【定義】
� 崙瓠廚蓮�近称を表す「這」に対して、遠称である。あの、その、の意。よって、「那一宝」とは、直訳すれば「あの１つの宝」の意であるが、具体的に明示できていない重要な宝物＝真理の意。
��江戸期の曹洞宗が輩出した学僧・父幼老卵による『正法眼蔵』の註釈書。なお、父幼は天桂派であり、『那一宝』は天桂の『弁註』を継承しながら、『御抄』などの解釈とのすりあわせを行っていることがその特徴である。
【内容】
父幼は天桂の法孫として、その天桂に負けないほど道元禅師を追慕し、その念によって『正法眼蔵』を註釈した。ただ、『那一宝』は撰述時期や開版時期については不明な点が多い。
本来『弁註』は60巻本を中心に註釈されており、また天桂の宗乗眼によって合計78巻のみが『正法眼蔵』として認められたが、父幼は『正法眼蔵』註釈に当たり、諸本を対校しながら、一応60巻本を中心にはしつつ、他に21巻を拾遺、更に15巻を別輯として、合計96巻（「行持」巻を上下とした）として編集している。
思想的には、ほぼ天桂と同じであるが、あまりに独創的であった天桂の『弁註』から、『御抄』や他の註釈書と余りにそぐわない箇所を削除し、更に自らの見解を付け足して1つの註釈とした。ここには、天桂死後も天桂派の諸師が『正法眼蔵』参究を続けていたことが窺われる。
また、先ほど「撰述時期が不明」としたが、この『那一宝』は、老卵が『正法眼蔵』を秘書扱いしようとすることを批判し、多くの者に読めるようにしたいとの願いから、開版しようとした。しかし、当時は『正法眼蔵』について、開版事業は禁止されていた。父幼は、その禁令下にあって敢えて開版を行い、しかもその序について朝廷に下賜を願い出た。このようなことがあってか、『那一宝』は開版を止められているばかりか、父幼も興聖寺を追放になって、生地である山形の鶴岡に帰った。このこともあってか、『那一宝』の撰述は、父幼が興聖寺にいた寛政元年（1789）4月29日から序に自ら記した寛政3年（1781）8月8日の間ではないかとも推定されている。
なお、このように開版が禁止されていることもあり、『那一宝』はほとんどその原本を見ることが出来ない。しかし、現在では以下のようなテキストが存在している。
【テキスト】
・『正法眼蔵註解全書?』（全10巻）
・『永平正法眼蔵蒐書大成?』第16巻
� 崙瓠廚蓮�近称を表す「這」に対して、遠称である。あの、その、の意。よって、「那一宝」とは、直訳すれば「あの１つの宝」の意であるが、具体的に明示できていない重要な宝物＝真理の意。
��江戸期の曹洞宗が輩出した学僧・父幼老卵による『正法眼蔵』の註釈書。なお、父幼は天桂派であり、『那一宝』は天桂の『弁註』を継承しながら、『御抄』などの解釈とのすりあわせを行っていることがその特徴である。
【内容】
父幼は天桂の法孫として、その天桂に負けないほど道元禅師を追慕し、その念によって『正法眼蔵』を註釈した。ただ、『那一宝』は撰述時期や開版時期については不明な点が多い。
本来『弁註』は60巻本を中心に註釈されており、また天桂の宗乗眼によって合計78巻のみが『正法眼蔵』として認められたが、父幼は『正法眼蔵』註釈に当たり、諸本を対校しながら、一応60巻本を中心にはしつつ、他に21巻を拾遺、更に15巻を別輯として、合計96巻（「行持」巻を上下とした）として編集している。
思想的には、ほぼ天桂と同じであるが、あまりに独創的であった天桂の『弁註』から、『御抄』や他の註釈書と余りにそぐわない箇所を削除し、更に自らの見解を付け足して1つの註釈とした。ここには、天桂死後も天桂派の諸師が『正法眼蔵』参究を続けていたことが窺われる。
また、先ほど「撰述時期が不明」としたが、この『那一宝』は、老卵が『正法眼蔵』を秘書扱いしようとすることを批判し、多くの者に読めるようにしたいとの願いから、開版しようとした。しかし、当時は『正法眼蔵』について、開版事業は禁止されていた。父幼は、その禁令下にあって敢えて開版を行い、しかもその序について朝廷に下賜を願い出た。このようなことがあってか、『那一宝』は開版を止められているばかりか、父幼も興聖寺を追放になって、生地である山形の鶴岡に帰った。このこともあってか、『那一宝』の撰述は、父幼が興聖寺にいた寛政元年（1789）4月29日から序に自ら記した寛政3年（1781）8月8日の間ではないかとも推定されている。
なお、このように開版が禁止されていることもあり、『那一宝』はほとんどその原本を見ることが出来ない。しかし、現在では以下のようなテキストが存在している。
【テキスト】
・『正法眼蔵註解全書?』（全10巻）
・『永平正法眼蔵蒐書大成?』第16巻
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