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女の帰納

問:以下の主張の矛盾を指摘せよ

 テレビでサッカーの試合を見ていたら、母が言うのである。
「クロアチアの選手って、『なんとかッチ』ばっかりね」
 そのとき画面にアップで映っていたのは、DFのダリオ・シミッチだった。テロップで名前が出ている。私は、母に問いただした。
「あいつ以外に誰がいるの?」
「さっきもクラスニッチっていうのが出てきたじゃない」
 母は、サッカーを詳しく知らない。今日の試合も、私が見ていたのを、食卓で家計簿をつけながら時折横目で見たのみである。今回の発言も、ダリオ・シミッチとクラスニッチという2人の選手のみを見てのものだろう。確かにクロアチア、というか東欧のサッカー選手に「○○ッチ」という名前が多いのは確かだが、2例目が出てきただけで帰納するというのはいかがなものであろうか。それは、性急に過ぎるのではないだろうか。
 以前もこんなことがあったのだ。私は、大学の教室で自分の席に腰かけてカバンから筆記用具を取り出していた。ふと顔を上げると、前方の扉からちょうどピンク色のTシャツを身にまとった男子学生が入ってきた。目に刺激的なショッキングピンクだった。その男子学生が自らの席にまでたどりつくのをなんとなはなしに目で追っていくと、彼が腰掛けた後ろの席では、同じくショッキングピンクのカーディガンを羽織った女子学生がPCと格闘していた。私が2つのショッキングピンクを見比べていると、私のひとつ後ろの席にいる男女の会話が耳に入ってきた。
女「今日ピンク色の人ばっかりじゃない?」
男「そうだね〜」
 そうだ。なんでたった2つの例で帰納するのだ。2つならまだ偶然ということがあり得るじゃないか。まったく、女というのはすぐにこういう帰納をしたがる。そうやって自分が科学的に法則を発見したような錯覚に陥って、それを周囲に撒き散らすことで自分が高尚な人間になったような気分にでもなっているのだろう。帰納によって法則を導き出すなら、せめて3つ目が現れてからやって欲しいものだ。統計学的には、3つ程度では未だこれっぽっちも正確性がないだろうが、日常的に行う帰納なら3つぐらいで十分だろう。いくらなんでも、2つというのは少なすぎる。

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