「はあはあ…」
リョーコの荒い息遣いが部屋に響く。先程までの部屋の中での行為の激しさを物語るようだ。



その一時間ほど前−
リョーコは仕事を終えて部屋に帰り外に干していた下着を取り込もうとしたところ、一枚残らず無くなっていた。
その上、部屋のクローゼットに仕舞いこんでいたSMプレーの道具も全部無くなっていた。
この状況で考えられるのは、下着ドロの侵入である。リョーコはこれから取るべき行動について相談するのだろう、
早速セイジに電話を掛けた。

しばらくしてセイジがリョーコの部屋にやってくると、
「セイジ、アンタに聞きたいんだけどさ」
セイジを呼び出してこれからとるべき行動を相談するのかと思いきや、
「私の下着、それにSMプレーの道具どこにやった?今帰ってきたら無くなってるのよ」
「…おい、それって泥棒が入ったんじゃないのか?」
「泥棒ってアンタの事だろ!」
「まるで俺が下着と道具を盗んだような言い方だな」
「アンタならやりそうだからよ、大方どこかの店で売払ったんだろ?」
リョーコにとっての泥棒とはこの場合セイジの事であるらしい。もっとも、


金を借りてまでイメクラに行った
外国人ホステスに入れあげた
ストリップ劇場で本番ショー(これはリョーコにはばれていないが)
留守の間にデリヘルを呼んだ


といった今までの行動を考えると全く信用されないのも当たり前であるが。


セイジはなおも否定するが、リョーコは構わず続ける。
「そしてその金で風俗に行って来たんだろ?」
「ななな、何言ってるんだ!?」
「ちょっと財布の中身見せてみろ!」
リョーコはセイジから強引に財布を奪い取ると、中身を取り出しひとつひとつ調べていった。すると、
「おい、これは何だ?」
風俗店のポイントカードが出てきた。給料が入ったと同時に通いつめたのであろう。そこには最近の日付で
ズラッとスタンプが押してあり、しかも今日の日付のスタンプも押してある。
「やっぱりな…」
呆れたように首を横に振りながらリョーコは金をポケットに仕舞いこんだ。
「おい、勝手に仕舞うなよ。そんなに金にならなかったんだぞ!」
「ってやっぱりお前の仕業だったんだな」
全く愚かである。セイジは勝手にしゃべってしまったのである。あわてて口を塞いだがもう遅い。
リョーコは息を大きく吸い込むと、
「テメエ、ふざけた事ばっかりやってんじゃねえぞ!」
リョーコのパンチがセイジの顔に命中した。それからしばらくリョーコは血相を変えながら
一方的にセイジに襲いかかった。
「うおおおおお!!!」
「い、痛い、待て、落ち着け、リョーコ!」
セイジは必死になだめようとするが、リョーコの容赦ない攻撃に鼻血を流すやら、目のまわりには
アザが出来るやらである。


「はあはあ…」
冒頭のシーンの通り、リョーコの荒い息遣いが部屋に響く。もちろん、これは喘ぎ声ではない。



今度ばかりはリョーコの怒りは収まらなかった。セイジから自分の部屋の合鍵を取り上げて追い出すと、
念のためにすぐに鍵屋を呼んで鍵を付け替えた。


「ふん、アンタがその気なら私だって…」
セイジに負けてなるものかといわんばかりに携帯の出会い系サイトにアクセスした。
もうこうなったら別れた方がいいような気がするのだが。



最後に、セイジの学校では同僚や生徒が、
「最近の豊田先生って見るたびに様子が変わっていくよね」
と噂し合っていた。


 第五話 おわり

おかしな二人 第六話 NOISY

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