自由という服従 (光文社新書)

目次

はじめに

第1章　自由なら、幸せですか？
1-1 「自由であること」は息苦しい？
「自由＝幸せ」って本当？
私服でOKなのに制服を着る生徒たち
自由であるからこそ、他社の評価に晒される
「どうでもいいこと」を判断しなければならない息苦しさ
1-2 徹底した服従
微細な差異をめぐる競争―ヤマンバと征服
なぜ少女たちはこぞってヤマンバ・ファッションに走ったのか？
徹底した服従
1-3 他者の視線
「自由だからこそ、権力に囚われている」という認識
「他者の目を気にしない」という人

第2章　理由なき服従―W杯代表選考の場合
2-1 フィリップ・トルシエと中田英寿
理由なき服従
監督にとって一番望ましい選手との関係
選手にとって一番望ましい監督との関係
監督にとって合理的な戦略①
選手にとって合理的な戦略①
合理的な結果①
理由ある反抗
2-2 フィリップ・トルシエと中村俊輔
選好関係の変更
監督にとって合理的な戦略②
選手にとって合理的な戦略②
合理的な結果②
なぜ中村俊輔は代表メンバーから外されたのか？
トルシエの選好を予測することの難しさ
宮本恒靖の「理由ある反抗」
「理由ある反抗」と「理由ある服従」は表裏一体
2-3 理由なき服従
監督の評価がわからない場合
期待効用
「理由なき服従」を説明するための枠組み
「理由なき服従」が生じるメカニズム
理不尽であるのに合理的な根拠がある？

第3章　抵抗する、という服従―サボタージュするOLの場合
3-1 分断されるOL
性別役割分業
「総合職＝男性、一般職＝女性」という図式
なぜ女性社員は一枚岩になれないのか①―年齢
なぜ女性社員は一枚岩になれないのか②―学歴
支配者・被支配者の見えない権力関係
3-2 わがままなOL
OLをとりまく状況
OLにとってベストの選択とは？
OLの嫌う男性社員の4パターン
サボタージュによる報復
OLの抵抗に対する男性社員の戦略
「上下関係」の逆転
3-3 ジェンダーの罠
OLは弱者か、強者か？
制度的に劣位な位置を承認
抵抗するという服従
抵抗的協調
ジェンダー・トラップ

第4章　自由恋愛という支配―男と女の場合
4-1 リードする男、される女
男性は話し下手、女性は話し好きというステレオタイプ
異性間の会話では男性が積極的に発言
性行動に根強く存在する男女の役割分業
当事者に意識させない高次の権力
当事者たちが「だまされる」メカニズム
4-2 進化という考え方
積極戦略と消極戦略
相手の戦略によるメリット・デメリット
男性集団と女性集団の採る戦略
「男性＝積極戦略、女性＝消極戦略」が安定した状態
4-3 傷つく強さ
恋愛に関心を持つほど、支配関係に取り込まれていく・・・
不可視化された支配
従来の思考枠組みを放棄
消極戦略を社会的に低く評価する
不可視化された支配を解消しにくい日本社会
他者が自分を評価しないことを受け入れる

第5章　1人前になるという服従―建築労働者の場合
5-1 「建築労働者」になる過程
飯場で参与観察
一人前の建築労働者
独特なランク付けの基準
重要な最初のランク付け
評価の高い「元ヤン」のシゲル
建築労働者になる「資格審査」
5-2 建築労働者というアイデンティティ
非効率的なシステムで見込みのあるなしを選抜
呼ばれ方の変化で認められたことを知る
なぜ規則はこっそりと教えられるのか
建築労働者の誇りの源泉
共同体の規則の内面化
5-3 世界を見る内的視点と外的視点
業界内の人間にとっての建築労働者に対する評価
業界外の人間にとっての建築労働者に対する評価
「内」の規則が「外」に明示化されていない状況
抵抗されない従属
異なる規則の存在を意識すること

第6章　自由だとつらいですか？
6-1 ここまで述べてきたこと
私たちにどういったことが必要とされているのか
選手とOLの合理的な振舞い
支配と従属
諦観ではなく
6-2 厄介な他者
自由と服従は表裏一体
他者のいない世界で「自由である」ことの意味
「息苦しさ」はどこから来るのか
仮想の他者
6-3 私の中の幻影たち
すべての望みがかなったとき、私は本当に幸せか？
<目に見えない他者>とどう向き合うか？

主な参考文献（抜粋）
忠鉢信一『進化する日本サッカー』
金野美奈子『OLの創造　意味世界としてのジェンダー』
宮台真司『権力の予期理論』
小笠原裕子『OLの<レジスタンス>』
稲盛和夫『権力　社会科学の理論とモデル』
数土直紀『理解できない他者と理解されない自己　寛容の社会理論』
内田隆三『ミッシェル・フーコー　主体の系譜学』
Weber, Max『社会学の根本概念』

数理社会学入門 (数理社会学シリーズ)

目次

数理社会学シリーズ刊行にあたって
第1巻　はしがき：数理社会学の全体像

第Ⅰ部　社会から数理モデルへ：方法編
第1章　数理社会学への招待
1.1 数理社会学とは
1.1.1 数理社会学の利点と落とし穴
1.1.2 数理社会学の手順

1.2 常識の非合理性と人間味：数理への偏見

1.3 社会数理の妙味：言説理論を超えて
1.3.1 恋愛のダイナミクス：ダイアド関係の安定性
1.3.2 逢い引きのトラブル・ゲーム：協調関係下の駆け引き

1.4 数理社会学の心得
1.4.1 概念のフォーマライゼーション：分業と集団のバランス
1.4.2 命題のフォーマライゼーション：呪術の機能

第2章　数理社会学の可能性と限界
2.1 社会学理論としての数理社会学
2.1.1 「理論」と「モデル」
2.1.2 数学の必要性と不十分性：この章の目的と構成
2.1.3 計量社会学と数理社会学
2.1.4 社会科学と数学

2.2 数学と科学
2.2.1 科学の「よさ」
2.2.2 記述と一般化
2.2.3 分類と概念図式
2.2.4 説明と法則
2.2.5 公理主義
2.2.6 定式化と解釈

2.3 実証性と理論の進歩
2.3.1 反証主義
2.3.2 パラダイム論

2.4 開かれた態度
2.4.1 森鴎外の「脚気」と野口英世の「黄熱病」
2.4.2 仮説的な態度

第3章　社会分析の道具としてのゲーム理論
3.1 エスカレーターとゲーム理論

3.2 ゲーム理論の考え方
3.2.1 ゲーム理論の基本枠組み
3.2.2 ナッシュ均衡の求め方

3.3 進化ゲーム理論の考え方
3.3.1 進化の過程
3.3.2 レプリケーター・ダイナミクス
3.3.3 レプリケーター・ダイナミクスと進化的に安定な戦略

3.4 従来ゲーム理論と進化ゲーム理論の関係

第4章　実践としてのシミュレーション―<社会>の理解・記述・創出
4.1 シミュレーションという社会学的行為

4.2 現代のシミュレーションモデルの特徴

4.3 シミュレーションと現代科学
4.3.1 フォン・ノイマンの「コンピュータ」と2つの「ゲーム」
4.3.2 進化ゲームとシミュレーション
4.3.3 遺伝子と進化論
4.3.4 人工生命
4.3.5 人工社会：マルチエージェントとオブジェクト指向
4.3.6 サイバネティックス：オートポイエーシス, 社会システム論

4.4 シミュレーションの正当性について：シミュレーションという実践
4.4.1 シミュレーションモデルの諸問題
4.4.2 科学とは何か
4.4.3 <理解>の技法としてのシミュレーション

4.5 社会の創出とシミュレーション
4.5.1 社会生成の契機としてのシミュレーション
4.5.2 シミュレーションと役割演技：モレノとロールズ

4.6 <現実>のシミュレーション化

第5章　検証のための計量分析
5.1 数理社会学と計量分析

5.2 計量分析と社会学理論

5.3 数理モデルから計量モデルへ

5.4 理論の数理モデル化とその展開, および計量分析

5.5 計量分析と演繹的モデルの独立的進展

5.6 社会学的計量分析の展開可能性

第Ⅱ部　数理モデルから社会へ：事例編
第6章　投票者の勢力と提携形成の数理モデル―投票ゲームによる分析
6.1 社会科学とゲーム理論

6.2 投票ゲームとは何か

6.3 投票者の勢力をどのように捉えるか：パワー指数の定式化

6.4 どのような提携が作られるのか：提携形成モデルの構築

6.5 日本の連合政権形成へのモデル適用

6.6 投票ゲーム研究の広がり

第7章　社会運動の発生と政治的機会構造―ゲーム理論的モデルによる考察と国際比較分析
7.1 社会運動の発生メカニズムの追究

7.2 社会運動の発生と政治的機会構造
7.2.1 政治的機会構造論とその問題点
7.2.2 数理モデルを用いた定式化の意義

7.3 政治的機会構造の分析枠組み

7.4 ゲーム理論的モデルによる分析
7.4.1 モデルの仮定
7.4.2 モデルからの考察

7.5 国際比較データによる分析
7.5.1 予測の導出
7.5.2 変数の操作化
7.5.3 データとの照合

7.6 結語：数理モデルによる分析の成果と課題

第8章　共同体でもなく原子化された個人でもなく―社会的ジレンマにおけるゲームのリンケージと社会関係資本
8.1 コミュニティにおける協力行動
8.1.1 2つの調査
8.1.2 社会的ジレンマと社会関係

8.2 社会関係資本とゲームのリンケージ
8.2.1 市民的積極参加のネットワーク
8.2.2 繰り返し囚人のジレンマにおける戦略と協力の進化
8.2.3 「水利ゲーム」と「共同体ゲーム」のリンケージ

8.3 社会関係のネットワークと社会関係資本
8.3.1 異種―・リンケージとプレイヤー・リンケージ
8.3.2 ネットワークの構造と社会関係資本

8.4 コミュニティの強さ／弱さ

8.5 社会的ジレンマにおける「中間集団」の位置

第9章　繰り返しゲームによる所得分布の生成
9.1 「お金持ち」は少ない

9.2 ベースライン・モデル：投資ゲーム

9.3 ゲームの反復による正規分布の導出
9.3.1 反復投資ゲームの数学的構造；1／(R＋1)＜γ≦1の場合
9.3.2 反復投資ゲームの数学的構造：0≦γ≦1／(R＋1)の場合

9.4 対数正規分布の導出：累積効果を考慮したモデル

9.5 反復投資ゲームに関する今後の課題

第10章　これから始めなければいけないこと
10.1 抽象化と具体化

10.2 モデルと現実

10.3 事例編について
10.3.1 投票者の勢力と提携形成の数理モデル：第6章
10.3.2 社会運動の発生と政治的機会構造：第7章
10.3.3 共同体でもなく原子化された個人でもなく：第8章
10.3.4 繰り返しゲームによる所得分布の生成：第9章

10.4 数理社会学シリーズのめざすもの

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