2chエロパロ板のけいおん! 作品のまとめサイトです。

著者:◆C/oSFSeeC2氏


Please don’t say you are lazy, だって本当はCrazy。

伝説のバンド、放課後ティータイム。
全米を震撼させたガールズバンド(ちなみに衣装では震撼させていない)は、あっという間に時代を駆け抜け、あの雷雨のラストライブを最後に電撃解散した。
雷雨にも関わらず、野外ライブを決行せざるを得ない超過密スケジュールは、メンバーの体力も気力も削り切っていた。
雷雨で使い物にならない澪の代わりに全曲を歌った唯の声はほとんど出なくなっていたが、ファンの悲鳴に近い声援と雷雨の雷鳴はそれを気にさせなかった。

ピカッ!ゴロゴロドシャーン!
さすがに野外ライブのテントを直撃した雷は観客をパニックに陥れた。
「り、りっぢゃん・・・ぼーだべ・・・わだし・・・ぼうごえが・・・げん・・がい・・・」
(字幕)「り、律っちゃん・・・もうだめ・・・私・・・もう声が・・・限・・・界・・・」
「だから無理だって言ったじゃないですか!ああっ私の超高級アンプがっ!」
「素敵・・・私、落雷の中で演奏するのが夢」ドカーン!
テントに燃え移った炎が見えると同時に何かが爆発した。
逃げ惑う観客。
「くそっ!ライブは中止だ!みんな、とにかく安全なところへ逃げろ!後で連絡する!」
「私だって無理だって言ったんだよ!だけど・・・だけど」
「会場のキャンセル料が部費じゃ全然足りなかったから・・・つい・・・」
「・・・超過密スケジュール、全然関係ありませんね・・・」

群集を押し分けて澪の姿を探す。
「くそっ!・・・澪−っ!どこだーっ!」
澪はエリザベスを抱きしめて倒れていた。
蒼白な顔。閉じられた瞳。流れる黒髪。美しいその姿はまるで生きているようだった。
「澪・・・ごめん。こんなことなら、もっと優しくしてやれば良かった・・・」
そっと動かない澪の体を抱き起こす。
「澪。お願いだ。目を開けてくれよ。お願いだから・・・もう一度・・・笑ってくれ。」
私は天を仰いで叫んだ。
「・・・みーおーっ!」

・・・澪は落雷で気絶していただけだった。

最後はみんなでお茶を飲みながら話をして、その日を限りに解散することを決めた。
あんなに苦いダージリンは後にも先にも飲んだことがない。
女子高校生5人が勢いのまま、突っ走った結果。
放課後ティータイムは燃え尽きてしまった。

あれから、もう7年になるだろうか。
世間はすっかりそのバンドの名前を忘れていた。
そう、私以外は。
放課後ティータイムがバラバラになってしまった後も私だけは。
澪命と書かれたドラムスティックを手放せずにいた。
日ごと募る思いは私の胸を焦げ付かせていた。
そんな時。昔、お世話になったレコード会社から電話がかかってきた。
「今はリバイバルブームなのよ。昔のバンドのサウンドがかえって新しいって言われてるのよねー。HTTがもし復活できるなら、ぜひウチでやらせてほしいの。あ、もちろん衣装は私が」ブツッ。
後半はともかく、願ってもない申し出だった。
着ないぞ。さわちゃん、絶対着ないからな。全米を震撼させる衣装だけは。
私はさっそく元メンバーに連絡を取った。


「なんだ、唯〜。昼間っから酒か?あんまり飲みすぎると指が震えてギターのコードが押えられなくなっちまうぞ?」
唯は昼間からタバコの煙の立ち込める地下のバーにいた。
「・・・あれ?・・・律ちゃん!いやー、なっつかしい!まだ生きてたんだね〜!・・・おっとっとぉ。」
だいぶ酔っ払っている唯はこちらに近づいてくる途中で何かに躓いてよろけた。
「マスター、バーボン、ロックでもう一杯。この人のおごりで〜。」
毎日入り浸っているのか、マスターも心配そうにしている。
「唯ちゃん、悪いことは言わないからもうやめておきなよ。体に悪いよ。」
「あんだとー?客の、注文が、聞け・・・ねぇってのー?お願い、もう一杯だけー。」
「ほんとに止めておきなよ。・・・最近、悪い連中とも付き合ってるだろ?あいつら、変なクスリとかもやってるから気をつけなよ?」
「いーじゃん、もうー・・・」
「いいよ、私がおごる。マスター、もう一杯。」
私は酔っ払っている唯には聞こえないようにマスターに囁いた。
「・・・ただし、ウーロン茶で。」

「え?律っちゃん。今、なんてったのー?耳おかしくなっちゃったかな?」
ろれつの回らない口調で唯が聞いてくる。もうバーボンとウーロン茶の区別はついていないようだ。
私は辛抱強くもう一度言う。
「放課後ティータイムを再結成したいんだ。唯、HTTにはお前が絶対に必要だ。」
「・・・やめてよ!」
今までほわほわしていた唯が急に眉間にしわを寄せて私をにらみつける。
「放課後ティータイムは私にとってもう過去のバンドなの。私には今の生活があるんだよ!冗談はやめて。」
「こんな生活が、か?過去の栄光にすがってもうちょっとできたかもしれないって酒に溺れる生活がか?」
「過去の栄光になんか興味ない。もうHTTのことは思い出したくないの!もう放課後は放課後じゃないんだよ!」
「なぁ、唯。あの時は確かに解散しようって結論になったよ。だけど、お前だってまだやれる。そう思ってるんじゃないか?」
「・・・できるわけないよ!もう何年もギターに触れてすらいないし、コードだって忘れちゃったよ!」
「それはマジで忘れてそうで怖いな。・・・じゃあ唯。ギターは。ギー太はどうしたのさ。」
「さぁね。もう別れてずいぶんになるよ。私みたいな女に愛想をつかしたんだよ。」
「嘘だね。」
「なんで分かるの。あの頃から、もう私、ずいぶん変わっちゃったよ?」
「いーや、変わってないね。もし変わったのなら。」

「なんでお前は今泣いてるんだ?」

「・・・っ!泣いてなんかっ!」
唯は滂沱と涙を流しながら言った。
「・・・いいから、拭けよ。その涙は家でホコリ被ってるギー太と再会した時のためにとっておくんだ。」
私はハンカチを取り出そう・・・として持っていないことに気づき、代わりにぎゅうっと唯を抱きしめた。
唯は私の胸の中で泣いていた。・・・こらこら、鼻水まで拭くんじゃない。
「いいか。唯。HTTは必ず復活する。今日でバーボンのロックは止めて、紅茶とアイスにしろ。いいかげん、このクソみたいな掃き溜めとおさらばして、日の当たる場所へ行こうぜ!」
「・・・いきなり酷いこと、言いますね。」
私は敢えてマスターの独り言は聞かなかったことにした。


「HTTをやり直したいんだ。澪、お前にも来てほしい。」
瀟洒な喫茶店の午後。澪の上品な服装からきっと幸せな結婚生活を送っていることが伺われる。
「は?」
「いや、だから放課後ティータイムを・・・」
「ごめんなさい!無理!絶対無理よ!」
「私には愛する夫と3つになる可愛い息子がいるのよ!なんで今更HTTなのよ!」
「解散する時、みんな疲れ果てて、平凡な人生の方がいいって。人並みの幸せな人生がいいっていうから!」
澪は目に涙を浮かべていた。
変わった姿と同じように。澪の口調は私が教えてやった姉御口調からお上品なものに変わっていた。
「あの時、律がまだやろうって言ってくれたら、私、疲れててもボロボロになってもまだ続けるつもりあったのに!」
澪はつい声を荒げて、周囲から注目を浴びると昔のように真っ赤になって小さくなった。
「冗談じゃねぇぞ、澪。あの時、やめようって言ったのはみんなの意思だ。誰がどう言った言わなかったなんて言い訳にしか過ぎないだろ。」
「・・・じゃあどうして。」

「どうしてあの時、愛してるって言ってくれなかったの?」

私は苦い思いで声を絞り出す。
「澪・・・あの時は」
「ごめんなさい。やっぱり聞きたくないわ。もう、私は他の人の物になってしまったの。」
「あなたの・・・あなたを大好きだった澪はあの雷雨のライブの時にどこかへいなくなってしまったわ。」
「澪、聞いてくれ、私は・・・」
澪は耳を塞いで言った。
「いい加減にして。もう思い出したくないの。」
「とにかく絶対に行かないから。ここは払っておくわ。もうつきまとわないで。」
澪は飲みかけのカプチーノ・コン・カカオもそのままに立ち上がった。
「澪!」
私は最後の望みをかけて澪の背中に声をかけた。
「相変わらずベースダコ残ってるんだな。とても家事ばっかりしてる専業主婦の手には思えなかったよ。」
「あの時、素直になれなくて・・・すまなかった。旦那さんと息子さんと幸せにな。」
澪の背中がぴくん、と固くなり、小刻みに震えている。
「ただ、万が一のためにこの集合場所の地図だけは持って行ってくれ。昔のこい・・・仲間の最後の頼みだと思って。」
「・・・なぁ。頼むよ。」
澪の近くへ歩み寄って、昔かまって欲しい時に出した声でお願いした。

「い、いいけど、すぐ捨てちゃうぞ、こんなの!」
澪はこちらを振り向かず、地図を受け取った。澪の口調が変わっていた。

「かまわないよ。悪かったな、引き止めて。気にしないでくれ。」
澪の背中は大粒の涙を流していた。あの頃の泣き虫でさみしがりの澪の背中だった。
「でも、澪。私は勝手に待ってる。HTTのベースはお前以外にはいないんだ。」
「・・・行かないって言ってるだろ。」
「ああ。だから私が勝手に待ってるだけだ。」
「じょ、冗談じゃないぞ!こんなもの。ほんとに捨てちゃうからな!」
澪はそういうと足早に店を出て行った。


台所。律からもらった地図を丸めて捨てる。
「・・・冗談じゃないぞ、まったく。さ、ゆうちゃんと浩太の晩御飯作らなくっちゃ。」
ちらりとゴミ箱に目を落とす。
「・・・行かないぞ。今日はなんにしようかな。こないだ肉じゃがおいしいって言ってたなぁ・・・」
またゴミ箱を見る。
「・・・ばか律。せっかく今まで忘れてたのに。じゃがいもとにんじんとたまねぎと〜・・・。」
たまねぎの皮を捨てる時、丸めた地図にかからないように避けて捨てる。

「今まで・・・忘れてるフリ、してたのに。」

大粒の涙がまな板を濡らす。
「あ、あれ、なんで私、泣いてるんだろ。ああ、そうか、たまねぎが目に染みたのね・・・」
「ばか。・・・ごはん作れないじゃないか。」
結局この日の晩御飯は店屋物になった。

夜中。
私は眠っているゆうちゃんを起こさないようにそっとベッドを出た。
・・・私はくしゃくしゃに丸まった地図を広げた。まだ間に合う。今出たらまだ間に合う。
ゆうちゃんの寝顔を見る。
優しいひと。
私が以前HTTのベース&ボーカルをやっていたことを告げてもなお、「澪。過去は過去だよ。過去の過ちは取り戻せる。その手伝いをさせてくれないか。」って言ってくれた。
「ゆうちゃん・・・」
もう一度だけ、触れるだけのキスをした。
私は服を着ると、隠れてこっそり毎日弾いていたエリザベスだけを持って寝室を出ようとした。
「・・・澪。」
愛するゆうちゃんの声。
「・・・ゆうちゃん。ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
「ゆうちゃんと浩太のこと、本当に心から愛してる。・・・だけど。」
「私、今行かなかったら、私じゃなくなっちゃう。」
「きっと残りの人生、ずっと後悔しながら生きなきゃいけなくなる。」
私はゆうちゃんに背を向けたまま。でもはっきりと言った。

「私、行く。もう一度HTTに。」

罵られてもいい。殴られてもいい。私はそれだけの事をしようとしてる。
それでも。
私は覚悟を決めて目をつぶった。
「・・・いつか君はそう言うんじゃないかと思っていたよ。」
ゆうちゃんの優しい声。
「行っておいで。そして必ず生きて戻ってくるんだ。」
「安心しろ。浩太にはお母さんは星になったと言っておくよ。」
駆け寄ってもう一度キスしたかったけど。我慢した。
「ゆうちゃん・・・ありがと。さよならは言わないでおくね。」
「本当にごめんなさい!」
私は駆け出した。平和で幸せな暮らしに背を向けて。
HTTという刺激的な世界に。


場末の名もないようなパブ。そこの片隅でムギはひっそりとピアノを弾いていた。
私が近づいても顔も上げない。あの頃の華やぐような笑顔は見る影もない。
「ムギ。・・・変わったな。」
ムギはそれでも私を見ると弱々しく微笑んだ。
「律っちゃん!久しぶりね!聞きに来てくれたの?」
「ああ。まだ続けてたんだな、ピアノ。」
「うん、そうね。・・・あの頃使ってたキーボードじゃないし、あの頃とは全然弾く曲も違うけど。」
「このパブだったら、みんな大声で話してて、何を弾いていてもどうせ分からないし、なにより邪魔にならないように静かに弾くから。あの頃みたいにアンプにつないだりしたら、何か投げられちゃう。」
きっと投げつけられた経験があるんだろう。
寂しく笑うムギがひどく小さく見えた。
「何か、弾こうか?リクエスト、ある?」

誰だ。あのひまわりのように笑うムギをこんなにしてしまったのは誰だ?

「・・・ああ。」
ほんとにHTTに戻ってくるのがムギにとって幸せなのか?
浮かんだ疑問を心の中でかき消す。

「『ふわふわ時間』を弾いてくれないか。」

ムギは、はっとしたようにこっちを見る。
「・・・もうずっと弾いてないわ。ここでは誰もそんな曲リクエストしてくれないもの。」
「ムギ。放課後ティータイムを再結成する。お前にも来てほしい。」
「もうあの頃の曲なんて覚えてないかも。・・・弾けるかしら、今の私に。」
「大丈夫。忘れててもすぐ思い出すさ。あの頃、何度も何度も弾いた曲だろう?」
ムギは困ったような顔をして、すぐにまた弱々しい微笑みを浮かべた。
「ごめんなさい、律っちゃん。もう私には無理よ。このお店との契約も残ってるし・・・」

私は黙ったまま。
指でピアノの天板を叩き始めた。
「律っちゃん・・・これって・・・」

私が叩いているのは『ふわふわ時間』のイントロのリフレイン。
そう。あの講堂で。歌い足りなさそうにしてた唯のためにムギがやったのと同じように。
ムギ。思い出せ。お前はまだ歌い足りないはずだ。
ムギは最初戸惑ったような顔をして。
「無理よ。」「止めて、お願い。」とかつぶやいていたけど。

「思い出せ、ムギ。私ももう迷わない。」

最後には涙を浮かべたまま、『ふわふわ時間』を弾いてくれた。
「不思議、ね。もう忘れようと思って、二度と思い出さないようにしまっておいたのに。」
ムギは大粒の涙をこぼした。
「キーボード、ダメになっちゃってないかしら。倉庫の奥から出してくるね。」
ムギはあの頃のように。ひまわりのように華やかに笑ってくれた。


「・・・梓。ていうか、中野ォ!」
「ひっ!り・・・律先輩!どうしました?久しぶりですね?」
「・・・確保ーっ!」


こうして、5人は奇跡を越えてまた集まった。(うち1名は拉致)
そして伝説のバンド「放課後ティータイム」の再結成ライブが発表された。
当時、全米を震撼させ、ファンの間で惜しまれつつ、電撃解散したそのバンドの第二幕が開こうとしていた・・・

「おい、律。起きろ。もうそろそろ時間だぞ?」

誰かがむにむにと私の頬をつねる。
「やめろぉー・・・伝説の第二章が今まさに・・・おや?」
目を開けると私の頬をつねりあげる澪。
そして、その後ろに放課後ティータイムのメンバーがステージ衣装で勢ぞろい。

「・・・いやぁ。まさかの夢オチかぁ。」

現実世界では、私達、放課後ティータイムはまだ解散しておらず。
ライブ直前の控え室で私は豪快に居眠りしていたらしい。
「ねーねー、どんな夢みてたのー?」
唯がムギの淹れた紅茶をすすりながら聞いてくる。
「私も聞きたい、聞きたいー。」
「どうせろくな夢じゃないだろ。」
「ていうか、ライブ前に控え室で居眠りできるところ、ある意味尊敬します。」
「へへへー。聞いて驚け!まず伝説のロックバンド、放課後ティータイム!驚愕の再結成!」
「・・・解散してるんですね、夢の最初の時点で。」

・・・

「・・・という夢だったんだよ。・・・いやぁ、惜しかったなぁ。あの勢いだったら絶対世界獲れてたぜ!」
「世界って・・・まだ再結成したばっかりのところだったんじゃないですか?」
「そうだよ。それに、世界なら夢じゃなくて、現実で獲ろうよ。」
唯が言うと、みんななんとなく目を合わせて笑いあった。
「そうだよ!世界、獲ろうよ!」
「うん。そうだな。獲っちゃおうか!」
「なんかほんとに獲れそうな気がするのが怖いです・・・」

「えー・・・でもさ、私、お酒より、ジュースの方がいいなぁ・・・」
「ツッコミどころ、そこですか。」
「ギー太、大丈夫だよ、私は絶対にギー太を手放したりしないからね。」
「唯先輩・・・律先輩の夢の中でもちょいちょい変な事言ってましたね。」
「そこが私が私たる所以なんだよ、あずにゃん!」
「すみません、良く分かりません・・・」

「・・・大体なんで私が結婚してるんだよ。誰だよ、ゆうちゃんって。」
「わ、私は生涯一ベーシストだからな!結婚なんか絶対にしないからな!」
「・・・ていうか、ツッコミどころ多すぎてツッコミが追いつきません。」
「私は絶対にしないからな!」
「・・・はいはい。律先輩の夢の中で他の人と結婚してたこと、ショックだったんですね?」

「素敵・・・私、場末のパブでピアノ弾くの夢だったの。」
「ありがとう、律っちゃん。私の夢叶えてくれて。」
「いやいやいや、ムギ先輩。まだ叶ってません。叶ってませんからね?」
「あら、そう?」

「私なんて、ほんのちょっとじゃないですか。ひどいです。ぞんざい過ぎます。」
「おーよしよし。所詮律っちゃんの中ではあずにゃんはそんな存在なんだよ。待っててねー・・・今、私が居眠りして、あずにゃんと歌で世界を救う壮大なストーリーの夢見るからねー?」
そう言うと唯は背中から梓に飛びついた。
「きゃっ!・・・もうすぐライブです!居眠りしないで下さい!」
「私があずにゃんをどのくらい想っているか知って欲しいんだよ〜。んー・・・宇宙人が攻めてきて〜・・・あずにゃんと私の歌が地球を救う夢〜・・・」
無理に眠ろうとする唯。梓は抱きつかれた唯の腕に頬ずりしながらつぶやいた。
「もう。そんな超時空要塞な夢、見なくても・・・分かってますから。」
「んもぅ。あずにゃんってば〜。」
「・・・デレた。」
「・・・デレたな。」
「・・・Rec.」
「・・・はっ!いやいやいや!違います!デレてません!デレてませんから!」
梓は唯をふりほどくと、いつものように私達を叱りつけた。

「もう!私達の夢だった武道館ライブ、もうすぐ始まるんですよ!もう少しちゃんとしてください!」

「おっ、上手いこと言うねぇ、梓〜。」
「言ってません!」
梓の指した控え室のドアの向こうから、武道館を埋めつくしたファンの地鳴りに近い歓声が聞こえてくる。
チケットは完売状態、オールスタンディングの1階アリーナ席は既に大変な事態になっているらしい。
コンコン。
控え室のドアがノックされる。
返事をするとドアが開いてスタッフが顔を出す。
「失礼しまーす。放課後ティータイムさん、そろそろスタンバイお願いしまーす。」
「あ、はーい!」
「よーし。ようやく来たぞ、武道館。覚悟しろー!」
「あ、わたし、まだ紅茶残ってるー・・・あちちっ!」
「あらあら、唯ちゃん、気をつけて。氷なめる?」
「なめるー。」
「ダメです!唯先輩、最初の曲、ゴーマニじゃないですか!氷食べながら歌うつもりですか?」
「あうう・・・あずにゃんのいけず〜・・・」

「絶対、私は結婚なんかしないからな。」
ふと気がつくと隣で澪がつぶやいた。
愛しの姫は未だにご機嫌ななめのようだ。
「え?・・・私ともしてくれないのか?」
「えっ・・・いや、律と、なら・・・」
「・・・ず、ずるいぞ。そんなこと、今言うの。」
澪は予想通り耳まで真っ赤になった。私は心の中でほくそ笑みながら言った。
「ねぇ、澪。キスしていい?」
「ふぇっ?・・・えっ?いやっ・・・」
あ、今、ちょっと迷ったな。
「ダメだよ、そんなの。こんなとこじゃ・・・絶対無理。」
「なんでだよ。私だって夢の中のゆうちゃんに嫉妬してるんだぞ。」
「だいたい澪も澪だよ。なんで私に黙って結婚しちゃうんだよ。おまけに可愛い男の子まで。」
「だ、だってそれはお前の夢の中の話だろ?」
「いいから。罰としてキスさせて?」
澪の目が泳ぐ。
梓とムギが唯にかまっているのが目に入ったようだ。
「な、何で私がお前の夢の責任を持たなくちゃいけないんだよ。ほんとに・・・ほんとに私がいないとダメな奴だな。」
「・・・えっちなのはダメだぞ。ライブ前だからな。」
澪は目をつぶってちょっとかがむ。
「ほ、ほんとにダメだからな。ちょっとだけだからな。」
キスしようとしたら、目をつぶったまま、澪がアリバイ作り。
「ふふっ・・・そんな風に言われたらおねだりみたいだよ、澪。」
私は左手で澪の後頭部を撫でつつ、右手を頬に添えて逃げ道を無くしてやる。
後で「逃げようとしたのに逃げられなかった」って言えるように。

愛を込めてキスをする。もちろん、澪の唇をこじ開けようと舌でくすぐる。
澪はちょっとだけ抵抗するふりをしたけど、すぐに受け入れてくれた。
たっぷり澪を蕩けさせた後で、唇を離した。
「ん・・・は、ぁっ・・・んもぅ。ライブ前だから、だめって言っただろ。」
澪はそう言いながら、潤んだ目で微笑む。

「そんなことないよ。愛にはライブ前も何も関係ないよ。」
「そうよ、澪ちゃん。仲直りのキスだもの、これくらい普通よ。むしろ足りないくらいだわ。」
「・・・あ、あの。澪先輩。私は何も見てませんから。」
鼻血出しながら言っても説得力ないぞー、梓。
澪はようやく回りで見ていた3人に気づいたようだ。
「〜〜〜!ばか!ばか律!もう知らない!」
仲直りどころかお姫様は真っ赤になって、よけいにそっぽを向いてしまった。
「いーじゃん、澪。・・・あれっ?今ので仲直りOKだよね?私がどれくらい愛してるか伝わったよね?大丈夫だよね?」
スタッフがまたドアをノック。
「放課後ティータイムさーん。アリーナで暴動が起きそうでーす。スタンバイお願いしまーす。」

私の姫に、らぶゆーをつぶやくことしばし。ようやく口をきいてもらえるようになった。
「・・・まったく、お前は大物だよ。武道館の控え室でそんな壮大な夢を見るほど熟睡したミュージシャンは史上初なんじゃないか?」
澪はあきれ果てた口調で言う。
あと、あんだけ熱烈なキスしたのもな。
また怒られそうだから、口に出すのはやめておいた。
「私なんて緊張でさっきから・・・あれ?なんかあんまり緊張してない。」
「そう!私は澪の緊張を解くために、敢えて壮大な夢を見たのでーす!」
「嘘をつくなっ!」
澪のゲンコツが降ってくる。
「うぁたっ!」
みんなで笑いあう。
みんなで見つめ合う。
そして、あの時の部室で誓い合ったように。
私は言った。
「・・・よーし!じゃ、やるぞっ!」
「おーう!」
「私達のライブ!」
「おーう!」
「最高のライブ!」
「おーう!」
「終わったらケーキ!」
「おーう!」
「み、みんな。がんばろー・・・」
「おーう!!」

武道館のステージに飛び出していくみんなを見ながら。
「・・・おい、澪ー。まさかこれも夢じゃないだろうな?」
「おいおい。」

澪はにっこり笑って。
またしても私のマシュマロのようなほっぺたをちぎれんほどにつねりあげた。

「もし夢だったら。これから先もずっと見続けて追いかけ続ければいいさ。」

このページへのコメント

澪ちゃん結婚生活!?という所でビックリしましたが、最後まで読んでとても良かったです♪

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Posted by 律澪好き 2010年11月21日(日) 22:59:51 返信

もうこれが劇場版で良いんじゃないか? と思った。
素晴らしかったです!

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Posted by  2010年11月17日(水) 03:41:57 返信

大作ですね。
ムギちゃんのエピソードが一番好き。
りっちゃん、イケメン過ぎです(笑)。

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Posted by ああもう 2010年11月08日(月) 00:14:13 返信

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