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孤独を知らない男・第十一話

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
12『孤独を知らない男』:第十一話男ハンター×擬人化ドスゲネポス・擬人化ディアブロス亜種孤独の人擬人化(ドスゲネポス、黒角竜)140〜149

『孤独を知らない男』:第十一話


敗北し生き延びた者は、一度だけ同一の個体に対して再挑戦する権利を有する。
その上で再度敗北を認めた時、挑戦者は縄張りの半分を譲渡せねばならない。
挑戦を受ける者はその限りではなく、敗北したとしても義務が生ずることはない。
また、この流儀は繁殖期に於ける男同士の争いには適用されない。
女同士であれば、繁殖期に於いても流儀の行使は可能である。
 
ディアブロスの世界にある暗黙の流儀。
それは法律というよりも、むしろ本能に近い。
そうするのが自分にとって一番良いことを全員が知っているから、
それが自然として、流儀という形になる。
自然の中にある流儀や鉄則は、そうやって生まれるのだ。
 
「どうやってここまで来た?」
 
家の裏にあるちょっとした空き地。三人はそこに移動していた。
ジェロスと少女が改めて相対し、まずジェロスが訊ねた。
少女は長い黒髪をかき上げながら答える。
 
「少し癪だったが、ハンターどもに保護されるフリをした。
 それで取り敢えず人里に降りてから、従兄弟と偽ってお前を探そうと思ったのだがな…
 保護されて連れて来られたのがここで、思いのほか早く見つかった。」
 
トネスがジェロスの名を呼ぶ場面に、まだ角竜だった少女は遭遇している。
彼女の知能なら、それを利用するのは容易いことだろう。
 
「それも運命だろう。
 さあ、潔く私に敗北しろ。」
 
拳を開いたり握ったりしながら、ディアはジェロスを睨み付けた。
まったく面倒なことになった…
なんで俺の周りにはモンスターばかりが寄り付くんだ?
いや、人間を寄せつけていないだけか…
 
「い…いい加減にして下さいッ!」
 
なんてジェロスが考えていると、横で状況を静観していたはずのトネスが、
搾り出すようにして、ディアに向かって怒鳴った。
ディアは片眉の端をぎりっと吊り上げてトネスに視線を移す。
 
「襲ってきたのはあなたからじゃないですか!
 なのにいきなり決闘だなんて、勝手過ぎます!
 あの時ジェロスはあなたを殺すこともできたのに…
 どうしてそんなことを思い付くんですか!?」
 
吊り上がったディアの眉がだんだん下がっていく。
しかし表情が穏やかになったわけではなかった。

「どうして…? そんなこと決まっている。
 こいつの強さを確かめるためだ。」
 
ディアの細い腕がすっと上がってジェロスを指さした。
表情はなんとも冷ややかだが、眉が微かにしかめられている。
 
「私を倒したほどの人間なのだ。
 その強さの秘密をものにするまでは何度でも闘うぞ。」
 
砂漠の支配者の座から蹴落とされる時。
その時こそが、即ち角竜が滅びる時なのだとジェロスは考えている。
最も強い者であるからこそ生きていられる角竜たちにとって、
もっともっと強くなりたいという願いは切実なものだ。
しかしディアの場合は、そこにもう少しだけ違う感情が絡まっているようだ。
それが何なのかは本人も分かっていないが、彼女は実の所、
流儀ではなく、その感情に従ってここまで来ていた。
 
「いい、トネス。大丈夫だ。」
 
何かをディアに言い返そうとしたトネスだったが、ジェロスに制された。
「でも」とすかさず反論しようとするが、鋭くも暖かい視線を向けられて「大丈夫だ」と言われてしまえば、
もう彼女には何をすることも出来なかった。
納得していないような表情を浮かべながらも、彼女は引き下がる。
それを確認して、ジェロスは再びディアの方を向いた。
 
「…さて、お前が流儀に則って決闘をするというのなら、受け止めてやる。」
 
そして片膝をつき、片手を地面に添えて、まるで跪くような姿勢になった。
しかし屈服したわけではない。研ぎ澄まされた闘志が全身から溢れている。
眼光も鋭く、真直ぐからディアの睨みを切り裂いていた。
 
「かかってこい。」
 
ジェロスがそう言った直後、ディアが突進してきた。
強靱な脚力で地面を蹴り、一気に間合いを詰める。
弓を引き絞るように右腕を大きく引いて肉薄する姿が、一瞬だけ大きく見えた。
しかしジェロスは慌てることなく、タイミングを合わせて前方へ跳んだ。
極限まで姿勢を低くし、頭からディアの足下に飛び込む。
地面と平行になったその体は、あと20cm下がれば地面に全体を擦り付けるだろう。
──本来はリオ系の飛竜に行う技だが、人間相手にも応用出来る。
ジェロスはその状態から、足を払うように右手の手刀を薙いだ。
 
「ッ!」
 
神速の攻撃であったにも関わらず、少女は見事に反応した。
ギリギリで飛び上がり、手刀を回避すると……
ボロ布の下に隠していた尻尾を繰り出した。
このままジェロスの頭上を飛び越えつつ、尻尾で叩き下ろすつもりである。
 
「(ほぅ…)」
ドズゥゥゥッ!

──が、既にジェロスは左手の手刀を繰り出していた。
跳んで上に逃れることを予想していたのだ。
飛び上がった少女の右膝に手刀が突き刺さり、
ディアはバランスを崩して。そのまま吹っ飛びながら墜落した。
着地や尻尾の攻撃もままならないタイミングと威力だった。
やや上を向いて突進する傾向があるリオ系の飛竜の股下を潜りつつ、
足と腹部を同時に攻撃する、双剣の戦闘術の応用である。
 
「うッ、ぐぅっ…!」
 
自分の突進の勢いで派手に吹っ飛んだディアは、痛みに顔を歪めつつも、
地面を尻尾で強く叩き、一気に起き上がって再びジェロスの方を向いた。
一方のジェロスも、着地してから素早く跳ね起き、半身になってディアの方を向く。
お互いの視線と闘志が交錯するが、ディアは既に息が荒く、
その息も煙突の煙のような黒色になっている。今の一撃で激昂したようだ。
 
「ぐぐ…グオオオオオオオオオオォォォォォォォ!!」
 
威嚇するように、ディアブロス特有の大きな吼え声と共に少女はまた突進した。
ジェロスはまたもや冷静に…半身になることで隠した右手、
そこに握られた、さっき拾った石ころをディアの顔面目掛けて投擲。
飛礫が少女の視界を塞いだその瞬間に踏み込み、右手の中指を首に突き刺す。
突き刺す場所は頸動脈。動脈へのピンポイント攻撃は血流を混乱させ、
脳へ送る血液の流れを一瞬だけ停止させる。
 
ズドッ!
 
脳の働きが一瞬だけ停止してディアがふらついたその瞬間に、
ジェロスはしっかりと関節を押さえた寝技をディアにかけた。
少女の胸から苦しそうなうめき声が響く。
突進の勢いを利用して引き倒したので、胸を地面に強打したのだ。
そして痛みに呻くその瞬間にも、ジェロスは寝技をより強固な形へと持っていった。
これを解くのは力ではなく技術であり、人間になったばかりの彼女に、
最高に実践的なこの寝技を解くほどの技術はなかった。
 
「勝負ありだな。」
 
背中越しにジェロスの声が少女に響いた。
少女は苦痛と悔しさに眉をしかめて下唇を噛み締める。
勝負そのものは一瞬でついたが、それを心配そうに見ていたトネスが駆け寄ってきた。
角竜ディアブロスも、人間の姿になってしまえば他愛無い。
ディアは暫くは抵抗していたようだったが、やがて諦めたのか、かくっと力を抜いた。



「…いたッ!いたい!いたいぞ貴様!
 ゲネポスごときに私の肌を触らせてやろうというのだから、もっと優しくしろ!」
 
決闘が終わり、ディアの傷を治療するため家に戻ると、
早速少女はトネスの治療に文句を垂れ始めた。
トネスはそれに対していかにも気に入らない、という顔をして俺の方を見るが、
俺は涼しい顔をしてランスを研ぐだけで何も言わない。
それを見て、ますますトネスは不満そうに治療を続けた。
しかし俺に愚痴を言ったり、ディアに言い返したりはしていない。
 
だが、無事でよかった。
ディアにモドリ玉を喰わせてしまって、もし人間になってたらヤバいな、と考えた理由は二つ。
一つは、もしかしたら俺に再び突っかかって来るかもしれないということ。
もう一つは、人間になったディアが砂漠の環境に適応できず、野垂れ死にしてしまっているかもしれないということ。
人間の体で厳しい砂漠の環境を耐え切ることはできない。
もし人間化が原因で死ねば、俺が殺してしまったことになるのだ。
それは一族の掟に触れることになりかねない。
しかし、無事に生き延びて俺に挑戦して来れた。
だから俺はディアの姿を見た瞬間に、内心ちょっとだけホッとしたのだ。
 
「…二度、負けたよな?」
 
ランスを研ぎながら、俺はディアの方を向かずにそう呟いた。
その言葉に、ディアがびくりと反応する。
そう、二度負けた。角竜の流儀に則るなら縄張りを明け渡さなければならない。
しかしただの浮浪児に縄張りも何もないもんだ。だから代わりのものを要求してやろう。
 
「もう、突っかかって来るなよ。」
 
研ぎ上がったランスをアイテムボックスに放り込む。
ディアは苦虫を噛み潰したような表情をしていたが、
俺の言葉に対してすかさず反論するだけの余裕はあったようだ。
 
「う、うるさいッ!人間になった時のはノーカウントだ!
 角竜同士の闘いじゃないから、角竜の流儀は通じないぞッ!」
 
なんともまあ勝手な理論を吐きながら、少女は立ち上がった。
治療中だったトネスが「あっ、まだ…」と呟きかけるが、
ディアはここに来た時と同様にずんずんと玄関に向かって歩いていった。
激昂すると妙に仕草が子供っぽくなるな。いや、外見は子供そのものなんだが。
 
「次だッ!いいか!次こそは倒してやるぞッ!
 こうなったら何度でも挑んでやるからな!首を洗って待っているがいい!」
 
ディアはそう怒鳴り散らすと、玄関から外へ出ていった。
その様子を、俺はどこか微笑ましげに。トネスはどこか心配げに見ていた。
 
「……大丈夫かな?」
 
トネスは思わず俺に訊ねる。
さっきまで少女に不満そうな不機嫌そうな顔を向けていたわりには、結構本気で心配している。
なんだかんだ言って世話焼きで優しいものな、こいつ。
 
「……………ま、30分ってとこか。」
 
ふっと思わず笑みが漏れてしまう。
トネスは不思議そうに俺のその顔を見つめていた。
既に全ての予想はついている。


  コン  コン
 
果たして予想ピッタリに、30分後遠慮がちなノックが響いた。
既に待機済みの俺がドアを開くと、そこにはディアがちょこんと立っていた。
しかし、その姿は先程とは打って変わって小さく見える。
少し俯き加減に、長い黒髪を弄くり回していた。
 
「…何か用かな?」
 
思わずこぼれそうになる笑みを堪え、俺は意地悪をして訊ねた。
 
「何か、用…って、その…」
 
ディアは恥ずかしそうにもじもじしている。
外見相応の仕草と、大人びた声と口調とのギャップが面白い。
 
「……と…トメテ、ホシイ…」
「あァ〜〜〜?聞こえんなァァ〜〜〜〜?」
 
敢えて意地悪をしてやる。
迷惑をかけた罰だ。
 
「とっ…泊めて欲しいっ…!」
 
目をぎゅっと瞑り、頬を真っ赤にしながら声を搾り出す。
精一杯の覚悟で言い放ったようだが、流石に俺の顔は見上げれないらしい。
しかしもうちょっと意地悪してやるか……
 
「どうしてだ?」
「どうしてもなにも…なんなのだあれはッ!
 野宿しようと思ったらいきなり襲われたぞ!
 繁殖期も過ぎたというに…どういうことなのだッ!」
 
人間の世間を知らぬディアはとても恥ずかしそうに声を張り上げている。
人間の中には四六時中繁殖期のヤツもいて…そういうヤツはハンターに多い。
女ッ気がなく、いつ死ぬか分からぬ生活なのだ。体が子孫を早く残そうとするのだろう。
だから路上などで良い感じの女が野宿でもしようものなら、
そーゆーのは真っ先にそう言った連中の餌食である。
身寄りも人脈もない浮浪児なら、連中も心置きなく犯せるというものだ。
だがディアなら、そういった連中は苦もなく蹴散らせるだろう。

「そ…れに…オスというのは、あんなにも……」
 
口元を右手で隠し、何かを思い出すように横を向く。
どうやら、本当に危ないところまで行ったらしいな。
この仕草と表情から、多分『見た』のだろう。もちろんアレを。
だからこそ、最初から物凄く恥ずかしそうに言葉を紡いでいるのだ。
流石に、分かっておいて完全に放置しておいたのは悪かったかな。
 
で、襲われた所をからがら逃げ延びて、家の中でなくば危険だと判断したのだろうが、
お金もないし、自分の事情を知っている人間の家はここしかない。
下手に事情を話せば人間に捕まる可能性もあるから、ディアに選択肢は一つしかなかった。
即ち、俺に「泊めてくれ」と頼むことである。
 
「俺もオスだが、いいのか?」
「…お前には、あのゲネポスがいるだろう…」
 
全くもってその通り。一年に一人の相手としか番わぬ角竜にとって、
既に妻をとっている者に対しては、貞操を心配する必要がないのだろう。
そこまで俺は予想していたから、答えも既に出ている。
 
「いいだろう。当分の間は泊めてやる。」
「………すまん。
だが決闘の事とは別の問題だからな!」
 
自分の立場が分かっているのか分かっていないのか。
そんな言葉を吐きつつ、少女は俺の背中に続いて家へと入ってきた。
トネスにももう話してあるから、特に驚いたりはすまい。
寝場所は、居間に毛布を出してやれば事足りるな。
 
「だが、居候となるからには…それなりの事はしてもらうぞ。」
 
歩きながらそう告げると、ディアがうぐっと声を詰まらせたのが分かった。
 
「まあ取り敢えず、細かい話は明日だ……
今日はもう遅い。さっさと寝ろ。」
 
居間に到着すると、そこにはもう毛布が用意されてあった。
トネスは先に寝室へ行ったようだが…気を利かせて用意してくれたのか。
俺はディアの首根っこを掴んで毛布に放り込むと、灯りを全て消し、
毛布を被る少女をその場に残して寝室へと向かって行った。



「はっ…あ、ぐぅっ、ふか…い、よぉぉ…」
 
後ろから力強く責め立てられ、トネスが追い詰められたような声を出す。
ジェロスとトネスの寝室は一本の燭台だけが唯一の明かりとなっており、
朧げで妖しげであるその光は、ベッドの上で蠢く二人を、闇の中に微かに浮かび上がらせていた。
時刻は既に深夜に到達しようとしている。
ディアが寝静まるのを待ってから始めたので、二人とも我慢の限界だったのだ。
ディアの寝付きに焦らされたトネスは、前戯もそこそこに本番を要求して来たのだった。
 
「はっ…あっ、う、う、んんぅ…ひっ…やぁぁ…」
 
深く強く貫かれる快感に、トネスの芯はもうとっくに蕩けており、
上半身を支えることもできずに、ベッドの上に突っ伏している。
そしてジェロスに向かって高く突き出された、形の良い豊満な臀部を彼は鷲掴みにしていた。
指が深く埋まるほどに強く掴んでいるが、その痛みさえも既に淫らな色を帯びており、
突き上げられる悦びに腰をくねらせる度、淫らな喘ぎが漏れ出る。
ジェロスも、腰を叩き付ける度に微かに己を締めるトネスの膣の具合と、
男の情欲を更にそそる彼女の反応を楽しんでいた。
 
「あぅっ、あぁぅっ、き…て…はぅっ…もっ、とぉ…」
 
切なげにトネスがはしたない要求をする。
それに応えるように、ジェロスは腰を叩き付ける速度を速めると、
途端にトネスの喘ぎが高さを増し、声量も大きくなって、シーツを握り締め始めた。
しかし、彼はそれだけで済ませなかった。
上体を更に深く傾けると、両手をトネスの胸とベッドの間に差し込み、
柔らかでありつつも、確かな感触のある胸を少し手荒に揉みしだきだしたのだ。
 
「ひぅっ! そ…こはっ、だめえぇぇぇ……!」
 
トネスの体とベッドの間に挟まれ、少し押し潰れたようになった乳房が、
少しだけ横にはみ出るような形となって、それが彼の目についたのだ。
強く突き上げられる衝撃だけで達してしまいそうなのに、
更に弱点である胸への攻撃となれば、その荒っぽい動きによる痛みすら、悦楽に早変わりする。
ギシギシとベッド全体が軋み、それに合わせてトネスは楽器のように鳴く。
 
「あっ、は…ひぐっ、はっ、はっ、あ…んっ…ジェロ、ス…はげ…し…!
 いっ…ひぅんっ、あっ、あぁっ…!イクっ…イクっ!イクぅぅっ…!」
 
トネスの声がどんどん甲高くなっていく。
ジェロスの動きも、時と共にどんどん速く、そして激しくなっていった。
林檎を掴むようにトネスの胸を強く掴み、獣のように腰を叩き付ける。
高まる射精感を助長するかのように、トネスは更に強く彼自身を締め付けた。
 
「くッ…!」
「んんうううぅぅぅぅぅっ…!!」
 
熱い奔流が走り、トネスのなかにそれは放たれた。
トネスはシーツを強く握り締めて目を固く閉じ、放たれた熱を感じる度にびくりと震えた。
一滴残らず吸い上げるように締め上げつつ、与えられる悦びに打ち震える。
そして接合部から白い液体が溢れ出す頃に、全身から力が抜け、
彼女は腰を高く突き出してベッドに突っ伏したまま、熱い呼吸をし始めた。


「………あの子、どうするの…?」
 
それから熱い余韻も消え、だいぶ落ち着きを取り戻してきた時、
トネスはジェロスの胸の中でそう訊ねた。
既に二人は互いに正面から密着した状態で、揃ってベッドの上に横になっており、
毛布を肩の部分から体に被っていた。。
 
「さあな…あいつのしたいようにさせるしかないな。」
 
角竜はみんな、命がけの誇り高い頑固者だ。
自分の精神に関わることは絶対に自分で決めようとするだろう。
それが分かっているから、ジェロスもディアに関しては好きにさせるしかなかった。
しかし、本人が強くなりたいと望むなら……
一族の技術を教えるのもいいかもな。上手くすれば心強い味方になるかもしれない。
来るべき暗殺者との戦いに向けて、味方は多い方がいいだろう。
そんなジェロスなりの打算があったからこそ、ディアをすんなり泊まらせた。
闘ってみて分かったが、ディアに闘志はあったが殺気はなかった。
いきなり不意打ちを喰らわせて殺すなんて事は、恐らくしないだろう。
 
「むぅぃ……」
 
トネスは少し不満そうな声をあげた。
顔を胸に埋めているためその表情は見えないが、大体予想はつく。
暗殺者のこともトネスにはもう話してあるから、心配なのだろう。
ジェロスはふっと微笑み、片手でトネスの頭を優しく撫でる。
さらりと流れる砂漠色の髪の感触が心地よい。
 
「大丈夫だ…ゴズ家の技術を信じろ。
俺は誰にも負けんよ……」
 
優しく囁き、トネスを安心させてやろうとする。
とはいえ、ジェロス自身も多少の不安は感じていた。
ディアのことは安全だと分かっているからトネスほどの不安感はないが、
暗殺者の襲来に関しては、どうしても不安に思ってしまう。
襲われた経験がない訳ではないが、やはり命を狙われるというのは嫌なもの。
正体の見えない暗殺者に四六時中狙われるのは、非常に気分が悪い。
だが、それも宿命だ。ゴズ家の当主が安寧の内に死ぬことはあり得ない。
その結末は、モンスターか暗殺者の手にかかっての死、以外にあり得ないのだ。

「大丈夫だ……」
 
とはいえ、それをトネスには気付いてほしくない。
ジェロスは噛み締めるように、再度呟いた。
勝手な願いかもしれないが、ジェロスは心からトネスの幸福を願っていた。
だから、あんまり心配をかけさせたくない。
それと同時に、自分自身もこの幸せな時間から抜け出したくはない、
という気持ちがジェロスの心の片隅には存在した。
 
「ジェロス…」
 
ジェロスの胸に顔を押し付けたまま、トネスの体が小刻みに震え始めた。
声も、まるで闇を怖がる小動物のように弱々しい。
 
「すきだよ……だから…だからどこへも行かないで…
 勝手な気持ちかもしれないけど……あなたを、失いたくない…」
 
「…………………………」
 
ジェロスは、そんな彼女の頭を黙って撫で続けた。
子をあやす母親のように、可能な限り優しく。
確かに感じるトネスの温もりを愛でるように、可能な限り愛おしく。
 
 
 
──このとき、ジェロスの心の片隅に別の感情が現れた。
それにはジェロス自身も気付いていないが、この感情はいつか種火となるだろう。
隅っこにひっそりと隠れ、いつか時を待って燃え上がる。
そこからは、鞠が坂道を転がり落ちるが如し。
この危険な種火が、いつしか彼自身をも焼く。
今まで一度も抱いたことのない、特異な感情である。
 
その感情は、パーシェルの父親を殴った時のものに似ていた。
その表情は、蝋燭の火を眺める彼自身の父親のそれに似ていた。
彼自身も気付かぬ、些細な想い。
しかし、確かにそれは今この場で誕生した。
 
(ゴズ家にさえ生まれて来なければ、こいつを悲しませることもなかったのだろうか)
 
とうとうぐずり始めてしまったトネスの頭を撫でながら、
彼はまったく無意識に、頭の中で読み上げることすらなく、
そんな考えとも呼べぬ朧げな想いを、心の片隅に産み落とした。



緊急企画:『ジェロスに聞こう!ゴズ一族について』
 
この企画はQ&A形式で、ゴズ一族についてのことをジェロス氏に教えてもらう企画です!
なにせ非常に特異なオリジナル設定ですからね!
 
Q、あなたの曾祖父がギルドナイト二人を返り討ちにしたというのは本当ですか?
A、ああ、本当だ。その時の負傷で10日後に死んだらしいがな。
  俺の曾祖父は一族の歴代の中でも相当強い人だったらしい。
 
Q、従兄弟がギルドに潜入してるそうですね?
A、……よくそんなこと知ってるな。ここだけの話だが、あいつはもう死んだことになってる。
  ショウグンギザミに胸を刺されたとき、治療中に暗殺者が来ないようにとそうしたらしいな。
  そいつを今になっても利用しているようだが、怪しまれてくると他のギルドに逃げ込むようだ。
  地方によって、ハンターを統轄するギルドはそれぞれ違うからな。
 
Q、ヤマツカミ安全討伐なんてよくできますね。
A、…3ヶ月もかけてじわじわ闘えば、それなりの腕でも狩れると思うぞ。
  おれたち一族は時間制限に縛られないから、じっくりと長期的に戦える。
  敵の生態や動きを観察するだけの時間は十二分にあるってことだ。
  古龍相手に一般ハンターどもがやるような短期決戦を一人で挑めば、流石の俺達でも苦戦するさ。
 
Q、トネスさんのウィークポイントは?
A、胸だな。特に乳首辺りが弱い。で、それがどうかしたか?
Q、なんでもありません
A、そうか
 
Q、古龍生態記録などはあるのですか?
A、ハンターとして重要な情報はだいたい記録として残っている。
  …だが、古龍に関しては口伝だ。書物を残すと古龍観測局と揉めなきゃならなくなって面倒だからな。
  尤も、古くからの口伝だから民間伝承みたいで殆ど役に立ちゃしないが…
 
Q、では、古龍はどのように狩っているのですか?
A、情報に関しちゃ、先代の経験から教わったりとか、一族同士で連絡を取り合ったりしているが、結局は実戦で戦い方や生態を学んで狩るしかない。
  それでも一族の戦闘術は豊富にあるから、他の一般ハンターどもに比べて生存率は高いようだが、
  己自身の経験が最もモノを言うのは、俺達も一般ハンターもさして変わりはない。
 
Q、暗殺者への対抗技術はどうやって確立したのですか?
A、長年に渡るギルドとの戦いの中で、自然に確立された。
  同時に対人戦の技術も生まれたよ………本来、ハンターには無用の長物なんだがな…
 
Q、トネスさんの好きな体位は?
A、俺は横からが好きなんだが、あいつは後ろからが好きなようだ。
  ………これゴズ家に関係あることか?
Q、ありません
A、………
 
Q、ゴズ一族の強さの秘訣はなんですか?
A、百年以上ハンターだけやってきた中で培われてきた歴史的技術と、
  膨大なそれをものにするための地獄の鍛練だ。
  跡取りは5歳から一日15時間の鍛練を毎日やり、一人前になっても狩りの日以外は一日に10時間は鍛練する。
  俺達は超人じゃない。ちょいとばかし他の連中より努力家なだけだ。
 
Q、当主はどのようにして決まるのですか?
A、直系の男子か女子かから、戦闘能力によって決められる。
  モンスターや暗殺者にあっさりやられる当主じゃ適わんからな。
 
Q、トネスさんの胸のサイズは?
A、Dカップ……だから関係ないだろこれ。
Q、すいませェん
A、お前は磔刑だッ!

<続く>
2010年08月19日(木) 12:37:23 Modified by gubaguba




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