119 名前:熱き彗星の魔導師たち 27 01/11 ◆kd.2f.1cKc[sage] 投稿日:2009/04/10(金) 08:48:36 ID:Lxg1dhis
120 名前:熱き彗星の魔導師たち 27 02/11 ◆kd.2f.1cKc[sage] 投稿日:2009/04/10(金) 08:49:17 ID:Lxg1dhis
121 名前:熱き彗星の魔導師たち 27 03/11 ◆kd.2f.1cKc[sage] 投稿日:2009/04/10(金) 08:49:47 ID:Lxg1dhis
122 名前:熱き彗星の魔導師たち 27 04/11 ◆kd.2f.1cKc[sage] 投稿日:2009/04/10(金) 08:50:23 ID:Lxg1dhis
123 名前:熱き彗星の魔導師たち 27 05/11 ◆kd.2f.1cKc[sage] 投稿日:2009/04/10(金) 08:50:55 ID:Lxg1dhis
124 名前:熱き彗星の魔導師たち 27 06/11 ◆kd.2f.1cKc[sage] 投稿日:2009/04/10(金) 08:51:28 ID:Lxg1dhis
125 名前:熱き彗星の魔導師たち 27 07/11 ◆kd.2f.1cKc[sage] 投稿日:2009/04/10(金) 08:52:10 ID:Lxg1dhis
126 名前:熱き彗星の魔導師たち 27 08/11 ◆kd.2f.1cKc[sage] 投稿日:2009/04/10(金) 08:52:44 ID:Lxg1dhis
127 名前:熱き彗星の魔導師たち 27 09/11 ◆kd.2f.1cKc[sage] 投稿日:2009/04/10(金) 08:53:14 ID:Lxg1dhis
128 名前:熱き彗星の魔導師たち 27 10/11 ◆kd.2f.1cKc[sage] 投稿日:2009/04/10(金) 08:53:46 ID:Lxg1dhis
129 名前:熱き彗星の魔導師たち 27 11/11 ◆kd.2f.1cKc[sage] 投稿日:2009/04/10(金) 08:54:17 ID:Lxg1dhis

「schiacci oscillatore」
「くっ」
『Floater field』
 咄嗟に躍り出たユーノが、シールド、ではなくフローターフィールドを盾代わりにして、
繰り出されたスバルの拳を受け止めた。
 すると、今度はその手に嵌められているリボルバーナックルのギアータービンが回転を
始める。
『Protection, Dual exercise』
 フローターフィールドを霧散させたリボルバーナックルの拳を、バーミリオンの2重盾
が阻んだ。
「ティアナ……」
 自らとスバルの間に割り込んだティアナの後姿を見て、ユーノは短く呟いた。

熱き彗星の魔導師たち〜Lyrical Violence + StrikerS〜
 PHASE-27:Each connection

『アリシア、どっちへ行けば良いのか解る?』
 ユーノのさらに後ろでレイジングハートを構えつつ、アリサが念話でアリシアに問いか
ける。
『それは、こちらで』
 返ってきたのは、アリシアではなく、リニスからのものだった。
『恐らく聖王によって艦を制御しているのは主戦闘艦橋、現在の位置からは────』
 リニスが、大まかな方向を言葉で示した。
「ちっ、やっぱりここを突破せざるを得ないみたいね」
 アリサはスバルを睨みながら、不機嫌そうに言った。
「ごめんなさい、アリサさん」
 先頭でスバルと対峙しているティアナが、振り返らずに言う。
「へ?」
 アリサはその唐突さにキョトン、とした表情で聞き返してしまう。
「貴女の教えてくれた事、今破ります」
「ティアナ、アンタ」
 ティアナの言葉に、アリサの表情が険しくなる。
「スバルとは、私が……決着を」
「…………」
 真剣な顔つきで、ティアナの後姿を見ていたアリサだったが、
「ダメよ」
「えっ?」
 アリサの言葉に、ティアナは反射的に振り返ってしまう。
「フェイト! でかいの1発!」
「うん」
『Thunder Smasher』
 ドンッ
 雷光を伴った金色の魔力弾が、スバルめがけて放たれる。スバルはそれを回避し、射撃
は通路を突き抜けていく。
「今よ! すり抜けて!」
「えっ、あっ……」
 ティアナの戸惑いの声を混じらせつつ、6人はフェイトの射撃を避けたスバルの脇をす
り抜ける。
「!」
『Knuckle duster』
『Protection』
「くぅっ!」
 最後尾のマギーがすり抜けた瞬間、スバルの魔力拳がその彼女めがけて振るわれる。マ
ギーが咄嗟にシールドで防ぐ。
「マギー!」
 ティアナが振り返る。反射的にクロスミラージュを構えた。
「ティアナ、スバルを足止めして! マギーはその援護! 良いわね!」
 そう指示するように言い残して、アリサ達は通路を駆け抜けていく。
「アリサさん……」
 呟くように声に出し、ティアナはちらりと後ろを振り返る。
「ティアナ、仕掛ける!」
『Axel stinger, Brake shot』
 マギーが散弾を発射する。スバルはそれを無難に回避したが、その為に、マッハキャリ
バーが床面を離れ、その身は宙に踊った。
『Break slash』
「はぁっ!」
 ガキンッ!
 魔力刀を纏ったクロスミラージュの打ち下ろしを、リボルバーナックルが止める。
 ヴォン……
『Divine shooter』
 バシャァッ!
 リボルバーナックルでクロスミラージュを止めたまま、スバルは左手で振動拳を打ち込
んでくる。ティアナはそれに反応したというより最初から流れる動作で、右手をクロスミ
ラージュから離すと直射弾をゼロ距離で叩き込む。2者がぶつかり合い、魔力弾が霧散す
る。
『Stinger snipe』
 ティアナが構えなおす隙を、マギーが射撃でスバルを牽制する。
「はっ!」
『Phantom blazer』
 ティアナは強力な射撃を、至近距離から叩き込む。だがその瞬間、青い魔力光のシール
ドが出現したのを視認する。
 ヴォンッ!
 魔力弾の霧散した爆煙の中から、スバルがティアナめがけて振動拳を打ち込んでくる。
 ヒュッ
「!」
 振動拳が打ち込まれたと思ったティアナの姿が、掻き消える。
「スバル!」
 ドガァッ!
 魔力攻撃ではなく、ティアナの延髄切りがスバルに綺麗に入った。スバルは前面から床
面めがけて倒れこむ──が、そのまま前転の要領で体勢を直す。
 その目は今だ金色、敵意を感じさせる乾いた眼差しでティアナを見ている。
「この程度で正気に戻ってくれるなら、苦労はないわね」
 ひゅう、と息を整えつつ、ティアナも構えを取って、呟いた。
 ヒュンッ!
「!」
 ガキィンッ!!
 魔力刀を纏ったWS-Fが、背後からスバルの真上に打ち下ろされる。
 ギュイッ
 マッハキャリバーが駆動し、それを高速で回避した。
『Braze canon』
 その避けたところへ、マギーは間髪入れず魔力弾を叩き込む。
 ヒョォッ
 跳躍してそれを回避しつつ、マギーめがけて振動拳が打ち下ろされる。
『Divine clasher』
 バーミリオンの魔力弾が、跳躍するスバルを捉え、マギーへの攻撃が入る直前でなぎ払
う。
『Protection』
 マッハキャリバーのシステムボイス。だが、張られた青いシールドは砕け、魔力弾と相
殺されて爆発する。スバルは後ろに吹っ飛ばされた。そのまま床面へ背中から倒れこむ。
だが、瞬時に起き上がって、構えなおした。
「生半可な攻撃は通用しないわね」
 マギーが呟く。
「一度機能停止させるしかないと思う、ファントムブレイザーかアクセルスティンガーの
直撃で」
 ティアナは同意して頷き、そう言った。
「覚悟は出来てるの?」
 スバルを睨んで構えたまま、マギーはティアナに問いかける。
「ええ」
 ティアナもまたスバルを見据えたまま、動揺もなく頷いた。
『Caution, developed A.M.F.』
 先頭を駆けるアリサの手元で、レイジングハートがそう告げる。
「ローウェル!」
 ちらりとレイジングハートのコアに視線をやってから、顔を上げると、左手で何かを掴
むような仕種をしながらそう呼んだ。
『はーい』
 ペンダントとして首にかけられていた、オレンジ色の涙滴型をした宝石が、光を発しな
がら浮かび上がり、形を変え、その左手に納まる。
『Load cartridge』
 ドンッ
 ミッドチルダ式のシステムボイス調になったローウェル──ホーンテッドクリムゾンの
声とともに、CVK-695Aカートリッジシステムが撃発し、ブローバックで排莢する。
「切り裂け!」
『Interference destroy』
 アリサの左手がホーンテッドクリムゾンを一閃すると、その前方に向かってガラスの薄
膜が砕けるような視覚的イメージが出現した。
「アリサ、私が行く」
「フェイト!?」
 異種二刀流のままのアリサを、フェイトが追い抜き、その前に回りこんだ。アリサは意
外そうな表情をする。
「バルディッシュ!」
『Yes, sir!』
 フェイトのバリアジャケットが一瞬鈍く輝く。
『Plasma Thunder Rage』
「ダンシング」
 稲光が踊り、通路の前方に満ちる。行く手を塞ぐかのように現れたXI型戦闘機人と、ガ
ジェット・ドローンの群れを灼(や)く。
『Axel fin』
 入れ替わるように、オレンジの光翼を千切らせながら、アリサが前に出る。
『Load cartridge』
 ドンッ
 レイジングハートのCVK-695Dを撃発させる。両手で突きの構えを取り、高速で正面のXI
型戦闘機人に迫る。
『Ray lance, clash mode』
 ギュン、ビシッ!
 ライディングボードの前面に張られた渦巻状の光のシールドを、バリア抜きの小規模射
撃でヒビを入れさせる。
『Fire slash』
「はぁっ!」
 ガツン!
 鮮やかなオレンジ色の、火の光をまとったレイジングハートを、ライディングボードに
突き立てる。
『Divine clasher』
 ドンッ!
 ライディングボードに文字通りゼロ距離の射撃を叩き込む。突き立てられた部分が溶解
したかと思うと、ライディングボードが分解しつつ、衝撃でその戦闘機人は背後に吹っ飛
ばされる。
「はぁっ」
『Knuckle bunker』
 アリサの側面から飛び掛ろうとしていた戦闘機人めがけて、ギンガの拳が繰り出される。
 ガキィンッ
 青紫の魔力光をまとったリボルバーナックルが、ライディングボードと交錯し、圧し合
った状態で火花を散らす。
『Thunder Smasher』
 間髪入れず、ギンガの右手から青紫の雷光を纏った魔力弾が放たれ、ライディングボー
ドの側面を回りこんで、XI型戦闘機人を薙ぎ払った。
「行くよ!」
「こっちもっス!」
『Divine buster, multi shot』
 アリサとギンガが反射的に頭を下げたところへ、緑と赤紫の、大出力の魔力弾が通過し、
通路の前方を薙ぎ払っていく。
 ガジェットはこれでほぼ無力化してくれる。だが────
「退きなさいよぉぉっ!!」
 なお行動力を失わないXI型に向かって、アリサが怒鳴り散らす。
『Arc saber』
 ヒュンッ
 アリサの背後から、三日月形の金色の魔力刀が、ブーメランの様に戦闘機人に迫る。
『Revolver set』
「これで!」
『Divine clasher, multi shot』
 アークセイバーのトリッキーな弾道に、正面への対応が遅れたところへ、オレンジ色の
魔力弾が降り注ぐ。
『Braze canon, brake shot』
「シューっ、トっ!」
 桜色の散弾が、続けざまに通路を薙ぎ払う。
 散弾と言っても、1発1発はアリサのディバイン・クラッシャーより強力だ。
 だが、
 ドォオォン
「!」
 その一部が、通路の前方で止められた。シールドに弾かれ、爆散する。
「量産型じゃない……」
 XI型とは違う、2体のスカリエッティ型戦闘機人。
 その姿を視認したとき、アリサは驚いたように目を見開いた。
 1人は、ユーノの因縁、No.5チンク。
 そして、もう1人は────
「……こんな時に会うなんてね、No.3、トーレ」
 憎しみを込めた視線で、アリサは長身の戦闘機人を睨みつけた。
『……Cartridge load』
 ドンッ
 歩みを止めた6人と、その行く手を阻む2人。対峙する奇妙な静寂の中で、レイジング
ハートがカートリッジを撃発させる。
「あの執務官は亡くなったそうだな。すまないことをした」
 トーレは静かに、しかしはっきりとそう言った。
「そう思ってるんなら、管理局に降りたらどうなんスか? トーレ」
 アリサのすぐ後ろから、やはり険しい表情でトーレを睨みつけ、ウェンディが言った。
「そのせいで、ティアナがどれだけ辛い思いをしてきたか」
 ウェンディの言葉に、ユーノが意外そうな表情をして、目の焦点をウェンディあわせた。
「悪いが……」
 ブゥン……
 トーレの四肢に、青い魔力刀が発生する。
「それは、出来ん」
『Axel fin』
「Cavalcata impulso」
 次の瞬間、オレンジと青の急機動の軌跡が交錯し、やはり同じ色の斬撃魔力が火花を散
らした。
「決着はあたしも望むところだけどねぇ、今はそんな場合じゃないのよ!」
 トーレと打ち合い、凌ぎ合いながら、アリサは怒鳴る。
「この先に進みたければ、決着をつけるしかなかろう!」
『Protection, Dual exercise』
 ガガガガガガガッ
 トーレの閃光のような連続打撃を、オレンジ色の二重盾が受け止める。
「そんなに速くても、大雑把じゃあ……」
 言いつつ、アリサはちらりと、先程までトーレの背後にあったそれを見る。重厚な扉。
 ならば、この先が────
「何処を見ている!」
 アリサがその“先”に気をとられた瞬間、トーレの魔力刀が迫る!
「はっ!」
 ガキィンッ!
 アリサが身構えた瞬間、トーレの魔力刀は、赤紫の斬撃魔力を纏った“エッジ”に阻ま
れていた。
「トーレ……!!」
「ウェンディ……セッテを倒したと聞いたが、偶然ではないようだな……!!」
 ────一方。
「Sulla Detonazione」
 無数の銀色の閃光が、ユーノと、その周囲にいたギンガ、なのはめがけて投げつけられ
る。
『Round guarder, Dual exercise』
 現れる緑の二重盾が、それを遮る。
 ドカドカドカドカドカドカ!!
 無数の炸裂が二重盾を襲い、爆煙がその表面を包む。
「!」
 チンクが後ろ情報を振り返る。ユーノは既にそこにいた。
 チンクは躊躇わず、急機動でユーノから下がる。
『Ring bind』
 チンクを捕らえるはずだった緑色の光の枷はしかし、むなしく虚空に現れて、そのまま
消滅した。
「はっ!」
 着地したチンクを、リボルバーナックルを嵌めたギンガの魔力拳が打ち下ろす。
 だが、チンクはさらに跳躍してその拳から逃れた。
『Stinger snipe』
 さらに、なのはの射撃がチンクを狙う。チンクは魔力弾に向かって3本の投げナイフを
投げつける。その投げナイフは魔力弾とぶつかるなり爆発を起して、それを相殺させて霧
散させた。
「このまま追い詰めれば余裕だけど……時間がもう、それほど……」
 アリサは、焦れる意識を口に出して呟く。
 『聖王のゆりかご』の大気圏内飛行速度は決して高速ではなかったが、それでもクラナ
ガンまで4時間はかからないだろう。アリサ達が接触した時点で、その行程の1/3程度は通
過してきたはずだ。
「アリサ! ここはあたしに任せるっス!」
 アリサより前に立つウェンディが、それを察したかのように言った。
「! でも!」
「セオリー崩すのは解ってるっス、けど時間がないっしょぉ!?」
「僕も大丈夫だ!」
 チンクと対峙しながら、ユーノが言った。
「彼女は僕と決着をつけたがってる、ここで余計な時間を使ってる場合じゃない!」
「ユーノ!」
「フェイト! アリサと一緒に早く、艦橋へ!」
「ギンガ! なのはさんも続くっス!」
 躊躇うような声を上げるアリサ。するとユーノは、フェイトに先へ向かうよう促した。
それに、ウェンディが付け加える。
「はっ!」
 ギンガがスライディングの要領で、ウェンディとトーレ、ユーノとチンクの対峙するそ
の隙間を突いた。ブリッツキャリバーの先端が、重厚な動力扉の開閉スイッチを叩いた。
 ゴウン……
 扉が開き、僅かな通路の先にホールのような空間が見える。
「行かせんっ、Cavalcata impulso」
「おっと!」
『Flash move』
 青い軌跡を、赤紫の軌跡がその行く手の前に回りこんで遮った。
「この!」
『Protection』
 アンダウンテッドアイアスに張られたシールドへ、トーレがタックルの要領で突っ込ん
でくるが、ウェンディは一歩も下がらずそれを受け止める。
「行こう、アリサ」
 フェイトが促し、自らは真っ先に扉の向こうへと進んだ。なのは、ギンガがそれに続く。
「ウェンディ、悔しいけど決着はあんたに譲る。負けんじゃないわよ!」
「おうっス!」
 まだ躊躇うような表情を見せるアリサの言葉に、ウェンディはトーレの行く手を遮りつ
つ、険しい表情で答える。
「ユーノも、信じてるからね!」
「信じて、いいよ」
 ユーノはチンクを見据えたまま口元で笑って、そう言った。
 アリサはそれを聞いてから、駆け出して3人の後を追った。
「っつうことで、代理で悪いんスけどねぇ、全力全開でやらせてもらうっスよ」
 ウェンディはアイアスを構えつつ、トーレを睨みつけながら言った。
「望むところだ。急速に成長したとは言うが、まさかセッテを落とすとは思っていなかっ
たからな」
 トーレもまた、構えなおしながら言う。
「クライアントが同とか言ってたっスねぇ、何モンスか?」
 睨みつけたまま、ウェンディは問い質す。
「さあな、私も知らぬ。知っているのはウーノとドゥーエぐらいのものだろう」
「だろうと思ったっス」
 トーレの答えに、ウェンディが悪態をつくような口調で答える。
 ────一拍置いて。
『Edge slash』
 ヒュンッ
 ガキッ、バチバチバチッ
 トーレの腕の魔力刀と、アイアスの斬撃魔力が交錯し、火花を散らす。
「!」
『Ray lance』
 バシィッ!
 蹴り上げるように、足首の魔力刀で蹴り上げてきたトーレの左脚を、ウェンディの速射
が阻む。
 それは命中し、トーレの姿勢を崩させた。
「うぉらぁっス!」
「甘い!」
 瞬間、ウェンディは力任せにねじ伏せようとするが、トーレは急機動で間合いを取り、
構えなおす。
 魔力弾の命中した左脚も、そもそも攻撃を防ぐ為の速射だった為、威力は無く、ダメー
ジは見られない。
「ひゅう────」
 ウェンディは駆動系に冷却風を送る為、深く息を吸い込んだ。
「いよいよ、この時が来た。もう邪魔は入らん」
「1対1は、アリサに戒められてるんだけどね」
 ユーノを睨んでくるチンクに、ユーノも険しい表情で答える。
「行くぞ!」
 ヒュンッ
 チンクの右手から、銀色の刃が迸る。
『Flash move』
 ヒュンッ
 ナイフの投射された先からユーノの姿が掻き消える。
『Divine……』
「なっ!」
 ユーノが魔力弾を撃ち込もうとした瞬間、チンクの姿が視界からふっと掻き消えた。
 ユーノの腰よりも低い位置から、その下肢めがけて水平方向に扇状にナイフを放ってく
る。
「くっ!」
 咄嗟に跳躍、魔法で滞空してかわす。ナイフは扉のレールにぶつかって爆発した。
「時間稼ぎ、だなんて、逆に思わないほうが良いね!」
「その、通りだ!」
 ユーノが言い、チンクは答えながら6本のナイフを投射する。
『Protection』
 緑色のシールドにチンクのナイフはすべて阻まれ、その表面で爆弾となって炸裂した。
 ────投擲も以前より性格になってる、このままじゃ防ぎ続けることは出来ても、こ
っちから攻撃できない……
 ユーノは視界にチンクを捕らえつつ、そう思考をめぐらせる。
 一瞬だけ、ウェンディとトーレに視線を走らせた。
 ────さて、どうする?

 短い通路を抜けると、そこに、広い空間が出現した。
 それは何処となく、時空管理局のL型の艦橋を思わせる構造をしている。だが、その規
模は数段大きかった。
「やっとお着きになられたのですねぇ、待ちくたびれちゃいましたわぁ」
 おっとりした、だが神経をかきむしるような不快さを伴った声が、アリサ達を出迎える。
『Caution, developed A.M.F. It is so powerful that it is unprecedented!!』
 これまでにない程の強力なA.M.F.を探知した、と、アリサの手元でレイジングハートが
告げる。
「ヴィヴィオ!」
 なのはが声を上げる。正面、おそらく指揮官席と思われる場所に、ヴィヴィオはいた。
 しかし、その四肢は虹色の、光の鎖で拘束されている。
「あ、ぐ……はぁ……はぁ……苦しい、よぉ……熱い、よぉ……っ」
 ヴィヴィオは激しい熱病に冒されているかのように、苦悶の表情で呻いていた。
 しかし、その傍らに立つクアットロは、ヴィヴィオに手を差し伸べるどころか、むしろ
それが可笑しいとでも言わんばかりに、ニタリと笑っている。
「アンタ……確かクアットロとかいったわよね……」
 アリサは嫌悪感を隠さず、凄みのある表情でクアットロを睨みつける。
「栄えある“燃え上がる炎”の2代目に覚えていただけますとはぁ、なんとも光栄ですわ
ぁ」
 とてもそう思っているとは思えない、人を見下したような笑みで、メガネをかけた戦闘
機人は言う。
「ふざけんじゃ……」
「はぁっ!」
 アリサが言い終わるより早く、飛び出したのは、ギンガだった。
『Revolver knuckle, Load cartridge』
 ドンドンッ!
 ブリッツキャリバーの声と共に、リボルバーナックルが2発のカートリッジを撃発させ、
ギアータービンの回転と共に、ギンガの左手が鮮やかな青紫の魔力を纏う。
 だが……
 ヒュッ
 間違いなく捕らえられたと思ったクアットロの姿は、寸前で掻き消え、ギンガの拳はむ
なしく宙を斬る。
「なっ!」
『ほほほほほ……幻影と実体の区別もつかないなんて、なんておばかさんたちなのかしら
ねぇ……』
 念話ではない。方法は解らないが、ここではない場所から、クアットロの声が艦橋内に
反響する。
「くっ!」
 やり場のなくなった拳を、ギンガは床に叩きつけた。既に魔力はA.M.F.の干渉で霧散し、
無機質な床には傷もつかない。
『さぁ、聖王陛下、後は頼みましたわよぉ……』
「待ちなさい! 姿を見せなさいよ! ゴルァ!」
 アリサがホール状の艦橋の宙を見上げて、怒鳴る。
「ヴィヴィオ!」
 そのアリサの脇を駆け抜けて、なのはがヴィヴィオに向かう。
「そっか、とりあえずヴィヴィオを確保できれば……」
 アリサも我に返り、なのはを追った。
『Caution!!』
「だめっ! みんな!」
 1人、入り口付近にとどまっていたフェイトが、切迫した表情で声を上げた。
「えっ!?」
 アリサが反射的に足を止め、振り返る。だが、その表情から緊張感は薄れていた。
「もう大丈夫だよ、ヴィヴィオ!」
 なのはは
「ダメ、ちかづか、ないで、ママーっ!!」
 ヴィヴィオの絶叫。
 次の刹那、今まで見たことのないような、虹色の魔力光と共に、強大な魔力の奔流がヴ
ィヴィオの身体から放出された。
「きゃ、うわわわわっ!」
「きゃあぁぁっ!!」
 強烈なA.M.F.の影響下であるにもかかわらず、それは瀑布の水の如き勢いで、ヴィヴィ
オの近くにいたなのはとギンガ、アリサ、さらにはフェイトまでも弾き飛ばす。
 4人は、その背後の壁に叩きつけられた。
「な、なんて……これが……っ」
 ギリッ……壁に押し付けられたまま、アリサは歯を鳴らしつつ、虹色の閃光の元を見た。
 そこには、幼いヴィヴィオの姿ではなく、ハイティーン程度の……青いバリアジャケッ
ト、否、ベルカ騎士甲冑に身を包んだ聖王の姿があった。


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目次:熱き彗星の魔導師たち
著者:( ゚Д゚) ◆kd.2f.1cKc

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