最終更新:ID:EFed4ncmMQ 2022年04月20日(水) 02:20:09履歴
作者:せきつ生花
────────────────────
もしよろしければ先にこちらの方をお読みください
───────────────────────────
「じゃあさっきよりも"優しく"でお願いしますね」
互いに腰を下ろし、目線をできるだけ合わせる。そうすればさっきみたいなことはそうそう起こり得ないはず。二人で出した結論だった。
恐る恐る手を伸ばし、莫邪の双丘を手で包み込む。その綺麗な形を潰してしまわないように。丁寧に。丁寧に。
「んぅ〜……」
二人が感じていることは同じだった。じれったい。歯がゆい。もどかしい。もっと激しく交わりたいのに、さっきの失敗が頭をよぎる。きっとこのままでも……だけど本当はもっと……
「んっ!」
己の胸を揉む手に、莫邪はそっと自分の手を重ねる。そしてその手を己の胸に押し付け、もっと強く揉むよう催促する。指示通りに揉む力を強めるとだんだん莫邪の息が上がり、その目が再び蕩けはじめる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……んん〜っ!」
必死にこちらへ首を伸ばす莫邪。その意図を汲み、こちら側も距離を詰めて密着する。即座に彼女はこちらの唇に吸い付いた。
「んくっ!んくっ!ぎゅッて……ぎゅうッてしてください」
胸を揉むのを止めて莫邪の背に腕を回す。彼女の華奢な身体を包み込むように抱きしめた。
「ああっ!」
莫邪が顔を寄せる。その頭を優しく撫でると小鳥のような喘声をあげながら頬を擦り擦りと寄せてくる。その様が愛おしくてたまらない。
「こんなのはじめて……」
そんな呟きが莫邪の口から漏れ出た。
──────────
「……あの……最後までしませんか?」
思わぬ提案に身を固くする。
「ごめんなさい!ズルい聞き方でしたね……最後までしてほしいんです。お願いします」
真剣な目で見つめてくる莫邪。もちろんこちらの答えは一つしかない。
「ありがとうございます。ちょっと待っててくださいね……」
莫邪は立ち上がり、奥に立てかけた自分の剣を手に取った。
「今日のことは秘密って約束ですけど、特に今からすることは絶対に黙っててください」
そう言うと莫邪は剣を自分の股に挟み込む
「あ……やっぱり見ないでいただけますか?……その……恥ずかしいので……」
シュルッ……
静寂の中で微かな音が虚に響く。
「はい、終わりました。これで最後までできますよ」
──────────
「これが貴方の……」
莫邪はこちらの肉棒をまじまじとみつめる。眈々と、淡々と、坦々と。さすがに恥ずかしいという意を伝えると彼女は慌てて謝意を示す。そして恐る恐るこう聞いてきた。
「少し……触ってみてもいいですか?」
少したじろぐが、散々莫邪の身体を触ってきた身としてはそれを拒否するのは不義理だろう。触っても大丈夫だと伝えると彼女はこちらの肉棒を触り始めた。
薄布のさらさらとした感触、薄布越しに伝わる僅かな体温、そして繊細な指使い。そのどれもが心地好く、だからこそ踏ん張るのが大変だ。
「ふふっ!剣の柄みたいって思ったけど色々違うんですね……あ、ごめんなさい。貴方のそれを物みたいな呼び方して……!」
実際モノだから大丈夫なんて冗談をとばす余裕もない。無論、あっても言わないが。
「その……そろそろ挿れても……あ、その前に私もですよね……」
莫邪は腰の装束の前部分を手で払い上げる。そこには下半身を覆う薄布に一筋の切れ目が入っており、そこから下の肌色がチラチラと見え隠れしていた。
「じ、実は既に少しだけ濡れちゃってて……だから少しだけ。少しだけで大丈夫だと思うんです。あ、でも貴方が望むのならたくさんしてくれてもいいと言いますか、先程貴方のそれを私が好き勝手してしまったから少しだけで終わらせちゃうのは不義理と言いますか……いや、触ってほしくてたまらないってわけじゃなくてですねでも貴方に触られるならそれはそれでいいというかむしろ少しだけ触ってほしぃ……ぅぅ……」
徐々に声がか細くなっていく様に少し笑みが溢れそうになる。それを悟られないよう振る舞いつつ、彼女の秘所に手を当てた。
「あうぅ……」
莫邪がこちらにもたれ掛かる。こちらの両肩に手を乗せ、頭をこちらの胸元に埋める。おそらくは顔を見られたくないのだろう。こちらが手を動かすと、その度に彼女は身体をピクピクと震わせる。
「ぅぅ……きゃんっ!」
割れ目を指でなぞると莫邪は子犬のような喘声をあげ、ビクンと震えた。
「ぃ、いじわるはやめ……ひぅんっ!」
涙目で見上げる莫邪。その反応が可愛らしくてつい指を動かしてしまう。
「ひぅっ!ぃ、いじわるぅ……うぅ……」
流石に少しやり過ぎたかもしれない。むくれる莫邪の頭を撫でてなだめる。少なくとも挿れても大丈夫な程には濡れているように思えた。だが次の段階に移ろうにも彼女の手がこちらの肩をガッシリと掴んで離さない。
「……」
莫邪の目からは口とは違う何かを訴えかけるような圧を感じた。
それからしばらくの間、虚の中では莫邪の喘声が響き続けるのだった。
──────────
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……それでは……お願いします」
息も絶え絶えの様子で迫る莫邪。先程まで散々喘声をあげ続けたから仕方ないとはいえ、その様子にはこのまま続けて大丈夫なのかという不安もわいてくる。
「ん!」
莫邪は仰向けに寝転がりやんわりと腕を広げる。彼女には尻尾が生えているため、仰向けに寝転がると自然と腰が浮き上がった体勢になる。ぱたぱたと地面を叩く尻尾の先端が、まるで早くしろとこちらに催促しているかのようだった。意を決して彼女の身体に覆い被さる。
「んくぅ〜ッ」
莫邪の秘所は思いの外すんなりとこちらの肉棒を受け入れた。少し驚きを覚えてしまうほどに……あれほど丹念に濡らしたのであればそれも当然ということだろうか。
「どうかしましたか?」
莫邪が問いかける。彼女の伸ばした手がこちらの頬をそっと撫でた。
「ずっと私を見ててください。私も貴方を見ています」
いつの間にか背後に回り込んだ尻尾がこちらの腰をトントンと叩く。莫邪の目はどこか物欲しげな色を映し出していた。まるで導かれるかのように腰を動かしていく。
「ん!ん!ん!ん!ん!」
パンパンと肉が打ちあう音。こちらの荒い息づかい。そして莫邪の甘い喘声。
華奢な体躯に反して、莫邪の中は優しく包み込むかのようであり、腰を動かすのは容易かった。突けば突くほどに互いの熱は高まっていき、高まった熱を発散するためになおさら二人は激しく交わる。
「はぁ、はぁ、はぁ……あんッ!んんッ!」
互いの両手は貝殻繋ぎに。離れないように。離れないように。
「も、もっと!もっと奥にィ!」
莫邪は求める。何かを忘れるように。何かを塗りつぶすように。
「もっと激しく!激しくしてください!」
だから応えようとする。もっと激しく。もっと強く。
だが限界が近かった。これ以上続けると莫邪の中に出してしまう可能性もあった。頃合いを見計らい、肉棒を彼女から引き抜こうとする。
「駄目ッ!」
莫邪の尻尾がこちらに巻きつき、がっちりと互いの身体を密着させる。これでは引き抜くことができない。
「離れないでください!逃げないでください!もっと奥にください!もっと激しくしてください!」
莫邪は懇願する。
「私に……忘れさせてください!」
こちらがついに果てたのはその叫びと同時だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今の私は幸せです。
幸せなんです。
大切に想う人がいます。
大切に想ってくれる人がいます。
なのになんで……なんでなんですか!
なんで消えてくださらないのですか……
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
朝を迎え、虚に朝日が射し込む。それを目覚ましに、疲れた身体と頭を強引に起こす。見渡すと莫邪の姿は虚の中にはない。急いで虚を抜け出す。
「ハッ!……セヤァッ!……」
見慣れた光景が目の前にはあった。己の剣を振るい、鍛練に勤しむ莫邪の姿が。
鍛練の邪魔になるのはいけないと判断し、虚の入り口からそれを眺める。暫くすると莫邪はこちらに気付き慌てて駆け寄ってきた。
「お目覚めになられてましたか!それに気づかず失礼いたしました」
謝意を示す莫邪に気にしなくていいと伝える。いつもならこちらの視界に入った時点でとうに気づいてくれる彼女がここまで気づくのが遅れた。それほど鍛練に意識を集中しなければいけない何かがあったということだ。
「ここは朝日だけが射し込む場所なんです」
にこりと微笑む莫邪。その目元には泣き腫らした形跡。そのわけを聞くか……それとも聞かないか……その判断に迷っていると、彼女は勢いよく頭を下げてきた。
「……もうしわけありません!私としたことが……貴方様にご迷惑をおかけしました!」
すぐにそんなことはないと伝える。莫邪が気にしているのは十中八九昨日のことだろう。
「貴方様がもう止めようとおっしゃってくださったのにも関わらず、私は……私は……」
俯いたままプルプルと震える莫邪。その頭を撫でて落ち着かせようと試み、それを止めた。その代わりに屈みこむようにして彼女の視界に強引に割り込む。一晩中動かし続けた腰が悲鳴を上げるが、彼女の悲しむ姿を見続けることと比べればどうってことはない。
「なんで私は忘れることができないんでしょうか……」
莫邪の口から言葉が溢れ出た。黙って耳を傾ける。
「なんで私は龍淵様のことを忘れられないんでしょうか……!」
自分でよければ力になる。話を聞くよ。そんなことを言った直後に倒れ伏した。情けないことに体力の限界だった。
「だ、大丈夫ですか!?私としたことが!ああ、貴方様にまたご迷惑を!なんとお詫びすればいいのか……!」
なんとかごろりと寝転がり莫邪を見上げる。そして互いに話をするために座るか寝転がるかをするように促す。
「……であれば私の膝なり尻尾なりを枕としてお使いください……尻尾がおすすめです」
選ばれたのは膝枕だった。
──────────
莫邪は話し始めた。
己が特殊な出自であること。
相剣師となったこと。
軍師である龍淵に師事し仕えたこと。
厳しい鍛練の日々のこと。
時折やってきた訪問者達のこと。
師が裏切ったこと。
己が師の裏切りの道具に過ぎなかったこと。
全てを話したわけではないのだろう。話せないこともあるだろう。話さなくていいこともあるだろう。話したくないこともあるだろう。それでも話せるだけのことを話してくれた。その事について謝意を述べる。
「いえ、私も少しだけ気が楽になりました」
先程よりも若干穏やかな声音。薄布の下の表情も少しだけ和らいでいるように見えた。いつの間にか真上に上った太陽を二人は眺める。
それからしばらく経って莫邪は再び口を開いた。
「私は……貴方様を利用しようとしたんです。龍淵様を忘れるために」
再び険しさを増す声音。太陽を見上げる莫邪の顔を光る雫が伝っていくのが見える。
「貴方様をそんなことに利用しただけでも罪深いことなのに……それでも私はあの方を忘れられない!私の中で忌まわしくもいき続ける!私は……っ!」
莫邪の頭に腕を回し、半ば強引にこちらの方へと向かせる。
「ッ!」
目に飛び込んできたのは潤んだ目を目一杯に見開かせた莫邪の泣き顔。
莫邪の溢した涙がこちらの顔へと降りかかる。それでもいい。それでいい。それがいい。
互いの目線を、互いの顔を合わせる。
それがどれ程大事なのか。あの夜は教えてくれた。
「わ、私は…私は……ッ!」
「貴方に抱かれているのに……貴方のことで幸せがいっぱいなはずなのに……あの方から与えられたものが……虚しさのような、苦しさのような、そんなものがたくさん溢れてきて!貴方で埋めようとしても、貴方で掻き消そうとしても、全然足りなくて。それが赦せなくて……ッ!」
「もう一緒にいちゃいけないってそう思ってるんです!こんな私が貴方のそばにいる資格なんてないって!」
「なのにどうして貴方は私を拒絶しないんですか!拒絶してくれないんですか!」
「貴方は何も悪くなくて、悪いのは全て私なのに……」
「どうして一緒にいるって言ってくれるんですか……!」
「どうして……うぅ……」
噎び泣く莫邪。己を責める彼女の頭を撫で、ただ大丈夫だと伝える。彼女はその手を自分の頬へと持っていき、頬を擦り合わせ呟いた。
「どうしてそんなに温かいんですかぁ……!」
どれ程の時間そうしていたのだろう?
莫邪はその間、ずっと頬で掌の温度を感じ続けた。
それはまるでこちらの存在を確かめるかのように。
他に誰もいないと自分に言い聞かせるかのように。
だからこちらもずっと掌で頬の温度を感じ続けた。
それはまるで莫邪の存在を刻みつけるかのように。
他に誰もいないと自分に言い聞かせるかのように。
本当に、どれ程の時間そうしていたのだろう?
──────────
「ごめんなさい……まさか日が暮れてしまうとは……」
目元を泣き腫らした莫邪が申し訳なさそうに俯く。結局虚で二晩目を過ごすこととなった。
「実はちょっとラッキーとか思ってませんか?私は思ってませんよ?……少ししか……」
俯きつつも視線はバッチリこちらを向いていた。
食料は現地調達でどうにかなったがどうにもならないものもある。例えば行灯の燃料だ。
「ごめんなさい。もう灯りを消しますね」
莫邪の合図と共に灯りが消える。太陽ですら朝日しか射し込まないこの場所に星光など意味を為すはずもなく、虚の中は暗闇に包まれた。
暫くするとシュルシュルと何かが擦る音が虚に響いた。
蛇でも入ってきたのかもしれない……行灯の方へと手を伸ばそうとした瞬間、鱗に包まれた長いものに為す術もなく身体を引き寄せられた。
「少し手荒な真似をしてごめんなさい。何せ真っ暗ですから貴方を見つけるのに苦労したんです」
耳元で囁きかける莫邪の声。瞬く間に服を脱がされ密着される。だが、昨日とは決定的に違うことがあった。
「あ、勘違いしないでくださいね。昨日あれだけ激しくしてしまったので今日はお互いお休みです」
肌に感じたのは文字通り肌の感触。柔らかくしっとりとした生暖かな肌の感触。莫邪は今、全身の薄布をも脱いだ完全に裸の状態だったのだ。
「でもこうやってお互い抱き合うだけというのもとてもいいと思うんです。むしろ私はそちらの方が好きです」
莫邪は背後から腕を伸ばし、ぎゅっと背中に密着する。背中全体に感じる柔らかな感触。特に二つの膨らみは否が応でも意識をそこへ集中させてしまうに足るもので……
「だから朝になるまでこうしててくれませんか?一応行水はしたので臭いは大丈夫です……たぶん……」
──────────
また朝を迎え、虚に朝日が射し込む。それを目覚ましに、疲れた身体と頭を強引に起こす。見渡すと莫邪の姿は虚の中にはない。急いで虚を抜け出す。
「ハッ!……セヤァッ!……」
見慣れた光景が目の前にはあった。己の剣を振るい、鍛練に勤しむ莫邪の姿が。
「あ、おはようございます!よく眠れましたか?」
やけに溌剌とした挨拶。明らかにわざとやっているのだろう。目元に悪戯な笑みを窺わせながら莫邪は己の剣を構える。
「今日の私、少し違うんですよ?明日からの私も違います。明後日も明明後日も!貴方にはわかりますか?ふふっ!」
これ見よがしに剣を振るう莫邪。素人目でも分かるくらいに覇気が違う。その事に言及すると莫邪は剣の動きを止め剣を納めた。
「うーん……まあそういうことにしてあげましょうか。貴方はわかってますね〜」
黒い薄布越しでもその顔が小僧たらしげなのは手に取るように分かるのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
相剣師は己の剣に相を映し出す。
相とは心の姿。心の有り様。
かつて師はそれを偽るために私を使った。
私の心の片隅には師がいて、だから私の剣はどこか師のそれに似ていた。
振るう剣技は師の剣で、振るう剣は師の剣で。
だけど今朝起きた時、私の剣の色が少しだけ変わっていた。
ほんの少しだけど変わってたんです。
きっとこの先も変わっていく。
だったら剣技くらいは私が作らなきゃ。
だっていつか……
いつかこの剣は貴方の色に染まるんですから。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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もしよろしければ先にこちらの方をお読みください
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「じゃあさっきよりも"優しく"でお願いしますね」
互いに腰を下ろし、目線をできるだけ合わせる。そうすればさっきみたいなことはそうそう起こり得ないはず。二人で出した結論だった。
恐る恐る手を伸ばし、莫邪の双丘を手で包み込む。その綺麗な形を潰してしまわないように。丁寧に。丁寧に。
「んぅ〜……」
二人が感じていることは同じだった。じれったい。歯がゆい。もどかしい。もっと激しく交わりたいのに、さっきの失敗が頭をよぎる。きっとこのままでも……だけど本当はもっと……
「んっ!」
己の胸を揉む手に、莫邪はそっと自分の手を重ねる。そしてその手を己の胸に押し付け、もっと強く揉むよう催促する。指示通りに揉む力を強めるとだんだん莫邪の息が上がり、その目が再び蕩けはじめる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……んん〜っ!」
必死にこちらへ首を伸ばす莫邪。その意図を汲み、こちら側も距離を詰めて密着する。即座に彼女はこちらの唇に吸い付いた。
「んくっ!んくっ!ぎゅッて……ぎゅうッてしてください」
胸を揉むのを止めて莫邪の背に腕を回す。彼女の華奢な身体を包み込むように抱きしめた。
「ああっ!」
莫邪が顔を寄せる。その頭を優しく撫でると小鳥のような喘声をあげながら頬を擦り擦りと寄せてくる。その様が愛おしくてたまらない。
「こんなのはじめて……」
そんな呟きが莫邪の口から漏れ出た。
──────────
「……あの……最後までしませんか?」
思わぬ提案に身を固くする。
「ごめんなさい!ズルい聞き方でしたね……最後までしてほしいんです。お願いします」
真剣な目で見つめてくる莫邪。もちろんこちらの答えは一つしかない。
「ありがとうございます。ちょっと待っててくださいね……」
莫邪は立ち上がり、奥に立てかけた自分の剣を手に取った。
「今日のことは秘密って約束ですけど、特に今からすることは絶対に黙っててください」
そう言うと莫邪は剣を自分の股に挟み込む
「あ……やっぱり見ないでいただけますか?……その……恥ずかしいので……」
シュルッ……
静寂の中で微かな音が虚に響く。
「はい、終わりました。これで最後までできますよ」
──────────
「これが貴方の……」
莫邪はこちらの肉棒をまじまじとみつめる。眈々と、淡々と、坦々と。さすがに恥ずかしいという意を伝えると彼女は慌てて謝意を示す。そして恐る恐るこう聞いてきた。
「少し……触ってみてもいいですか?」
少したじろぐが、散々莫邪の身体を触ってきた身としてはそれを拒否するのは不義理だろう。触っても大丈夫だと伝えると彼女はこちらの肉棒を触り始めた。
薄布のさらさらとした感触、薄布越しに伝わる僅かな体温、そして繊細な指使い。そのどれもが心地好く、だからこそ踏ん張るのが大変だ。
「ふふっ!剣の柄みたいって思ったけど色々違うんですね……あ、ごめんなさい。貴方のそれを物みたいな呼び方して……!」
実際モノだから大丈夫なんて冗談をとばす余裕もない。無論、あっても言わないが。
「その……そろそろ挿れても……あ、その前に私もですよね……」
莫邪は腰の装束の前部分を手で払い上げる。そこには下半身を覆う薄布に一筋の切れ目が入っており、そこから下の肌色がチラチラと見え隠れしていた。
「じ、実は既に少しだけ濡れちゃってて……だから少しだけ。少しだけで大丈夫だと思うんです。あ、でも貴方が望むのならたくさんしてくれてもいいと言いますか、先程貴方のそれを私が好き勝手してしまったから少しだけで終わらせちゃうのは不義理と言いますか……いや、触ってほしくてたまらないってわけじゃなくてですねでも貴方に触られるならそれはそれでいいというかむしろ少しだけ触ってほしぃ……ぅぅ……」
徐々に声がか細くなっていく様に少し笑みが溢れそうになる。それを悟られないよう振る舞いつつ、彼女の秘所に手を当てた。
「あうぅ……」
莫邪がこちらにもたれ掛かる。こちらの両肩に手を乗せ、頭をこちらの胸元に埋める。おそらくは顔を見られたくないのだろう。こちらが手を動かすと、その度に彼女は身体をピクピクと震わせる。
「ぅぅ……きゃんっ!」
割れ目を指でなぞると莫邪は子犬のような喘声をあげ、ビクンと震えた。
「ぃ、いじわるはやめ……ひぅんっ!」
涙目で見上げる莫邪。その反応が可愛らしくてつい指を動かしてしまう。
「ひぅっ!ぃ、いじわるぅ……うぅ……」
流石に少しやり過ぎたかもしれない。むくれる莫邪の頭を撫でてなだめる。少なくとも挿れても大丈夫な程には濡れているように思えた。だが次の段階に移ろうにも彼女の手がこちらの肩をガッシリと掴んで離さない。
「……」
莫邪の目からは口とは違う何かを訴えかけるような圧を感じた。
それからしばらくの間、虚の中では莫邪の喘声が響き続けるのだった。
──────────
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……それでは……お願いします」
息も絶え絶えの様子で迫る莫邪。先程まで散々喘声をあげ続けたから仕方ないとはいえ、その様子にはこのまま続けて大丈夫なのかという不安もわいてくる。
「ん!」
莫邪は仰向けに寝転がりやんわりと腕を広げる。彼女には尻尾が生えているため、仰向けに寝転がると自然と腰が浮き上がった体勢になる。ぱたぱたと地面を叩く尻尾の先端が、まるで早くしろとこちらに催促しているかのようだった。意を決して彼女の身体に覆い被さる。
「んくぅ〜ッ」
莫邪の秘所は思いの外すんなりとこちらの肉棒を受け入れた。少し驚きを覚えてしまうほどに……あれほど丹念に濡らしたのであればそれも当然ということだろうか。
「どうかしましたか?」
莫邪が問いかける。彼女の伸ばした手がこちらの頬をそっと撫でた。
「ずっと私を見ててください。私も貴方を見ています」
いつの間にか背後に回り込んだ尻尾がこちらの腰をトントンと叩く。莫邪の目はどこか物欲しげな色を映し出していた。まるで導かれるかのように腰を動かしていく。
「ん!ん!ん!ん!ん!」
パンパンと肉が打ちあう音。こちらの荒い息づかい。そして莫邪の甘い喘声。
華奢な体躯に反して、莫邪の中は優しく包み込むかのようであり、腰を動かすのは容易かった。突けば突くほどに互いの熱は高まっていき、高まった熱を発散するためになおさら二人は激しく交わる。
「はぁ、はぁ、はぁ……あんッ!んんッ!」
互いの両手は貝殻繋ぎに。離れないように。離れないように。
「も、もっと!もっと奥にィ!」
莫邪は求める。何かを忘れるように。何かを塗りつぶすように。
「もっと激しく!激しくしてください!」
だから応えようとする。もっと激しく。もっと強く。
だが限界が近かった。これ以上続けると莫邪の中に出してしまう可能性もあった。頃合いを見計らい、肉棒を彼女から引き抜こうとする。
「駄目ッ!」
莫邪の尻尾がこちらに巻きつき、がっちりと互いの身体を密着させる。これでは引き抜くことができない。
「離れないでください!逃げないでください!もっと奥にください!もっと激しくしてください!」
莫邪は懇願する。
「私に……忘れさせてください!」
こちらがついに果てたのはその叫びと同時だった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今の私は幸せです。
幸せなんです。
大切に想う人がいます。
大切に想ってくれる人がいます。
なのになんで……なんでなんですか!
なんで消えてくださらないのですか……
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
朝を迎え、虚に朝日が射し込む。それを目覚ましに、疲れた身体と頭を強引に起こす。見渡すと莫邪の姿は虚の中にはない。急いで虚を抜け出す。
「ハッ!……セヤァッ!……」
見慣れた光景が目の前にはあった。己の剣を振るい、鍛練に勤しむ莫邪の姿が。
鍛練の邪魔になるのはいけないと判断し、虚の入り口からそれを眺める。暫くすると莫邪はこちらに気付き慌てて駆け寄ってきた。
「お目覚めになられてましたか!それに気づかず失礼いたしました」
謝意を示す莫邪に気にしなくていいと伝える。いつもならこちらの視界に入った時点でとうに気づいてくれる彼女がここまで気づくのが遅れた。それほど鍛練に意識を集中しなければいけない何かがあったということだ。
「ここは朝日だけが射し込む場所なんです」
にこりと微笑む莫邪。その目元には泣き腫らした形跡。そのわけを聞くか……それとも聞かないか……その判断に迷っていると、彼女は勢いよく頭を下げてきた。
「……もうしわけありません!私としたことが……貴方様にご迷惑をおかけしました!」
すぐにそんなことはないと伝える。莫邪が気にしているのは十中八九昨日のことだろう。
「貴方様がもう止めようとおっしゃってくださったのにも関わらず、私は……私は……」
俯いたままプルプルと震える莫邪。その頭を撫でて落ち着かせようと試み、それを止めた。その代わりに屈みこむようにして彼女の視界に強引に割り込む。一晩中動かし続けた腰が悲鳴を上げるが、彼女の悲しむ姿を見続けることと比べればどうってことはない。
「なんで私は忘れることができないんでしょうか……」
莫邪の口から言葉が溢れ出た。黙って耳を傾ける。
「なんで私は龍淵様のことを忘れられないんでしょうか……!」
自分でよければ力になる。話を聞くよ。そんなことを言った直後に倒れ伏した。情けないことに体力の限界だった。
「だ、大丈夫ですか!?私としたことが!ああ、貴方様にまたご迷惑を!なんとお詫びすればいいのか……!」
なんとかごろりと寝転がり莫邪を見上げる。そして互いに話をするために座るか寝転がるかをするように促す。
「……であれば私の膝なり尻尾なりを枕としてお使いください……尻尾がおすすめです」
選ばれたのは膝枕だった。
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莫邪は話し始めた。
己が特殊な出自であること。
相剣師となったこと。
軍師である龍淵に師事し仕えたこと。
厳しい鍛練の日々のこと。
時折やってきた訪問者達のこと。
師が裏切ったこと。
己が師の裏切りの道具に過ぎなかったこと。
全てを話したわけではないのだろう。話せないこともあるだろう。話さなくていいこともあるだろう。話したくないこともあるだろう。それでも話せるだけのことを話してくれた。その事について謝意を述べる。
「いえ、私も少しだけ気が楽になりました」
先程よりも若干穏やかな声音。薄布の下の表情も少しだけ和らいでいるように見えた。いつの間にか真上に上った太陽を二人は眺める。
それからしばらく経って莫邪は再び口を開いた。
「私は……貴方様を利用しようとしたんです。龍淵様を忘れるために」
再び険しさを増す声音。太陽を見上げる莫邪の顔を光る雫が伝っていくのが見える。
「貴方様をそんなことに利用しただけでも罪深いことなのに……それでも私はあの方を忘れられない!私の中で忌まわしくもいき続ける!私は……っ!」
莫邪の頭に腕を回し、半ば強引にこちらの方へと向かせる。
「ッ!」
目に飛び込んできたのは潤んだ目を目一杯に見開かせた莫邪の泣き顔。
莫邪の溢した涙がこちらの顔へと降りかかる。それでもいい。それでいい。それがいい。
互いの目線を、互いの顔を合わせる。
それがどれ程大事なのか。あの夜は教えてくれた。
「わ、私は…私は……ッ!」
「貴方に抱かれているのに……貴方のことで幸せがいっぱいなはずなのに……あの方から与えられたものが……虚しさのような、苦しさのような、そんなものがたくさん溢れてきて!貴方で埋めようとしても、貴方で掻き消そうとしても、全然足りなくて。それが赦せなくて……ッ!」
「もう一緒にいちゃいけないってそう思ってるんです!こんな私が貴方のそばにいる資格なんてないって!」
「なのにどうして貴方は私を拒絶しないんですか!拒絶してくれないんですか!」
「貴方は何も悪くなくて、悪いのは全て私なのに……」
「どうして一緒にいるって言ってくれるんですか……!」
「どうして……うぅ……」
噎び泣く莫邪。己を責める彼女の頭を撫で、ただ大丈夫だと伝える。彼女はその手を自分の頬へと持っていき、頬を擦り合わせ呟いた。
「どうしてそんなに温かいんですかぁ……!」
どれ程の時間そうしていたのだろう?
莫邪はその間、ずっと頬で掌の温度を感じ続けた。
それはまるでこちらの存在を確かめるかのように。
他に誰もいないと自分に言い聞かせるかのように。
だからこちらもずっと掌で頬の温度を感じ続けた。
それはまるで莫邪の存在を刻みつけるかのように。
他に誰もいないと自分に言い聞かせるかのように。
本当に、どれ程の時間そうしていたのだろう?
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「ごめんなさい……まさか日が暮れてしまうとは……」
目元を泣き腫らした莫邪が申し訳なさそうに俯く。結局虚で二晩目を過ごすこととなった。
「実はちょっとラッキーとか思ってませんか?私は思ってませんよ?……少ししか……」
俯きつつも視線はバッチリこちらを向いていた。
食料は現地調達でどうにかなったがどうにもならないものもある。例えば行灯の燃料だ。
「ごめんなさい。もう灯りを消しますね」
莫邪の合図と共に灯りが消える。太陽ですら朝日しか射し込まないこの場所に星光など意味を為すはずもなく、虚の中は暗闇に包まれた。
暫くするとシュルシュルと何かが擦る音が虚に響いた。
蛇でも入ってきたのかもしれない……行灯の方へと手を伸ばそうとした瞬間、鱗に包まれた長いものに為す術もなく身体を引き寄せられた。
「少し手荒な真似をしてごめんなさい。何せ真っ暗ですから貴方を見つけるのに苦労したんです」
耳元で囁きかける莫邪の声。瞬く間に服を脱がされ密着される。だが、昨日とは決定的に違うことがあった。
「あ、勘違いしないでくださいね。昨日あれだけ激しくしてしまったので今日はお互いお休みです」
肌に感じたのは文字通り肌の感触。柔らかくしっとりとした生暖かな肌の感触。莫邪は今、全身の薄布をも脱いだ完全に裸の状態だったのだ。
「でもこうやってお互い抱き合うだけというのもとてもいいと思うんです。むしろ私はそちらの方が好きです」
莫邪は背後から腕を伸ばし、ぎゅっと背中に密着する。背中全体に感じる柔らかな感触。特に二つの膨らみは否が応でも意識をそこへ集中させてしまうに足るもので……
「だから朝になるまでこうしててくれませんか?一応行水はしたので臭いは大丈夫です……たぶん……」
──────────
また朝を迎え、虚に朝日が射し込む。それを目覚ましに、疲れた身体と頭を強引に起こす。見渡すと莫邪の姿は虚の中にはない。急いで虚を抜け出す。
「ハッ!……セヤァッ!……」
見慣れた光景が目の前にはあった。己の剣を振るい、鍛練に勤しむ莫邪の姿が。
「あ、おはようございます!よく眠れましたか?」
やけに溌剌とした挨拶。明らかにわざとやっているのだろう。目元に悪戯な笑みを窺わせながら莫邪は己の剣を構える。
「今日の私、少し違うんですよ?明日からの私も違います。明後日も明明後日も!貴方にはわかりますか?ふふっ!」
これ見よがしに剣を振るう莫邪。素人目でも分かるくらいに覇気が違う。その事に言及すると莫邪は剣の動きを止め剣を納めた。
「うーん……まあそういうことにしてあげましょうか。貴方はわかってますね〜」
黒い薄布越しでもその顔が小僧たらしげなのは手に取るように分かるのだった。
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相剣師は己の剣に相を映し出す。
相とは心の姿。心の有り様。
かつて師はそれを偽るために私を使った。
私の心の片隅には師がいて、だから私の剣はどこか師のそれに似ていた。
振るう剣技は師の剣で、振るう剣は師の剣で。
だけど今朝起きた時、私の剣の色が少しだけ変わっていた。
ほんの少しだけど変わってたんです。
きっとこの先も変わっていく。
だったら剣技くらいは私が作らなきゃ。
だっていつか……
いつかこの剣は貴方の色に染まるんですから。
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このページへのコメント
莫邪ちゃんほんとかわいい…
感想ありがとうございます!
性格部分を可愛く描けるように頑張ったのでそう言ってもらえると凄く嬉しいです!