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「今夜から何日も雨が降るってさ〜」

「え〜…マジかよ…いやだなぁ…」



魔法学校の廊下で私、ウィンは同級生のヒータと、とある男の子の三人で教室へ向かっている途中、ふと窓から見える暗い雲を見て話をしていた。

三人は学校に入学してからの仲良して、隣のクラスのエリアとアウスとも、ヒータと一緒に仲良くしているけど、同じクラスとなるといつも三人で話をしていた。



「確かにヒータちゃんは火霊使いだから雨は苦手か」

「それだけじゃねえよ…毎朝髪のセットが大変なんだよ……普段もボサボサ気味なのにさぁ…」

「あぁ…それは確かにつらいね…」



ヒータはその長い赤髪をポニーテールでまとめている。少しくせ毛気味なのか、よく髪がはねていてボサボサ気味だ。

「まぁ、ボサボサでも大して変わんねぇよ」と、彼は言う。



「んだとお前〜〜〜!!!」



ヒータが腕を振り上げて逃げた彼を追いかける。私は笑って二人の背中を見る。

なんてことのない三人の日常が好きだった。ヒータの楽しそうに怒る顔が好きだった。彼のことが異性として好きだった。

私はこの日常を護りたい。この三人の関係を護りたい。だから決して彼にこの想いを伝えるつもりはなかった。









「ふぅ…次の授業までなにしよっかな〜」



校舎のはずれの空き教室。私は授業の合間に一人、だれもいないここで暇を持て余していた。



「ちょっと寝ようかな…昨日も練習頑張ったし……」



机に突っ伏すと、重くなっていた瞼を下ろしていく。誰もいない教室に私一人だけ。



「ふぁ〜あ……眠いな……」



私は机に顔を伏せるとそのまま瞼を閉じた。

少し時間がたってから、小さな足音で私は目覚める。徐々に近づいてくるその音はどうやら二人分。それも迷わずにこの教室に向かってくる。

思わず私はロッカーに入る。理由は特にない。ちょっとした胸騒ぎが、私をそうさせた。



「おい、ここ学校だぞ!?ほんとにすんのかよ……」



聞きなれた女の子の声の後に「大丈夫だって、ここ誰も来ないから」と、聞きなれた男の子の声が聞こえた。私はロッカーの隙間から覗く。そこにいたのは彼とヒータだった。



「ったく…ここで抜いてくれってさぁ……わかったよ…出せよ…」



ヒータは彼のズボンのファスナーを開けると、大きく怒張したそれが飛び出す。

思わず目を疑う。なんで二人がこんなことをしているのか、私にはわからなかった。いや、わかりたくなかった。



「相変わらずでけぇなぁ…チュッ……ンチュ…チュパ……♡」

ヒ―タは彼のそれに優しく口づけをする。そしてそのまま口の中に入れていく。



「じゅる……レロォ……ンンッ……ジュルルルルルッ♡」



次第に激しく、いやらしい音を立て始める。私は思わず顔をそむけた。耳を塞ぎたいけど、ロッカーに隠れるために両手が塞がっている以上それもできない。早く終わって欲しかった。しかし二人は止まる気配がないどころか、さらに激しくなっていく。

心臓が苦しい。必死に脳に酸素を送ろうと口で小刻みに呼吸をする。呼吸する音が二人に聞こえているんじゃないかと思うくらい、全身がドクドクと脈打っていた。



「ンッ♡ジュルルルッ♡レロォ……♡あはは!お前の顔、蕩けて涎も出ちまってんぞ♡もうそんなに気持ちいのかよ♡」



私が好きなヒータの笑顔。今もヒータは笑顔で彼のそれを舐めている。でもその笑顔は私の知っているものではない。

好きだったはずのヒータの笑顔が、今となっては私を苦しめる。



「そろそろ出そうか♡いいぜ……全部飲んでやるからな♡」



そう言ってヒータはさらに激しく責め立てる。そして遂にその時がきた。彼の腰がビクンと大きく跳ねると、白濁液を吐き出す。



「ングッ!?ンッ!ゴクッ!!ングッ……!!ぷはぁ!」



喉に引っかかっていたのか、ヒータの口からも白濁液が溢れ出る。それでも必死に飲み込もうとするヒータ。そんなヒータの口や顔には、白濁液がべったりと付いていた。



「ったく…顔が汚れちまったじゃねえかよ…」



そう言いながらもヒータは顔についた白濁液を指ですくい、口に運んでいく。

うっとりとした顔ですべてを舐め取り立ち上がると、ヒータは水筒の水を飲む。

それを見た彼はヒータに抱き着き、強引に唇を奪う。



「んぐっ!おい、ちょっとま……んっ♡ふっ……ちゅぱ……♡」



もはや抵抗のそぶりすら見せない。ヒータはびっくりした顔を一瞬見せるだけですぐに彼の唇を受け入れる。

もう立っていられなかった。ロッカーの内壁に体重を預けて、何とか姿勢は維持できているが、心臓の締め付ける苦しさも、呼吸が上手くできない息苦しさも、何もかもが限界だった。



「ぷはっ…♡お前なぁ…水飲んでからだったからよかったけどよぉ…ンチュッ♡」



「もうやめて」とロッカーから飛び出せば二人はこれ以上のことはやめるだろうか…でもそんなことをしたらこれまで通りの日常はもう二度と訪れない。だから私は声を殺して二人を盗み見ることしかできない。



「あたしのことが好きだからって……それなら教室移動の時のあれは何だよ!あたしも結構怒ってるんだぞ……」



きっとさっき私と三人でいた時のことを言っているのだろう。ヒータは少し怒ったような顔で彼に詰め寄っていく。

彼は少し反省気味にヒータの頭をなでる。



「悪いと思ってるなら…責任とれよ…頭なでながら…好きって囁きながらエッチしろ……」



ヒ―タが服を脱ぐ。彼はそれを彼女の頭をなでながらじっとみている。

彼も服を脱ぎ始め、机に座ってヒータを受け止める姿勢をとる。

あぁ…ついに始まるのだと、私は直感で察した。私はどうすればいいかわからない。いや、どうすることもできないのかもしれない。

これまでの日常を続けたいというエゴと、二人の関係がこれ以上自分の目の前で進んでほしくないというエゴ。

板挟みになっている私にはただ二人を見届けることしかできない。



「んあぁああ♡い、入れるぞ……っ♡はぁああ♡」



彼の上にまたがったヒータはゆっくりをそれを自分の中に入れていく。



「はぁ……はぁ……ふぅ♡あっ、あぁっ!こ、これ好きぃ♡」



その反応から、二人が初めてではないことがわかる。ヒータも彼の上で腰を振り始める。彼はヒ―タが腰を落とすたびに彼女の耳元で「好きだ」とささやいている。

それを耳にするたびに私は何かを頭にぶつけられるような痛みに襲われる。



「あぁ♡あたしもお前のことが好き♡好きだ♡大好き♡」



ヒータは腰を振り続ける。そのたび彼は耳元で愛を囁いていく。私は耳を塞ぎたいけれど、それができない。

私もまた、二人の姿を見て身体を火照らせていた…

手を服の中に入れると、そこはもうすっかり濡れていて下着にはいやらしいシミができていた。

いつものように割れ目に沿うように指でなぞる。気持ちいいはずなのに、何も満たされない。



「んっ!はっ……あぁ!」



声も漏れてしまっている。きっと身体では感じている。でも、心は満たされない。



「好き…私も好きなの…」



思わず声が漏れてしまっていた。彼の言葉に応えるように彼への想いがあふれてしまう。

ヒータに向けられた愛の言葉だというのに、必死に自分に向けられたものだと思い込む。

何処までもみじめで情けない行為。

でも、もう止まらなかった。少しでも心を彼の言葉で満たしたかった。彼のことが本当に好きだった。いくら彼がヒータに愛をささやこうが、私は彼のことが一番好きだ。

こんな二人を見るくらいなら、いっそ消えてしまいたいとさえ思った。でも、それでも彼への想いは消えるどころか徐々に強くなっている。



「好き…君のことが好きだったの……」



思わず涙がこぼれる。伝えることはないと思っていた言葉と共にあふれ出す。

届くことのない言葉が、虚空に消える。



「キスしてくれ…♡もっとお前のことを感じたいんだ♡」



ヒータの言葉に彼は答える。彼はヒータの唇に自分の唇を押し付けると、二人は舌を絡める。

水音が、二人の唾液が、お互いの舌が絡み合う音が、私に聞こえてくる。



「あむ……んちゅ♡ちゅっ♡はぁ……あっ♡んぁ……♡」



ヒータは幸せそうな顔をしている。あれが彼女の恋人に向ける顔なのだと、その初めて見る表情が私の目に焼き付いていく。きっとそれが頭から離れるとこはないだろう。

とても綺麗で、とても美しい。でも、それは私には見せてくれない。



「はぁ……あぁん♡そこ気持ちいぃ♡」



ヒータは彼にもっと気持ちよくなってほしいのか、激しく腰を振る。

私はその光景を見て自分の指を動かしてしまう。指はどんどん私の割れ目の中に入っていき、中をかき乱していく。気持ちいいのに足りない。私が彼に想いを伝えていればこんなことにならなかったのではないかと、思わずにはいられなかった。

でも今の関係を望んだのは私だ。彼が私のことを選んでくれる保証なんてどこにもない。

だから私はずっと胸に秘めていた。でも、それがこんな結果を招くなんて思ってもみなかった。



「あぁ♡イク……あたしもうイッちゃう♡もっとぉ♡」

「私もいっしょにイキたい…一人にしないで…」



ヒータが絶頂に達しようとしているのに彼は腰を振るのをやめない。それどころかさらに激しく腰を打ち付ける。

私も指の動きを激しくする。



「あぁ♡イク……イグゥウウッ!!」

「私もっ!私ぃいいッ♡」



ヒータは身体を大きくのけ反らせ、絶頂を迎えると同時に潮を噴き出す。

私もロッカーの中で絶頂に達する。



「はぁ……はぁ……♡」



ヒータが彼に胸に身を寄せると、互いに腕を回して抱きしめあう。とても幸せそうな顔。それも私が見たことのない表情だった。

私は一人ロッカーの中で絶頂を迎えたことへの自己嫌悪と、二人への届くことがない想いが募るばかりで、もう限界だった。

私はその場に崩れ落ちる。もう立つことができない。必死に声を押し殺して涙をこぼしていた。

ロッカーの外からは二人の幸せそうな声が聞こえる。



「もう少しこうしててもいいか?互いに頭を撫であって…もっと幸せに浸っていたいんだ」



もう二人のことも見ていられないほどに私の心は摩耗しきっていた。









あれから何時間経ったのだろう。二人は幸せそうな声で話しながら教室を出ていく。私もゆっくりとロッカーから出て、窓を見ると日は沈み、厚い雲から雨が降り始めていた。



「水臭いな〜私にも言ってくれてもいいのに〜!」



「おはよう!二人ともいつも通り元気そうだね〜!」



明日、どうやって二人に声をかけるかを考える。いくつもセリフを考えては、没にしていく。

どうやっても今の私では二人に、作ったものでも笑顔を見せることはできない。

だから「これまで通り」と口にしては何度も何度も反芻する。

せめて雨が止むまではこうしていよう。

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