スティッフパーソン症候群(stiff-person syndrome:SPS)[別名:スティッフマン症候群(stiff-man syndrome:SMS)、全身硬直症候群、全身強直症候群]という病気のまとめwikiです。

注:このページは、英語のサイトや文献から抜粋・翻訳しました。医学も英語も全く不慣れのため、不正確な内容です。
実際の詳しい診断内容は専門医(神経内科など)にお訊き下さい。

このページの目次


診断基準

ここでは、いくつかの文献に記載された診断基準を掲載する。ただし、SPSは確定的な診断基準があるわけではなく、臨床診断が重要である。
そして、SPSは非常にまれな病気のため、他の病気の鑑別(除外)診断が鍵となる。「診断/別の病気」のページを参照。
日本で主に使われている診断基準は、Gordon他、Lorish他の2つで、ジアゼパム投与時の筋硬直の改善も強く診断法の一つとして使われている。

Lorish他の診断基準(1989年)

出典元
  • (1) 体幹の筋肉が硬直し始める。
  • (2) 硬直はゆっくりと進行し、近位四肢の筋肉へと広がる(随意の運動と歩行を困難にする)。
  • (3) 脊椎が固まったまま変形する。
  • (4) 突然の運動、調和を欠くこと、雑音、感情的な動揺によって促進される、不規則な痙攣の存在。
  • (5) 運動及び知覚性神経試験の正常調査結果。
  • (6) 知性の正常。
  • (7) 連続運動活動の筋電図検査での典型的結果。ジアゼパムの静脈内投与または経口投与の良好な反応によって消失する。

Gordon他の診断基準(1967年)

出典元
この診断基準は、主要な特徴とそれを補う検査によって構成される。
臨床上の主要な特徴
  • (1) 初期症状。
    • 最初の症状はたいてい、軸筋肉組織の不規則な痛みと緊張であり、通常数週から数ヵ月で恒常的になって、四肢まで広がる。
  • (2) 進行。
    • 通常対称形で、持続性の硬直であり、きつく、石のように固く、板のような筋が特徴的である。
    • 大部分の四肢、体幹と首筋肉組織へと影響がおよぶ。硬直は随意運動を妨げ、堅い姿勢となる。
    • 筋硬直は、強度が変動する場合があり、分布は必ずしも対称的でない。
  • (3) 有痛性痙攣と誘発の要因。
    • 持続性の筋硬直に重なって現れる。突然の刺激は、(必ずではないが)耐えがたい痛みにつながるほど激しい筋攣縮の発作を、しばしば引き起こす。
    • 犠牲者は苦痛で叫び、発汗、頻脈および不隠を伴うショック様の状態を現す。発作は数分間続く。
    • 即座に誘発する刺激は、
      • 雑音、体への衝撃(jar)、四肢の能動的な運動、受動的な筋ストレッチ
      • 苦悩にまつわる感情、恐怖、訪問客の出現
      • 会話、嚥下、咀嚼
  • (4) 睡眠により筋硬直が消失する。
  • (5) 神経学的所見。
    • 自発運動が困難になる以外は、通常、運動および感覚検査は正常である。
    • 反射が亢進する可能性がある。
  • (6) 知性は常に正常である。
神経生理学的検査
  • (1) 筋電図記録法での連続運動単位活動
    • 持続性の強直性固縮は、安静時にも恒常的放電となって表れる。
    • 筋を弛緩させるよう試みても放電は変化しない。活動電位自体は正常である。
  • (2) 筋神経遮断薬への反応。
    • スクシニルコリン、ツボクラリン、クラーレによる遮断作用
    • 神経筋伝達ブロックで消失する「安静時」における連続的な正常運動単位活動
    • 有痛性痙攣の誘発の無効
  • (3) 末梢運動繊維の化学ブロックの作用。
    • クモ膜下腔内のポントカイン施与により、全運動および感覚性ブロックの領域で、完全な筋弛緩と共に完全な電気的沈黙が見られた。
  • (4) 全身麻酔への反応。
    • 全身麻酔は、睡眠と同様、筋硬直を無効にする。
  • 必ずとはいえないが、ジアゼパムによる筋硬直の改善によっても判断される。

アメリカ国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)の神経筋疾患部門の診断基準(2000年)

出典元
  • (1)四肢と軸(体幹)における筋硬直の潜行性発症。腹部及び胸腰部の傍脊柱筋で最も顕著に現れ、転回または屈曲の困難を伴う。
  • (2) 弛緩できない作動筋と拮抗筋の連続共収縮。臨床的および電気生理学的に確認される。
    (注:作動筋の筋肉が起動するとき拮抗筋の筋肉は弛緩するが、SPSでは作動筋と拮抗筋の筋肉が同時に痙攣する)。
  • (3) 筋硬直に重なって現れる間欠的な痙攣。予想外の音、触覚刺激または感情的動揺によって引き起こされる。
  • (4) 硬直や固縮を解釈しうる、他の神経疾患または慢性疼痛症候群が全くないこと。
別の文献では、抗GAD抗体の陽性反応も加えている。
  • (5) 抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)65抗体が陽性であること。免疫細胞化学、ウエスタンブロット、または放射免疫測定法で評価する。



臨床症状の判断は、2つの検査、筋電図記録(EMG)所見と自己抗体の存在により補われる。

筋電図記録の異常は、力を抜いた(安静にした)状態で、作動筋と拮抗筋の筋肉から同時に記録される。

自己抗体は、以下の自己抗原に対して発生する。(自己抗体については原因のページも参照)
  1. GAD65(グルタミン酸デカルボキシラーゼ65)
    GABA(γ-アミノ酪酸)合成に関わる酵素
  2. アンフィフィシン(amphiphysin) ※1
  3. ゲフィリン(gephyrin) ※1
  4. GABARAP
  5. GLRA1
SPS患者のおよそ50〜80%はGADに対して抗体を持っている。(割合にばらつきがあるのは文献によって異なるため)
アンフィフィシン抗体は数%で検出され、ゲフィリン抗体はただ一つのSPS症例で検出された。
最近では、新たなSPS特有の自己抗体として、GABARAP抗体が発見された。また、PERM症例では、GLRA1抗体の検出も数例ある。
抗GAD抗体が多く検出されること(高力価)はSPSに特徴的であるが、最近では小脳失調など、GAD抗体高値の病気が多く見つかった(メモ/GAD関連も参照)。
1型糖尿病患者で検出されるように、抗GAD抗体が少量検出される(低力価)のとは対照的である。

SPSでは、抗GAD抗体(免疫グロブリンG、IgG)の髄腔内合成がある。そして、中枢神経系区画の中で自己免疫作用を示す。
スティッフパーソン症候群は、他の自己免疫不全、糖尿病、病気関連の自己抗体(抗甲状腺、抗核抗体、抗壁細胞など)と多くの場合関係している。

※1 抗アンフィフィシン抗体、抗ゲフィリン抗体の検査は、知りうる限りでは筑波大付属病院(石井先生により)で行われている。全国からの検査依頼も受けているようだ。


症状の程度を判定するための基準

SPSは、環境や患者の心理状態によっても変化し、変化は一日のうちでも起こるため、非常に定量化が難しい。

筋硬直の定量化(アメリカ国立衛生研究所(NIH)の硬直判定基準)

出典元
最も再現可能な基準は「筋硬直の分布」と「感受性の鋭敏化」である。
筋硬直の分布(Distribution of stiffness)
他文献では「スティッフネススコア」(stiffness score)などと記載)

これは、硬直した部分の数により、医師によって評価される。
(1.と6.が該当する場合、スコアは2となる。最多スコアは6つ)
  • 0.硬直部分がない
  • 1.体幹下部の硬直
  • 2.体幹上部の硬直
  • 3.両足の硬直
  • 4.両腕の硬直
  • 5.顔の硬直
  • 6.腹部と背中の硬直
感受性の鋭敏化(Heightened sensitivity)
他文献では「センシティビティスコア」(sensitivity score)などと記載)

筋けいれんの区分と頻度、刺激への感度、転倒の頻度、転倒の素因となるような出来事、
痙攣を促進・増加させる環境要因(広い空間、不安、群衆、予想外の音、突然の運動、
耳障りな音、接近してくる車、急いた気分、感情的な動揺)について評価する。
感受性の鋭敏化の大きさは、以下の要因による硬直と痙攣の誘発によって測定された。
(※硬直の分布と同様、誘発要因の数によってスコアが決定。最多スコアは7つ)
  • 1.雑音
  • 2.視覚の刺激
  • 3.体性感覚刺激
  • 4.自発的な活動
  • 5.感情的な動揺またはストレス
  • 6.何も誘発するものがない
  • 7.夜間の痙攣による覚醒
時間の計測(Timed activities)
以下の作業にかかった時間について計測する。
  1. 椅子から立ち上がる
  2. 9メートルの通路を3回歩く
  3. 時計回りと反時計回りで、両足で体を180度回転させる
  4. 4段の階段を上り下りする

修正ランキンスケール

出典元
「多くの臨床上重要な障害評価が慢性で、変動性で、主観的なため、SMS患者において後向きあるいは前向きに免疫治療反応を評価するのは困難である」。
そのため、総体的な障害評価だけを使った研究もある。
  • 0. 症状がない
  • 1. 身体的制約のない症状
  • 2. わずかな障害、ただし自分で身の回りの世話ができる
  • 3. 介助が必要な中程度の障害、ただし補助なしで歩行可能
  • 4. 歩行に補助が必要
  • 5. 寝たきり
  • 6. 死亡
(注:上記は出典元に記載されたものであり、他の文献では別の表現がされている)


参考文献

Lorish他の作成した診断基準(要約のみ)
Gordon他の作成した診断基準(要約のみ) NINDSの診断基準、筋硬直の定量化について記載 上記を改良した診断基準(要約のみ)
スティッフネススコアの使用例: 修正ランキンスケールの使用例(要約のみ)

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