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作者:名無し
前のエピソード:ヴァンパイア・サッカーの奔放



 吸血鬼、あるいはヴァンパイアは永久の夜を生きる。

 しかし、彼らは特異な種としての気質故か同族で群れることを好まない。

 だからこそヴァンパイアにとって孤独は大敵であり、最も効く毒と言えるのかもしれない。

 一人遊びだけで紛らわし続けるにはヴァンパイアという種の一生は長すぎるのだ。

 それに気づいたとき、彼らの多くは日光の下にその身を晒すことを選択するが、平然と夜を生き続ける吸血鬼たちも少なくない。

 そんな彼らに共通して言えることがあるとすれば、何かしらの愉しみを見出していることだろう。

 要は、愉しいことの一つでもなきゃヴァンパイアなんて到底やってられないのだ。
 それが人間から吸血鬼やヴァンパイアに変質させられた者であれば猶更。

 だから、彼らは他者を巻き込む愉しみを見出す。
 永久の孤独には決して耐えられないが故に。

 ヴァンパイアとしてすでに少なくない月日を生きたフロイラインも、同族がそういう愉しみを見出す気持ち自体はよくよく理解できた。

 もっとも、理解をしても許容するかはまた別の話ではあるのだが。



「――それで、今日は何の用かしら。ファシネイター?」

「怒らないでちょうだい、フロイライン。あなたってば、滅多なことでもない限りお屋敷から出て来ないんだもの。たまにこうやって招かないと干からびたんじゃないかって心配になるのよ」

 ヴァンパイア・フロイラインは目の前に座る彼女の涼しい顔を見て思わず溜め息を零した。

 深紅のロングヘアをたなびかせ、漆黒に染まったドレスを華麗に着こなす彼女はヴァンパイア・ファシネイター。
 フロイラインにとってはヴァンパイア・サッカーと同じく数少ない友人の一人であり、今宵のお茶会の主催者だった。

 物臭な引きこもり令嬢として知られるフロイラインがわざわざ招きに応じて彼女が住む洋館まで出向くくらいなのだから、二人の付き合いの深さが窺えよう。

「いつも思うのだけど、わたしよりサッカーの方が話が合うんじゃないかしら?」

 フロイラインからすれば陽気な彼女の方が馬が合うように思うのだが、彼女の予想とは裏腹にファシネイターは首を横に振った。

「あの子は……話を聞く分は面白いのだけど、惚気話に猥談を返すようなセンスは聞き手として及第点もあげられないわ」

 惚気話をしてる自覚があるんじゃない、と思わず口にしたくなったのをフロイラインはグッと堪える。

 その衝動を誤魔化すようにファシネイターの使い魔が給仕してくれたティーカップを傾けた。
 華やかな匂いを漂わせながら湯気が微かに煙る紅茶は相変わらず絶品だ。

 そんな彼女を見ながら、ファシネイターは楽しそうに口元を緩める。

「フロイラインのそういうところが好きなのよ、私は」

「……招かれた客人らしいことなんて一つも出来てない気がするのだけど」

 ファシネイターは答える代わりにクスクスと微笑を零す。
 どうにもばつが悪くて、フロイラインはもう一度溜め息を吐いた。

「招きに応じた以上、務めは果たすけれど。置いてきた子がいるからあまり長々とは付き合えないわよ?」

 かつてフロイラインがファシネイターからの招きに応じたとき、彼女は三日三晩惚気話を続けたのだ。
 あの頃のフロイラインはいまの従者と出会う前だったから別に構わなかったが、現在は起きているのに三日三晩も会えないというのは……辛抱できそうになかった。

「えぇ、噂の彼ね? 何だったら、フロイラインが彼との話を話してくれてもいいのよ?」

「……さっさと話し始めてちょうだい、ファシネイター」

 フロイラインは憮然とした表情を浮かべながら返事をするが、その頬は微かに赤く染まっている。

 ファシネイターは彼女の可愛らしい反応に内心ほくほくしながら、ゆっくりと口を開いた。

●●

「――あら、起きたのね。おはよう♡」

 ファシネイターの下僕である青年の一日は主の膝の上で目を覚ますことから始まる。

 ヴァンパイアである主の体温は極めて低いため、彼の寝起きはいつもヒンヤリとしたそれだった。

 まだ覚醒しない頭で彼女のたわわに実ったおっぱいをボンヤリと眺めていると、ファシネイターが彼の頭をゆっくりと撫で始める。

「うふふっ、可愛い子。今日も目を開けられてえらかったわね、よしよし♡」

 彼女に撫でられる度、体内に溜まった澱が浄化されていくようだ。
 強張った身体が自然と弛緩し、今日も理性は考えることを放棄する。

 男が求めるようにママぁと訴えれば、ファシネイターは嬉しそうに頬を緩めた。

「えぇ。今日もちゃんと起きれたご褒美に、ファシネイターママのおっぱいよ♡」

 ファシネイターは身体を傾け、彼の口元に自らの豊かなおっぱいを近づける。

 ちなみにだが、青年もファシネイターもこんな日はいつも一糸まとわぬ姿だ。

 フロイラインが聞いたら何故と問う姿が容易に想像できるが、ファシネイターからすれば何故と問われること自体が疑問で仕方がない。

 主に全肯定されて甘やかされることが存在意義である彼がどうして服を着る必要があるというのか。
 愛玩される対象である彼と使い魔たちの前で主であるファシネイターが素肌を晒すことを恥じる必要があるというのか。

 だから、これは当然の帰結と言えた。

 青年がファシネイターのおっぱいを口に含んで吸い始めれば、間もなくごきゅごきゅという音が混ざり始める。

 彼は主から血液の代わりに母乳を与えられていたが、それがまた格別だった。

 温かでサラサラとした口当たりのファシネイターの母乳は啜れば啜るほどにもっと欲しくなって、ぬるま湯のような快楽が理性をドロドロに溶かしていく。

 一滴さえ漏らさないと言わんばかりに彼が力強く吸い続けていると、彼女はあやすように彼の身体をトントンとゆっくりと叩く。

「あぁ、あぁ……可愛い子♡ おち×ちんもこんなにおっきくしちゃって♡ 大丈夫よ、ママがあとでちゃあんとシコシコしてあげるから♡ おっぱいをちゅぱちゅぱすることだけ、ボーヤは考えていればいいんだからね♡♡」

 青年の視界はファシネイターのおっぱいで覆われて見えなかったが、彼の肉棒はすでに臍に当たりそうなほどに大きく反り返るように屹立していた。

 それが昂揚を訴えるように時折ビクビクッと震えながら先端から先走り汁を溢れさせる様をファシネイターは穏やかな笑みを浮かべながら見守っている。

 ママの言う通りにしておけば間違いなんて何一つあるはずがない。

 男が本能の求めるままに溢れ出る母乳を吸い続ければ、ファシネイターはいい子いい子と褒めてくれる。

「うふふっ、よしよし♡ ちゃんとちゅぱちゅぱできてえらいわねぇ♡」

 しばらくして彼が反対のおっぱいを求めれば、ファシネイターは笑顔で口元にそれを近づける。
 そして主から下賜される彼の朝食の時間はしばらくの間続いた。



「私たちヴァンパイアには弱点が幾つもあるって人間は言うけれど、あれってナンセンスだと思ったことはない?」

 ファシネイターは湯で彼の身体を流しながら、その耳元に顔を近づけて囁く。

 目覚めて間もなくの朝食が終わったあとは湯浴みの時間だ。

 ファシネイターは彼を連れて浴室に移ると、湯椅子に青年を腰かけさせる。
 洋館のバスルームという観点から見れば異質に思えるそれだが、主である彼女が下僕の身体を洗ってあげるためにはどうすればいいのかという彼女の試行錯誤の結果なのだった。

 ファシネイターは自らの豊かなおっぱいでソープを揉み込むようにして泡立てると、膝をついて彼の背に身体を寄せる。

 青年が二つの柔らかな刺激に背筋を伸ばすように身体を震わせれば、彼女は楽しそうに口元を緩めた。

「もし流水がヴァンパイアの弱点だっていうなら、私たちは自分の身さえ清めることができないじゃない。私はそんなの願い下げなんだけど、ボーヤはどうかしら?♡」

 彼はファシネイターの問いかけに首を縦にブンブンと振るが、果たしてそれは本当に肯定しているからだったのか。

 その頬が真っ赤に染まっているのを見ながら、彼女はおっぱいを滑らせるように彼の背の上で動かしていく。

「使い魔たちは……最低限綺麗であれば正直どうでもいいのだけど、ボーヤは私の大事な大事な下僕なんだからちゃんと綺麗にしないとね♡ はぁ……ふぅ、っっ……んんっ、ねぇボーヤ……どうかしら?♡」

 二つの柔らかくも大きい物体が背中の上を滑るように蠢いているというのも刺激的だったが、それ以上にファシネイターの鼻から抜けるような息が耳に吹きかかってくるのが強烈だった。

 少し落ち着いたと思っていた熱があっという間に膨れあがって、肉棒が硬さを取り戻す。

「うふふっ、おち×ちんをまた大きくできてえらいわ♡ 今度はちゃんとママがシコシコしてあげるからね♡」

 ファシネイターは片手で青年の厚い胸板を後ろから抱きしめるようにして全身を密着させると、もう片方の手を肉棒に伸ばす。
 そして、だらしなく溢れ出ている先走り汁を指で掬って手のひらに塗すように広げた。

 そのまま包み込むように竿を握ると、ゆっくりと上下に扱き始める。

「ボーヤがこんなにも元気でママはとっても嬉しいわ♡ ほぉら、シコシコ♡ シコシコ♡」

 ファシネイターは彼の耳元に顔を寄せ、熱を帯びた息を吹きかけるようにしながら手を動かしていく。
 青年があぁと情けない喘ぎ声を漏らしながら身体を震わせれば、彼女は満足そうに口元を緩める。

「ほら、ほぉら……我慢しなくていいのよ♡ ボーヤが精液をいっぱいびゅうびゅううって射精す様をママに見せてちょうだい♡♡ うふふっ、がんばれ♡ がんばれ♡」

 彼女は上半身を艶めかしく蠢かせながら、肉棒を扱く速度を速めていく。

 青年が快楽に身を委ねて堪えるのを諦めれば、体内で膨張した熱が一点に集約して白く染まっていた視界が弾ける。

 彼がママぁと叫んだ直後、ファシネイターの手の中にあった肉棒が限界まで膨れ上がって精を吐き出した。

「あぁ、可愛い子♡ いっぱい射精せてえらかったわね♡ よしよし♡」

 ファシネイターは脱力感に襲われている彼の身体を抱き寄せると、その頭をゆっくりと撫でる。

 彼が荒い息を零しながら蕩けた眼差しを主に向ければ、彼女は汗に濡れた額に口づけを落としてくれる。

 それが痺れるくらいに心地よくて、青年はゆっくりと目を閉じた。



 ファシネイターと彼の一日は朝――あくまでヴァンパイア目線の話で、実際には日が沈んだ頃の時間帯だが――起きての朝食と湯浴みこそおおむね一貫しているが、その後はその日によって様々だ。

 主が甘やかしたいままに甘やかす日もあれば、ファシネイターが下僕の気ままな振る舞いに付き合ってくれる日もある。

 しかし一日が終わる頃――一般的には夜明けが近い、夜が最も深まる時間帯だが――を迎えれば、赤ちゃん下僕が眠気を訴えるのでファシネイターは彼を寝室に連れて行くのがお約束だった。

「うふふっ。ボーヤ、今日も楽しかった?」

 青年は楽しそうに純真無垢な笑顔を浮かべて首をブンブンと縦に振る。
 屈強そうな彼がまるで少年のように振る舞っているのは些か異様にも見えるのだが、ファシネイターはそんな彼が可愛くて仕方がない。

 彼女は彼の頭を一度撫でるとベッドにその身を横たえさえ、脚を大きく広げて見せる。

 深紅のロングヘアがヴェールのように広がる様は芸術的で彼女の豊満なプロポーションと相まって色気を感じさせるが、ファシネイターの顔に浮かぶのは慈愛に満ちた笑顔だった。

「さぁ、いらっしゃい♡ 腰をヘコヘコさせてママおま×こをいっぱいぱんぱんしましょうね♡」

 青年は促されるまま彼女に覆い被さると、迷うことなく屹立した肉棒を秘裂に挿入した。
 ファシネイターのおっぱいに顔を寄せて母乳を啜りながら、ママぁママぁと叫んで腰を振り始める。

「あぁ、あぁ……可愛い子♡ おっぱいをちゅぱちゅぱしながら、ぱんぱんできてとってもえらいわ♡ そのまま精液をママおま×こにいっぱいびゅうびゅううしていいのよ♡♡ ボーヤが気持ちよくなってる顔をママに見せてちょうだい♡♡ がんばれ♡ がんばれ♡」

 彼の腰を振る速度が無軌道に早くなっていくのを感じ、ファシネイターは手で青年の頭を撫でながら両脚を彼の腰に絡める。

 最奥に捻じ込むようにひと際強く腰が打ちつけられれば、彼女の膣内で肉棒が限界まで膨らんで子宮に白濁液が激しい勢いで注ぎ込まれた。

 ファシネイターは青年が脱力して倒れ込むのを受け止める。
 おっぱいには彼が激しく吸ったことによる真っ赤な跡と乳首にも噛んだ跡があったが、それさえも愛おしく眺めながら彼の背中を優しくトントンと叩く。

「よしよし♡ いっぱいぱんぱんできてえらかったわ♡」

 そのあやすような手つきが心地よくて、彼はもっとママと一緒に起きてたいのに瞼が段々重くなるを感じていた。

 赤ちゃん下僕の眠そうな表情を見て、ファシネイターは優しく口元を緩める。

「うふふっ、眠たいなら眠っていいのよ♡ さぁ、ゆっくりおやすみ♡ 明日も明後日もママが変わらずにボーヤのことを甘やかし続けてあげますからね♡」

 あぁ、圧倒的上位者に甘やかされるように飼われる日々のなんて素晴らしいことか。
 このぬるま湯のように心地いい楽園を一度味わってしまったら、もう戻れるはずがない。
 たとえそれが引き返せない底なし沼だったとしても。

 青年は明日もファシネイターママに甘える素敵な一日を思い描きながら、ゆっくりと眠りについた。

●●

「――それでもう、赤ちゃんのように私に甘えてくれるあの子が可愛くて可愛くて♡ あの子のためなら何でもしてあげたいって思っちゃうのよ♡」

「……た、爛れてるわ」

 惚気話を語るファシネイターは喜色満面といった様子だが、聞いていたフロイラインは愕然とさえしているように見えた。

 あまりな反応にファシネイターは思わず首を傾げる。

「あら、そうかしら?」

「そうよ。サッカーといい、倫理観の歪んだ同族はこれだから……」

 フロイラインが嘆くように吐露するが、ファシネイターは納得いかないようだった。

「失礼しちゃうわ。奔放すぎるサッカーに比べれば私は純愛そのものじゃない」

「私からすればどっちもどっちよ!」

 普段は気怠そうなフロイラインが珍しく声を荒げれば、ファシネイターは愉快そうにクスクスと笑う。

 これだからフロイラインに惚気話をするのは止められないのだ。

 もちろんフロイラインもファシネイターに半ばからかわれているのは百も承知なので、疲れたように溜め息を零す。

「まったく、同族殺しのファシネイターと呼ばれていたあなたはどこへ行ったのやら」

「……昔の話よ。私はあの子に出会って生まれ変わったの。まぁ、出会う頃には鬱陶しかった連中は軒並み使い魔に堕とし終わってたっていうのもあるんだけれどね」

 そういう意味でも運命の出会いだったのかもしれないわ、とファシネイターは当時のことを思い返す。

 ファシネイターはヴァンパイアに変質した過去が些か特殊なこともあって、その血を吸血鬼が吸ってしまうと逆にパワーを吸い取られて彼女の使い魔に堕とされてしまう体質を後天的に得た。
 かつての彼女はそれを逆手に取って吸血鬼たちを誘惑して使い魔に堕としまくっていたことから、同族殺しと恐れられたのだ。

 ちなみに堕とされた使い魔たちはかつての自我を失ったが、現在もファシネイターに奉仕し続けている。

「恋は人を……いえ、ヴァンパイアをも変えるのよ。だけどね、フロイライン」

 ファシネイターは自慢のロングヘアを掬うように持ち上げると、ふぁさぁっと大きく揺らすように手放した。

「人間だった頃のように、それに酔ったままじゃ悪いヴァンパイアに横から掠め取られちゃうかもしれないわよ? 最後には絶対自分を選んでくれるなんて女の驕りでしかないんだから」

「……そ、そんなの分かってるわよ」

 フロイラインは胸の内を見事なまでに指摘されてその頬が微かに赤く染まる。

 一方のファシネイターはお見通しだと言わんばかりに楽しそうに微笑を零す。

「うふふっ。さっきフロイラインは私やサッカーの倫理観が歪んでるなんて言ってたけど、もう人間じゃないんだから倫理なんてものに縛られようとするのがそもそも間違ってるのよ。だから、フロイラインも思うように振る舞っていいの。サッカーや私がそうしているようにね」

 フロイラインは黙ったままだが、何かを考え込んでいるようだった。

(発破をかけるのはこれくらいで十分かしら。それにしても、フロイラインってば言われなかったら絶対に動かなかったでしょうねぇ。本当に人がいいというか、臆病なだけというか)

 それはそれとして、恋に悩む少女の姿は何にも勝る茶菓ね。

 ファシネイターはティーカップを傾けながら、より深まった気がするその味に舌鼓を打った。


次のエピソード:ヴァンパイア・サッカーの背徳

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