さて、次の週の金曜日。舞台は再びマサヒコの部屋。今日はお楽しみの日である。先に
服を脱ぎベッドに腰掛けながら、ミサキが脱ぐのを見つめるマサヒコ。この先の快楽への
期待に胸躍りながらも、背徳感がぬぐいきれない。
「(ミサキとしたいのはやまやまだし、本当は毎日でもできたら、なんて考えたりもするけ
どいいもんかな。何というかミサキを自分のオモチャにしちゃってるんじゃないかという
か、汚してしまってるというか。どうにかもっと健全な生活を・・・、けど今日もミサキ
の裸はきれいだな。いいよな)」
などと性的なことに対して不道徳という思いが抜けていないあたり心身ともに健全と言え
るだろう。これが無くなるのを「中村化」という。例えば、彼女は「貞操」という言葉を
本当に忘れていたりする。
 全裸になったミサキ。整った顔、滑らかな全身の肌、全身を形どる初々しくも官能的な
緩やかな曲線美。そんな彼女に顔を見つめられ、マサヒコの下半身の物がいつでも使える
くらいに硬くなる。これから淫らで充実した時間が始まる、そう思いながらマサヒコは腰
を上げミサキを抱きとめようとする、が。
「マサちゃん、あのね・・・」
 このタイミングでミサキが声をかけてくるのは珍しい。いつもならマサヒコの腕に包ま
れながらベッドに共に横たわり、そのままマサヒコの愛撫を受けて艶めかしい声を上げる
のだが。ミサキはマサヒコの顔を見つめたまま続ける。
「今日はね、私ね、えと、あのね」
「どうした?」
 何かおかしい。顔を少し赤らめつつも、ミサキは何か決意したような強さを感じさせる
表情をしている。ゴクリと唾を飲み込んで、ミサキは言葉を継いだ。
「私・・・、いままでマサちゃんにばっかり頑張らせてた。ゴメンね」
「?なんだ」
 自分が特別なことをしてきたつもりのないマサヒコには意味がわからない。
「だからね、今日からは私も」
 やや強張っていたようなミサキの表情は緩む。新たに見せた表情はマサヒコを一層混乱
させる。これまで見たことのない表情。いや、マサヒコはこのような女性の表情を直視す
るのは初めてだろう。
「もっと、マサちゃんのために頑張るから」
 微笑み、とも違う。軽く弛緩したような表情。そしてうるんだような視線はマサヒコの
目から逸らさない。ミサキが歩をすすめ、マサヒコの体に両手を触れる。
 動揺し、なぜか圧倒されるマサヒコ。まるでミサキが別の生き物のようだ。ミサキの雰
囲気に飲まれ、マサヒコは今にも行為に及ぼうという気が減退した。にも関わらず、下半
身が更に堅く暴発しそうになっているのは何故だろう。
 マサヒコが初めて見た女の顔、それは「淫靡」とでも表現すべきものだった。二人の立
場は逆転し、まるで娼婦とそれになすがままになる童のようだった。



 ミサキはマサヒコの体に当てていた両手を這うように上昇させ、マサヒコの顔を抑える。
普段なら似たようなことをするのはマサヒコの方だ。自分がやられて気持ちのいいことを
相手にもするという基本からミサキは行っていった。
 マサヒコの方は、触れるだけでも気持ちのいいミサキの肌が自分の体をねっとりと動く。
それがぞっと、冷やっとするように思われるとともに、このままいつまでも続いてほしい
ほど心地よい。
 マサヒコの顔を抑えつけた後は、唇を自分の唇で塞ぐ。口付けの後は互いに言葉は要ら
ない。ただ、いつもよりはるかに強く、貪るようにミサキは舌を動かし、激しく動いた。
ミサキを抱きとめるマサヒコの両腕にもどんどん力が入っていく。このままいけばいつも
通りベッドにミサキを横たえるのだが、そのタイミングを見計らっていたかのようにミサ
キは唇をずらす。
 肩透かしを食ったマサヒコ。だが、その時新たな快感がマサヒコを襲う。ミサキの舌の
動きは止まらない。さきほどより小さく、だが細かく丁寧に舌を動かし、マサヒコの顎の
あたりを舐めまわす。そのままゆっくりと下に下がっていく。首筋、鎖骨、胸。これも普
段マサヒコがやっている動きを上下逆にしたものなのだが、マサヒコはミサキの舌を肌で
感じたことはない。体のどんな部分よりも柔らかく、ねっとりとして細やかに動くその舌
が、自分の肌を味わうように、その熱で溶かしてしまうかのように動くのを感じて、マサ
ヒコは舌の這う部分からどうしようもないほどの熱を感じ、思わず声を漏らした。
 そして、ミサキは本当にマサヒコの肌を味わっていた。人間の肌は常に汗を流している。
だからマサヒコの肌はわずかに塩っ辛い。舌の鋭敏な感覚は指先でも感じとれないわずか
な凹凸、ざらつきすら察するようで、ミサキは恋人の新たな面を知ったようで歓喜し、股
間が一層熱く、じっとりとしてくるのを感じた。
 もう、このまま行為に及びたい、マサちゃんにおもちゃのようにかわいがってもらいた
い、そんな気持ちが溢れ出るも、ミサキは自分が今しようとしていることを考え、自制す
る。まだ終点には来ていない。


 ミサキの舌がマサヒコの臍の上に達する。今のミサキは立ち膝になる直前だ。新しい快
楽にうっとりとしていたマサヒコは、臍まできたミサキの動きがまだ止まらないことにハ
ッとする。
「ミサキ、ちょっと!」
 ミサキは立ち膝。その口はマサヒコの陰毛に当てられていた。とっさにマサヒコは両手
でミサキの頭をつかみ、自分から?そうとする。しかし、しがみつくミサキの腕の力と、
上目遣いの目線はマサヒコではどうにもできないような強さを感じさせたため、マサヒコ
の手に力は入らない。
「ねえ、マサちゃん」
 ミサキが今まで以上に淫靡な顔で微笑む。その美しさに思わず唾をゴクリと飲みこむマ
サヒコ。
「今日は私がいっぱいご奉仕するからじっとしててね」
 そういう間にミサキの右手は股間の肉棒に添えられていた。一瞬ヒヤッと、じきにミサ
キの体温がマサヒコの物に伝わってくる。そしてミサキは形のいい口をゆっくりと開く。
美しいミサキの顔が、自分の醜い欲望の象徴に接近しつつある。
「ちょ、ミサキ!」
 ミサキは舌を伸ばして、既にわずかな涎を垂らす亀の頭に触れさせた。マサヒコの体に
電撃が走る。肉体的な快楽と、ミサキが行っている行為に対しての精神的ショックとの2
重の電撃が。
 ミサキはマサヒコの先走りの味を味蕾で感じれたことに生理的嫌悪を一瞬感じた。だが、
それは自分で選んだ道。その嫌悪感は一瞬で自分の行為に対する恥じらいとともに消え、
完全に壁の取り払われたミサキは愛する人の分身を、歓喜と欲望を全開にしながら咥え込
んだ。
「う、わっ」
 軽い衝撃を伴う快感により、マサヒコが体を大きく反らせながら情けない声を出した。
視線を下に戻すと、ミサキの口が自分の物をすっぽり包んでいる。マサヒコにしてみれば、
その器官は生殖器である以前に排泄器官である。そんな汚物に近い存在をミサキが加えて
いるなんて。そんな現実とは思えないショックを受けていたが、

ベロリ


 マサヒコの茎の根元から中ほどあたりを何かが這いまわる。この柔らかさはついさっき
感じたばかりだ。いうまでもない、ミサキの舌だ。だとすると、自分の先端が今、触れて
いるのは・・・。
 今更ながらマサヒコの性器に感覚が戻ったようだ。本来男性随一の性感帯である。感覚
を取り戻すと、それはこれまでにない領域にあった。
 ミサキの膣の奥とは別の粘膜。かなり固い肉で出来ているようだ。ミサキが舌を動かす
とともに、竿は上下し、粘膜のあちこちに衝突する。粘膜のじっとり感と肉の固さとが、
正規のセックスとは違う快感を及ぼした。
「(ヤバイ!今もし出ちゃったら!)」
 お気づきのとおり、マサヒコの先端はミサキの喉、いわゆるのどちんこの辺りまで達し
ている。今、精を放出すると、ミサキの器官に入り込みかねない。かといって、ミサキに
腕と口とでしっかりと抑え込まれている状態では自分から動くこともできず、マサヒコは
じっと快楽を耐え続けることしかできなかった。
 ミサキは、マサヒコの分身をしっかりと味わっていた。これまで自分に気が狂わんばか
りの快楽を与えてきたこの肉塊。その形を唇で舌で頬で喉で歯で感じ取る。自分の記憶に
マサヒコ像がはっきりと刻みこまれるような心地だ。
「(ああ、マサちゃんが感じてる!!)」
 肉棒の脈が口腔内全体に響く。今にも暴れ出しそうだ。自分はこんなにマサちゃんに尽
くせている、とミサキは喜びで震えた。もっと積極的に、丁寧にと思い、口を前後に動か
すことにした。舌は茎を巻きつくようにして舐めまわしている。それが徐々に先端の方に
動く。やや細くなってきて(そして、同時にマサヒコの脈動も激しくなってきたように感
じた)、そして突起部に至る。ここから先がいわゆる亀頭・鈴口と呼ばれる場所だ、という
ことを思い出してミサキは中村の教え通りの動きをする。いわゆる、裏筋を舐めるという
やつだ。

「う、あああ!」
 耐えていたマサヒコが思わず声を漏らす。自分の体のことなのに、勃起した状態ではこ
の場所がこんなに弱いなんて。泣き出しそうな気分になりながらもマサヒコは必死に耐え
続けた。
 しっかり勉強してきたミサキは攻めの手を緩めない。裏筋の亀頭につながる部分を執拗
に攻めた後、わざと亀頭に歯を当てて甘噛みする。マサヒコがまた声を漏らす。次はこの
可愛らしい鈴を飴玉に対してするように舐めまわす。舌で触れてみると、亀頭というだけ
あって、ミサキはどんどんこの場所が可愛らしく思えてきた。愛しい愛しいマサちゃんの
亀ちゃん。
 わざと尿道を塞ぐように舌先を当ててくすぐった後、不意をついてまた大きく咥え込む。
先端部の刺激に必死に耐えていたマサヒコは茎の中ほどに唇が触れたことでまた深くにも
声を出す。
 マサヒコの脈があり得ないほど速くなってきた。一物の固さ、反り返りも一層立派にな
ったように感じられる。ミサキはそろそろ終わりに近付いてきたのを察し、舌の動きをゆ
っくり、優しいものに変化させた。
「ミサキ!もうやめろ!だめだ、出る!」
「らふぃて、マファふぁん!!(出して、マサちゃん!!)」
「っああ!!」
 マサヒコがついに放出した。ミサキの口の中に生温かいドロリとした液が勢いよくぶち
まけられる。それは舌にあたるも勢いは止まらず、器官にもわずかに入り込みかけたよう
だ。味蕾にはその液の苦味、えぐ味とでもいうべきものが伝わってきた。


 マサヒコの分身は射精により固さを失っていった。名残惜しそうに、口からゆっくりと
だすミサキ。できるかぎりマサヒコの大事な性を吸い取るようにしながら。
 マサヒコの方はとんでもないことをしてしまった、と放心気味だ。自分に堪え性がない
ばっかりに、ミサキの中に汚物、と言っては言い過ぎだが、感覚的にはそれに近いものを
放出してしまった罪悪感を感じて。
 ミサキは目線を上にやる。下を向いていたマサヒコと目が合った。なんだか、疲れたよ
うなマサヒコの顔。
「(初めてだもの、ショックを受けても仕方ないよね)」
 今のマサヒコはある意味、恋人に性的虐待を受けたような気分かもしれない。同じ初め
てでも、1週間以上準備してきた自分といきなりだったマサヒコとでは心構えが違う。
「(でも、大丈夫)」
 最後にはマサちゃんもきっと満足してくれる。夜はまだまだこれからだもの。
 ミサキの口の中にはまだ精液がため込まれている。マサヒコの大事な子種。人間、体が
欲するものはおいしく感じるものだが、これもミサキにとっては何よりの美味に思えた。
本来なら、子宮で受け止めて、そして2人で新たな命を育むための種子。けれど、若すぎ
る自分たちにはまだそれをするだけの準備が整ってない。いつも、性交の後にゴムに包ま
れたまま処分されていく我が子の可能性達を見送っていた。
「(だから、いまはせめて・・・)」
 子宮で受け止めることはできないけれど、せめて体で受け入れたい。そう思いながら。

ゴクリ

 ミサキはマサヒコの精を飲みほした。


No title濱中:傍観者氏3

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