王語嫣・王夫人



本名:段語嫣(だん・ごえん)
身分:曼陀山莊小姐
特技:琴、書法、読書、各門派の武功を熟知
家族:父・段正淳、母・王夫人、従兄・慕容復
登場作品:『天龍八部』

 あらゆる学問に通じた彼女だが、その努力はすべて恋心ゆえといっても過言ではない。愛する従兄・慕容復はいつも武術の話ばかり、ついていくために彼女は努力したといっていい。このあたり、愛情を花栽培に代償として傾けた母の遺伝ともいえるかもしれない。

 しかし、復興で頭がいっぱいの愛する彼は彼女の初恋を一顧だにしなかった。あるいは彼はひょっとして、目標達成後に愛の告白をするつもりだったのかもしれないが。だんだんと孤独で胸がいっぱいになっていく彼女の前に現れたのは、慕容復と正反対といっていい性格の段誉。偶然出会った彼は彼女にぞっこんになり、顔を合わせるたびにニコニコと愛想を振りまく。愛嬌たっぷりの彼に思わず笑顔を返していた彼女だが、それを見るたびに顔色をどす黒くしていた男がいたことには気付かない。
 そう、慕容復。

 これを彼は自分を敬愛していた従妹の離反とみた。さらに思うようにいかない故国復興。彼は賭けに出る。それは西夏国公主の婿となりコネクションを持つことだった。そのために彼女を捨てることを決意した彼。絶望する王語嫣にさらに慕容復は本当は段誉を愛しているのだろうと詰め寄る。絶望した彼女は自殺未遂を起こすが、落ちた涸れ井戸の中で段誉に出会いやっと気付く。自分を愛し、抱きしめる腕の持ち主は彼であると。二人は愛を誓いあい、慕容復に背を向けた。

 その後この二人は発狂した慕容復を目撃することになるが、王語嫣の目には愛情はひとかけらもなく、憐れみしかうつってはいなかった。



本名:王雲蘿(おう・うんら)
別名:王夫人(おう・ふじん)
身分:曼陀山莊主人
趣味:茶花栽培
家族:父・無崖子、母・李秋水、夫・姑蘇氏、子・王語嫣、甥・慕容復
登場作品:『天龍八部』

 王夫人が茶花を育てるのに夢中なのも、男を徹底して嫌うのも、すべて彼女が狂おしく愛した男がその側を離れてしまったせいかもしれない。かつては優しい娘だった彼女を別離の年月が変えてしまった。

 王夫人は愛する段正淳を忘れることができず、修羅の手段で愛を取り戻そうとした。そして彼女が共犯に選んだ相手が悪かった。父の出家を目の当たりにし、さらに愛する従妹を失い狂気の世界へと旅立ちつつあった慕容復だったのである。
 自暴自棄となり最後の逆転に賭けた慕容復は、段延慶と手を結び段正淳、段誉、刀白鳳、秦紅棉、甘宝宝、阮星竹を捕らえてきた。そして大理皇帝の地位を段延慶に譲位せねば一人づつ愛人を手に掛けると脅しにかかった。
 しかし段正淳はそんなことを承伏できるはずもない。非情の刃が彼の愛した花・秦紅棉、甘宝宝、阮星竹を散らしていった。満ちてゆく血の香に段正淳は狂った。
「阿蘿ッ、おまえはなんという女だ!」
 愛しい人の罵声に王夫人の胸は潰れそうになった。涙を目にいっぱいに溜めて許しを乞う彼女は、慕容復が舌打ちした音を聞くことはできなかった。
 愚かな叔母め! 彼は血染めの剣士を王夫人の腹に突き立てた。崩れ落ちる王夫人に向かって段正淳は語りかける。
「嗚呼ッ、阿蘿……私はおまえを救おうとしてあんなことを言ってしまった、あれは本心じゃない、今でもお前を愛している!」
 その言葉をうっとりとした表情で王夫人は聞いた。二十年近い空白の時間を彼女は感じなかった。腹を刺された激痛も消え去り、自分は愛されていたという幸福に包まれて彼女は息絶えた。

 どう考えても似ていない王母娘だが、王語嫣も歳をとればこうなるのだろうか?

※彼女についてもっと語るぞ! って方はどんどん書き足してください。
2005年08月22日(月) 12:56:25 Modified by kizurizm




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