2chエロパロ板のけいおん! 作品のまとめサイトです。

著者:10-679氏


嬉しくてドキドキして眠れなかったはずなのに、目覚めは案外スッキリしていた。
久しぶりの休日、二人で遊園地に行くって先週約束をした。
天気は曇りで、雨が降りそうだって画面のお姉さんはトーン落として言っていたけど、残念。雨ぐらいじゃ私達を憂鬱にさせられるわけがない。

顔を洗って、朝ごはんを食べて…と支度を整えて家を後にする。
待ち合わせ場所に着いて時計を確認。律が来るまで音楽を聞きながら指を動かしてベースをイメージする。早く来ないかな、律。

律は少し遅れてやってきた。「いやー服選ぶのに手間取っちゃってさ!」って。
仕方ないなとため息をついて、1本遅れた電車に乗り込んだ。
だめだな、私。律の笑顔を見ているとドキドキして、どうしても甘くしてしまう。


遊園地は結構混んでいて、少し考えてアトラクションに乗らないと十分楽しめないんじゃないかって不安になった。けど、そんな私を余所に律は「次はあれね!」と手を引っ張ってはしゃぐ律。
律は私の苦手な絶叫系アトラクションを中心に乗るから、私は終始震えていたのかもしれない。

「ひえ〜 最前列はやっぱ濡れるな。びしょびしょだよ」
「楽しかったけど最後怖かったよ…。」
最後に水の中に飛びこむアトラクションを律は気に入っているようだった。写真も撮られるからそれがまた楽しいのだけど、あの落ちる感覚が私はどうしても好きになれなかった。
律は濡れてもあまり拭こうとしないので、仕方なく私がタオルで髪を拭いてあげた。
「ありがとっ!澪しゃんはいいお嫁さんだなー」
「バカ言ってないで、ほら」
タオルごと律に渡してそっぽを向く。
「あれー澪顔赤いよ?」
「うるさい!」


どうしてかは未だにわからない。楽しかったはずなのによりによって喧嘩をしてしまった。
最後にバカ律、って言ったのは覚えている。ずっと繋いでいた手も、今は寂しく宙ぶらりん。
ほんとにバカ。怒って一人で歩きだした私を止めてくれるって思ってたのに、律は意地を張って逆方向に歩いて行ってしまった。これは、どちらかが歩みよらないと仲直りできない。
いつもその役は私だけど、今日は律からじゃないと何か嫌だった。



ため息をついて、ベンチに座る。
否応にも考えてしまうのは律のこと。そういえば、私が何をしたいかって言っていなかった。
どこ行こうか、って楽しそうに聞くものだから、律の好きなところがいい!と言った。
だから律は律の好きなように遊ぼうとしただけなんだ。
やっぱり私と一緒じゃ駄目だったのかな。ひょっとしたら、唯と一緒に来た方が楽しめたのかな。
そう思うと、止まらない。うつむいて、私は泣いてしまった。
地面に滴が落ちていく。私の分と、空からの分。やっぱり、雨が降ってきた。

屋根の下に動く元気もなく、通り雨に体を晒す。さっき律に渡したせいで、タオルも無い。
全部律のせいだ。だから…いや誰のせいとかなんて関係ない、律に会いたいよ。
律を探しに行こう。そう決めたものの、なかなか動き出せない。こんな姿を、律に見られたくない。

気づいたら雨は止んでいた。耳には空模様を気にしてざわめく人の喧騒と沢山の足音。
動悸が急に激しくなった。この足音は律にしか刻めないリズムだ。
「みーーーおーーー!! ここにいたのか!」
律がこっちに走ってきた。私のタオルを片手に、ひどく心配そうな顔で。
「みおっ!」
立ち上がろうとした私を、雨に濡れた私を、強く抱きしめてくれた。
人目を気にする余裕なんて無い。
「やっと見つけた…本当にごめん」
そう言ってタオルで私をやさしく拭う。律は肩で息をしていた。ずっと探してくれていたのだろう。
「ずっと澪を探してたから、おなか空いちゃった。ね?澪。どこかでお昼食べよっか」
きっと今はうまく声が出ないから、私はできる限り笑顔で頷いた。
このときの律の笑顔が、大好きだ。

「あ…」
不意に律が呟いた。
空を見れば、見事な虹がかかっていた。雲間から覗いた太陽が眩しい。
「いやぁ、見事なもんだな。虹なんて滅多に見れないのにさー!」
ずっと見ていたい、なんて思う。そうやって笑っている律の瞳は空のように眩しかった。

私達は、また手を握って歩き出す。
さっきとは違って体が弾むように軽い。
二人ならどんな夢も叶うんじゃないかって、本気で思った。


      • end---
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このページへのコメント

楽しかったです。
些細なことで喧嘩って、仲良しだとよくありますよね。

0
Posted by pani 2009年10月23日(金) 04:04:12 返信

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