ずんだもんショッピング
最終更新：
saiyan_party 2023年01月13日(金) 20:35:42履歴
はじめに 作：祭屋 
続編＞
最近、俺が楽しみにしている番組がある。
内容はいわゆるTVショッピング的なものなのだが、なかなかどうしてクセになる内容だ。
・・・断じて、断じて出演者の女の子二人が可愛いからなどという下世話な理由ではない。それだけではない・・・。
今日も派手で、クールで、エキサイティングなパフォーマンスが繰り広げられると思うと楽しみだ。
1/5 投下。
1/6 台所用品編追記。
1/8 文章修正。しにたくなる
1/21 今更の作者名表記。サイレント修正。
登場人物
ずんだもん：人型。愛嬌や好感度と引き換えに妖精への容赦全てを置いてきた女。通称もんちゃん。
おねーさん：人間。アシスタントとは名ばかりのリアクション役。見た目全振り。
妖精ずんだもん：妖精。虫。デモンストレーション用の備品。世間に配慮して“疑似妖精”と称される。
庭のお手入れ等
「おはようございますなのだ。商品アドバイザーのずんだもんなのだ」
「本日もお客様にぼくおススメの商品を紹介していくのだ。ぜひ見ていってほしいのだ」
「早速だけどもんちゃん、今日は何を紹介してくれるの？」
「おねーさんの雑な振りにも慣れたのだ！」
「季節は春。暖かくなってきてお庭の手入れも捗るのだ」
「最近はお庭がある家の方が珍しい気もするけどそういうことにしておくね！」
「一言多いけどそういうのがウケてるならいいのだ。人気がすべてなのだ」
「そんなお庭の木の、届かないところの枝を切るのにおススメなのがこの“高枝切りバサミ”なのだ！」
ずんだもんが取り出したのは、ありふれた柄の長いハサミだった。小柄な彼女が持つとより柄の長さが際立っている気がする。
先に言っておくがこの番組、扱っている商品については特段珍しいものはないし、正直買おうとも思わない。
それでも目が離せないのは・・・まあ理由があるのだ。
「凄く長いハサミだね。農家の方が収穫で使いそう」
「先に言われちゃったのだ。そういうところだぞおねーさん」
「まあともあれチョキチョキと便利なのだ。実際に農家さんが収穫にも使えると好評なのだ。」
「ぼくみたいにキュートでコンパクトなボデーでも余裕で届いちゃうこの長さ、そして切れ味なのだ」
「あっ、待ってもんちゃん。何かきたわよ」
「おいでなすったのだ。庭に作物にと場所を選ばず湧いてきやがるクソッタレ野郎どもなのだ」
[のだー]
[のだーー]
突如画面に現れる、もとい放たれる妖精ずんだもん。毎度の如く画面に映し出されるお約束のテロップが笑いを誘う。
『疑似妖精です。効果は環境によって異なります』
「しかし慌てず、騒がず、落ち着くのだ。今ぼくが持っているのは刃物、平常心を失うと危険なのだ」
「確かにそうね。周りの誰かをケガさせちゃうかもしれないし、気をつけなきゃ」
「ここはリーチを活かしてクズどもをぶった切るのだ。使った後のお手入れもしやすいから刃こぼれの心配もないのだ」
ジョキジョキ
[ぎゃあああああああああああ！]
[いちゃいいちゃいいちゃい！]
[おちびちゃあああああああああああああああ]
「ステキ！惚れ惚れしちゃうわもんちゃん」
「わっはっは。おねーさんいろんな人にそう言って、気を持たせてるのぼく知ってるのだ」
「でも褒められて悪い気はしないのだ。庭やら畑だかおねーさんとかはぼくが守るのだ」ｻﾞｸｻﾞｸｽﾞﾊﾞｽﾞﾊﾞｰ
見事なハサミ使いで妖精どもを斬り捨てていくずんだもん。備品の代わりは山ほどいるようなので派手にやる。
しかしこうまで上手いと入念にリハーサルを重ね、どれだけの疑似妖精を斬ったのだろうとか考えるとちょっと面白くなってしまう。
「そんなわけで暖かくなると鬱陶しいクズどもがうろつくのだ。不快きわまりないのだ」
「確かにのだのだうるさくて頭に来ちゃうわね。せっかくのポカポカ陽気が台無しだわ」
「ぼくを見ながら言うのはやめてほしいのだ。あんな下級生物と同じにしないでほしいのだ」
「ぼくの語尾はキャラ付けなのだ。可愛さアピールなのだ。普通にしゃべるとただのカワイイ緑だからしょうがないのだ」ﾌｷﾌｷ
言いながらハサミにこびり付いた疑似汚れをサッと一拭き、汚らしい血は拭われ一回で輝きを取り戻した。性能に偽りはないらしい、高額いけど。
「そこでおススメしたいのがこちらの“妖精除けスプレー”なのだ」
「えっ、それって虫除けスプレーじゃないの？」
「実際には似たようなもんだけどいろいろ大人の事情があるのだ」
「あと正式名称は妖精忌避スプレーだけど、おねーさんバカだから意味伝わらないと思って砕けた言い方にしたのだ。気遣いが逆効果だったのだ」
「とりあえず物は試しなのだ。おねーさんにプシュー」
「え待って聞いてない」ﾌﾞｯｶｹｰ
「それって自分に試すものじゃないの？たとえ親しい仲でも断り入れてからやらない？？」
「確かに配慮が足らなかったのだ。あとぼくとおねーさんは正真正銘仕事上の付き合いなのだ。こんな女とプライベートで関わりたくないのだ」
「とりあえず無断でぶっかけられたわけだけど・・・嫌なにおいがしないわね？」
「素肌につかう前提だから無香料で、当然ながら人体にやさしい成分で作られているのだ。というかこれを嫌うのは下級生物のクズどもだけなのだ」
「ちなみに水で流せばすぐに落ちるのだ。嫌なベタつきとかもないのだ」
性能テストといえば・・・タイミングよく画面に放たれる妖精ずんだもん。番組の趣旨的には疑似妖精である。
[いや！いや！]
[ぼくたちが きらいなにおいが するのだ]
[くちゃ！くちゃいのだ！！]
「・・・効能は認めるけど、なんか嫌な気分になるわね」
「やっぱり存在が悪なのだ。あと消去法でぼくの方に寄って来るのやめてほしいのだ」
「仲間だと思われてるんじゃない？」
「ごめんこうむるのだ。こっちは苦労して生きてるのだ、こんなノータリンどもと一緒にしないでほしいのだ」
シュッ、シュッシュッ
心底不快そうな顔で、自分の周りを飛び交う妖精どもにスプレーを散布するずんだもん。いち視聴者としては、女の子の嫌がる顔を合法的に見れてお得な気分である。
[いやあああああああああああ！]
[くちゃい！くちゃい！！]
[くるち！くるち！！]
[ごぼぼぼぼぼぼぼぼ]
それを浴びた妖精は、ひっくり返りバタバタともがき苦しみ始める。泡を噴いている個体すらいる。
そんな状態で飛んでいられるはずもなく、容赦なく地面にキスをする羽目になる。その時点で何匹かは潰れて緑色の水たまりになった。
グシャッ！
グチャッ！！
「こうなってしまってはクズ共もただのオモチャなのだ。ざまあないのだ」ｸﾞﾘｸﾞﾘｸﾞﾁｬｸﾞﾁｬ
「なるほど。嫌がる成分をぶっかけられて無事でいられるわけないものね。駆除にも使えるなんてお得ね」ｹﾞｼｯｹﾞｼｯ
「ちなみに連中の気管に直接作用する効果があるから放っておいても助からないのだ。楽にしてやるかどうかはお客様の気分次第なのだ」
「だからモニターの前のお客様もただプシュゥゥゥーッ！！するだけでいいのだ。可燃性だから間違っても火炎放射器チックに使っちゃダメなのだ。いたずらっ子もちゃんと聞くのだ」
「まあ注意してもやる子はいるとおもうけど」
「こうして予防線を張っておくことで、何かあってもぼくたちは注意責任を果たしたからと当人の責任にできるのだ。重要なテクだから覚えておくのだ」
「心配なんて微塵もしてないから無駄な時間に見えるけど、これを怠ると倍以上の手間を払わされることになるから仕方がないのだ。必要経費なのだ」
「へーっ、大人って大変なのねー」
「見た目年齢で言ったら、ぼくよりはるかに大人にみえるおねーさんがそんなこと言っちゃいけないのだ。アンバランスが過ぎるのだ」
掃除用品
「おはようございますなのだ。プロショッパーのずんだもんなのだ」
「本日もお客様にぼくおススメの商品を紹介していくのだ。ぜひ見ていってほしいのだ」
「もんちゃん、今日は何！？」
「食い気味で、内容のない質問ができるおねーさんが怖いのだ」
「今日はお掃除特集なのだ。部屋がクッソ汚そうなおねーさんにもぜひ見てほしいのだ」
「えっ、何でわかったの？？」
「適当に言ったら当たっちゃったのだ。本当に申し訳ない気分になっちまうのだ・・・」
「気を取り直してまずはこちらのモップ。特殊素材で驚きの吸水力を発揮するのだ。通りすがりのカス妖精も1，2の3でご覧の通りのミイラなのだ」ﾌｧｯｻｰ
[ｶﾗｶﾗｶﾗｶﾗ…]
[ｸﾙﾁ､ｸﾙﾁ…]
ずんだもんがモップの先を操って疑似妖精を覆っただけで、全身の水分を奪われ絵に描いたように干からびた姿となった。お笑いである。
「すごいわ、ただ被せただけなのにこんなに弱り果てて！簡単な駆除にも使えそうね！！」
「それだけじゃないのだ。こちらに用意したカーペット、お子さんがお菓子の食べかすやジュースをこぼしちゃったりしたら大変じゃないのだ？」
「そうね、クリーニングに出さなきゃしょうがないけど困っちゃうわよね」
「安心してほしいのだ。この驚異の吸水力であっという間にキレイにしちゃうのだ」
「でもわざと食べかすやジュースをこぼすのはもったいなので・・・疑似妖精の出番なのだ。はいグチャー」
[あああああああああああああああああああああああああああああああああああ]
[ままずん！？なにをするのだああああああああああああああああああああああああああ]
「余分なのも潰しちゃったけど誤差なのだ。予定通り疑似汚れができたのだ」
「うわぁ、これは流石に汚いよもんちゃん。ちょっと吐き気するもん」
「まあまあ、おさえておさえて」
「さてここから先は瞬き禁止でご注目なのだ。こちらのモップでスーッと、スーッと撫でるだけで・・・？」
「あっ、汚れが徐々に落ちてく！」
「そうなのだ。汚れが徐々に、落ち・・・やすくなるのだ！」
「ゴミの体液も、へばり付いたしつっこい肉片も、まとめて絡めて吸い取るのだ。ホラもう跡形もなくなったのだ！」ｽｯｽｯｽｰｯ
「うわーっ、面白いから疑似汚れ追加しちゃお♡もんちゃん、もっかい！」ｵｶﾜﾘﾎﾟｲｰ
[ままずんたすけてー]
[おちびちゃんなげないで！つぶさないで！！]
「どんとこいなのだ。おねーさんが余計なことをしてくれたおかげで、次の商品もご紹介できるのだ」
「このモップだけでも汚れが落ちやすくなるけど、こちらの特製洗剤と合わせることで真のパワーを発揮するのだ。足し算ではなく掛け算方式なのだ」
「正直ドン引きするくらい汚れが落ちるんだけど、不思議成分によって人体にはまったくの無害なのだ。床やカーペットにも安心してご利用くださいなのだ」
「汚れたところにシュシュっと2噴きほど。くたばりぞこないがピクピクしてるけど構わずやるのだ」ｼｭﾜｰ
[はあああああああああああああああああああああああああ！？]
[とけりゅ！からだが どろどろになるのだああああああああああああああ]
[あちゅいよおおおおおおおおおおおおお]
[たちけてええええええええええええ]
「液体汚れも固形物も、まとめて泡でくるんで閉じ込めるのだ。超速分解なのだ」
「再三言うけどこのクズ共はひ弱極まりないのでこうなっているのであって、人体にはまったくの無害なのだ。アレルギーテストも合格してるのだ」
「すごい、泡でくるんでポン。なのね」
「こいつに落とせないものはないのだ。薄汚いゴミが這ったこのカーペットも、床もピカピカになったのだ」ｽｲｽｲｽｰ
「さて、キレイになったところでお次に紹介するのはこちらの掃除機なのだ」
「ねえもんちゃん、お掃除の順番的には掃除機→モップの方が良かったんじゃない？？」
「たま〜に、そういう気付かなくていいことに気付いてしまうのがおねーさんクオリティなのだ。細かいことは気にしないでほしいのだ」
「とりあえず最大の売りはハイパワーなのだ。しかも的確にゴミだけをギュンギュン吸い取っちゃうからきもちーことこの上ないのだ！」
「カーペットとか、ゴミじゃないものが引っかかってブバッ！ってなるのホントストレスなのよね〜」
「こいつを使えばそんな生活とはおさらばなのだ。本日はお客様に驚異の吸引力をご覧に入れるのだ」
そういうとずんだもんは見るからに重そうなダンベルを運んできた。一体何に使うのだろうか？
「この、おもーいダンベルを吸って持ち上げる・・・っていうのは、芸がなさすぎるし危ないので別の方法でアピールするのだ」
「まずは疑似妖精、どういうわけかこいつを使うのが一番手っ取り早いのだ」
[はなちぇ！はなちぇ！！]
「こいつの手足をダンベルにぺた、ぺた、ぺたと・・・この超強力な接着剤もウチのベストセラーなのだ。気になるお客様は要チェックなのだ」ｾｯﾁｬｸｰ
[くちょ！くちょ！いったいなんなのだ！？]
「おいクズ、飛べたら逃がしてやるのだ。せいぜい頑張ってみるのだ」
「飛べるかなあ、ワクワク」
[ばかにするななのだ！にげきってみせるのだ！！]
[んんーーっ！ふんーーーーーっ！！]ｼﾞﾀﾊﾞﾀ
「とまあ無理なのだ。これ以上は時間の無駄なのでさっさとやるのだ」
ずんだもんが掃除機のスイッチを入れるとギューン！と唸りを上げる。音を聞くだけでわかる。これは大変なやつだ。
[おいやめろ！やめろ！やめりょ！？]
[あががががががががががが！！！]
「なによもんちゃん、全然取れないじゃない」
「焦らないでほしいのだ。今のパワーは最弱。少しづつギアを上げていくのだ」
「吸引力と接着力の世紀の対決なのだ」ｽｲｯﾁﾎﾟﾁｰ
ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ！！
[あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ]
[やめ、やめ、やああああああああああああああああああああああああああ]
ブチブチブチブチィィィ！！
[のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお]
妖精の脆弱すぎる皮膚が耐え切れなくなって、ダンベルから剥がれ宙に浮く。どっちが優れてるとかじゃなくて脆いのが悪いと思う。
ダンベルから解放された妖精だったが、すぐさま掃除機に飲み込まる。
頭の回転ブラシに限界まで体を引き延ばされ、パイプを通ってダストボックスに放り込まれる段階で全身がばらばらに引きちぎられる。
以上の様子をクリアーなボディがゆえに存分に堪能することができた。これは一つの売りなのでは？
「さて、こんなに汚いものを吸い込んだ本体だけどご覧の通りワンタッチでゴミ捨てができるのだ」ﾊﾟｶｯﾍﾞﾁｬｯ
「汚物に触る必要もないし、水洗いもできて清潔なのだ」ｼﾞｬﾊﾞｰ
「これだけ便利で高性能だったらお掃除が楽しくなっちゃうね」
「おねーさんの汚部屋を掃除するのはさぞ楽しそうなのだ・・・」
台所用品
「おはようございますなのだ。プロショッパーのずんだもんなのだ」
「本日もお客様にぼくおススメの商品を紹介していくのだ。ぜひ見ていってほしいのだ」
「早速だけどお腹が減ったわもんちゃん！」ｽﾞｲｲｲ
「雑すぎて引くのだ・・・アドリブなら普通に怖いし、台本通りだったら余計に闇を感じてしまうのだ」
「ともあれ、そんなおねーさんのために今日はぼくが手料理を振舞うのだ。こちらの売り込みたい商品も自然に紹介出来てウィンウィンなのだ」
「ありがとうもんちゃん！私のためだけにこんなかわいい子が手料理を・・・それだけでおねーさん興奮しちゃうわ」ｳｪﾋﾋ
「素直に気持ちが悪いのだ！こんなゴミみたいなやり取りに尺をとってもなにもいいことがないので、ちゃっちゃとやるのだ」
「まずはこちら。妖精用包丁なのだ」
ずんだもんが取り出したのは、一見パン切包丁と呼ばれる細身で片刃のものに見える。果たしてどんなカラクリがあるのだろうか？
「へえ、普通の包丁とはちょっと違った形ね。でも妖精なんか捌くのに特別な包丁って必要なの？どんなのでもサクサクスパスパいけるじゃない？」
「確かに連中の貧弱極まるボデーに特別な道具は必要ないのだ。やろうと思えば素手でさえ捌けるはずなのだ」
「これは持論なんだけど、食材を頂くということは命を頂くということなのだ。それに対してぼくたちは最大限に真摯になるべきだと思うのだ」
「その上でこちらの妖精を用意したのだ。いつもの疑似妖精とかいうクズとは違い、100%純正の食用の妖精なのだ。ブランド品なのだ」
[たちけて！ここからだちて！！]
[にんげんさん！？ぼくはいいから かぞくはゆるしてほしいのだ！！]
[おとーちゃ、おかーちゃ、こわいよー]
[おぎゃーおぎゃー！！]
いつもより気持ち優しめにカゴを取り出すずんだもん。中には妖精一家が収められている様子である。
ブランド品ということは結構いいお値段がしそうだが、あくまでもプレゼンのための備品であるらしい。
「うわ美味しそう・・・じゅるり」
「おっと失礼、えーっと、つまりもんちゃんは何が言いたいの？」ｼﾞｭﾙｰ
「簡単に言うとどーせなら美味しく頂いた方が少なくともぼくたちは気分がいいし、食べられる側にも敬意を払った気分になれるってことなのだ。お行儀のいい自己満足なのだ」
「そういうわけで、今からこの一家を可能な限り美味しく頂くための準備を進めていくのだ。前置きが長くなったけどそのための包丁なのだ」ﾋｮｲｰ
[あっ、ぱぱずん！？]
そういうとまな板の上にオスずんと思しき個体を置くずんだもん。覚悟を決めているのか震えながらも逃げようとしない殊勝な個体である。
[ぼ、ぼくはたべていいから かぞくのみんなをたすけてほしいのだ]ｶﾞｸﾌﾞﾙ
「家族思いの見上げたやつなのだ。でもぼくは妖精思いだからみーんな同じところに送ってやるのだ。独りぼっちはさみしいのだ？」ﾆｯｺﾘｰ
[しょ、しょんな・・・まって！たすけて！たすけて！！]
言いながら手にした包丁を振り下ろすずんだもん、キレイに真っ二つになるかと思われたが・・・？
ブチッ、ブチブチブチブチィィィ！！
[ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！？]
[いちゃいのだああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！]
[やめてやめてやめてやめてやめて！！！]
肉を無理やり引きちぎるような嫌な音が響く。刃先がゆっくりと妖精の体をなぞるたび、件の嫌な音と共に普通の刃物で付けられたとは思えない独特の傷跡が刻まれる。
なんだろう？不定型に肉をえぐったような、意図的にほじくり返されたかのような、なかなかに怖気のするものに見えるのだが・・・？
[ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！？]
「もんちゃん、その包丁切れ味大丈夫？あとこの世のモノとは思えないようなひどい音がしてるけどこれ流せる？？」
[おごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！]
「問題ないのだ。妖精は痛めつければ痛めつけるほど旨味を出すというのだ？美味しく頂くために必要な工程なので、何も問題はないのだ」
「作業しながら説明をさせてもらうけど、この包丁の刃先はあえて不自然に波打った形状をしているのだ」
「ファンタジーが好きな人にはフランベルジュ型と言った方がわかりやすいのだ？」
[あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！]
「おまけにただちに死に至るような傷でもないので、実質隠し包丁みたいなもんなのだ。用途も切断じゃなく仕込み段階だと思っていただいて結構なのだ」
「重ねて言うけど、これは美味しく調理するために必要不可欠な工程なのだ。決して虐待や命に対する冒涜とか、そういう意図はないと断らせていただくのだ」
「もっと言えばこいつは大げさに叫びすぎなのだ。やかましくしてお客様に申し訳ないのだ」
[はあ・・・はあ・・・ころち、ころちて・・・]
[からだじゅうが いたくてたまらないのだ・・・こんなのひどすぎるのだ・・・]
「酷い？殺す？馬鹿言っちゃいけないのだ」
「おまえら妖精が、自分の意思で安易な死に逃げれると思っているのだ？食用になったからにはうーんと、うーんと苦しんでもらわなきゃ困るのだ」
「いかに殺さない程度に留めながら苦痛を与えるかが、料理人さんやぼくたちプロショッパーの腕の見せ所なのだ。おまえにはとことん苦しんで苦しんで、そして死んでもらうのだ」
「その上でぼくが責任をもって美味しく調理するのだ。おまえら一家のおかげでぼくたちは、お客様は笑顔になれるのだ。あの世で誇るといいのだ」ﾆｯｺﾆｯｺｰ
天使のような笑顔で悪魔の宣言をするずんだもん。これだよこれ、本当に視聴者が見たかったのはこういう一幕に違いない。
[・・・]
「さて、本格的に動かなくなってしまったのでここからはスピード勝負なのだ。おいメス、次はお前の番なのだ」
[やめちゃ！なんてひどいことを！ぱぱずんをかえすのだ！！]
「返す？それは無理なのだ。一足先に逝ってしまったのだ」
「でも安心するのだ。お前ら家族はまた再会できるのだ。ぼくが手助けをしてあげるのだ」ﾃﾝｼﾉｴｶﾞｵｰ
夫と同じまな板にメスずんを置く。力の差を弁えずに抵抗するので、枝豆を釘で留められ余計に苦しむ羽目になっている。
[はなちぇ！ばけもの！あくま！！]
「こんな天使みたいにプリティなぼくがバケモノ・・・？悪魔？やっぱり妖精とはわかりあえそうにないのだ」
「さて、苦痛が旨味になる話はさっきした通りだけど、メスに関してはオスをやられた精神的な苦痛でばっちり足りていると判断するのだ」
「なんならさらに吹き込んでやるのだ。おいメス、お前を潰した後はガキも同じところに送ってやる。家族みんなあの世で仲良くやるのだ」
[ぷじゃけるな！おちびちゃんをはなせ！！]
「さて、ここで取り出したるは妖精叩きなのだ。残念ながら？こちらは妖精専用というわけではなく、他のお肉にも幅広くお使いいただけるのだ。汎用性があるのだ」ﾌﾞｩﾝ
ずんだもんの手にはハンマーのようなものが握られている。接地面がゴツゴツの凸凹になっておりその威力、用途に関してはもはや語るまでもないだろう。
「こいつで」ﾄﾞﾝ!
「特に何も考えずに」ｶｯ!
「ただひたすらに」ｷｰﾝ!
「岩場にやるように叩きつけるのだ！！」ﾄﾞｶｰﾝ!!
[ぐっ！がっ！？]
[はぐっ！ごっごごごごっご]
[・・・]
ずんだもんがハンマーを振り下ろすたびに妖精に凸凹が刻まれ、形が変わっていく。鳴き声が止み動かなくなるころには、妖精のミンチが出来上がっていた。
「ふう、ちょっと興奮してお見苦しい姿を見せてしまったのだ。あとはそれぞれ違う工程を経て旨味の質が変わったオスとメスをボウルに入れて〜」
「前もって用意しておいたこちら、玉ねぎさん♪卵さん♪パン粉♪牛乳♪おっしお〜♪」ｻﾗｻﾗｻﾗﾘｰ
「これらを加えて粘りが出るまで混ぜ合わせるのだ。そして小判型に整えてあとは焼くだけなのだ」ｸﾞﾁｬｸﾞﾁｬｺﾈｺﾈｰ
「ふふふ、歌いながら料理してるもんちゃんかわいい」
「何をおっしゃる、おねーさんこそかわいいのだ」
「うふふ」
「ふふふ」
「でも凄い！ホントは時間かかりそうな工程なのにサクサク片付いていくわ！！下処理に時間かけすぎじゃない？？」
「反省するのだ。でも時間と手間をかけた甲斐があることはお約束するのだ。というかそうでないと商品が売れないのだ！」
「さておねーさん、残った子妖精も余さず有効活用！親妖精との約束は守らないといけないのだ。こちらのミキサーに放り込んでほしいのだ」
「あぁはいはい」ﾎﾟｲｰ
[くちょにんげん！おとーちゃとおかーちゃをかえせ！！]
[わああああああああああああああ！？]
「こいつら返せ返せとワンパが過ぎるのだ。もっと鳴き声のバリエーションを増やしてもらわないとエンターテイメント性に欠けるのだ」ｽｲｯﾁｵﾝｰ
ギュオオオオオオオオオオオオオオオオ
[うわーん、おにーちゃ！こわいのだー！！]
[おにーちゃの うえにのって にげるのだがががががっがががが]
「このミキサーもなんか切れ味悪くない？まさか・・・？」
「そのまさかなのだ。特殊アタッチメントで少し時間はかかるけどその分じっくりと妖精を八つ裂きにすることができるのだ」
「いや八つ裂きどころか液状になるまでバラバラにしてるけど・・・」
[・・・]
[おにーちゃ！？おにーちゃ！！やああああああああああああああああ]
「細かいことは気にしちゃいやなのだ。この商売ときたら言葉の口当たり重視なのだ」
「さて、おねーさんがペースト状にしてくれた子妖精をフライパンの肉汁と合わせて味を調えて・・・」ﾁｮｳﾐﾘｮｳﾄﾞﾊﾞｰ
「これにて完成、合い挽き親子妖精ハンバーグなのだ！」ﾃｯﾃﾚｰ
「うわあ、美味しそうな匂いすぎておねーさんもう限界。早速頂いていいかしら？」
「どうぞ召し上がれなのだ！」
「いただきます・・・！」
空腹を訴えてるのに礼儀正しく両手を合わせて挨拶するおねーさん律儀かわいい。
「凄い、同じ妖精の肉なのにそれぞれ旨味と柔らかさのメリハリが違うわ。豚と牛みたいな別々のいいところを合わせたみたいに感じる！」ﾓｸﾞﾓｸﾞ
「食用妖精でブランド品って言ってたけど絶対それだけじゃないわ。しっかりとした調理工程あってのこの味だってハッキリわかる」ｶﾁｬｶﾁｬ
「それに肉汁を逃がさず、閉じ込めるように焼いているおかげで噛むたびに染み出すし、子ずんの若い苦みのあるソースとの調和も素晴らしいわ。おかわりしたいくらい！」ｺﾞｯｸﾝ
「ハハハ、ぼくの分も食べていいのだ」
「おねーさんの食レポが思ったより濃密で感情がこもっててビックリしたのだ、普段のおバカさんっぷりはどこへ行っちゃったのだ？」
「ごめんなさいお言葉に甘えてもんちゃんの分も頂いちゃうわ・・・ほんっと美味しい。こんなに美味しいなら喜んでひと手間もふた手間もかけちゃう」ﾓｸﾞﾓｸﾞﾓｸﾞﾓｸﾞ
「あー、なんかおねーさんが男の人に可愛がられる理由がちょっとわかったのだ。こんなに美味しそうにご飯食べてくれるなら奢ってあげたり作ってあげたくなるもん」
「いっぱい食べる女性はステキなのだ。食べ方もキレイで嫌味がないのだ。こうしてると普通にいい女なのにどうして喋るとおバカさんなのだ・・・？」
「ごちそうさまでした。ねえもんちゃん、婿にきて私に一生妖精ハンバーグ作ってもらえない？」
「お断りなのだ。まずぼくは女の子なのだ。同性婚をどうとか言うつもりはないけど少なくともおねーさんと一緒になる気はないのだ」
「でもまあ、気が向いたら妖精料理くらい作ってあげるのだ。今回の件でいろいろご馳走したくなっちゃったのだ」ﾂﾝﾃﾞﾚｰ
「わーいもんちゃん好きー」
「だんだんまんざらでもないと感じ始めてきたのがこわいのだ。ぼくとおねーさんのこのくだり需要あるのだ？」
ありますあります。
「さて、美味しく頂いた後は後片付けなのだ」
「うーん、美味しいごはんを食べられるのはいいけど洗い物って手間なのよねー」ﾒﾝﾄﾞｸｻｰ
「この場においてはぼくがやっておくから大丈夫なのだ。おねーさんは普段の食事はお外で済ませた方が無難だと思うのだ」
「というわけでこちら、超音波式の食洗機なのだ！」
「えっ、食器洗浄機って箱みたいな形でその中に入れるんじゃないの？なんか機械部分とつながった四角い輪っか？みたいなものがあって見慣れないんだけど・・・？」
取っ手が付いた長方形、中抜きで□の外側だけみたいな形と言ったらいいのだろうか？俺の語彙ではこれを表現するのは限界があるので、潔く降伏したい。
「この四角いのは超音波発生装置で、シンクや洗い桶にセットして使うのだ。百聞は一見に如かず、さっそくやってみるのだ。」ﾄﾞﾎﾞﾝ
そういうと水と洗剤を溜めた桶の中に先ほどの食器を入れ、超音波発生器と呼ばれた四角をセットし、本体のスイッチを入れる。
ジーッ！
「うわ！結構独特な音がするのね！？」
「駆動音に関してはよく言われるのだ。今後の改善点として今回は目を瞑っていただきたいのだ」
「仕組みを説明させていただくと、超音波で細かい泡を発生させて、その泡が破裂するときの衝撃で洗浄をしているのだ」
「今までの食器洗浄機とは異なる全く新しい技術が使われているのだ。これだけで心くすぐられるお客様もいらっしゃるかもしれないのだ」
約10分後
「ご覧の通りキレイキレイなのだ。すすぎは必要だけど洗浄の工程自体は今までのものの約半分の時間で済むのだ」ｼﾞｬﾊﾞｰ
「ホントだ、ハンバーグの油汚れやソースの汚れもキレイに落ちてるわ・・・」
「でもそれだけじゃないのだ。というかここで終わったら普通の番組になってしまうのだ」
「この洗浄機、超音波の出力を変えることができるのだ。具体的には周波数を下げるということなんだけど、おねーさんはまあ凄いことができると思ってくれればいいのだ」ﾃｷﾄｰ
「うん！すごいね！！」ﾜｶｯﾃﾅｲｰ
「そんなハイパワーな本機、実験と言ったらもうアレしかないのだ」
「カモン！疑似妖精！なのだ」
[やめりょ！はなせ！はなせ！！]
「まずはこのクソ生意気な個体から血祭りなのだ。このお皿にぶっ潰れるくらい擦りつけて・・・」ｸﾞﾘｸﾞﾘｸﾞﾁｬｸﾞﾁｬ
[あががががががががががが！！]
「わあ、ひどい疑似汚れ！」
「これと比較のために直接ぶち込むのだ。ほれ」ﾎﾟｲｯﾁｮ
[わあああああああああああああああああああああああ]
[ごぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ]
[くるち！くるち！！]
「さあお客様、瞬き禁止でご注目。スイッチオンなのだ！」ﾎﾟﾁｯﾄﾅｰ
[がががががががががが]
[ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ]
[ぎぃやああああああああああああああああああああ]
わざわざ透明な桶に入れてくれたおかげで、中で何が起こっているのかよく見える。
皿にへばりついた疑似汚れはみるみるうちに分解され、生身で放り込まれた疑似妖精どもは体の表面で見えない何か・・・おそらく極小の泡が弾け、削り取られていく。
あっという間に桶の中は薄緑色のスープになった。洗剤塗れで飲めたもんじゃないし、疑似妖精なんて何喰ってるか、雑菌持ってるか知れないので食用ですらないのだが。
「うん！なんだかよくわからないけどホントにすっごい！！」
「やっぱりおねーさんはこのくらいおバカなコメントの方がぼくもやりやすいのだ」
あとがき
このところ自分の虐要素が少なかったように思えたので今回はガッツリ行けたらいいなあと思っています。
テキトーに喋らせてたらなんかアクが強くて邪悪な2人が出来上がったので仲良くケンカしてもらいましょう。癖がダダ洩れである。
不定期追加っていうと気楽でいいです。俺のやり方にはあっていますね。
タグ
このページへのコメント
妖精特効の殺戮兵器群で草
二人の掛け合いも心地いいです
妖精特効の殺戮兵器群の響きステキですね。俺の趣味でしかない掛け合いを褒めて頂けてホントに嬉しいです