当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 おぼん・こぼんの解散ドッキリを見たうちの親父が番組にえらく批判的な意見を述べており、「お前はどう思うか」と聞かれたのでその時うちの親父に答えたことをここにまとめて書いておきます。

・確かに、笑いのコンテンツには全くなっていなかった。
・笑いのコンテンツ以外のエンターテインメントになっていたかというと、それも怪しいのは確かであった。
・私も個人的に見ているのが辛いレベルの映像であった。
・ただ、お互い嫌い合って喧嘩をする人間たちの「醜さ」というものは存分に出せていたとは思う。
・そして「水曜日のダウンタウン」という番組(と、藤井健太郎という作り手)は、笑いを提供することを第一目標とはしておらず、人間の弱さ・汚さ・醜さを画面上に析出させることを第一目標にしている節がある。クロちゃんの醜さがこれでもかと炙り出され、プレゼンターのたむけんも「ほぼホラー」と評していた"MONSTER HOUSE"や、大トニーが絶叫してスタッフに悪態をつくという「禁じ手」をやってしまった「ジョジョの鉄塔」企画なんぞはその最たるものであろう。藤井氏が前に手掛けた「カイジ」も「人間の醜さを炙り出す」という趣旨で作られた企画だと思われる。笑いは、あくまでその中で副次的に生み出されるものに過ぎない。
・私は笑いを分析する物差しは持っているが、それ以外の表現を分析する物差しは大したものを持っていない。だから「醜さを出せていたか」という観点からの詳細な分析はできない。冒頭に「十分出ていたとは思う」とは記したが、それ以上に中身のあることは言えない。「笑い」がどれぐらいできていたかの分析は(ある程度)できるので実行するのだが、それ以外の分野については物差しがない以上あまり無責任な評論もできないし、するつもりもない。
・「人間の醜い部分」がエンターテインメントになるかというと、私はならないと思う。人間の弱さ・汚さ・醜さを前面に出されても基本的には正視に堪えない映像ができ上がってしまう。「自分もこうなのではないか」と身につまされる部分があると視聴者に自己嫌悪の感情も出てきてしまうため、尚更見ていられなくなるだろう。ただ、テレビ局が作っているテレビ番組という商品(もっと正確に言うと、「テレビ番組の合間に広告を出す権利」という商品だが)の買い手はあくまで視聴者ではなくてスポンサーなので、それを買ってくれるスポンサーがいる限り番組は成立し、存続する。それはわざわざ止めるようなことではないと思う。
・確かに私個人も、クロちゃんや今回のおぼん・こぼんのように、具体的現象として立ち現れた人間の醜さをまじまじと眺めるのは苦手である。とはいえ私も人間は所詮弱くて汚くて醜くて徹頭徹尾自分自身のことしか考えていない利己的な動物だということは確信しており、その点については知的興味もあるので、折に触れて自分のウェブサイトでもそれを発信しているつもりである。
・他の芸人がこの企画を擁護する声もあるようであるが、芸人は基本的に大先輩のおぼん・こぼんと2人を番組中でフォローしたダウンタウンを立てなければいけない立場にある。そしておぼん・こぼんとダウンタウンに対する最も有効なフォローは、この企画を「素晴らしい」「おもしろい」と賞賛することなのである。だから芸人の意見は少し割り引いて見た方がいいと思う。
・水曜日のダウンタウンはこれまでに独創的な企画やおもしろい企画を数々世に送り出してきた番組であるため、現存しているテレビ番組の中で(「ほぼ唯一」と言っていいほどの)絶対的な権威を獲得している。今回の企画も、その「権威」がやったことだから無意識に擁護されてしまっている面はあると思う。タレントや番組制作者の場合はもっと直接的である。彼ら彼女らは「水曜日のダウンタウン」関係で仕事をもらえればお金になるため、むやみに番組を非難するのは難しいのである(最終的にOAを承諾したおぼん・こぼん本人にすら、その手の打算があることは否定できない)。ただそうやって権威や多数派やお金の出どこに無意識にすり寄ってしまうのも、まさに番組が伝えたがっている人間の弱くて、汚くて、醜い習性である。そういう反応を炙り出すことをも狙ってのOAだったというのは、考え過ぎか。考え過ぎだろうな。

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