最終更新:ID:yVHCG4VueQ 2018年03月06日(火) 01:07:08履歴
登場キャラクター:リープ・シープ ドルイド・ミステール
料理なんてものはレシピさえあれば誰にでもできる、と思うのは普段から自分が料理をしているからだろうか。
包丁やフライパンなどの扱いにテクニックは要求されるだろうが、レシピ通りに作れば基本的にはちゃんとしたものが出来上がるはずだ。
それでも料理ができない、とか失敗する、という人は大体───
「せっかく魔法少女になって作るのですから、こう…マジカルな要素がほしいですよね」
「そこ!そういうマジカルな思考が料理をダメにするんだよ!」
【White & Brown】
リープ・シープがドルイド・ミステールに呼び出されたのは夜中になってからだった。
今夜は魔法少女としての活動は休みのはずだったが、可愛い後輩の頼みである。
リープ・シープは重い腰を上げ、ミステールの家へと向かった。
「シープって料理できるって言ってましたよね?」
到着して早々に通されたのは、一般家庭ではお目にかかれないような広いキッチンだった。
「そうだけど…残念ながらお菓子作りの経験はないよ」
「そ、そうなのですか…あれ!?私まだ何も言ってないですよね!?」
予想通りのリアクションだ。
現在の日付は2月13日。
更に料理の話を出されたら、彼女の目的が明日のバレンタインデーのチョコレート作りであることは予想できる。
長らく病床にいた彼女にそう言った経験はなく、かつ渡す相手・頼る相手を考えると自分に手伝いを求めるのが自然である。
「せっかく魔法少女になって自由に動けるようになったのですから、お世話になっている方々に手作りのチョコレートをお渡ししたいのです。ほら、今は"友チョコ"というものもあるのでしょう?本来なら私一人で作るべきなのですが…」
自分を頼るという判断は間違っていないが、もう少し早く相談してほしいものだ。
ということをミステールに言うと、
「わ、私にも色々と葛藤があったのです!」
とのことだった。
「…で、材料はちゃんと用意しているんだろうね?さすがに何もないところから作り出すことはできないよ?」
「そこは問題ありません!いろいろ買ってきてもらっています!」
そう言って並べられたのは、見ただけで高級だとわかるチョコレートだった。
「…もっとプレーンなチョコはないのかい?そのまま渡した方が喜ばれるんじゃないかこれ…」
「材料はいいものを使った方がいいと思ったので…」
このような完成されたものは手作りチョコの材料には向いていないし、そもそも材料にするのも恐れ多い。
ミステールには製菓用のチョコレートを探してきてもらった。
「これを溶かしてから、型に入れて固めるのですよね?…でもやっぱり何か工夫がほしいところです」
「まあ、それについては僕も同意見かな」
個人的には溶かして固めただけのものを手作りとは呼びたくない。
とはいえお菓子作りの経験がない自分には、工夫と言ってもぱっと出てこない。
「そうでしょう?やっぱりどうにかしてマジカルチョコレートを…」
「マジカルはもういいって!葉っぱでも入れるつもりなのかい?」
「もう!馬鹿にして!…あ、ハーブを入れるなんてどうでしょう?チョコミントとかありますし」
「うーん…刻んで入れるか?いや、煮詰めた方がよさそうだな…まあ、できなくはないと思うけど…」
「本当ですか!?では、私の温室から摘んできますね!」
そう言うとミステールは嬉しそうにキッチンを飛び出して行った。
彼女は植物を操る魔法少女だ。
マジカルな要素ではないにしろ、彼女らしさを出すことはできるだろう。
ミステールが材料を取りに行っている間、ネットでレシピを調べてみる。
ガトーショコラ、ブラウニー、フォンダンショコラ…なるほど、手作りチョコと言っても色々作れるらしい。
中々面白そうだが、残念ながら今はあまり手間のかかりそうなものは作れない。
「…よし、これにしようか」
レシピが決まったところで、ミステールが戻ってきた。
「摘んできましたよ!こっちがミントで、こっちのお花はカモミールです。リンゴのような香りがして、リラックス効果があるんですよ」
確かに彼女の持つ白い花からは甘い香りが漂ってくる。
「さて、材料はそろった。始めようか」
「はい!頑張ります!」
───
「まずは材料のチョコを細かく刻んでボウルに入れる」
「はいっ!」
量を作るのならば結構手間な作業だが、魔法少女の力なら問題ない。
「次、生クリームを火にかける。ミントとカモミールをそれぞれ加えて煮詰める」
「は、はいっ!2種類同時は忙しいです…!」
まあ、片方の状態ぐらいは見ておいてあげよう。
「で、これを濾しながら刻んでおいたチョコに加えて、混ぜながら溶かしていく」
「はっ!これはもしや生チョコというやつでは!?本格的です…!」
本格的かどうかはわからないが、これだけ手を加えれば手作りを名乗ってもいいだろう。
「チョコが完全に溶けたら、後は冷やして固めれば完成だよ」
「どうでしょう…上手くできたでしょうか…?」
「初めてにしては上出来なんじゃないかな?…よし、こっちも完成」
「ええっ!?シープも作っていたのですか!?いつの間に…」
「君が失敗したときのバックアップ用さ。…冗談だよ、そんな顔しないでくれ」
作ったのはホワイトチョコレートを使った同じく生チョコ。
ハーブを使ってない分、ミステールのよりは簡単だ。
「もう…!」
むくれたミステールと一緒に作ったチョコレートを冷蔵庫まで持って行く。
とにかく、無事問題なく終わりそうで一安心だ。
───
「ところで、シープは誰にチョコレートをあげるのですか?」
チョコが固まるまでの間ミステールと話していたら、そんなことを聞かれる。
「そうだね…僕の大切な人、かな」
「や、やはり恋人なのですか!?どんな方なのでしょう!?」
やっぱり女の子としてはその手の話は興味があるのだろうか。
まあ、残念ながら自分にそんな人はいない。
「残念でした、母親だよ」
「な、なるほど…お母様でしたか。あれ?そこは普通お父様では?」
「僕にバレンタインのチョコをくれてやるような父親はいなくてね」
「お父様のこと、嫌いなのですか?ダメですよ、家族とは仲良くしないと!」
「…君のところはどうなんだい?」
「私は二人とも大好きですよ!せっかくなので両親の分も作りました!あ、でもどうやって渡しましょう…」
彼女の性格を見ればわかる。父親も、母親も、きっと良い親に育てられたのだろう。
それは少しだけ、羨ましくもあった。
───
さて、そろそろいい頃合いだ。
冷やしていたチョコを取り出し、正方形にカットする。
最後に箱に入れ、ラッピングをすれば完成だ。
「出来ました!ああ、こんなに素敵なものが作れるなんて…、これもシープのおかげです」
「僕はちょっと口出ししただけだよ。さ、後は渡すだけだね」
「そうですね。それでは…」
可愛くラッピングされた、できたばかりのバレンタインチョコが手渡される。
「ハッピーバレンタイン…です」
壁の時計を見ると、いつの間にか日付が変わっていた。
「…僕にかい?」
「当たり前です!私が一番お世話になっているのはシープなのですから!…だから本当は自分一人で作りたかったのです」
なるほど。彼女の言っていた葛藤とはこのことか。
彼女が自分に渡すことを想定していなかったわけではないが、真っ先に渡すのは別の相手だと思っていた。
「…そっか、ありがとう、ミステール。それじゃあ、僕からはこれを」
「いいのですか…?手伝ってもらった上に…」
「構わないさ。それに、こういうのがしたかったんだろう?」
「…はいっ!ありがとうございます、シープ。大事にいただきますね!」
そう言った彼女の顔を見ると、手伝って良かったと思うことができた。
「ねえ、一緒に食べませんか?」
「ん、そうだね。せっかく作ったんだし」
箱を開け、正方形のチョコレートを一つ取り出す。
白と茶色のチョコレートをそれぞれ同時に口に入れる。
リンゴのような香りと共に、甘味が口の中に広がっていく。
どうやらカモミールのチョコレートのようだ。
いい出来じゃないか。まあ、僕が監修したんだ、そうでないと困る。
ミステールの方も、美味しそうにチョコを頬張っている。
ふと、彼女と視線が合った。
「ねえ、シープ…これからも、一緒にいてくださいね?」
【White & Brown】 終わり
「さあ、他の方にもお渡しする準備をしないと…。ウルフファングさんに、スッピーちゃんに、カトリーヌさんに…」
「あの犬猫コンビか…あ、そういえば…」
「どうしました?」
「確か動物にチョコってダメなんだよね?魔法少女とはいえ元動物にあげてもいいのかな?」
「…!!」
「ウルフファングの奴も変身解いたらオオカミになったりして…なーんて。あれ?ミステール?」
「…ク」
「く?」
「クッキー!クッキーを作りましょう!!それなら大丈夫なはずです!!」
「…羊が一匹羊が二匹羊が三匹!!!」
「に、逃げないでくださいシープ!ああっ、眠気が…!」
料理なんてものはレシピさえあれば誰にでもできる、と思うのは普段から自分が料理をしているからだろうか。
包丁やフライパンなどの扱いにテクニックは要求されるだろうが、レシピ通りに作れば基本的にはちゃんとしたものが出来上がるはずだ。
それでも料理ができない、とか失敗する、という人は大体───
「せっかく魔法少女になって作るのですから、こう…マジカルな要素がほしいですよね」
「そこ!そういうマジカルな思考が料理をダメにするんだよ!」
【White & Brown】
リープ・シープがドルイド・ミステールに呼び出されたのは夜中になってからだった。
今夜は魔法少女としての活動は休みのはずだったが、可愛い後輩の頼みである。
リープ・シープは重い腰を上げ、ミステールの家へと向かった。
「シープって料理できるって言ってましたよね?」
到着して早々に通されたのは、一般家庭ではお目にかかれないような広いキッチンだった。
「そうだけど…残念ながらお菓子作りの経験はないよ」
「そ、そうなのですか…あれ!?私まだ何も言ってないですよね!?」
予想通りのリアクションだ。
現在の日付は2月13日。
更に料理の話を出されたら、彼女の目的が明日のバレンタインデーのチョコレート作りであることは予想できる。
長らく病床にいた彼女にそう言った経験はなく、かつ渡す相手・頼る相手を考えると自分に手伝いを求めるのが自然である。
「せっかく魔法少女になって自由に動けるようになったのですから、お世話になっている方々に手作りのチョコレートをお渡ししたいのです。ほら、今は"友チョコ"というものもあるのでしょう?本来なら私一人で作るべきなのですが…」
自分を頼るという判断は間違っていないが、もう少し早く相談してほしいものだ。
ということをミステールに言うと、
「わ、私にも色々と葛藤があったのです!」
とのことだった。
「…で、材料はちゃんと用意しているんだろうね?さすがに何もないところから作り出すことはできないよ?」
「そこは問題ありません!いろいろ買ってきてもらっています!」
そう言って並べられたのは、見ただけで高級だとわかるチョコレートだった。
「…もっとプレーンなチョコはないのかい?そのまま渡した方が喜ばれるんじゃないかこれ…」
「材料はいいものを使った方がいいと思ったので…」
このような完成されたものは手作りチョコの材料には向いていないし、そもそも材料にするのも恐れ多い。
ミステールには製菓用のチョコレートを探してきてもらった。
「これを溶かしてから、型に入れて固めるのですよね?…でもやっぱり何か工夫がほしいところです」
「まあ、それについては僕も同意見かな」
個人的には溶かして固めただけのものを手作りとは呼びたくない。
とはいえお菓子作りの経験がない自分には、工夫と言ってもぱっと出てこない。
「そうでしょう?やっぱりどうにかしてマジカルチョコレートを…」
「マジカルはもういいって!葉っぱでも入れるつもりなのかい?」
「もう!馬鹿にして!…あ、ハーブを入れるなんてどうでしょう?チョコミントとかありますし」
「うーん…刻んで入れるか?いや、煮詰めた方がよさそうだな…まあ、できなくはないと思うけど…」
「本当ですか!?では、私の温室から摘んできますね!」
そう言うとミステールは嬉しそうにキッチンを飛び出して行った。
彼女は植物を操る魔法少女だ。
マジカルな要素ではないにしろ、彼女らしさを出すことはできるだろう。
ミステールが材料を取りに行っている間、ネットでレシピを調べてみる。
ガトーショコラ、ブラウニー、フォンダンショコラ…なるほど、手作りチョコと言っても色々作れるらしい。
中々面白そうだが、残念ながら今はあまり手間のかかりそうなものは作れない。
「…よし、これにしようか」
レシピが決まったところで、ミステールが戻ってきた。
「摘んできましたよ!こっちがミントで、こっちのお花はカモミールです。リンゴのような香りがして、リラックス効果があるんですよ」
確かに彼女の持つ白い花からは甘い香りが漂ってくる。
「さて、材料はそろった。始めようか」
「はい!頑張ります!」
───
「まずは材料のチョコを細かく刻んでボウルに入れる」
「はいっ!」
量を作るのならば結構手間な作業だが、魔法少女の力なら問題ない。
「次、生クリームを火にかける。ミントとカモミールをそれぞれ加えて煮詰める」
「は、はいっ!2種類同時は忙しいです…!」
まあ、片方の状態ぐらいは見ておいてあげよう。
「で、これを濾しながら刻んでおいたチョコに加えて、混ぜながら溶かしていく」
「はっ!これはもしや生チョコというやつでは!?本格的です…!」
本格的かどうかはわからないが、これだけ手を加えれば手作りを名乗ってもいいだろう。
「チョコが完全に溶けたら、後は冷やして固めれば完成だよ」
「どうでしょう…上手くできたでしょうか…?」
「初めてにしては上出来なんじゃないかな?…よし、こっちも完成」
「ええっ!?シープも作っていたのですか!?いつの間に…」
「君が失敗したときのバックアップ用さ。…冗談だよ、そんな顔しないでくれ」
作ったのはホワイトチョコレートを使った同じく生チョコ。
ハーブを使ってない分、ミステールのよりは簡単だ。
「もう…!」
むくれたミステールと一緒に作ったチョコレートを冷蔵庫まで持って行く。
とにかく、無事問題なく終わりそうで一安心だ。
───
「ところで、シープは誰にチョコレートをあげるのですか?」
チョコが固まるまでの間ミステールと話していたら、そんなことを聞かれる。
「そうだね…僕の大切な人、かな」
「や、やはり恋人なのですか!?どんな方なのでしょう!?」
やっぱり女の子としてはその手の話は興味があるのだろうか。
まあ、残念ながら自分にそんな人はいない。
「残念でした、母親だよ」
「な、なるほど…お母様でしたか。あれ?そこは普通お父様では?」
「僕にバレンタインのチョコをくれてやるような父親はいなくてね」
「お父様のこと、嫌いなのですか?ダメですよ、家族とは仲良くしないと!」
「…君のところはどうなんだい?」
「私は二人とも大好きですよ!せっかくなので両親の分も作りました!あ、でもどうやって渡しましょう…」
彼女の性格を見ればわかる。父親も、母親も、きっと良い親に育てられたのだろう。
それは少しだけ、羨ましくもあった。
───
さて、そろそろいい頃合いだ。
冷やしていたチョコを取り出し、正方形にカットする。
最後に箱に入れ、ラッピングをすれば完成だ。
「出来ました!ああ、こんなに素敵なものが作れるなんて…、これもシープのおかげです」
「僕はちょっと口出ししただけだよ。さ、後は渡すだけだね」
「そうですね。それでは…」
可愛くラッピングされた、できたばかりのバレンタインチョコが手渡される。
「ハッピーバレンタイン…です」
壁の時計を見ると、いつの間にか日付が変わっていた。
「…僕にかい?」
「当たり前です!私が一番お世話になっているのはシープなのですから!…だから本当は自分一人で作りたかったのです」
なるほど。彼女の言っていた葛藤とはこのことか。
彼女が自分に渡すことを想定していなかったわけではないが、真っ先に渡すのは別の相手だと思っていた。
「…そっか、ありがとう、ミステール。それじゃあ、僕からはこれを」
「いいのですか…?手伝ってもらった上に…」
「構わないさ。それに、こういうのがしたかったんだろう?」
「…はいっ!ありがとうございます、シープ。大事にいただきますね!」
そう言った彼女の顔を見ると、手伝って良かったと思うことができた。
「ねえ、一緒に食べませんか?」
「ん、そうだね。せっかく作ったんだし」
箱を開け、正方形のチョコレートを一つ取り出す。
白と茶色のチョコレートをそれぞれ同時に口に入れる。
リンゴのような香りと共に、甘味が口の中に広がっていく。
どうやらカモミールのチョコレートのようだ。
いい出来じゃないか。まあ、僕が監修したんだ、そうでないと困る。
ミステールの方も、美味しそうにチョコを頬張っている。
ふと、彼女と視線が合った。
「ねえ、シープ…これからも、一緒にいてくださいね?」
【White & Brown】 終わり
「さあ、他の方にもお渡しする準備をしないと…。ウルフファングさんに、スッピーちゃんに、カトリーヌさんに…」
「あの犬猫コンビか…あ、そういえば…」
「どうしました?」
「確か動物にチョコってダメなんだよね?魔法少女とはいえ元動物にあげてもいいのかな?」
「…!!」
「ウルフファングの奴も変身解いたらオオカミになったりして…なーんて。あれ?ミステール?」
「…ク」
「く?」
「クッキー!クッキーを作りましょう!!それなら大丈夫なはずです!!」
「…羊が一匹羊が二匹羊が三匹!!!」
「に、逃げないでくださいシープ!ああっ、眠気が…!」
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