タンザニア、ダルエスサラームに暮らす日本人の日本人による日本人のための生活情報です。

タンザニアでの子供の病気は、日本での病気がほとんどそのままある上に、マラリア、赤痢、チフス、コレラ、HIVなどが加わってあると考えていただければよいかと思います。そして後者の頻度が高いために、前者がかすんでしまうことが多いのです。その事実を基に、タンザニアの現状の中で、症状に対して一番現実的で実践的と思われる対処の仕方を簡単に記しました。

発熱

タンザニアでも子供の病気で最も多いのは発熱です。
1) まず、マラリアか?と考える
タンザニアでは、この時まず、この発熱がマラリアによるかどうかが重要な問題になります。
子供のマラリア初感染は重くなることがあるので、やはり一番注意を払うべき病気でしょう。症状は発熱、悪寒、関節痛、重い場合は、黄疸、褐色尿、貧血、意識障害などですが、これらはマラリアに限った症状ではありません。
したがって血液検査で判断をつけてから治療にかかるのが原則です。子供には気の毒ですが(日本なら通常の発熱では3日は採血せずに見るところですが)検査のできる施設がある限り、まず検査するように努めてください。
しかし誤診も多いことを念頭においておかなければなりません。他のものをマラリアとよんで過剰判断する場合です。その場合マラリアでもないのに薬を飲む羽目になるわけです。
逆にマラリアであるのにマイナスと判断する場合もありえます。しかし日本人の初感染の場合は多くないでしょう。とはいえたとえ一回目の検査で陰性でも症状が続けば、くり返し検査をする必要があります。
突然、急に原虫が増えて重篤になる症状も報告されています。また陽性の場合も治療効果を見るために再度検査をすることが原則です。
将来マラリアにかかったかどうかの経歴が知りたいこともありますので、診断は確実にしておきたいものです。できれば最初の検査時の標本(スライド)をいただいてとっておくと、必要なときに改めて調べることができます。
検査方法としては従来の顕微鏡検査(塗抹標本・スライド)に加え、ごく少量の血液で抗体の有無を調べる簡易検査(Rapid test)が有効で、信頼性が高くなっています。
抗マラリア薬はアンテミシニン併用合剤ACT(コアルテム)などをお勧めします。保険と思って常備されておいてはどうでしょう。
日本では手に入りにく薬であり、また帰国後に発病することもありますので、帰国時に持参されるとよいでしょう。
2) マラリアでないとしたら
ここで抗生剤を服用するか、しないかということになります。
細菌による感染の場合は、抗生剤を服用します。それを知るにはマラリア検査時に白血球の数とその内容も検査しておいて、白血球数特に好中球数が多ければ細菌性の感染と考えて抗生剤を服用します。
随伴症状(咳、鼻水、喉痛、腹痛、下痢)によってもある程度見当がつきます。
検査が十分できない状況では、細菌感染を想定しての抗生剤服用もやむをえないでしょう。この国は確かに日本より細菌感染の占める率が高いからです。
抗生剤の種類について相談できる専門家がいなければ、セフェム系と言われる(ケフラール等)抗生剤が一般の方には使いやすいでが、可能な限り医師にご相談ください。

下痢

下痢もタンザニアでは大変多い病気です。大きく分けて細菌性とウイルス性のものがあります。
発熱、血便、粘液便があれば、細菌によることが考えられるので抗生剤の適応でしょう。赤痢、病原性大腸菌、ブドウ状球菌、サルモネラ、キャンピロパクターなどです。できれば便の中の白血球の存在、便培養、それに血液中の白血球数やその種類などの検査で診断を確かなものにします。
しかしこの国ではそれができるところは限られているので、はっきり菌の同定ができないまま抗生剤を使わざるを得ない事も多くあります。どのような抗生剤を使うかは、推定される菌によるので専門的になります。
コレラは細菌性ですが、水様性の下痢で米のとぎ汁様の白色便が頻繁にでます。急激に脱水をきたし、他の細菌性の下痢症とは少し違う病像です。テトラサイクリンと輸液療法を行いますが、日本人が今までかかったことはそれほどないようです。病態が悪化する前にできるだけ早急な水分補給が肝要です。これで重症化するか否かがわかれます。
ウイルス性の下痢の場合、基本的には抗生剤は不要で、脱水を防ぐ補液療法でよいとされますが、決定的な診断ができない状況では抗生剤を投与することも考えられます。
抗生剤とは別に、どちらの場合も乳酸菌製剤の整腸薬は有効です。ロペミンに代表される神経作用制の下痢止めの小児への使用は症状を悪化・遷延化させることもありますので専門家の意見を聞いて下さい。

けいれん

けいれんの多くは発熱とともにおきる全身性のけいれんで、熱性けいれんと呼ばれるものです。
これは6ヶ月ぐらいからあり、1-2歳時が最も多く、熱の出始めの上昇していくときに起こりやすいものです。熱性けいれんであれば、10分くらいの間におさまるのであわてることはないのですが、やはり気持ちの良いものではありません。
したがって以前に熱性けいれんを起こしたことのある児は、熱の出始めのころ解熱薬でコントロールしましょう。
例えば他の児が38.5度で解熱剤を使用するところであれば、少し早めの38.0度かその前に使用します。それでも熱の上昇が続くようでしたら、ダイアップ座薬等抗けいれん剤を使用し、予防します。
また熱のコントロールに氷嚢による冷却は思いの外効果的です。それは額にではなく、両側頚部、両脇下、両ソ頚部にあてがいます。ビニール袋に氷を入れたものをタオルでくるみ氷嚢として使って下さい。うまくすると体温を1度は下げることができるでしょう。
これは動脈血を冷やすことで全身を冷やしていることにもなります。
もしもけいれんが発熱と関係なく、左右非対称、年間6回以上、15分以上続く、5-6歳以上などのどれかであれば、熱性けいれんではないかもしれないので医師に相談が必要です。

腸重積

生後半年から一年くらいの乳児が急にぐったりして顔色が悪くなり、10分間隔で間欠的に泣いたり(腹痛のため)したときには疑ってみます。
血液が混じったいちごジャム状といわれる便が出れば疑いはさらに強まります。
これは大腸の一部がその隣の大腸に入り込んでしまって、詰まってしまう状態です。ここでわざわざとりあげたのは、比較的急を要する病気で、適切に対応すると全快するが、遅れると腸が腐ってきたりして複雑なことになるからです(命にかかわることもある)。
腸重積を疑ったら、ためらわず、夜間でもできる限りの手段を講じる努力をして下さい。バリウムを直腸から圧をかけていれ、診断と治療を同時にしますが、現在は超音波で診断ができます。最近もタンザニアからナイロビに搬送され、事無きを得た例がありました。

交通事故・外傷

実はもっとも対応が難しいのは交通事故をはじめとする事故や外傷です。
小児には心筋梗塞、脳出血、脳梗塞といった一刻を争う病気は成人に比べて少ないのですが、事故は別です。日本でも5歳をすぎると病気より事故での死亡率が上回ってきます。
事故や外傷の対応はケース・バイ・ケースで、ここで特に一般化した対処を述べられるわけではありませんが、そういう認識が必要だということを常に念頭において下さい。

Menu

タンザニアに触れてみよう

ダルエスサラームを知るために





[END]
【メニュー編集】

管理人/副管理人のみ編集できます