本名：段延慶（だん・えんけい）
別名：悪貫満盈（あくがんまんえい）
武功：一陽指
家族：妻・刀白鳳（正室ではない）、子・段誉
登場作品：『天龍八部』
　
　口を動かさずに内功を駆使した腹話術で語り、ざんばら髪をし片足をいつも引きずり歩くこの醜い男を見て、誰が大理の皇族であると思うだろうか？　かつて彼は皇族として豊かな暮らしを送っていた。だが、段正明と段正淳兄弟のクーデターによってその地位を剥奪されたのである。物乞いにまで身を落とした彼は復讐を誓い、三人の悪人を率いて大理皇族に仇為さんと奔走する。

　慕容復と手を組み彼はとうとう憎き段正淳・段誉を虜とすることに成功する。段誉を殺すことを躊躇した南海鰐神を屠りその脳髄を砕かんと杖を振り上げたその時、女の声が彼を押しとどめた。
　声の主は刀白鳳、段正淳の妃であった。彼女は高く結い上げた黒髪をハラリと下ろし潤んだ目であの日のことを語りかけてきた。

　物乞いにまで身を落とした段延慶が木の下で座っていると、観音菩薩のような女が黒髪を乱しこちらに歩み寄ってきた。妖しい笑みを浮かべた女は彼にしなだりかかり、その玉の肌に垢がつくのもものともしないで、熱い肉を段延慶の体に押しつけてきた。闇の中で二人の影はひとつになり、やがて女は去っていった。

「情けを交わした女の子だから許せというのか」　
　冷ややかに彼がそう言うと女は首を横に振る。
「その子の首にある誕生日が書かれた守り札をご覧になって」
　震える指で段延慶がそれを確かめ日数を数えた。そして彼は段誉こそ我が子であると悟ったのだ。慕容復は眦を吊り上げて段誉を殺そうとするが、段延慶にその気はもうなかった。天涯孤独の身の上と思っていた自分に美しく才能に満ちた子がいる。しかもその子は遠からず帝位に就くのだ。彼にはもう思い残すことなどなかった。争乱と血に背を向けて彼は江湖を去っていった。

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本名：葉二娘（よう・じじょう）
別名：無悪不作（むあくふさく）
武功：？？？
家族：夫・玄慈方丈、子・虚竹
登場作品：『天龍八部』
　
　彼女は江湖の鬼子母神ともいうべき悪人であった。
　掠ってきた赤子をその胸に抱き、柔らかな頬をうっとりと眺めている彼女の目は、やがてギリギリとつり上がり狂気を帯びていく。
「かわいい坊や、ほんにかわいい赤ん坊だねぇ。あんまりにもかわいいから、お母さんはおまえを殺したくなるのだよ！」
　彼女は赤子を掴むと岩に放り投げて頭蓋を砕く。こうしたことを毎日、毎日繰り返すのだ。

　彼女とで若い娘のころから鬼女であったわけではない。愛しい我が子を奪われてから、その子と同じ年頃の子を見ると血が逆流するような思いにとらわれるようになったのだ。赤子を捕らえて殺せばその昂ぶりはおさまるが、一日もしないうちにまたギリギリと狂気が脳裏をしめつけてくる。彼女は悲しい鬼女であった。

　そんな彼女は仲間と赴いた少林寺で思いがけぬ出来事に遭遇する。裸になった逞しい青年僧・虚竹の背中に火傷のあとを見たのだ。明らかに人為的につけたと思われるそのあとを見て彼女は叫んだ。
「せがれや！　私の愛しいせがれ！」
　今から二十四年前、我が子の背中と尻につけた火傷のあとを彼女は忘れていなかったのだ。しかし、その時謎の覆面男が彼女にこう言った。
「葉二娘よ、そやつは確かにうぬの子じゃ。そしてうぬを孕ませた父もこの場におるはずじゃな」
　この子の父は玄慈方丈であった。高僧である玄慈方丈が淫戒を破ったとあればただで済むはずがない。彼女は必死で否定するが、ついに玄慈方丈は自ら淫戒を犯したと名乗り出、懲罰の棒で打たれて息絶えてしまう。
　夢にまで見た恋人と我が子との再会は一瞬にして悪夢に転じた。彼女は愛する人の屍を見届けると剣を掴んで己の喉を切り裂き息絶えた。

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本名：南海鰐神（なんかいがくしん）
別名：凶神悪煞（きょうしんあくさつ）、岳老三（がく・ろうさん）
武功：？？？
師匠：段誉
家族：？？？
登場作品：『天龍八部』

　南海鰐神は武功はまあまあ強いほうかもしれないが、どうしようもなく人がよかった。口の回る段誉に言いくるめられ、師匠であると思いこまされた彼は段誉を憎みつつも、師匠である以上粗略には出来ないと思いこんでしまったのだ。
　しかし、あくまで段延慶の望みは段誉を殺すこと。そう命じられても師匠を害することなぞ、この人のよい男に出来るはずもなかった。
「ならば死ね！」
　段延慶の一撃が彼の腹を抉った。敬愛すべき段誉師匠を守って彼は息絶えた。

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本名：雲中鶴（うんちゅうかく）
別名：窮兇極悪（きゅうきょごくあく）
武功：？？？
家族：？？？
登場作品：『天龍八部』

　女と見れば淫欲を抱かずにはいられない四番目の男。武功も行動も見るべきことは特になく、段誉にとって最愛の人・王語嫣を掠おうとしたばかりに彼の怒りをかい殺された。

※こやつらをもっと語るぞ！　って方はどんどん書き足してください。