当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 2016年9月17日放映のENGEIグランドスラムを見た。
 もう番組全体の演出については何度も言っている通りなので繰り返さない。
 これは父の方が盛んに言っているが、「ENGEIグランドスラム」を名乗るからには、80年代のTHE MANZAIのように、超大物に毎回新ネタをやって欲しいものである。当時のTHE MANZAIには、やすきよがいた。B&Bやツービートや紳助・竜介も出ていた。今のENGEIグランドスラムには、ダウンタウンもウッチャンナンチャンもくりぃむしちゅーもさまぁ〜ずも出てこない。回を重ねるごとに、出演者の小粒化が進んでいるような気さえする。それじゃあ、引きがないだろう。

 総論はそんなもんにして、個々の芸人たちのネタの寸評に入る。
 その前に、筆者がこの手のネタ論評を書くときのスタンスだけ明らかにしておく。
 個々のボケについては、おもしろいかどうかは見る方の好みの問題が大きいので、「おもしろかった」だの「おもしろくなかった」だのはなるだけ書かないようにしている。特に筆者はボケの好みがかなり偏っているので、個々のボケで笑えなかったとしても筆者の好みに合わなかっただけの可能性が大きく、それを書いてもあまり建設的な議論にならないからである。

 「どういうボケが人にウケるのか」という問題に関しては、筆者はずっと体系化した議論ができないものかと考え続けているが、未だ体系らしきものは何も浮かび上がってこない。筆者も色々試してはきたが、自分がおもしろくないと思っていることが人にウケたり、自分がおもしろいと思っていることがスベったりといった事態の方がむしろ多く、まだ何も掴めてはいない。結局は、個人差が大きいから体系化した議論は不可能なのではないかという仮説に近付きつつある。
 なので、フリとか、ツッコミとか、テンポとか、演技力とか滑舌とか、そういう「体系化した議論」ができる部分、すなわち説得的な改善の提案ができる部分だけを指摘するように努めているつもりである。そこは、分かって欲しい。


では、寸評である。
1.NON STYLE
 愛媛とか、「ドゲヨゴ」とか、前に出たボケが後ろに再登場したのはいいだろう。
 あとは、好みの問題である。

2.キャイ〜ン
 基本的には足し算のぶつ切り漫才。

 以前にも書いたが、天野という普通の人が考えた台本に書いてあるボケをウドが言わされている感がすごい。博多華丸・大吉も、ボケの華丸は大吉が書いた台本のボケを言わされており、キャイ〜ンと同じ構造があるのだが、こちらは華丸がマジでボケている感じがするのと対照的である。恐らく普段ウドがテレビで見せる天然キャラとネタ中に見せる計算づくのボケが全然マッチしていないのだろう。(他方で華丸のネタ中のボケは、テレビの華丸のキャラに完全にマッチしており、違和感がないのである)
 天野の誘い笑いもわざとらしい。自分で書いた台本のボケをウドが言っているだけなのだから、素であれば笑うはずないだろう。天野は、真顔でやってみるというのを試みてもいいんではないだろうか。

3.TKO
 葬式での失敗を扱った非常に古典的なコントなのだが、木下のフラが非常に活きておりとてもおもしろい。特に文句はない。

4.流れ星
 ちゅうえいが「さあ笑え」という感じでギャグを連発してくるのが筆者は苦手である。表情も動きもフレーズも全てが笑いの要素で固められており、何も隙がないのである。

5.ロッチ
 これも、ある人を何度も辛い目に遭わすというとても古典的なコント。これは、これでいいと思う。ただやっぱりコカドはもう少し自然な芝居をしてほしい。

6.ミキ
 実の兄弟でコンビを組んでいる2人の漫才。ツッコミが何度訂正しても全然前に進んでいかない感じが筆者は非常に好きである。テンポもよい。動きも豊富で見ていて飽きない。文句ない。

7.友近
 2016年4月1日放映の「検索ちゃん」ネタ祭で同じことをやっていた。
 友近ワールドが全開だが、友近ワールドが全開である。

8.フットボールアワー
 見たことあります。いいと思います。

9.柳原可奈子
 女性の腹黒さが垣間見える日常の一幕を取り扱ったコントである。筆者にはあまりピンと来なかったが、筆者だからだろう。
 ネタ後に司会の松岡が岡村から「女性ってあんなんなんでしょ」と聞かれて即座に「はい」と言っていたのが一番おもしろかった。

10.アンジャッシュ
 怪談師(児島)の怪談をディレクター(渡部)の指示で台無しにするというコント。最初に本来の怪談を見せるという長めのフリを入れた後、台無しになった怪談で笑いをとる。ただ、一つ一つのボケは単発的である。アンジャッシュならもっと前後に絡み合った複雑なものを作れるので、この程度で満足してはいけない。

11.テンダラー
 ネタが3つのパートに分かれていたので、少し散漫だったか。

12.シソンヌ
 矢部も言っていたが、海鮮鍋を食べて尋常でないほど体を震わせるというボケ一本で押してきたコント。中盤で挟まる「合ってねーな」というツッコミが非常に気持ちいいので、よくできている。

13.千鳥
 岡村は「今回の出演者の中で一番アホ」と言っていたが、確かにそうだった。

14.村上ショージ
 うどん粉をこねながらしゃべるというのはいつだかの「笑ってはいけない」でやっていた(あとで調べたら、2008年の「新聞社」だった)が、昔からやっているネタなのだろうか。ショージくん特有のダジャレギャグでスベりつつ、最終的にナポリタンまで出てきて何が言いたいのかよく分からなくなるというのが大オチなんだと思うが、伝わっただろうか。ここに書いたのも筆者の推測なので、本人が何をしたかったのかは結局は闇の中というのが一番怖いところである。

15.博多華丸・大吉
 この2人のネタらしく、華丸の細かいところにこだわる変な人っぷりをボケの中核としている漫才である。2人も言っていたが、おっさんウケが良さそうである。だとするとドラえもんのヒミツ道具の話が通じるのかという疑問はあるが、ウケているんならいい。

16.吉本新喜劇ユニット
 完全に吉本新喜劇のワンシーンだった。みんな、うまい。間とかなんだとか全部ちゃんとできている。語彙が急に貧弱になってしまったが、とにかくうまい。

17.トレンディエンジェル
 時事ネタにハゲを絡ませてくる漫才だった。時事ネタだったので爆笑問題みたいだったが、テンポは速くボケの絶対数も多い。爆笑問題よろしくあっちの時事ネタについてしゃべって次にこっちの時事ネタについてしゃべってというぶつ切り感が強かったので、そこだけが残念である。

18.陣内智則
 ボケは、質が高い。あとは陣内が笑いどころの合間合間にしゃべりすぎである。あんなにしゃべるんだったら、もっと演技力を高めて欲しい。これ以上高められないんだったら、もっと静かにしてほしい。

19.ロバート
 ランプがいい働きをしていた。

20.ヒロシ
 ヒロシのネタは、一つ一つの質が高い。なので、しっかりおもしろい。
 途中で噛んでいたが、噛んだところが一番おもしろかった。それはヒロシが悪いということではなく、笑いが意外性から生まれるものである以上、しっかり考えられた人工ボケよりこういった天然の方が意外性が高く、おもしろいのは必定なのである。フジテレビは、人工ボケはどうやっても天然ボケに勝てないという厳然たる真実とそろそろ向き合わないといけない。

21.バイきんぐ
 やっぱり小峠はそんなに怒る芝居がうまくないような気がする。うまくないから表情と大声で誤魔化しているような気がする。

22.我が家
 いつものローテーションの漫才ではなく、脇汗がすごい杉山を見て谷田部と坪倉が笑ってしまうというコントだった。ただ、テレビで見ている分には杉山の脇汗がすごいというのが非常に分かりにくかった。筆者はしばらく脇汗に気付かず、2人がただ単に杉山だということで笑っているのだと勘違いしてしまった。まあ、杉山のこれまでの素行や扱いのことを考えるとそれでも成立していたのは怪我の功名か。
 あと谷田部も坪倉も杉山に不意を突かれて笑う芝居が致命的にヘタクソである。あれは、なんとかしないといけない。

23.スピードワゴン
 小沢が耽美的に一人でボケ始めるというのはいつも通りだが、その横で井戸田もドラゴンズのことで熱くなって大声で語り始めるボケが加わっていた。2人のボケの種類が全然違ったので、見ていて混乱したというのが正直なところである。

24.CONTS
 NON STYLE井上・次長課長河本・フットボールアワー岩尾・ロバート秋山によるコントユニット。ツッコミは基本的に井上一人だが、なぜか漫才の時より芝居がヘタでツッコミが上滑りしていた。台本を読まされている感が拭い去れなかったのである。もうちょい、稽古しよう。

25.バカリズム
 2015年12月28日放映のFNS笑祭でやっていた木こりの泉のネタ。同じフジの特番のネタ番組でやったものをかぶらせちゃダメだろう。
 感想は同じで、筆者は女神が可哀想になって笑えなかった。ただ、個人差である。

26.オリエンタルラジオ
 新曲・ULTRA TIGERを披露していた。笑いは一切なし。
 ULTRA TIGER自体は完全にPERFECT HUMANの二匹目のドジョウで、曲調もほとんど一緒なので、存在意義がない。小銭を稼げるだけ稼いだら速やかに撤収するがよろし。

27.麒麟
 やっぱり川島にしつこく糾弾される田村が可哀想になってしまった。ただこれも個人差である。

28.中川家
 これも見たことあるネタ。ま、まあ。

29.爆笑問題
 →http://seesaawiki.jp/w/mafirooo/d/2016.4.1%c7%fa%b...


 →これだけでは満足できないという方はこちらへ
30.三遊亭円楽
 メディアゴンの該当記事を参照のこと。

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