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孤独を知らない男・第三話

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
11『孤独を知らない男』:第三話男ハンター×擬人化ドスゲネポス孤独の人擬人化(ドスゲネポス)592〜599

『孤独を知らない男』:第三話

 
 
 
あの人と初めて出会った日の事は、昨日の事のようにはっきりと思い出せる。
私のなかで、いちばん温かい思い出のひとつ。
 
あの日、私は供の仲間を二人連れて縄張りの巡回をしていた。
普通は単独で見回るのだけれど、あの頃私はリーダーになったばかりで、
実力もまだリーダーと呼べるほどのものじゃなかった。慣れない務めに緊張すらしていたと思う。
私の仲間はみんな優しくて、そんな情けないリーダーに文句一つ言わずついてきてくれた。
 
そして縄張り巡回もだいたい終わり、無事に仕事を終えた安堵感を感じた時だった。
目の前に、一人の男が現れた。
男の右手には血の滴る太刀が握られていて、傍にはディアブロスの死体があった。
こいつはハンターだ。私はすぐにそう察する事が出来た。
先代のリーダーだった私の父は、ハンターに殺されたからだ。
 
一度解けかけた私の緊張は一気に最高まで高まった。
それは二人の仲間も同じで、私達は一斉に男に向かって威嚇した。
縄張りから出ていけ、二度とここに入って来るな。我を忘れたように大きく叫んだ。
男はそれで私達の存在に気付いたらしく、こちらを振り向いた。
 
その瞬間には、私の仲間二人は既に彼に飛び掛かっていた。
 
男は驚いたりすくみ上がったりするような素振りは全く見せず、太刀を地面に突き刺すと、極めて冷静に腰を落として…
飛び掛かった仲間一人の首を左手で鷲掴みにし、地面に引き倒した。
それでももう片方の仲間の爪が、腰を落とした男の首筋に迫ったけれど、
男は即座に身を捻り、仲間の右前足と左前足の間に右拳を差し入れてそのまま腹を殴りつけた。
殴られた仲間は唾液を大量にまき散らしながら地面に倒れた。
 
そしてその男は、それだけでは済まさなかった。
最初に引き倒した仲間の体を踏んで跳躍し、私にも向かって来たのだ。
突然の事で私は驚いたけど、直ぐにその場で爪と首を振り上げ、
引っかきと噛み付きの同時攻撃を男に繰り出そうとした。
 
ばちん、と頬に衝撃が走り、私は倒れた。彼は私の頬に平手打ちをくらわせたのだ。
アプケロスの突撃を喰らったような衝撃が私の脳を揺さぶり、私は軽い脳震盪を起こした。
でも、致命傷じゃないことは直ぐにわかった。
目眩がして、頭が痛くなったけど、それだけ。彼はそれだけしかしなかった。
 
『手荒な真似をしてすまない。今後縄張りにはできるだけ入らないようにする。』
 
フラフラになりながらも身を起こす私を見て彼は何かを喋ったようだったけど、
この時の私には、彼が何を言っているのかは理解できなかった。
ただ私が理解したのは、彼には勝てないということだけだった。
ハンターに会うのは初めてだったけど、話には何度も聞いた事がある。
どの話でもハンターは獰猛で残忍で殺気に満ちあふれ、必要以上に殺す悪魔のように語られていた。
本来温厚であるはずのダイミョウザザミが、襲って来たハンターの殺気にあてられて、
人間と見れば見境なく襲い掛かるほど狂ってしまった話は何度も聞いていた。
そしてそういった話を聞きながら育った私にとって、ハンターとは恐怖の対象ですらあった。
彼を威嚇した瞬間、正直に言って私は恐怖を感じていたのだ。

でも、それは彼に対する恐怖というより、ハンターという人種に対する恐怖であり、
この恐怖は私に深く根付いていて、私はなんとか立ち上がると脇目も振らず逃げ出した。
殴られ、踏み付けられた二人の仲間も、あとから私に追い付いてとにかく逃げ続けた。
ハンターは執拗に獲物を追うことも、私は父から聞いていたからだ。
縄張りを放棄してあいつに渡しても構わないとさえ思うほど、私は怖かったのだ。
そして私と二人の仲間は巣に逃げ帰ると、私の心はただ恐怖だけに支配されていて、
巣の最奥まで行くと、明日になるまでずっと蹲っていることしかできなかった。
 
その翌日、私はおっかなびっくり縄張りの巡回に向かった。
仲間達は私を責めなかったけど、外敵を排除せずに逃げ帰って来るなどリーダー失格だ。
リーダーとして仲間達に迷惑はかけられない、と私は気負っていた。
しかしそれは同時に、また彼と会い、そして今度こそは死ぬまで戦わなければならない事を意味していた。
自然界では、奪われた縄張りを取り返すには相手を屈服させなくてはならない。
昨日のことで私は彼に縄張りを明け渡したのだから、彼はきっとそこに陣取って居座っているはずだ。
それが自然界の掟。私は彼を追い出して縄張りを取り戻さねばならないのだ。
(この頃、私はハンターというものが自然界の一部であると誤解していた。
 彼らも私達と同じに、縄張りを奪い合うように狩りをしているのだ、と)
 
昨日、彼と遭遇した場所に行くと、そこに彼はいなかった(当たり前だよね)。
当時の私はそれを奇妙に思ったものだ。しかも私達が付けた縄張りの印も消されていない。
彼は、せっかく手に入れた縄張りを放棄したのだろうか?いや、罠かもしれない。
ハンターは様々な武器を持っていて、狡猾に立ち回る事も私は聞いていた。
でも、彼の姿はどこにもないし、殺気も一切感じられない。
どうやら本当に、ここは私達の縄張りのままであり、彼はここにいないようだった。
それに安心して余裕が出たのか、私は「そういえば…」と昨日の事を回想していた。
 
そういえば、あの時彼からは殺気や敵意というものが全く感じられなかった。
仲間達が倒され、彼が私に飛び掛かって平手を繰り出して来たその時ですら、彼は殺気を纏っていなかった。
私が自分で勝手に恐れて、勝手に敵だと認識し、勝手に逃げ出しただけなのだ。
いや…今にして思うに、彼が持っていた感情はそれ以上だった。
何故なら(あの時はそんな事に気付く余裕もなかったけど)彼は武器を使わなかった。
ハンターは武器を使うと聞いていたし、実際に彼の手には鋭く輝く太刀が握られていた。
それにも関わらず彼はわざわざ太刀を地面に突き刺して封印し、肉体で攻撃してきた。
それよりも優れた武器があるのに。そして彼はその肉体だけでも私達を殺せたかもしれないのに。
 
そう思った瞬間、私のなかで長年築かれて来たハンター像が彼に当てはまらないことに気付いた。
私達の仲間が嘘をつくことはない。ハンターとは実際に獰猛なものなんだろう。
でも彼は?私達を殺そうとしなかったし、追跡して巣を暴くようなこともしなかった。
もしかして彼はハンターじゃない?ハンターのような悪魔じゃなくて、私達と同じような生物なのかもしれない。
ハンターによく似ているけど、別のいきもの。亜種なのかもしれない。
私は話に聞いた事も、実際に見た事もない新種のいきものに興味を持った。
そして興味を持ったからには、また会ってみたいと思った。
 
気付けば、彼に対する恐怖心は消えていた。
いや、もともと彼に対する恐怖心はなかったのだ。
このときは、まさか彼を好きになってしまうとは思わなかったけど、
思えば私はこの瞬間から彼に惹かれ始めていたのかもしれない。
彼の胸の内にある、気高い精神に。
 

「ん…はぅ、んぅっ…はむ…」
 
今、私は彼のその気高い精神をボロボロにしようとしている。
私が好きになった彼の、いちばん好きな部分を私自身が壊そうとしている。
私の心の中を様々な感情が渦巻いた。
罪悪感、切なさ、諦観、羞恥、喜悦、絶望、そして快楽。
どれもが矛盾しあった感情なのは分かっているけど、この熱情を止められない。
積もり積もった彼への想いを吐き出さずにいられない。
 
彼の腰装備とインナーを剥ぎ取った私は、彼自身を口と手の両方で責め立てていた。
茎を手でしごいたり揉み解したりし、先端は舌で舐めたり、口に含んだりしている。
最初の内は彼も声を漏らすまいと頑張ってたけど、
いつしか歯の隙間から何かを耐えるようなくぐもった声が聞こえはじめると、
だんだんと彼自身は元気になっていった。
口で全体をくわえるにはまだ早いけど、私は露出した亀頭に歯を少し立ててみる。
すると彼の下半身はビクリと震え、彼自身は見る見る内に硬くなってきた。
 
「う、ぁ…すごい…」
 
すっかり剛直と化したそれを見て、私は思わず呟いた。
こんな大きなものが私のなかに入る…それを想像すると、恐ろしさよりも、楽しみだという気持ちの方が膨らんだ。
そして私は茎の根元を掴むと、一気に彼自身をくわえこんだ。
 
「んふぅぅぅぅ……」
「……ッ!」
 
私はつい情けない声をあげてしまい、彼は声にならない声を発した。
私の口の中で脈動するそれは既に粘液で覆われていて、とろりとした感触が口内に行き渡る。
暫くの間それを楽しんでから、彼自身の亀頭を舌でねぶる。
先端に舌の裏を押し付け、周囲を舐め回し、カリに舌先を引っ掛ける。
彼の下半身が硬直し、更に大きくなるその存在を確かに感じ取った。
そして私ももう、心中に渦巻いていた様々な感情が一つに統合され始めていた。
 
「んっ、んっ、あぅ、んっ、んっ、んんっ」
じゅぶ、ぬち、じゅぶっ、ずちゅっ、ずちゅ
 
私はただ衝動のままに頭を上下させた。
裏筋を舐め上げつつ茎全体を唇で刺激し、先端を奥の喉壁にぶつけさせる。
先端が口から抜けそうになったら、敏感な部分に舌先を押し付け、再び全体を口内に招き入れる。
ときたま上目遣いで彼の顔を見上げると、彼はきつく歯を食いしばって私の与える刺激に耐えているようだった。
しかしそれに反して、口内の彼自身は熱をどんどん増してくる。
そして、その熱と激しい脈動の感触に私の感情は完全に一つに統合された。
気付けば私の右手は自分の股間に伸び、私の秘部を激しく刺激していた。
 
「ん、ん、ん、あふっ、あぅっ!、んっ!、んんんぅ−−−−−!!」
「うぐっ…!」
 
淫らな二人分の水音が洞穴内に響き渡る中、遂に彼は私の喉深くに向かって熱を吹き出した。
同時に私も、自らの手による刺激によって高みへ達する。
大量の熱は私の口内には収まりきらず、口の端からこぼれて地面へと滴り、
私の足下にも透明な小さい水たまりができていた。
 
「んっ…んくっ、んぐっ…」
 
私はできるだけこぼさないように、白濁した液体を飲み下す。
やがて口の中にあるものを全て呑み込むと、彼自身を引き抜いて、そのまま地面に倒れ込んだ。
お尻を高く突き出すような態勢で、しかも眼前には男の人の逸物。
はしたない事はわかっていたけど、私は頭の中が真っ白になって、体中の力が抜けてしまったのだ。
そして一種の満足感のようなものが沸き上がって来るが、下半身の熱は急激に冷めていく。
口の中は火傷しそうなぐらい熱いのに…
そう思っていると、私の眼前でビクンビクンと震えながらも、
未だその大きさと硬さを失っていない彼自身を見つけた。
 
「んふ…」
 
私はどこか楽しそうな、それでいて恍惚としたような表情を浮かべたと思う。
力のこもらない体をなんとか起き上がらせ、彼の顔を見る。
彼は荒い息をつきながらも、どこか陶然としたような表情を浮かべていた。
それでも、表向きは私のこの行為を拒絶していたようだった。
彼のそんな表情に、私の胸は一層高まった。彼の誇り高さは私が最も愛する部分でもある。
 
「ジェロ、スぅ…」
 
狙ったわけではないけど、私は甘い声をあげながら更に彼に体を寄せ、
四つん這いの状態から、彼の腰の上に跨がるような姿勢になった。
でも、まだ彼自身をすっかり濡れそぼった私には入れない。私にも心の準備がある。
代わりに尻の肉で彼自身を左右から挟み込むようにした。
 
「…トネス。お前、群れは捨てるのか?」
 
と、彼は私の顔を真直ぐ見て口を開いた。
てっきりもう喋る気力はないと思ってたのに。
 
「…うん…でも大丈夫だよ。
 弟が…あとを継いでくれるだろうから…」
「………そうか…」
 
彼は複雑そうな顔をして囁いた。
瞬間、もう快楽で埋め尽くされたと思っていた私の心がちくりと痛んだ。
人間の姿となったからには、もうゲネポスの群れでリーダーをする事はできない。
そして行為が全て済んだあと、ジェロスは私を否定するだろう。
私を殺すかもしれないし、放逐して二度と会おうとしないかもしれない。
でも、彼に放逐されたところで私に帰る場所はない。
もう後戻りは出来ないのだ。そしてその事は覚悟していた。
たぶん、これは私と彼との最後の思い出であり、私の人生最後の思い出ともなるだろう。
 
「後悔はしてないよ…ずっと、苦しかったのが消えるから…
 あなたに会えて……本当に良かったと思う…」
「……………」
 
彼は眉をしかめ、何か言いたそうにモゴモゴと口を動かした。
でも、私はすぐに腰を浮かせると、彼の剛直の先端に私の入口を押しあてた。
結局のところ私は怖かったのだ。彼の口からどんな言葉が出てくるのかが。
分かってはいる。分かってはいるけど、面と向かって否定されるのが怖かった。
 
だから、すぐに彼の口を塞ぎたかった。
 
ずぶ…
「んっ…!」
 
私が少し腰を落とすと、彼の先端が私の肉を押し分けて入ってきた。
狭い所を無理矢理こじ開けられる激痛に、私の顔は大きく歪んだ事だろう。
そんな苦痛の表情を浮かべた私に、彼は驚いたようだった。
 
「お前…まさか初めてか!?」
「クルルルルル…」
 
私は弱々しく喉を鳴らしてこくりと頷いた。人間の声を出す余裕なんてなかった。
彼は心配するように私の顔を見て、それから慌てたように両腕を動かそうとし始めた。
恐らく私を引き剥がそうと必死に力を込めているのだろう。
でも、ここまで来てそんなことはさせない。覚悟を決めてこの姿になったのにここで終わらせない。
私は思い切って、一気に腰を落とした。
 
「んぐっ…かはあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 
私の中に無理矢理押し入ってくる感覚に、体を弓なりにして絶叫してしまう。
十分に濡れていたとはいえ、喪失の激痛は容赦なく私を貫いた。
痛みのあまり顔を歪ませてしまい、目からも涙が溢れ出てきた。
痛い…口で言い表せないほど…すごくいたい…
私は彼の服をぎゅっと裂けそうなほど強く握り締め、俯いたまま暫くどうする事も出来なかった。
下へ向けた視線が、結合部から溢れる血を捉える。
 
「よせ!無茶するな!」
 
彼が声を張り上げる。でも、私はそれに応える事すらできなかった。
ただ、首をふるふると振って「大丈夫」と気丈に振る舞ってみるが、自分でも大丈夫だとは思っていない。
痛みは暫く消えなくて、私は慣れるまで口を固く閉じて息を止めていた。
 
「だい、じょぶ…だい…じょうぶ…だから…」
 
それでも、消えない痛みはない。
だんだんと激痛は緩やかになっていき、呼吸をする余裕も出てきた。
全身の緊張もゆっくりと解れていくのが分かる。
その頃を見計らって、私は少しだけ腰を動かしてみた。
 
「ん…ひぃんっ!」
 
その瞬間、痛みと共に電撃のような快感が体を走り抜け、私はまた体を弓なりに伸ばしてしまった。
もちろん、まだ痛くはあるのだけれど、快楽がそれに勝った。
この時になって、私は自分の愛液がやっと効果的に働いたのを知った。
 
「ひっ…あぐっ、はっ、あっ…ひぅんっ、はぁっ、あふ…」
ずちゅ、ずっく、ぐち、ぐち、ずりゅ、ずっ…ずんっ
 
それから私が全ての理性を失うまでは早かった。
芯を貫かれる痛みも忘れて、彼の腹部に両手を添えて腰の上下運動を繰り返す。
上ずった嬌声は痛みのために多少苦しそうな呻きも混じっていたけど、
私が感じていたのは、殆ど純粋な快感だけだった。
膣を無理矢理広げて侵入し、奥の子宮を強めに小突き、カリで壁を擦りつつ抜いていく。
その感触を、ただただ私は浅ましく貪った。
 
「あっ、はっ、はっ、ぅん、はぅ、あっ、あっ、んっ、はっ」
 
やがて痛みすら消え失せ、私の全ての感覚は一つのベクトルに集約した。
視覚は、目をつぶって感覚に集中し、聴覚は、淫らな水音と彼の荒い呼吸を聞き、
嗅覚は、互いの汗と粘液の臭いを嗅ぎ、触覚は、股間での運動と彼の肌の熱さを感じていた。
でもそれすら、運動の加速化と共にかすれていく。絶頂が近いのだ。
滑らかな動きは激しさを増し、私の嬌声は追い詰められたようにどんどんと高くなっていった。
彼自身もその時が近いのか、更に大きさと硬さを増し、それがまた私を高めていく。
 
「ぐうぅっ…!!」
「あっ…はあああああああああああああ!!」
 
とうとう彼自身が私の奥深くに熱を叩き付けた。
腹部に熱がたまり、子宮に注がれているのだと知る。
それでも収まり切らなかった分が結合部からごぽりと溢れ出した。
そして注がれた熱の感触と彼自身の脈動によって、私も絶頂へと果て、
私は本当に自分が出しているのかと疑いたくなるような叫び声をあげた。
正直に言って……すごく気持ちよかったのだ。
 
「あっ…あぁぁ…あふぅ…」
 
全ての力を使い果たし、私は彼の胸の中に倒れた。
そのまま彼の荒い呼吸を聞きながら、ゆっくりと失神していった。
心の中で、愛しい彼に別れを囁きながら
 

「………ん…」
 
私が目を醒ましたのは、翌日の朝だった。
洞穴の入口の方から僅かに太陽の光が差し込んできているのが分かる。
私は体を起こして地面にぺたりと座り、一つあくびをしてから…
それからようやく、自分の体に毛布がかけられていた事に気付いた。
たぶん、私が寝ている間に…あの人がかけてくれたものだろう。
彼の香りがほんのりする毛布は、せめてもの餞別というところだろうか。
 
「…」
 
私は周囲を見回すが、狭い洞穴内に彼の姿はない。
もう、行っちゃったんだ…せめてさよならぐらいは言いたかったなぁ…
 
「…グス」
 
私は目にたまった涙を拭うと、毛布を胸の上から体に巻き付けた。
そしてずり落ちないようにしっかりと縛る。
これで落ちようと思っても、胸がつっかえて落ちないはずだ。
とにかく、ここを出ないと…もう、ここにはいたくない。
あの人と繋がった場所でもあったけど、ここにはもうあの人と別れた思い出しかない。
とにかく外に出て…嗅ぎ慣れた砂の臭いと、浴び慣れた強い陽光を浴びれば少しは気分も良くなるかもしれない。
そう考えて、私は外に出た。
 
強い日射し、灼ける砂の香り、風に巻き上げられた砂が当たる感触。
………後悔はしてないと言ったけど、実は少しだけしていた。
でも、あそこでモドリ玉を踏まなくとも後悔していたと思う。
ならやっぱり、あの一瞬に賭けて良かったのだろう。
人生最後の思い出にしては、幸せな思い出だったと思うから。
 
「…そうでも思わないと…やってけないよ…」
 
自分を抱き締めるように身をすくめながら、つい私はそう呟いてしまった。
いつの間にか、拭ったはずの涙が一滴二滴と砂漠の上に落ち、一瞬のシミを作っては消えていっていた。
…やっぱり、強がったふりをするのはやめよう。
あの人とずっと一緒にいたかった。愛し合えるならそうしたかった。
私の勝手なエゴからの行動だったけど、あの人からもっと愛してほしかった。
誇り高き精神。あの人の最も素晴らしいところを私は好み、同時に憎んだ。
胸が張り裂けそうに痛い。嗚咽を噛み殺し切れない。自分の心をごまかせない。
私は迷子になった子供のように泣きじゃくりながら、砂漠を歩き始めた。
 
「ジェ、ロス…ジェロ、スぅ…」
 
泣きながら歩くその姿は、まるで彷徨うようであったと思う。
実際、行くあてなどなかった。私はただ砂漠を彷徨っていただけだった。
泣きながら、悲しみながら、絶望を嗚咽と共に漏らしながら…
 
「あ…」
 
そして涙も枯れ始めたころ、私は一つの場所に辿り着いた。
遥か前方に黒い残骸…昨日あの人と一緒に狩ったドスガレオスだ。
そういえばあの残骸も、私とあの人との最後の思い出だ。
あのドスガレオスがいなければ、あの人はモドリ玉を落とさなかっただろう。
そう考えると、ただの死体にもどこか感慨深げなものがあった。
私は、自然とそのドスガレオスの死体の残骸に向かって歩き出していた。
 
「………え?」
 
距離が10m以内になった頃、私はそこで一つの人影を見つけた。
ドスガレオスの残骸の傍で、残骸に向かって目をつぶっている人影。
左腕に包帯を巻いていて、傍らには太刀が地面に刺さっていて、足下にはドキドキノコが置かれていて…
 
「ジェ…ロス…?」
 
その姿は、私が大好きなあの人とまったく同じで…
 
「…! おお、起きたのかトネス。
 いやなに、昨日はうっかり供養と祈りを忘れててな。
 少し遅れちまったこともドスガレオスの霊に詫びて−−」
 
彼が全ての言葉を紡がない内に、私は振り向いた彼の胸の中に飛び込んでいた。
瞬間、枯れ始めたと思っていた涙が堰を切ったように溢れ、嗚咽が再び漏れ出た。
 
「お、おい、トネス?」
 
彼は不思議そうに私を見下ろしていただろう。
でも、私はぎゅっと強く彼を抱き締めたまま泣き続けた。
 
「あ、あさおきたら…ひっく、いなく、なっちゃっ、てて…
 ほんと…に、ひぐっ…いなく、なっちゃった、って…」
 
彼が困惑しないよう、上手く状況を説明してあげたかったのだけれど、
私はただ嗚咽のような言葉とも言えぬ言葉を紡ぐだけで精一杯だった。
対照的に彼は落ち着いてきたようで、驚きで開き気味だった腕もゆっくりと垂れ下がってきていた。
 
「そうか…寂しい思いをさせてすまなかったな。」
 
そして彼は、いつもそうしてくれたように私の頭を軽く撫でた。
 
「お前の覚悟はしっかりと見届けた。
 お前が俺の胸に、人間の腕で、人間の胸で飛び込むと言うのなら、受け止めよう。
 俺の家に来い…人間の生活は大変だろうが、すぐに慣れるんだぞ…」
 
彼の言葉に、私はただ頷く事しかできなかった。
悲しみで張り裂けそうだった胸は喜びでいっぱいになり、私は赤子のように大声で泣いた。
悲しみで泣いているのなら、こんな大きな声は出ない。
嬉しくて、嬉しくて、私は彼と、話をしたこともない神様に感謝した。
 
「トネス…人間になっても、お前は自然のままだな…
 泣き虫トネスめ…お前はこんなにも美しい…」
 
彼はそう呟いて、そっと赤子を抱く母親のように私を抱き返した。
私はいつまでもいつまでも泣き続け、彼はいつまでもいつまでも私を抱き締めていた。
あたたかい温もりが彼の腕を伝わり、私の体を優しく包み込んでくれた。
 
この日、私の胸の内にあった苦しみは全て溶け出し、代わりに美しく優しく温かい花が咲く。
一生大事にしていこう。そう思えるほど綺麗な花だった。

<第一部・完 第二部に続く>
2010年08月18日(水) 08:53:04 Modified by gubaguba




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