作者 睡蓮 
前回のお話はこちら
この話はシリーズものです。下記の話も併せて読むと一層楽しめるかと思われます。ただどれも長いので、読まなくても大丈夫です。
ずんだ虫より醜くなった男 前編
自衛ずんプロジェクト 前編
本当に見逃してもらえた場合 前編
FAIRIESの復讐
また、よろしければずんちでるさんの謳歌味亭シリーズとのコラボ作もぜひご覧ください。再興！最高の謳歌味クッキング！
個人的に映像の世紀をBGMを流しながら読むと面白く読めるかと思います。オススメは「パリは燃えているか」「神のパッサカリア」「風のリフレイン」「グラン・ボヤージュ」「マネーは踊る」です。
美食ハンターずんだもんの活躍
本編
プロローグ
『各国の皆様、今日はお話の時間を設けていただきありがとうなのだ』
《美食ハンターずんだもん》YouTuber、冒険家
これは妖精戦争真っ最中の2024年3月。アメリカ、ニューヨークの国際連合本部で開かれた国連安全保障理事会の映像です。
各国代表が見つめる壇上に立つのは人型ずんだもん。彼は当時【美食ハンターずんだもん】の名前で名を馳せた人気YouTuberです。
戦時中、彼は自らも人型ずんだもんであるということを活かして勇敢にも妖精軍の兵士を装い北海道に潜入。
さらにはFAIRIESの本拠地帯広にまで接近し、妖精軍の追撃を受けながらも生還を果たすという危険を顧みない大胆な行動で世界の注目を浴びていました。
彼が収めた動画には、FAIRIESが支配する北海道の姿が克明に映され、謎のベールに包まれた当時の道内を忖度なく記録した第1級の資料として、琴葉家執事のシンベーの手記に並び、現在でも高く評価されています。
『コイツしんでるのだ！くしょにんげんのごはんさんにするのだ！たべてくよー、なのだ！』
『ノルマさんが落ちてるのだ。喝を入れるために何人か見せしめに殺すのだ』
『FAIRIESのしゃいんさんはくしょにんげんじゃないから、たくさんごはんさんをたべてくださいなのだ！』
＊＊＊
『よっしゃおちびちゃん！いっしょにこのガキをリンチさんしてあそぶのだ！』
『やめて！私の子どもを持っていかないで！』
映像には、FAIRIESの集団農場に移送された市民や捕虜が極寒の冬の中、軽装で土地の開墾作業を強いられる、無秩序に殺される様子が映されています。
膨大な数の妖精軍を養うために休む暇なく農作物の栽培させられた市民は、病気になっても休むこともできず、大した食事も与えられず、冬を越せずにおよそ20万人以上の人々が栄養失調と寒さで死んでいきました。
美食ハンターずんだもんは、こうした北海道の人々の救済を世界に求めるために日本政府の特使として国連総会に参加し、こう述べました。
脱出時に妖精軍の銃撃で左腕と右枝豆を失い、その傷がまだ癒えていない中での演説でした。
『ぼくはこの目で見てきましたのだ。約100年前ウクライナで起きた集団飢饉、ホロドモールが今まさにあそこで起きているのだ。
北海道では公然と死体を人々が塩を擦り込んで喰らっているのだ。時には瀕死の働けなくなった人を群がる人々が食べ、その食べられている人すらも他の奴には奪われてたまるかと、こぼれた自分の内臓を食べていたのだ。
世界の皆様にお願いしますのだ。ぼくは皆様の良心に頼んでいますのだ。北海道に支援を回したところでFAIRIESに渡ってしまうからやるだけ無駄ともしあなたが思っているなら、それを北海道民の前で堂々と言えますのだ？
彼らは皆様の助けを必要としていますのだ。すぐにでも手を差し伸べてあげてほしいのだ！』
ー美食ハンターずんだもんの演説
FAIRIESは北海道民への支援物資を受け取れるなら困窮する人々のために使うと声明を出していましたが、各国政府は出まかせに過ぎないと見なし、結局支援に出ることはありませんでした。
極寒と飢え、戦乱により、最終的に北海道では戦争開始前人口の20%にあたる110万人以上が命を落としたとされます。多くは僅かなガソリンをかけて焼かれただけで、黒焦げのまま放置されていました。
2023年6月に始まった妖精戦争は、日本で西南戦争以来およそ150年ぶりに起きた内戦というのみらず、人類が初めて他種族と大規模な交戦に出た前代未聞の戦争でした。
妖精戦争は1年強で終結しましたが、この戦争において人間と妖精の分断は決定的となり、現在もなお完全な修復には至っていません。
何よりもFAIRIESの犯した罪の中で最大のものは、妖精が兵器として有用なものだと世界に知らしめたことにあります。
映像の妖世紀、5回目の今回はイゾーの叛逆とFAIRIESの抵抗、崩壊についてを扱っていきます。
第1章 第二次函館戦争
2024年3月20日
『このうらぎりものども！ぶっころしてやるのだ！』
『へらずぐちをたたくよりさきに、おててさんをうごかせなのだザコども！』
函館を拠点にイゾーが結成した武闘派組織『ずんだ府』の鎮圧のため、琴葉茜は帯広から妖精軍1個大隊およそ6000万匹を派兵します。
この内紛を当時FAIRIES側はイゾーの反逆とのみ呼んでいましたが、主要な戦場が函館市周辺という理由から、現在は1868年に新政府軍と旧幕府軍の間で起きた箱館戦争に准え【第二次函館戦争】の名で知られています。
しかし、函館市側は箱館戦争で死んだ英霊への侮辱だとして、その名前を使うことを拒否していますが、あくまで俗称であるため訂正は困難な状況です。
『うらぎりものを、ぶっころちぇぇぇっ！！』
ずんだ府は大半が妖精兵で構成された軍勢という都合上、映像記録は僅かしか残っていません。しかし、美食ハンターずんだもんが撮影したものと、戦死した人型ずんだもん兵が残した映像が近年発見されました。
『アイツらすくねーのだ！これはらくしょーなせんそーなのだ！』
『あしたにはかえって、ずんだもちたべるのだ！』
ずんだ府側の妖精兵は多く見積もって700万匹ほど。琴葉茜は『ずんだ府はトランプタワーのようなものや。息を軽く吹きかけるだけで崩れ去る』と楽観視していました。
『オラッ！オメーらくしょじえーかんよりよえーのだ！！なさけねーくらいはりあいがねーのだ！』ﾊﾞｷｨ
『せんだいにもいったことねークズどもが、ぼくにかとうなんざ、10ねんはやいちゃ！！』ｻﾞｸｯ
『くちょ、あかねしゃちょーにさからうハナクソしゃんめ！ぜったいころちゅのだ！！』
しかし、戦争最初期の北海道征服からの精鋭に仙台や那須高原で戦ってきた妖精兵、ロシアから来た極東師団が多数を占めるずんだ府を前に、鎮圧に来た妖精軍はひとたまりもなく破れ去り、僅か半日で勝敗は決しました。
武装し、殺人慣れした歴戦の妖精兵は、自衛官ですら油断すれば一瞬で頸動脈や手足の腱を掻き切られると言われており、我々が普段日常で目にするずんだ虫とは別格の存在です。
そして、そんな精鋭達を率いていたのがずんだ府に寝返った妖精軍少将、マッドドッグ1号です。イゾーの信任を得て腹心となった彼は、迫りくる追討軍を蹴散らしていきます。
『今日はぼくがぐるぐるパンチのお手本を見せてやるのだ！よく見て学ぶんちゃ！』
《マッドドッグ1号》ずんだ府幕僚長
『おおおおおおおおおおお！！』
『ぼくはくしょにんげんにころちゃれた、おかーちゃとおとーちゃのカタキをとるためにたたかってきたのだ！まだまだころしたりねーのだ！くしょにんげんのちをみたいのだ！』
さらにはイゾーがかつて率いたずん虐を受けた経験のある際立って士気の高い雪辱師団出身の妖精兵もおり、戦地に行くこともなければ人間から虐げられた経験もない鎮護の妖精軍は瞬く間に壊滅し、次いで送られてきた増援も同じ轍を踏みました。
『おとうちゃ！ぼくおとうちゃとたたかいたくないのだ！』
『おちびちゃん！これはせんそーなのだ！たたかわなければいきていけないのだ！』
『うっ……うおおおおおおおおおおお！！！』ｻﾞｼｭ
『そ、それでこそ、ぼくのおちびちゃんな、のだ……』ﾁｰﾝ
『おとうちゃ………おとうちゃぁぁぁぁぁ！！しょんな、どうしてなのドュア』ﾊﾟｧﾝ
第二次函館戦争は、少し前まで同じ臼のずんだ餅を食べた妖精兵や家族が敵となって殺し合う、妖精にとってこの上なく惨たらしい戦争でした。
ずんだ府妖精軍双方で戦闘を拒む個体もいたとされますが、あまねく抗命罪で処刑されました。
『とにかくハリガネさんをもって、むがむちゅーでとびまわったのだ。となりのなかまがしのうが、みおぼえのあるヤツをころそーが、せんじょーですぎたことをいちいちきにしてたら、こっちがしんじゃうのだ。じぶんのいのちさえ、きにならないのだ』
ー函館に派兵された妖精兵の口述記録
琴葉茜は鎮圧のために1億匹の妖精兵を動員しましたが、ずんだ府を切り崩すどころかイゾーと会敵することすら叶わず、無意味に戦力を失うばかりか、中にはずんだ府の強さに憧れて寝返る妖精兵すらいました。
それだけではなく、ずんだ府は妖精軍という存在に対して根本的な疑問を投げかけます。
『ぼくたちがたべるごはんさんも、おうちさんも、すべてぼくらがからださんをはって、くしょにんげんからうばってきたものなのに、あかねしゃちょーはなにをしていたのだ！わけあたえるって、さいしょからぼくたちのものなのだ！ただえらそーにめいれーするだけのあかねしゃちょーより、ぼくはおちびちゃんとママずんのほうがたいせつなのだ！』
ーずんだ府兵の発言
帯広の安全な大本営の中から命令をするだけで、直接話したこともない琴葉茜に命も戦果も捧げる価値があるのかという疑問です。
琴葉茜は妖精の地位向上と日本支配を掲げましたが、その本人が前線に出てこないのは手柄の横取りだというのです。
これは琴葉茜の求心力の低下の表れであり、高度な調教を受けた戦争初期のFAIRIES産妖精兵が減少し、急拵えの個体や野良ずん出身の兵に頼りすぎたことが原因の1つでした。
ずんだ府は人間による協力も拒む徹底的な妖精至上主義を掲げ、新しい形での妖精戦争を始めていこうとしたのです。
しかし、その実態はFAIRIES以上に杜撰なものでした。
妖精軍は収容先にいる捕虜や民間人を極めて過酷に扱っていましたが、労働資源と人質という価値を見出していたため、形ばかりの食事と休息は与えていました。
特に北海道民の中には社員や義勇兵として参加する者もいたため、FAIRIESはそれらの人々の身内は丁重に扱っています。
ですが意思決定を人間達で固めていたFAIRIESと違い、武勲を上げた妖精兵で幹部を決めていたずんだ府にそのような考え方はなく、鍛錬と称して捕虜や民間人への積極的な虐殺を実行していきました。
『イゾー、とーちゃくしましたのだ』
『元から大手の工場なだけあって、中々キレイなのだ。なおさらくしょにんげんにはいらねーのだ』
《イゾー》ずんだ府総大将
これは函館からほど近い後志地方の倶知安という町に作られたFAIRIESの軍需工場の1つです。ここでは主に各地の捕虜や人型ずんだもんらが食べるための海産物の加工と野戦食糧の製造が行われていました。
イゾーはある日突然ここを訪れると、工場の解体と捕虜の解放を宣言。工場にいた人々は思わぬ放免に喜んだのも束の間。
『好きなとこに行くといいのだ』ﾎﾞｫﾝﾎﾞｫﾝ‼︎
イゾーは飛ぶと触手から大量のグレネードを撃ち出し、広場に集めていた人々を爆殺する凶行に出ます。解放ではなく虐殺が始まったと気づいた捕虜はたちまち開きっぱなしの門を飛び出して逃げていきますが、それがイゾーの思惑でした。
『函館はぼくの王国さんなのだ。くしょにんげんの居場所なんかあるわけねーのだ。が、ただテキトーに鏖殺さんにしても面白くねーのだ。せめて若いしゅーのトレーニングの相手になれなのだ』
ーイゾーと思われる妖精の発言
イゾーは函館の農場や収容所を全て解放すると、ハンティングさんと称して散り散りになった捕虜や人質を手下に探させ、市中に潜む人々を見つけ次第殺していきました。1日に5人殺した兵士にはずんだ餅や枝豆が支給されたといいます。
これは、部下に向けた教練と殺人への抵抗を減らすことが目的でした。森や街中に隠れる人間を見つけて殺すことは、自分らが東北地方でゲリラ戦を行う際の反面教師になると考えたのです。
一方で逮捕された妖精軍の幹部は、人間に追い立てられて殺される野良ずんの絶望を分からせてやりたいというイゾーの思惑もあったのではと推察しています。
『ずんだ府のずんだ虫はFAIRIES以上に恐ろしい。トップが人間、それもエリートで構成されたFAIRIESはまだ知性と理性がある方だった。ずんだ府にはそれがない。我々を利用価値が一切ない害虫だと思っていて、スポーツ感覚で殺してくる。
数匹なら返り討ちにできるが、ヤツらはチームで行動するから1匹帰ってこなくなると100倍の数のずんだ虫が来て付近をくまなく捜索する。
そして見つかれば、なぶり殺しだ。去った後に残った死体はもはや人間と呼べる代物ではない。地獄というものに底はないのだと改めて思い知らされる。私はもう生きて家族には会えないだろう。
ところで、ずんだ府のずんだ虫という言い方をやたら怒るヤツが仲間にいたが、なぜ怒るんだろう』
ー潜伏する捕虜がチラシ裏に残した遺書
函館は人間狩りを行うずんだ府兵が街中を埋め尽くす地獄絵図と化しました。
これは、ずんだ府の人間狩りを捉えた映像です。
『くちょにんげんをはっけんしたのだ！』
『まずはおとうちゃのくちょにんげんからころし、メインディッシュさんにガキをねらうのだ！』
『いや、いっきにころちゅのだ！』
『それもアリなのだ！』
どこかから拾ってきたと思われるスマートフォンで撮影された映像には、逃げる家族に向けて上空からパイプ椅子やずんち、フライパンを次々と投げ落とすずんだ府の兵士が移されています。
『うおぉーっ！ぼくのなげたレンガさんがメスのくしょにんげんをぶっころしたのだ！』
母親と思われる人間の頭にレンガが当たり、動かなくなります。その母親をおぶって逃げようとする父親と子どもに向けて、ずんだ府兵は次々と鈍器を落とし、一家はついに倒れ、頭から血を流して動かなくなりました。
『ギャハハハハやったのだ！くしょにんげんをまたしょーどくしてやったのだ！』
『ふざけんななのだ！トドメさんをさしたのはぼくなのだ！』
『いや、ぼくのなげたいしがガキのあたまをたたきわったのだ！』
ずんだ府はインフラ施設に従事する人間も容赦なく殺したため、函館周辺の生活水準は近世レベルにまで落ち込みました。
『ぶるぶるちゃぶるぶるちゃ！！しゃ、しゃむいのだ！さすがにキツいのだ！』
『それにまっくらなのだ！でんきさんがないとストーブさんつけられねーのだ！』
『くっそさみーのだ！』
しかし、それすらイゾーにとっては瑣末な問題に過ぎませんでした。イゾーは殺した発電所の所員をFAIRIESと取引して調達しようと言う手下に、こう述べています。
『ぼく達のご先祖しゃまは、もっと過酷なかんきょーでも生き抜き、ぼくらのおじーちゃ、ひいおじーちゃを産んだのだ！ぼく達は今まで憎きくしょにんげんが作ったものに頼りすぎていたのだ！日本に勝つため、ぼくらはさらに自分を追い込まなくちゃいけないんちゃ！』
『そ、そうなのだ！すべてはとっくんなのだ！たえるのだ！』
ずんだ府は函館市周辺にいた捕虜のみならず、ついにFAIRIESの社員や妖精軍の捕虜すら遊び半分に殺すようになり、備蓄が無くなると妖精は共食いは当たり前、一部は人肉の味すら覚えました。
このような破滅的境地に陥ってもなお、人間への憎悪に我を忘れたイゾーは、妖精が統べる世界に人間が作ったものは不要だと考えていました。
イゾーは日本を制したら北朝鮮と中国も攻め、奪った核兵器を全世界に乱射し、世界を更地にして0から妖精世界に作り替えるという無謀な野望すら抱いていたと、後に元ずんだ府兵は語っています。
そして、暴走するその狂気はついに琴葉茜の耳にも入ります。
2024年4月23日
函館から240キロ離れた小樽に来た琴葉茜は妹の琴葉葵に北海道めろん、結月ゆかり、弦巻マキ、ハンジロー、シンベー。その他妖精軍、FAIRIES幹部を一堂に会して幹部軍議を開きました。
ついに、琴葉茜は最も信頼を寄せていた妖精兵の処分を決定しました。
『では、賛成32反対0ということは決定ということでよろしいですのだ？お嬢様』
『……せやな』
多数決の結果、満場一致でイゾーの妖精軍中将の階級剥奪と反逆罪による死刑が採択されました。
そして、イゾーの処刑は妖精軍大将ハンジローが任命されました。追討軍が負けた以上、粒揃いのずんだ府相手には妖精軍側も切り札を出すべきという幹部の提案に琴葉茜も同意したのです。
しかし、これは大きな賭けでした。ハンジローの忠誠心を疑う者はいませんでしたが、それはかつてのイゾーに対しても同じでした。だから函館という要衝をイゾーに任せていたのです。
もし、ハンジローまでマッドドッグ1号のように造反した場合、妖精軍の弱体化はいよいよ深刻なものになり、ずんだ府に敗北すらありえます。
琴葉葵は密かに側近であるシンベーに、別ルートから函館に侵入してハンジローの監視を命じていました。
2024年4月25日、昼頃。
『では』
『生きて帰ってくるように』
ハンジローは函館に向けて単騎で小樽から出立しました。琴葉葵に敬礼すると、轟音を鳴らして飛び去るハンジローの映像です。
ハンジローは人工飛行器官に加えて元からある計7つの飛行器官を持ち、瞬間最高速度900キロというジェット機並の速さで移動することが可能でした。
戦闘は17時ごろに始まり、21時過ぎには決着が着きました。
『あが、あが……』
『くちょ……が……』
『うわさ、いじょーな、のだ……』
ハンジローの圧倒的勝利です。
高速でずんだ府兵を斬りながら突き進み、ずんだ府の本部がある函館山に到着。麓では人型ずんだもんの機械化部隊と戦闘に入りますが、これも退けてイゾーが居を構えていた山頂の展望台に乗り込むと、待ち構えていたイゾー、マッドドッグ1号と交戦。
マッドドッグ1号が先に討死にし、イゾーも敗北しました。
しかしながらイゾーはハンジローに次ぐ妖精軍の最高戦力であり、両者は電波塔を有する展望台が倒壊するほどの激戦を繰り広げ、薙ぎ倒された木々で土砂崩れが頻発して、函館山の山容は目に見えて変わり果てました。
イゾーは致命傷を受けると、最後の手段として自爆したと伝えられています。
ハンジローも触手6本の内3本を失い、歯を砕かれて腹を触手で貫かれる重傷を負いますが、帰還後にシンベーに、
『大したことなかったのだ。ぐずるおちびを寝かしつける方が1000倍疲れるのだ』
と述べています。
『おなかすいたのだ……ごはんさんならなんでもいいからたべたいのだ……』
『おちびちゃんがつめたくなってるのだ……』
ずんだ府は好戦的な妖精ほど地位が上のため内輪揉めが絶えず、一次産業に携わる人間まで殺して回ったことで飢餓が蔓延していました。
ハンジローが攻め込んだ時にはその数を100万匹以下にまで減らし、守るべき子ずんすらほぼ死んでいました。人間の生存者は500人ほどしかいなかったと記録されています。
つまり、遅かれ早かれずんだ府は崩壊する運命にありましたが、意外にもハンジローはイゾーを高く評価しています。
『イゾーはバカではなかったのだ。そこらの三下さんなら五稜郭あたりに陣を構えそうなところを、見晴らしが良く攻めにくい函館山を選んだ頭抜けた将軍さんだったのだ。だから、人間の憎しみ強さに頭がおかしくなったのが残念でならないのだ』
ーシンベーの手記より抜粋
ずんだ府の敗残兵はリーダー2匹を失ったことで降伏し、琴葉茜に謝罪。
『ごめんなさいなのだ』(不服)
『ええで』(不服)
功を上げたハンジローが、末端の妖精兵は無知ゆえにイゾーに騙されたと擁護したため、彼女は子ずんをずん質として預かった上で、最前線勤務処分で妥協しました。
第二次函館戦争は終結しました。
『しんのよーせいはまけてもこーふくはしないのだ！』
『さいごまでたたかいぬくあん！』
にも関わらず、一部のずんだ府兵は徹底抗戦の構えを見せ、元鞘に収まることを拒んだ末に戦死しました。
『ｺﾛｼﾃ……ｺﾛｼﾃ……』
『ｱｶﾈｼｬﾁｮ……ﾕﾙﾁﾃ……』
(見せしめにずんだ餅とあんこ餅にされて晒された、ずんだ府のあんこもん兵と妖精兵の写真)
2024年5月1日
FAIRIESを裏切ったもののこれまでの功績を鑑みて、琴葉茜はイゾーに妖精軍大将の地位を追贈し、帯広で大々的な葬式を開きました。
『もっとイゾーとともにたたかいたかったのだ……』
『なんであんなことしたのだ……』
ただし、葬式というのは表向きで、実際は妖精軍に琴葉茜とFAIRIESの偉大さを再び擦り込ませることが目的でした。
この葬式の記録映像には、滅多に公の場で話さないとされたハンジローの貴重な肉声が残されています。
ハンジローはこの時、ずんだ府壊滅の功績によって昇進。妖精軍上席大将、つまり琴葉葵と同格の地位にまで昇り詰めていました。
《ハンジロー》妖精軍上席大将
『ぼくらは正しいことをしたのだ。過ちを犯した戦友をあるべき道へと正し、粛清したのだ。ぼくらは今日を最後にこの日を振り返ることはないのだ。しかし、もし同じようなことをする輩さんがまたいた場合、何度だってぼくも同じことをするのだ』
この演説はラジオで道内全域に流されました。
『ずんだ府というものは全ての妖精が平等なパラダイスみたいな国を作りたいとか抜かしたが、ヤツらがやったことは有用な捕虜を遊び半分に殺し、無計画に建物を破壊して、備蓄と財産に火を放ち、その火を囲んだヘコっただけだったのだ！イゾーが茜しゃちょー無しで戦おうとした結果がこれなのだ！ぼくらにはまだまだ、茜しゃちょーの力が必要なのだ！』
『『『のだあああああああああ！！！！』』』
ハンジローは琴葉茜の代弁者として妖精軍に再び彼女の偉大さを知らしめると、思惑通り琴葉茜は妖精軍の絶対的指導者としての地位を確固たるものにしました。
しかし、FAIRIESはずんだ府とイゾーの対処に時間と力をあまりに使い過ぎました。FAIRIESがずんだ府に手を焼いていた時、日本本土は北海道奪還に向けて着実に力を蓄えていたのです。
そして、反撃の機会を日本は見逃しませんでした。
第2章 自衛隊北海道上陸
続く
あとがき
次回はハンジロー対イゾー、マッドドッグ1号の戦いを番外編として書く予定です。ガチバトルを書くつもりなのでお楽しみに。
このページへのコメント
マッドドッグ雑に殺されて悲C
ご心配なく
次回番外編でしっかり書きます
美食ハンター生きてた！
けど左腕（と右枝豆）失ったんでYouTuberは続けられるのでしょうか・・・？
学が無いゆえに兵站を初めとして組織として色々とダメだったずんだ府、FAIRIESの兵力を落として結果的には人間に利するという本ずん達にとってはこの上なく耐えがたい屈辱に（ｒｙ
な〜んかこの番組、ちょくちょくFAIRIESを良く見せようとしてます？
更には人間が妖精に罪悪感を抱いて逆らえなくしようとしてるようにも（ｒｙ
やっぱり残党が（ｒｙ
怪獣バトルとついに始まる自衛隊の反撃、続きが楽しみです！
次回どんな熾烈な戦いが読めるのか楽しみ
ハンジローつぇぇ！もう妖精軍の頭おかしいピンクなんかに従わずに好きに生きた方が良いやろ
『美食ハンター』の大出世！生き残ってよかったです……
「人間のいない世界」こそが妖精たちの真の理想郷だったとしても、『ずんだ府』のやり方はあまりにも……圧倒的な数の暴力による人間狩りが始まると、いよいよ末期だなあと感じます…………『なぜ怒るんだろう』()
イゾーの裏切りと死をうまく利用したFAIRIES、それでもこの事態が想定外だったことは変わらずということで、ますます綻びが……これからどうなるのか楽しみです！