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著者:2-762氏



1.

 「律、なにぼんやりしてるんだ」
こっちへ振り返った澪の長い髪がゆるく散り広がった。
「律、最近練習に身が入ってないぞ」
「ん、そうかな?」
「そうだよ。今だってぼーっとして。……ほんとに大丈夫?」
少しだけ真顔になってのぞきこんでくる。
「大丈夫だって。ほら、この通り!」
少し強めにスティックをふるう。いつもどおりの音に澪は苦笑いを返した。
「あ、唯。いまのもう一回やってみてー」
澪がギターの二人の方へ向くと、心の中で安堵のため息をつく。心配させたくなかった。
 澪が梓に何か教えている。澪はすっかり懐かれていて、部活中は、梓の隣にいる時間が一番多いかもしれない。まんざらでもなさそうだった。最近は和も澪に誘われてお茶に来るようになった。そして澪といっしょに唯に説教をしていたりする。
 前にも増してにぎやかになり、みんな楽しそうに部活をしている、それが私も嬉しい。でも……。
 「あたしは、なんで軽音部を始めたんだったっけ」



1.9.

 「来たよー」
「あ、澪ちゃん」
「澪先輩、こんにちはー」
唯はお菓子を頬張っている。梓もいっしょだ。ムギはお茶の準備中らしい。澪はそっちを手伝う。
「ムギ、律は?」
「あ、今日は部活お休みするそうです」
「え、そう。……夏カゼか? あいつのことだから」
「うーん、違うみたいです」そこで少し声を落とした。梓には聞こえないようにだろう。「今日はサボる、と」
「ったく、何言ってるんだ、律は」
「ええ。本当に、どうしたんでしょう」
「部長自らサボってどうするんだよ」
ムギはティーカップを取り出して並べている。
 そういえば、テスト期間以外で部活を休んだことってあっただろうか。一回もなかったはずだ。
(どうしたんだ)
「心配ですか」
「へっ? いや、心配なんてしてない」
「うふふっ」
いつもの調子で返したが、やっぱりどこか気がかりだった。ムギにはそれがわかるのだろう。
「あの、さわ子先生のところに行ってもらったから、まだ学校にいると思いますよ」
「うん」
「たまには……そう、自主練習も必要じゃないかしら?」
「う、うん、そうかも。そうだな」
「ええ」
ムギに軽くうなずいて、すぐに音楽室を出た。


2.

 ほとんど走るような早足で下駄箱の前に着くとちょうど律が靴を履いている。
「あれ、澪、どうしたの?」
「あ、えっと、今日は自主練だから」
「へー。澪もサボりかー。悪い子だ」
「じ・しゅ・れん・だ」
律はくつくつと笑う。
「まーいいや。いっしょに帰ろうぜー」
「ああ」
 下校直後の混雑を過ぎた校門には人影がなかった。午後から広がった雲に日差しがかげって暗く、部活の喧噪も遠くに聞こえる。バス停も前の便が出たばかりで誰もいない。話をするにはちょうど良いのだが、澪にはきっかけがつかめなかった。
「自主練なのに、急いで出て来たの?」
律はそれとなく話を促す。
「うん、まあ。時は金なりだよ」
何を言っているんだ、私は、と澪は自分を叱咤する。
 こんなことを言いたいわけではない。律も澪が話すのを待っている。
 落ち着いてゆっくり話せばいいだけだ。
「ねえ、サボるって、どうしたの?」
「ん……」
「今までこんなことなかった。……最近変だよ、律」
「うん」
聞いているのか、いないのかはっきりしない。
「……律?」
律は静かに話しだした。
「……んと、最近ね。ときどき考えちゃうんだよ。あたし、なんで軽音部を始めたのかなって」
「え、それは、バンド組んでライブやって、それから……」
「ううん。そうじゃないんだ。たぶん」
「……」
思ってもみないことを口にしてしまうことはある。口にした後で自分がそれを考えていたことに気づくのだ。
「よくわからなくなって。もしかしたら、あたし、軽音部やめた方がいいのかなって」
「いやだ!」
澪が自分でも驚くくらい大きな声だった。
「絶対いやだよ。どうして? 軽音部たのしくないの? ねえ、どうして?」
「……たのしいよ、すごく。でもどうしてだか、何かツライ。だから……」
「律がいなかったら、私は軽音部にいなかったよ。……それはいまでもそう。律がいないなら」
「待って。澪は軽音部すきでしょ? 唯やムギ、さわちゃん、梓。みんなと仲良くなって、澪、少し変わった。きっと良い方に変わったと思う。澪は軽音部にいたほうがいい」
 澪はうつむいてしまって表情が見えない。律は澪が話すのを待った。
「律は、軽音部、すき?」
「すきだよ」
「わたしのことは?」
「うん、すきだよ」
 澪の肩が震えた。何かマズイことを言っただろうか。律が声をかけようとしたとき、澪は顔を上げた。
 律を見すえる瞳が潤んでいる。
「私は律がすき」
律は視線をはずすことができない。
 そうやって向かい合っていたのが、一瞬だったのか、長い間だったのか、後になっても律は思い出せなかった。
 「澪」
操り人形のようにぎこちなく、逆らえないものにしたがって、律の体が動いた。肩を抱き寄せて、首をかしげて、伸びをするように。
 目を閉じる前、澪の長い睫毛の間から涙のしずくが落ちるのが見えた。



3.

 降り出した雨の音がバス停に響く。そのうちにバスが来て二人は乗り込んだ。
 バスを降りるころには、雨脚は弱まったようだ。
「あ、傘ないや」
澪は自分が傘を持っていないことに気づいた。
「あたしのに入って。折りたたみのやつを持ってきてる」
いつもなら、澪の傘に私が入るんだけどな、とふと思った。それは澪も同じらしく、そのまま顔に出ている。
「いかにも意外そうな顔をするなよ! 澪がしっかりしてないだけだろ」
澪が屈託なく笑う。今日始めて笑顔を見た。
 「律。走ろう。うちで雨宿りしてれば、すぐにやむよ」
 律がかすかに逡巡している間に、傘を取り出そうとしていた手をとられる。
「行こ」
笑いかける澪に引っ張られて、雨の中へ走り出た。


 「はい、タオル。やっぱりちょっと濡れちゃったな」
「うん。でも平気」
「部屋でゆっくりしてて。お茶もってくから」
 律を家に呼ぶのは、久しぶりだ。軽音部を始めてからは自然と互いの家を行き来することが少なくなった。
「律ー。お湯わかすからもうちょっと待っててー」
 この前、部屋を片づけておいてよかった。前みたいに写真を撮られてはかなわない。今も家捜しなんてしてなきゃいいけど……。

 「お待たせー……っと」
律は膝から下だけをベッドの外に出して、横になっていた。ゆっくりしていて、とは言ったが、ゆっくりし過ぎだろう。
「律? 寝てる?」
仰向けの律の胸がゆっくり上下している。手にはベッドに置いていた読みかけの本を持ったままだ。読んでいるうちに寝入ってしまったのか。
「髪、ちゃんとふいたのか? カゼひくぞ」
カチューシャは外されていて、水気はとれていた。額にかかっていた前髪を耳の方へ流してやる。
 不意に唇を見てしまい、さっきのことを思い出して胸が高鳴った。びっくりしたけど、なんだか、とても……。
 澪はあたりを見回した。
(よし、誰も見ていない)
誰も見てなくて当然だ。
 はねる鼓動とは裏腹に、律が起きないように、ゆっくりと静かにかがみ込んで、そして、そっと触れ合わせた。

 離れたか離れないかの瞬間、カシャッと電子音が鳴った。
「ふぇ?」
律の右手に握られた携帯。そのカメラはまっすぐこっちを向いている。
「……撮った?」
「撮ったよ」
「起きてた?!」
「うん」
口をぱくぱくさせる澪をよそに、起きあがって写りを確認する律。なにやら満足げにうなずいている。
「消せ。はやく!」
「えー、どうしようかなー」
「はやく消せー」
「あー、おとめの唇を盗んでおいて、何かなー、その態度は」
恥ずかしさもあいまってぐっと詰まってしまう。それを見ている律。数瞬、静まる部屋。
「澪。うれしかった」
「え?」
「澪からしてくれて」
「律」
今度は律の方から求めた。舌先が澪の唇を分け入っていく。濃く甘い感覚に身をゆだねるうち、体の奥の方がうずくのを感じる。
 律は豊かな胸の上に張ったブラウスのボタンに指をかける。その手を澪が押さえた。その意味を推し量って、律は凍り付く。
「……ごめん。イヤだったよね。あたし調子に乗って」
澪はぶんぶんと音が出そうなほど首を振った。おずおずと枕元に手を伸ばしてリモコンをとる。部屋の電灯のものだ。
「明るくて……は、はずかしい」
暗転する刹那に見えたその表情が律を揺り覚ます。
 澪が愛しい。
 その想いをずっと抑えて、抑えることの辛さもまた抑えつけてきた。それも今日で終わり。
 強く抱きしめてささやく。
「澪はあたしの」
澪はこくりとうなずきを返した。
 そして二人はベッドに倒れ込む。
 溶暗。



4.

 律は、たわわに実った二つの房をゆっくりほぐしていく。
「あ……んっ」
鼻にかかった声はか細くて秘めやかだが、乱れた息の合間に聞こえるそれを律の耳はあまさずとらえる。
 律の舌がゆるやかな傾斜を駆け上がり、堅くなった丘の頂をなぞる。右手は内ももからゆっくりと足の付け根へ向かい、やがて中心へ。
「ん」
澪は小さく身をよじった。
「大丈夫。リラックスして」
浅く手をあててなぞるだけ。ゆっくり、優しく。それでも澪は乱れていく。呼吸が短く、不規則になっていく。
「……律。……くる……しいよ」
「うん」
 いったん手をはなし、もう一度キスする。
 身じろぎした澪の太ももが律に触れた。しっとりと濡れている。
「律?」
「……うん」
今度は律が仰向けになり、澪の左手をそこへ導く。
「澪」
律が催促すると、おっかなびっくりというふうに触れてみて、律が澪にしたようにゆっくりとなぞり始める。
「……んあっ」
「大丈夫?」
「……つづけて。お願い」
澪は初めて見る律の表情に見入っている。恥ずかしい。でも、澪が自分に触れていることのよろこびには比べるべくもない。
 律は澪の手をとめると、その長い指のひとつを内側へ侵入させた。
「っ……お願い。澪」
 ゆるやかな澪の動き。それでも律はとめどなく高まってゆく。澪の指が刻む一拍ごとに快感の波が背中を這い上り、律をせめる。
「もう……だめ」
律は澪をかき抱き、高みの頂点に達した。
 強く、強く、二人の間に少しの隙間もないように重なって、律は震えた。


 (あたしの方が……先に……なんて)
「律?」
 答えるかわりに律はまた愛撫を始める。胸も首も耳も足も……。
「律、なんだか……やさしい」
「んん?」
なんだそれは。そんなことをいわれると……いじめたくなってしまう。
 手で、舌で、足をからめて、律は丁寧に澪を味わう。澪自身を除いて。
「律」
「なに?」
楽しげな声色はごまかせなかったらしい。
「……わざとやってる」
ちょっと強めに乳首を吸ってやる。
「ひうっ」
やっぱり澪はかわいい。
「……はあっ……はあっ……律が……いじめる」
「ごめんね」全く反省してないけど。
「あっ……っっ」
もう一度触れた澪は、さっきより熱く潤っていた。これなら、いや、わからない。
 そんな迷いを見て取ったのか、今度は澪が律の手をとる。
「律。わたしも」
そして、律は慎重に、澪を開いていく。
「……っく」
「澪?」
「……もっと」
 律はその通りにする。
 澪の口から漏れる声が、鋭くなる。時おり、目を閉じ、また律と視線を交わす。このまま最後までいきそうだ。
「律……こっちに」
律が体を寄せると、澪が腕を回す。
「律……律……律……」
澪の腰が律の指を求めてゆれる。少しずつ強く、速くリズムをとってやるうち、やがて、澪は小さく震えて硬くなり、そのまま失神するように眠ってしまった。



5.

 「今日は早めに行こう」
 早めに出れば、律に会うことはない。たまに遅くなると前の通りでいっしょになる。
 どんな顔をして会えばよいものか。昨日のことを思い出しただけで顔が火照りそうだ。
 「いってきまーす」
すでに誰もいない家に向かって言い、戸締まりをすませる。
「澪! おはよー」
「ひっ!」
「おはよー」
「り、律。おはよう。今日は早いな」
「んふふー」
満面の笑顔だ。これだけのために早起きしたのか、などと言うとやぶ蛇になりそうなので、口にはしない。
「いこうぜ」
「あ、ああ」
澪は懸命に平常心を保とうとするが無理だった。
「……」
「……」
「かわいかったなあ、昨日の澪」
からかう口調で言うが、半分以上は素直な感想だ。
「忘れなさい」
低い声ととともに澪の腕がはしる。
「うっっ!!! ギブギブ!!!」
今日のにはいつも以上のキレがあった。息をつく律を置いて背中を向ける澪。
「忘れないよ」
常にない、ひどく穏やかな律の声に振り返る。
「ぜったい、忘れないからな」
「……バカ。……勝手にしろ」
「おう、勝手にする」
澪の拳がとんだ。
「っー! 勝手にしろって言ったじゃないか」
「ふんっ」
「……見ろ! 昨日のあの写真、携帯の待ち受けにしたぞ!」
「ちょ、何考えて……」
「うそだよーん」
また拳がとんだ。
「早く行くぞ、遅刻する」
「まてよー、澪ー」
 いつもの朝、昨日と同じ景色のはずなのに、昨日がひどく遠くに感じられる、そんな一日の始まり。

このページへのコメント

ベッドシーンも、それ以外も、すごく律澪らしくて良かったです。
律が王子様で澪がお姫様、っていうキャラが二次創作では定着してるようですが、この作品の律澪は素(アニメ、原作)に近いのか、読みやすかったです。

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Posted by huge 2009年08月25日(火) 00:38:20 返信

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