当wikiは、高橋維新がこれまでに書いた/描いたものを格納する場です。

 2017年12月17日放映のTHE MANZAIを見た。矢部はカンペ見過ぎ。
 一つの番組(=映像作品)としてのTHE MANZAIを見た時の感想はいつもと一緒なので長くは書かない。ネタは、笑いを生み出す手段としてそれほど優れているものではないので、日曜のゴールデンにこんだけ時間をとるならもっとおもしろいことをやって欲しい。

 今年は各々のネタ前に、賞レース番組のような各芸人のインタビュー映像や煽り文句が入れられていた。この編集に象徴的に現れているが、この番組全体の意識として芸人や芸事をできるだけカッコイイものに見せよう見せようという意識が透けて見える。売れている芸人がみな一生懸命ネタの練習をして、一生懸命ネタに打ち込んでいるのはその通りなのだが、そこは別に見せてもおもしろいところではない。ダメな姿、無様な姿、格好悪い姿の方がおもしろいのは明白なのである。IPPONグランプリにも言えることだが、フジテレビは芸人や芸事をカッコよく演出しようとし過ぎではないだろうか。それは前述の通り笑いを阻害するものでしかないので、そのような演出に注力するのははっきり言えばセンスがない。辛いギミックを受けての無様なリアクションや、ドッキリを受けての素の反応みたいな裏の部分を見せてこそ芸人であって、そういう芸人の姿を捉えている番組こそがおもしろい番組である。芸人が格好よく思われたいのも分かるが、出川みたいに弱い部分・無様な部分を赤裸々にさらけ出す姿が結局一番カッコイイのである。芸人が尊敬されたいのであれば、つまるところ笑いをとり続けるしかない。

 そして、芸人の弱い部分を見せて笑いを生み出す演出に今一番優れているのは、藤井健太郎氏と氏が手掛けるTBSの一連の番組である。いつの間にか、バラエティの雄はフジからTBSになっていたのである。THE MANZAIはあくまで一つの象徴でしかないが、このまんまセンスの無い演出を続けていればフジは泥沼から脱することができないと思う。


あとはネタの寸評を書いておく。
1.NON STYLE
 前半がノンスタにしてはおもしろくないなと思っていたら,前半は丸々フリで、後半にそれが伏線として活きてくるという複雑な構成の台本だった。事前に台本を考えるからにはこれぐらい練らないといけない。
 とはいえ同じ構成だったM-1の和牛を見た時も感じたが、このやり方だと前半を犠牲にする覚悟が必要なのである。石田は井上の不祥事をイジったり尿漏れのジジイをしつこく出したりして前半にもなるだけ笑いどころを入れていたが、それでも物足りなかった。
 筆者は事前に台本を考えるからにはこれぐらい練ろとずっと言っていたが、やっぱり練った台本より天然も飛び出すアドリブっぽいやり取りの方がおもしろいんだと思う。

1.5 ビートたけし
 小ネタをやっていた。客が笑ってネタとして成立させてしまっていたが、やっぱり火薬田ドンの時みたいに静寂の中でスベらせた方がたけしの良さが出ると思う。

2.フットボールアワー
 この前のENGEIグランドスラムでもやっていた道案内のネタだった。「ひっそりモンキー」みたいな伏線のクダリを入れるなど改善はされていたので、こういったものをもっと増やしていって欲しい。そしてやっぱりネタをやる後藤よりアドリブで色々な演者にツッコミを入れていく後藤の方が、おもしろいのである。イジられている状況でイジリ手にツッコミを入れるシチュエーションはなおよい。

3.とろサーモン
 感想は、M-1の時と同じである。久保田の芸達者っぷりはよく出ていたが、ブサイクのフラがガッツリとあるので、やっぱり隙のなさが少し怖くなる。もっと純朴な頃の久保田に戻って間の抜けた感じを出してくれた方が、ブサイクも活きて笑いやすいんだけどなあ。

4.トレンディエンジェル
 いつも通り、時事ネタをたくさん盛り込んでハゲと絡めたハイテンポのネタ。絶えず時事ネタを採り入れて新しいネタを作っているのは伝わってくるので、ずっとこんな感じでいいんじゃないだろうか。

5.千鳥
 多分ほぼ台本通りやっていた。その分そんなにおもしろくなかったので、去年みたいに大悟にはどんどんアドリブでボケてほしい。ノブはそれにアドリブで対応できるんだから。

6.テンダラー
 ネタ前のインタビューVTRで「今年やった漫才を5分にギュッとまとめる」と言っていたが、その通りだったためにテーマがあっちこっちに飛んでおり、少し散漫だった。

7.サンドウィッチマン
 見たことがある。新ネタではない。カセットテープみたいに内容が変わらないので、正確にやる能力はあるんだろうなあ。正確にやる能力は。

8.タカアンドトシ
 やっぱりいくら人工ボケを見せられても去年の「ネタ飛んでんじゃねーよ」に勝てないんだよね。

9.矢野・兵動
 いつも通り、兵動のすべらない話である。矢野が何もしないうちに兵動がオチを言ったタイミングで笑いは起きている。矢野に、特にいる意味がない。

10.キャイ〜ン
 なんか、あんまりウケてなかった。ウドに台本通りの動きをさせるとやっぱりおもしろさが頭打ちになる。漫才のボケの中身が普段のテレビで見せるキャラとそんなに合っていないからだろう。

11.銀シャリ
 後半のピアノの方は全体的にボケがダジャレ的でしょうもなかったかな。

12.海原やすよ ともこ
 何度も言っているが、漫才の構造は矢野・兵動と同じで、街で見かけた変な人のモノマネをしていくネタである。モノマネ役のともこがオチを言った瞬間に笑いが起きているのも、矢野・兵動と一緒である。ただやすよは矢野とは違って、きちんと話し相手として役割を果たしている。それでもともこの役割の比重が高すぎるので、「やっぱり事前に考えておいたおもしろい話なんだろうな」という感じが抜けない。ハイヒールみたいな対等な掛け合いが見たい。

13.流れ星
 頬を叩かれるツッコミの後のクダリを繰り返していたのは良かった。すごく本物のバカのような感じが出ていた。
 ただやっぱり、筆者はちゅうえいの隙の無さが苦手である。久保田と一緒で、バカをやっているくせに動きとか声とか表情とかがピシャリと決まりすぎていて、息が詰まるのである(ちなみに、原西も同系統である)。もっと木久ちゃんやザキヤマみたいな自然なバカさを目指して欲しい。あの自然なバカさだって、必死にメイクアップしているもんだろう。このへんは、練習と経験がものを言う世界だと思う。

14.和牛
 水田も川西もうまく、一つの完成形になっている。ただやっぱり筆者は、神経質なキャラをやっている水田が一番好きである。やりすぎると恐怖や嫌悪が出てしまうのでバランスは難しいのだが。

15.ジャルジャル
 ネタ自体はあんまり類似品がない感じである。ただ2人ともあんまり「変なところにこだわる人」を演じきれていない感じがする。ゆえに、2人の言動もどこか上っ面だけであまり入り込んでこないのである。徳井と比べてもヘタだし、和牛と比べてもヘタだと思う。顔の問題だとは思いたくないので、もっと演技力を磨いて欲しい。

16.ナイツ
 色々な漫才師のスタイルをパクっていて、おもしろかった。おもしろいのは、人のをパクるのは基本的には禁じ手で、それ自体がズレになるからだろう。

17.博多華丸・大吉
 冒頭のツカミや本ネタでその日の他の漫才師の言動をすぐ採り入れられるのは流石。華丸と大吉が自分の役割を演じ切る力も流石。

18.おぎやはぎ
 矢作が普通にツッコんでいた。2人とも自分の役割をきっちりと演じられているので、素で展開しているアホの会話(=天然ボケ)を見ている気になれて、良い。

19.パンクブーブー
 いいと思う。

20.ウーマンラッシュアワー
 いつも通り、村本とパラダイスの掛け合いがものすごいハイスピードで合っていくネタだった。それは反復練習の賜物だろうし、簡単にできることではないだろうが、内容がジャーナリズムと自国民批判だったため、客席で起きていたのも笑いではなくて拍手に過ぎなかった。多分村本がやりたいことをやっただけだとは思われるが、現状本当にやりたいことをやっただけで終わっているので、もっと笑いを生んでいかないといけない。

<2017.12.19追記>
 ウーマンラッシュアワーのネタについて敷衍した内容の原稿がメディアゴンに載りました。
 →http://mediagong.jp/?p=24618

21.ハマカーン
 浜谷が「コンビ解散」を「コンビかんさい」ってカンだところが一番おもしろかった。ほらやっぱり、ネタはこれに勝てない。

22.笑い飯
 「昔話」にハエを登場させるというネタだが、哲夫と西田が交互に話す昔話が全体的に長いので笑いどころも少なく、テンポも悪かった。ダメな時の笑い飯である。

23.チュートリアル
 変なところに異様にこだわる徳井の偏執狂キャラは存分に出ていた。ただそれはすなわち笑いの題材(今回は、「炊飯器」)がずっと同じだということでもあるので、一本調子だし、ハマらない人には全くハマらないのだろう。

24.中川家
 2人とも向上委員会で出すような小ネタをたくさん持っていて、漫才でもそれがいくつも散りばめられているのだが、やっぱり向上委員会で唐突に出してくれた方がおもしろい。それは、ネタという手法の限界である。2人が悪いわけではない。
 むしろ中川家のネタはそういう小ネタの連続という側面が強く、話が結構あっちこっちに行くので、ちょいと散漫な感じがした。

25.爆笑問題
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