当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 2021年のR-1です。
 今年から、決勝を10人(復活ステージ1位の1人を含む)で争い、最も高得点だった3人が2回目のネタを披露して、その中から優勝を決めるというM-1みたいな方式に変わっていました。また、芸歴10年以内という出場制限もかかったそうです。

1.マツモトクラブ(復活ステージ1位)
 前半本人がやっていた「女性から告白された時の妄想の動き」を後半警察から職質を受けて丸々実際にやることになる、というネタでした。とても複雑な伏線が張られたネタです。
 わざわざ事前にネタを考えるからにはこうやって「事前に考えなきゃできないような複雑な伏線」を用意しろというのは私がいつも言っていることです。
 ただこの手のネタはどうしてもフリが長くなる傾向にあるので、賞レースの短いネタ時間とは相性が悪いという難点があります。今回のマツモトクラブのネタも笑いが起きないフリの時間がとても長く、見ていて不安になりました(おそらく本人は前半にも笑いどころを意識して入れていたのでしょうが、有り体に言うとだいたいスベっていました)。
 加えて、こういうネタを作るからには前半と後半の動きは寸分違わず一致させてほしいものです。最後の方に出てくるキーワードが前半は「愛の告白」だったのに対し、後半は「任意同行」と違う言葉になっていたので、美意識が足りないと感じました。せっかく「いくよ」の方は合わせたんですから、そういう奇跡を全編で見せて欲しいです。

2.ZAZY
 「2人の1年」と題していたフリップ芸でして、春夏秋冬の4束のフリップを順々にめくっていました。中身は、とても鼻孔の大きい女性と、(少なくとも見た目は)普通の男性のカップルの日常を描いたものなのですが、このカップルのおかしさにまともなツッコミが入らないまま、どんどん第三、第四の登場人物が登場してはボケていくという展開をスピーディーに繰り返していたので、「カップルという大ボケが処理されずに放置されている」という意味でとてもシュールに仕上がっていました。だからこそ、玄人受けはするんだと思います。審査員席の芸人たちからは軒並み好評でした。
 難点を言えば、まずフリップには前述の通りカップル以外にも3人目以降の登場人物がどんどん登場するのですが、フリップをめくるのが早く、なおかつ登場人物全員の声を担当しているZAZY本人が演じ分けをほとんど意識していないこともあって、たまに「今の台詞は誰のものだったのか」を見失いかねないということでしょうか。その点さえも敢えてシュールさを出すためにやっているような気もするので、意図した演出なのであればこれ以上は言いません。
 あとは、ボケの内容は全体的に「本当はマジメな人が一生懸命考えた作り物の狂気」感が漂っています。

3.土屋
 「田原俊彦みたいなしゃべり方で自転車を漕ぐパントマイムをし続ける」一本のネタでした。田原俊彦がピンとこない人には全く響かないでしょうし、田原俊彦という有名人の響きのおもしろさだけに頼っているのはプロとしての思考放棄だと私は思います。2回戦で落とすべきです。

4.森本サイダー
 最初にツッコミどころ満載の短めの1人コントをして、後から自分でフリップをめくりながらそこをツッコんでいくというネタでした。多分、ツッコミは別の人にやらせた方がおもしろくなると思います(もちろん、ツッコミの実力は必要です)。1回相方を探してみたらどうでしょうか。「1人でやった方がおもしろい」と本人が考えているのであれば、その根拠を聞いてみたいです。

5.吉住
 川島のコメントが全てだと思います。
 どうせなら、パプーの言っていたことやあげた花の本当の意味とかをネタバラシしてパプーがどういう思いで吉住扮する少女と付き合っていたのかを説明できればもっと深みのあるネタになった気はします。

6.寺田寛明
 フリップネタだったんですが、ネタとネタの間のブリッジに相当する一言は全部スベってました。元々あそこでウケるつもりはないのかもしれませんが、私個人の好みとしては、全く言わずにネタだけやってもらいたいです。

7.かが屋 賀屋
 駆け込み乗車しようとしたら間に合わずコケて色々災難に見舞われたサラリーマンのコントだったんですが、ちょっと「かわいそう」成分が多すぎましたかね。フリの段階でもう少しこの人の「悪さ」や「しょうもなさ」を出して「笑い飛ばしていい人なんだよ」と思わせてくれるとより良いと思います。

8.kento fukaya
 左右に3つフリップの束を並べてめくっていくフリップ芸でした。どうせなら3束ある意味を活かせる「立体交差」や「人間の進化」みたいなやつをもっと増やしてください。この2つ以外は1フリップでもできると思います。
 あと、全体的なストーリーのようなものはなく、相互の関連性の低いフリップボケを順番に繰り出している感が強いので、どうせならストーリーや前後の伏線(特に時間差のあるやつ)をもっと増やしてください。それがネタの深みでありそれを出す作業が台本の「練り」です。今のネタはボケという1小節を積み重ねているだけの「足し算」のネタです。

9.高田ぽる子
 冒頭の「あああああ!!」と叫んだところは今年のR-1で一番おもしろかったです。
 多分、男の乳首という題材はこすられ過ぎているので、今更イジるとなっても既視感を与えるようなものしかできないと思います。実際その呪縛からは逃れられていませんでした。

10.ゆりやんレトリィバァ
 ゆりやんが、オフィス内にある物の心の声を代弁してはそれに1人で「ちゃうねん」という台詞でツッコんでいくというネタでした。まずゆりやんはキャラクターが大ボケなので、ツッコミが全く体に馴染んでいません。もっとウマいことツッコミの演技をしてほしいです。あとはどうしても、自分のボケに自分でツッコんでいるという構図が見え隠れしてしまいます。ゆりやんは観葉植物に扮してひたすらボケ続け、実力派のツッコミにツッコんでもらった方がおもしろくなる気がします。

<Finalステージ>
1.かが屋 賀屋
 笑いどころが少なかったですねえ。東京03のコントみたいに人間のしょうもない見栄を笑いの題材としていたので、どうしても勢いで負ける部分が大きいと思います。

2.ゆりやんレトリィバァ
 1本目の時も思いましたが、顔が売れるとこんなんでもウケるんですね。ゆりやんは完全に、太田やホリケンの系列だと思います。本人は好きにやってるんでしょうから、そういう人には私から言うことは何もありません。

3.ZAZY
 1本目と全く同じ構造のネタでした。特に追加で言うことはありません。

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