回す。抵抗できない。もっとそうして欲しい。最近本当に二人の時間が減った。
入学当初まではいつも当たり前の様に隣に居て一緒にスクールカバン買いに行ったり帰り寄り道したりしていたのに今は違う。私だけの律がみんなの、軽音部の律になった。
熟睡に入り始めたのか律の両手が徐々に降りていき私の頬を触れる。いけない・・・この体制は・・・。
ドクン・・・ドクン・・・。
飛び出しそうなくらい心臓がうるさい。さっき裸をみたせいか興奮が増す。最初は小さな針が私の胸にちくちく刺さっていた。唯とふざけあう律。ムギと親密そうに話す律。梓をからかう律・・・。
そんな小さな嫉妬がチクチクと刺さりいつの間にか大きなナイフになっていた。今は部長だからみんなの事を気にしているんだ。それが終わったらまた昔の様に私の所へ来てくれるんだ。そう、最後は絶対あの頃のように私に構ってくれる。
勝手に自分でそう解釈し無理やり思い込むことで我慢していた。でももう我慢できないよ・・・。・・・律・・・。
ゴクリと唾を飲み込み決心する。律の顔に影が覆い被される。
律「んっ」
そっと唇を重ねる。
暗い大広間。外からは波の音が聞こえる。これが本当のカップルだったら最高のシチュエーションだろう。目を瞑り律と触れている部分に全身の神経を集中させる。緊張で乾いた私の唇とは対照的に律の唇はマシュマロみたいに柔らかくて・・・熱かった。
澪「・・・はぁっ」
そっと身体を離す。キスの仕方も分からない私は息を止めそれをそっと律に重ねた。ファーストキスだった。
律「・・・すう・・・。」
絡める腕がストンと落ちる。どうやら眠ったみたい。その寝顔は幼い子供そのものだった。
本格的に律の寝息が聞こえてくる頃には私の身体からスーと熱が降り冷静になる。
大窓から潮の匂いと共に風吹き込んできて火照った私の頬を冷やす。・・・なんて事をしてしまったんだろう。罪悪感と幸福感で胸の中がぐちゃぐちゃになる。
ガサッ
澪「!」
入り口から人影が見える。小柄で特徴的なシルエット。
梓「あ・・・。」
梓だった。帰りが遅いのを心配して様子を見に来たのだろうか。
逃げ出す梓をとっさに掴み壁際へ追い込む。
澪「今の見た?」
梓「あ、えっと・・・。」
何がなんだか分からないという顔をしながら梓は今にも泣きそうな顔をしている。この表情、見覚えがある。そうだ一人部屋で律の事を考えているときにふと鏡で見た自分の表情。好きな人が誰かに取られそうで不安で泣き出しそうな顔。もしかして・・・
澪「・・・律が好きなのか?」
梓「!」
顔が赤くなる。それを見て確信した。
梓「そ、そんな事ないです!あんないつも練習さぼったり遊んでばっかりで・・・その・・・」
澪「・・・そうか。」
梓「・・・。」
梓「・・・すみません。」
何についての謝罪だろうか。否定するけれど真っ赤にする顔がそれを嘘だと証明する。梓は素直じゃない性格。唯が風邪引いた時だってそうだ。一番心配していた癖に口では文句ばかり言っていた。
思えば唯が抱きつくと拒否するけど律がやる時は嬉しそうにしていた。
梓「・・・先輩は律先輩と付き合っているんですか?」
私を見上げて威嚇する。背は低いのに迫力があり思わずしどろもどろになる。
澪「・・・いや・・・。」
ほっと嬉しそうに一息ついたかと思いきやキッっと真剣な顔をする。
梓「・・・負けませんから。」
梓「それとさっきの事はみなかった事にします。」
そう言って私の手を払い大広間に戻って言った。梓の真っ直ぐな目は何もできずただいじけているだけの私には敵う気がしなかった。

シャリッ・・・
サンダルに砂が入る。
空は殆ど快晴で満点の星空が広がる。大広間に行く気にもなれない私はムギに一言メールして外へでた。辺りを見渡すとひたすら闇。離れた別荘から寂しく光が漏れる。
海の壮大なスケールが私を落ち着かせてくれた。
・・・律は分かっているのか?そのさり気ない気遣いでみんなに期待を持たせていることを。律の第一印象はちょっと自己中心的でお祭り好きでどこのクラスにも一人はいる騒がしい人だ。
でもどこか憎めなくて気が付けばいつでも輪の中心にいる。梓も最初は律の表面的な性格を見て部長なんだからもっと真面目に練習して欲しいなどよく愚痴を零していた。
昔から律はよく周りを見ている子だった。一人見知り故あまり人の輪の中に入れない私を見掛け、声をかけみんなと話すきっかけを作ってくれた。私だけの律は高校に入って変わった。
私以外にも支えてあげる人が増えた。分かっているよ、私もいつまでも子供じゃないんだから律に依存していちゃだめだって。みんなの事、大好きなのに嫉妬する。周りにいい顔する律を憎む。
ねえ、気がついてよ。またあの頃みたいに私を救ってよ。・・・寂しいよ。
適当に石ころ掴んで海へ放り投げる。風に吹かれ頬が冷たい。いつの間にか涙を流していた。だれも見やしないのに体育座りのまま声を殺して泣いた。目の前には地平線、この向こう側にも世界があって生活がある。
ちっぽけな悩み。小さい自分。でも・・・すごく悲しい。助けてよ、律。


律「いやはームギのお茶はいつ飲んでもうまいなっ」
紬「まあ、りっちゃんたら。おだててもお菓子のおかわりはないわよ?」
律「ちぇー」
梓「早く練習練習しましょうよー。」
唯「えーもうちょっとー・・・」
澪「・・・。」
合宿も終わり今日もぐだぐだティータイム。苛々する。美味しいはずのムギの紅茶がお湯にしか感じない。
梓「そんなんで学園祭どうするんですか。」
紬「まあまあ。」
律の能天気楽な笑顔にすら腹が立つ。
律「あーそう、唯今日さあー」
唯「ほえ?」
梓「また行くんですか?」
澪「・・・。」
チク。また針が刺さる。またそうやって他の人の所へ行くんだ。このまま律は私からどんどん離れていっちゃうんだ・・・。
律「澪?」
唯「澪ちゃん?」
澪「・・・。」
さっきから黙っている私に気がついたみたい。でも喉に大きなしこりができたように声が出ない。
律「・・・澪?おいっ」
梓「・・・?先輩?」
部室に異様な空気が流れる。これ以上ここにいても迷惑だ。
紬「どうしたの?」
澪「・・・ごめん、今日は帰る。」
律「はあ?」
紬「どこか具合が悪いの?」
澪「・・・うん。」
頭の中が。
澪「ほんとごめん、今日は私抜きで練習してて」
梓「門まで送りますか?」
澪「ありがとう。大丈夫だから。」
スクールカバンを肩に掛け食器を片して出口へ向かう。
律「・・・気をつけるんだぞ」
ぶっきら棒に律はそう言い放つ。
ああ、そのまま見送っちゃうんだ。まあいきなり帰るなんていったら誰もがそう思うよね。そんで私が居なくなった後は何もなかったようにまたみんなと笑い会うんだろ?もう嫌だ。
こんな自分。何もできないくせに周りばかり恨んで・・・。ねえ律にとって私はなんなの?みんなと居るほうが楽しいの?私の事嫌いなの・・・?
澪「・・・馬鹿律。」
そう呟いて部屋を後にした。
紬「・・・。」



せっかくのみんなのティータイム。当たり前だけど幸せな本当の自分が出せる空間。でも今日は空気が重い。紅茶一杯飲んで澪ちゃんはりっちゃんに捨てセリフを履いて居なくなってしまった。
最近澪ちゃんの様子がおかしい。理由はなんとなく分かる。澪ちゃんはりっちゃんが好きでそれに気が付かず私達と親しくする事に嫉妬しているんだと思う。
律「・・・今私の事馬鹿って言わなかった?」
梓「・・・ですね。」
唯「?」
困惑した表情で後ろ髪を掻くりっちゃん。いきなり馬鹿呼ばわりして腹がたっているだろうにみんなの目を気にして普通に振舞う。こんな時まで気を使わなくてもいいのに・・・。
なんで澪ちゃんが怒っているのか分からないみたいね。ほんとりっちゃんは自分の事になると鈍い。私の気持ちなんかも気づいてないわよね・・・。
初めてりっちゃんを恋の意味で好きだと感じたのは文化祭の日。本番前でいつも以上に緊張する澪ちゃんを見てなぜだかいきなりMCごっこをした。
最初はいつものおふざけタイムだと思っていたけれど、拳骨落としてむせるりっちゃんを見て私達が笑う、なんだかおかしくなって澪ちゃんも声を荒げて笑う、そしたらりっちゃんがにっこり笑っていた。
その姿を見て思った。ああ、彼女はいつも周りを見ていてみんなが落ち込んだり、緊張したりするとワザとふざけて空気を和ますんだって。
思えば唯ちゃんのギー太購入の為のバイトや澪ちゃんの気を使って接客じゃない仕事を選んだり、泣きじゃくる梓ちゃんに演奏を聞かせてあげたり・・・。そんな裏表なしにみんなに優しく気を使える彼女に憧れつつも恋をしていた。

でもりっちゃんのそういう力は主に幼馴染の澪ちゃんに発揮する事が多い。澪ちゃんもりっちゃんだけには拳骨したり抱きついたりしていて二人はもう長年連れ添った夫婦みたい。
だから私なんかが入る隙なんてないわと思い、密かに慕い続ければいいと思っていたけれどみんなは違うみたい。

子猫の様にりっちゃんとじゃれあう唯ちゃん、頬を染めながらりっちゃんの文句を言う梓ちゃん。そして置いてかれた犬の様に寂しそうな目でりっちゃんを見る澪ちゃん。
私は唯ちゃんみたいに積極的にアタックできないし梓ちゃんみたいにわざと意地悪言って気を引けない。ただ静かに慕い続けていればいい。だってりっちゃんの相手はとうの昔に決まっているもの。だから、私が導いてあげる・・・。
紬「・・・澪ちゃんは寂しかったのよ。」
律「へ・・・?」
梓「・・・。」
唯「?」
みんなの視線が私に集まる。部室の空気が私中心になる。慣れない事をしてしまい指が微かに震える。
紬「分からない?りっちゃん?」
梓「・・・ムギ先輩っ」
梓ちゃんが泣きそうな顔で私を見つめる。この先の発言で自分の恋が終わってしまうのを察したのだろう。紅茶を一口飲んでコトンと置く。ふうと深呼吸してりっちゃんを見つめ構わず続けた。
紬「りっちゃん私達の事どう思っている?」
律「へ?好きだよ?」
即答で答える彼女。
梓「・・・。」
唯「?」
紬「澪ちゃんを追いかけてあげて。」
律「お・・・おう」
何がなんだか分からないって顔をしながらも荷物をまとめる。部屋を出る瞬間私達の方を振り向く。
律「じゃあ、また明日なっ」
裏表のない笑顔、今の私達には毒すぎる。
パタン・・・

紬「・・・。」
梓「・・・。」
唯「えーと、みんなどうしたの?」
未だに状況を理解していない唯ちゃん。でもそんなところが可愛いのよね。
梓「フられちゃったんです。私達。」
自嘲気味に笑いながら梓ちゃんは言った。
唯「ほえ?」
紬「私も梓ちゃんもりっちゃんが好きだったの。」
唯「ええ!?そうなの!?」
梓「・・・よく分かりましたね。」
紬「ふふ、梓ちゃんりっちゃんに抱きつかれる時嬉しそうだったからね。」
梓「あ・・・顔にでてましたか。」
恥ずかしそうにカップで顔を隠しながら紅茶をすする彼女。
唯「それでなんでフられた事になるの?」
紬「・・・それはね・・・。」



みんなから、律から逃げ家に帰る。部屋についた瞬間カバンを放り投げスカートも履き替えず制服のままベットに倒れこんだ。
昼間お母さんが干してくれたのだろうか、布団からはお日様の香りがする。
澪「ふぅ・・。」
うつ伏せのまま腕を重ね顔面に敷く。ギシっとベットのスプリングが控えめに鳴る。
昨日から繋ぎっぱなしのアンプからジーと音がする。
身体を起こしケースからベースを取り出しシールドを繋げる。
ヴヴ・・・ボン、ボン
ネックに刺しっぱなしのピックも気にせず適当に指弾きしてみるがその気になれずすぐにスタンドに戻した。
挙動不審。落ち着かない。ああ歌いたい。大声で叫びたい。
ガサッ、ガチャ―。トトト・・・
表から庭の門を開け玄関に入る音が聞こえる、この音は律だ。来てくれたんだ。
律「ごめんくーださい」
律「澪ー?いるんだろー?入るよ?」
階段を登る音が聞こえる。どんな顔していいか分からなくて布団の中に潜り込んだ。
律「みーお?」
澪「・・・。」
何を言っていいか分からずだんまりを決め込んだ。はあっって律の大げさなため息が聞こえる。
律「みーお」
澪「・・・。」
律「・・・パンツ見えてんぞ。」
澪「ぅえ!?」
布団を跳ね除け急いで膝を畳む。真っ暗な視界が晴れ律の姿が確認された。
律「・・・嘘だよ。」
意地悪な顔で微笑む律。
澪「・・・ずるいぞ。」
律には敵わない。たった一言で自分の殻に閉じこもる私を呼び出した。
律「ごめんごめん。てかさっきはどうしたんだよ。」
澪「・・・。」
律「ふう。」
ため息を付いてドサっとカバンを落とす。
その様子をただ眺めていた。
立ったまま後頭部を掻き困った顔をする。すると急にタイを解き、スカートを脱ぎだした。
その格好のままクローゼットを勝手に空け、以前から置きっぱなしの服を取り出す。
律「・・・澪が話すまで帰らないから。」
そういって目の前で着替える。いつの日か学校で見えた時と同じ下着を着けていた。
恥ずかしくなってとっさに目を瞑る。シュルシュル衣擦れの音が余計に私の胸の中の何かを沸騰させた。正座して伏せる私の目の前に律はどかっと座りカバンから出したお茶を飲む。
そういえば走って帰ってきたから喉が渇いた。じっと律の顔を見つめるとにっこり笑い澪も飲むか?と差し出してきた。首を縦に振りの見かけのお茶を喉に流し込む。ごくん。
澪「・・・ありがと。」
律「ふへ。」
お礼を言うと律は嬉しそうに微笑んだ。
律「落ち着いたか?」
澪「うん。」
律「さっきはどうしたんだよ?」
二回目の質問。ふと改めて考えるとこの姿勢はかなり危険だ。背にはベットでこれ以上下がれない。目の前にはジト目で私に顔を突きつける律。ここまで迷惑をかけてしまったらいうしかない。でも恥ずかしい・・・。
律「私澪に何かした?」
澪「何もしてない・・・。」
律「じゃあなんで怒ってるの?」
なかなか白状しない私に苛立ってきたのかキツい口調で言われる。普段笑ってばかりの律のこうゆう表情は見慣れない。やばい、泣きそう。
澪「・・・何もしてくれないから・・・。」
律「ほえっ?」
キツかった目元が優しくなりびっくりした顔をする。
澪「律が・・・最近みんなの事ばっかりで私の事放っておくから・・・。」
律「えっ?」
澪「唯ん家に行ったり、梓の事からかったり、ムギとっ・・・」
律「・・・。」
澪「なんでみんなばっかりなんだよ・・・、律は私の事嫌いなの?」
律「・・・。」
澪「だから、だから・・・。」
律「はあ。」
呆れた声でため息を付かれる。
律「しょーがないやつだな」
澪「いたっ」
おでこに一発でこピンされる。
律「そんなの・・・昔から澪とやってるじゃん。」
澪「え?」
律「そもそも唯ん家だって誘ったのに澪が断ったんじゃん。」
澪「あ・・・」
律「・・・まったく。」
またため息を付かれる。でも今度は照れながら。
律「昔から一緒に居るのに今更急にベタベタできるかよっ」
律「大体澪こそ最近私に冷たかったじゃん。」
澪「そ、そう・・・?」
律「ここんとこいっつも不機嫌だし、すぐどっかいっちゃうし。寂しかったんだぜ?」
空のペットボトルをスティックがわりにポンポンしながら続ける。
律「澪、私がアタックしても全然気づいてくれないんだもん。」
そう言い放つとポーンとボトルをゴミ箱に投げる。ストンと音を立て綺麗に収まった。
澪「それって・・・」
ずっと私の中でチクチクしていた心臓が元気になり針やナイフが次々と抜けていく。
律「言わなきゃ分からない?」
恥ずかしそうに私を見る。分かるよ、分かるけど言葉で聞きたい。
澪「うん。」


紬「唯ちゃん今りっちゃんが目の前にいたら好きって言える?」
唯「ほえ?んーちょっと恥ずかしいかな?」
梓(唯先輩でも一応照れるんだ。)
紬「さっきりっちゃん私たちの事即答で好きって言ったわよね?本当に恋として好きだったら簡単に言えないわ。」
唯「んーなんとなく分かったかも・・・?」
梓「でも、私まだ諦めたくないです。」
唯「!あたしもだよっ」
紬「それもいいんじゃないかしら?人を好きになるのは自由だもの。」
梓「ムギ先輩はいいんですか?」
紬「ええ、私は最初から諦めていたし自分が関らなくてもりっちゃんが幸せならそれでいいわ。」
梓「・・・すごいですね。私はそんな大人になれませんよ。」
紬(でも隙があれば・・・。ふふ、澪ちゃんは大変ね。ライバルがいっぱいで)


小さな誤解がすれ違いとなっていただけだ。そうだ律は変わらず私の傍にいた。去年の初ライブ、ちゃんと歌えてて安心した事。クラスが離れてもちゃんとやっていけている事。
自立していく私をみて寂しさもあったけれど嬉しかった事。私がおもっているよりずっと律は私の事をみているんだよって照れ笑いしながら律は言った。
それなのに私が勝手に嫉妬して律を突き放し自分の殻に閉じこもっていたんだ。ごめんな律。
律「今日のことみんなに謝れよー」
澪「うん。」
澪「でも律はいっつもみんなにいい顔して・・・。」
律「またその話か。澪だってファンクラブあるじゃないかよー」
澪「わっ私は律と違って知らない人達だし・・・」
律「え?”律と違って”って?」
・・・みんなの気持ち全く気づいていなかったのか。やっぱり律は律だった。唯なんてあからさまなアピールをしていたのに。本当、自分の事になると周りが見えないな。
そんなちょっとニブい所も惹かれたんだろうけど。
澪「・・・律は私の事好き?」
律「あ、話そらした。」
澪「いいから答えて。」
えーって照れながら壁につけていた手を離し目の前であぐらをかく。はーと深呼吸して私の顔を見る。
真っ赤な顔した律につられ私まで胸がドキドキする。
恥ずかしそうにぼそっと呟いた。
律「言えるわけないだろ・・・馬鹿澪。」


おしまい。

このページへのコメント

もうちょい律にイケメンさが欲しかった

0
Posted by 名無しさん 2012年01月10日(火) 01:46:54 返信

律はハーレムが似合うなぁww

0
Posted by にゃにゃし 2011年01月23日(日) 09:22:25 返信

律×澪に今更…やばい……
´∀`)」あぁ…なんか幸せ
だ…。
この話しの内容にドキがム
ネムネしちまいました…

0
Posted by ー雲雀ー夜叉 2011年01月13日(木) 12:35:38 返信

りっちゃんは王子様だからなぁ。当然の様にモテる。

罪作りだ…。

0
Posted by 774 2010年06月17日(木) 04:09:39 返信

りっちゃんハーレムばんざーい!

0
Posted by ななし 2010年04月20日(火) 01:36:51 返信

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