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ずんだもん豪華定食編集する

最終更新： q333 q333 2023年02月05日(日) 11:38:24履歴

作者：豆逆台杉子

食材

「おなかのこがうごいたのだ！」
「ほんとなのだ！うごいてるのだ！」

緑の白の体色をした生き物たちが、巣の中で騒いでいる。
『ずんだもん』と呼ばれるこの生き物たちは、森に住んでおり、枝豆や木の実、ひいてはずんだ餅を食べて生きている。
森で暮らす彼ら(以下、森ずん)は基本的に温厚な性格だが、鳥や熊などの天敵には容赦がない。
人間もその一つで、巣に近づこうものならば群れを生して襲いかかってくるのだ。

なぜ人間が出てくるのか、疑問に思った人もいるだろう。
人間の間では、森ずんは最高の食材として知られている。森ずんの身は栄養満点な上に、独特の旨みがあり、個体数も多いからだ。

森ずんは子供を手塩にかけて育てる。枝豆を山ほど食べ、走る、遊ぶなどして程よく体を動かし、いざと言う時には親ずんが守ってくれるため、ストレスを感じることなく健康的に育つのだ。

ずんだもんは幸せを感じれば感じるほど美味しくなるとも言われる。その幸せをたっぷり味わったずんだもんこそが、森ずんなのである。

「おちびちゃん、もうすぐうまれてくるんだね。とってもたのしみなのだ」
膨らんだ腹を携えた母ずんは、幸せそうに父ずんと顔を見合わせた。
あたりは既に暗くなり、点々と星が輝き始めていた。
「おちびちゃんたち、そろそろねようね。」
母ずんが他の子ずん達に呼びかけると、彼らははーいのだ、と返事して、すぐさま眠りについた。
「ぼくたちもそろそろねるのだ、あしたごはんさんをとってこなきゃだからね」
父ずんたちも体を丸めて眠りにつき、巣の中はすっかり静まり返ってしまった。

捕獲

『ずんだもんと呼ばれるこの生き物たちは、森に住んでおり……』
頭から枝豆を生やした人影が、テレビの前で足を組んで座っている。
『ずんだもんは幸せを感じれば感じるほど美味しくなるとも言われる。その幸せをたっぷり味わったずんだもんこそが、森ずんなのである。』
「なるほど…いい事聞いたのだ」
一言ボソッと呟くと、彼は脱ぎ捨てられたフードを拾い上げ、素早く羽織った。
そしてソファから立ち上がり、玄関へと向かっていった。
「ずんだもん狩り、スタートなのだ」
『人型』はドアノブを握り、ドアを押し開けた。

小さな影が山の中に入っていく。
「ここに噂の森ずんがいるのだ？」
あたりを見回しながら、人型はずんずん歩く。
ふっと視線を横に向けると、そこには藁造りの巣があった。
「森ずんの巣なのだ？」
音を立てないようゆっくりと屈み、穴の中を覗いた。
そこには…
「ずーん…ずーん…」
幸せそうに寝息を立てながら、すやすや眠っている森ずんたちがいた。
「予想通りなのだ」
人型はバッグから、予め持ってきておいたダンボールを取り出し、巣の中に手をやった。

「まずは一番小さい奴らからなのだ」
人型の包み込むような大きな手が、産まれたばかりの子ずんへと伸びていき、やがてそれらを掬いあげた。
「4匹もいる…どう料理してやろうか」
人型の囁き声に気づいたのか、はたまた体に伝わる違和感に気づいたのか、子ずんたちが目を覚ます。
「のだ…？」「うわぁ！」「にんげんさんなのだ！」「たしゅけて！おかあちゃ！」
「まずい、ばれたのだ」
彼はそれらを素早くダンボールに入れ、声が響かないよう手で蓋を押えた。
「危なかったのだ…次、中くらいの」

先程捕まえた子ずんより一回り大きい個体、そしてもう一回り大きい個体を次々と捕まえ、その度ダンボールにぶち込んだ。
ダンボールの中は、緑と白1色になり、中で閉じ込められた子ずんたちが助けを求めて暴れていた。

「もう一つ、大きいのがいる。恐らく長男なのだ」
まだ残っている子ずんを掴みあげる。
さすがにそこまで弱くなかったか、長男ずんが声を張り上げる。
「にんげんさん！いますぐはなすのだ！！」
「なにっ！？にんげんさん！？」
長男ずんの叫び声に反応し、今さっき呑気に寝ていた親ずんが目を覚ました。
「ちょっと掴んだだけで大袈裟なのだ」
すぐさま長男ずんをダンボールに入れ、出てこられないよう片腕で蓋を押えた。
「ここからだすのだ！！」
ダンボールの中からでも、その声は聞こえてくる。
「待っててねおちびちゃんたち！おとうちゃがたすけるからね！！」
父ずんは子ずんたちに向かって叫ぶと、人型に怒りの視線を向ける。
「にんげんさん、いますぐおちびちゃんをかいほうするのだ！！」

解放、という彼らにとって難しいであろう言葉を知っているあたり、この父ずんはかなり賢い個体と思われる。
が、戦闘能力はどうだろうか。
「えいっ！！」
父ずんは人型目掛けて突進した。
人型はそれを手で払い除けた。
「いてっ！」
「おとうちゃ！」
払われた衝撃で、父ずんは地べたに打ち付けられる。
「こいつら、敵に容赦ないとか言うけど弱すぎだろ…」
あまりの脆弱さに困惑しながら、人型はダンボールの空いたスペースに気絶した父ずんを入れた。

最後に残ったのは、震えて動けない母ずんだ。
「お、おねがい…おちびちゃんをかえして…ぼくはつかまえていいから……」
母ずんの哀願も聞き入れず、人型は首根っこを掴んで箱に入れた。

「これで全部か…随分と大家族なのだ」
ぎゅうぎゅう詰めのダンボールの中にはちびずんが4匹、中くらいのが3匹、大きいのが3匹、長男と両親だ。
人型は母ずんの体を凝視した。
「腹が膨らんでる…きっと中におちびがいるのだ。帰った頃にはもっと増えてるだろうな」
人型はダンボールの蓋をテープで閉め、息ができるよう蓋に小さな穴をいくつか開けた。
「帰って調理するのが楽しみなのだ」
大きな箱を抱えながら、小さな人影は山を下って行った。

下準備

「ただいまなのだ」
帰ってきて一言、人型は呟いた。
一人暮らしとはいえ、帰宅時に一言挨拶するのが彼の習慣なのだ。
キッチン台に、沢山のずんだもんが入ったダンボールを置く。
「様子はどうかな」
テープの貼られた部分にカッターナイフを入れ、横に滑らせた。
蓋を開けると、やはりずんだもんの家族がひしめき合っていた。
「こわいよ、おとうちゃ！」「だいじょうぶだからね…おとうちゃががんばってすにかえしてあげるから…」

おや、と人型はダンボールを覗き込む。
母ずんの顔が苦痛に歪んでいるのだ。
「うう、おなかがいちゃいよお……」
もうすぐ『おちび』が産まれそうなのだ。母ずんは歯を食いしばり、尻を突き出して力んだ。
スポンッ
「おぎゃ！おぎゃ！」
母ずんの体内から4匹のおちびが産まれた。母ずんは幸せそうに笑い、目には涙が浮かんでいた。
「おちびちゃんがうまれたのだ…！とってもかわ……」
「ナイスタイミング！！」
人型は母ずん以上に幸せそうな笑みを浮かべた。
何せ、自分の食材が増えたのだ。しかも、母ずんが自らの手で増やしてくれたのだから……

「に、にんげんさん…！」
母ずんはこちらに気付くと、顔を真っ青にして情けなく許しを乞うた。
「おねがいです、おちびちゃんたちにひどいことしないで…！」
「何言ってるのだ、まだなんにもしてないのだ」
人型はまな板、ボウル、鍋と言った調理器具を取り出し、鍋には水を入れてコンロに置いておいた。
「折角いい食材が手に入ったのだ。逃がす訳にはいかないのだ」
産まれたばかりのおちびを指でつまんで取り上げる。
「おぎゃー！おぎゃー！」
「いやぁ！！おちびちゃんかえして！！」

「まずは下処理からなのだ」
つまんだおちびの肛門を無理に広げる。
「いちゃ！おかあちゃ！」
広がったおちびの穴に、細いホースを突っ込む。
「えっ…なに、する、の…？」
母ずんへの返答は、行動で示された。
人型が蛇口を捻ると、たちまちおちびの腹が膨らんだ。腸の中に水を入れたのだ。
「おぎゃぁああ！！！」
腸が破裂しないよう、程々に溜まったらホースを抜き、肛門を下に向けて水を捨てた。
緑色に染まった水がシンクに零れ落ちる。
「もう1回なのだ」
「やめてぇええ！！！」
再び腸に水を流し込む。
さすがに産まれたばかりなのか、流れ出た水にずんちは含まれておらず代わりに血が滲んでいた。
下処理が終わった頃にはおちびは弱っていた。
「他の奴らも下処理していくのだ」
人型は残っていたおちびや子ずんたちを掴みあげては、腸洗浄をしていった。

「いちゃい、いちゃいよぉ……」
全ての妖精の下処理が終わった。
「どうちて、こんなこと…」
「お前らを食べるためなのだ」
人型は冷ややかに答えた。そして紙とペンを取り出して何かを書き付けた。
「本日のメニューは……ええと…
『・ズンテキ
・父ずんのモツ鍋
・長男ずんの刺身
・ずんだの唐揚げ
・茹でずんの餡掛け
・森ずんと街ずんの焼肉
・枝豆とモッツァレラのサラダ
・豪華三点盛り 〜白子ポン酢・子ずんのバター焼き・ずんだのなめろう
・ずんだの味噌汁
・子ずんと枝豆の天ぷら
・ずんだの串焼き
・ずんだ餅』」
人型はメモ書きを冷蔵庫に貼り付けると、キッチン台に赴いた。

「さて、誰から調理してやるのだ？」
人型は一通りずんだもんたちを見回し、暫くしてから父ずんを掴みあげた。

調理

ズンテキ


「や、やめるのだ！はなすのだ！」
白い体の生き物は、小さな手足をじたばたさせて何とか抜け出そうともがいた。
「いや！いや！ぱぱずん！！」
痛みで動けず精々手を伸ばすしか出来ない母ずんに、人型は顔を近づけた。
「ほら、お前もしっかり焼き付けておくのだ」
母ずんの目の前で、父ずんがまな板にどんと置かれる。
その白い腹に、銀色に光る刃が押し当てられた。
「命に感謝！！」
人型がそう言った直後、父ずんの腹から緑色の液体が噴出した。

「あぁあﾞぁあﾞあﾞあﾞあﾞ！！！！」
「いやぁあぁぁぁぁ！！！！！ぱぱずん！！！！！ぱぱずん！！！！！！だめええええええええええ！！！！！！！」
父ずんの顔は苦痛に歪み、がしゃついた悲鳴をあげた。
指したところからは緑の血が垂れ流しになり、少しずつ中身が顔を出していく。
「やめてぇぇえええ！！ぱぱずんが、ぱぱずんがしんじゃうううううううううううう」
母ずんは尻の痛みも忘れて人型の腕にしがみついた。が、小さな体では到底敵わない。
「ぎゃっ！」
もう片方の手で首元を捕まれ、母ずんは乱雑にダンボールに入れられた。
構わず、人型は包丁を這わせる。

やがて父ずんの腹はぱっくりと裂け、緑がかった内臓が露わになった。
「あﾞ、はっ、かひっ」
「さすが森ずん。内臓も綺麗なのだ」
彼は虫の息の父ずんの腹に手を入れ、潰さないようにそっと内臓を引き抜いた。
「おごぉ……」
父ずんの口から血が溢れ出す。
「すごいのだ。栄養満点と言うだけあって、色も健康的なのだ。これでモツ鍋を作れたら、相当なものになるぞ」
先程用意しておいた水に臓器を入れ、彼はコンロに火をつけた。
「基本、森ずんの内臓は綺麗なのだ。でも念の為、処理はしておいた方が良いのだ」
サッと湯通しした内臓を水切りしながら彼は呟く。
それが済んだら、内臓をトレイに置き、ラップをかけて一旦冷蔵庫に入れた。

人型は次に、内臓を抜かれた父ずんに目をやった。
こんな状態でも、父ずんの体はピクピクと動いているのだ。彼がさっきまで生きていた証、とでも言うのだろうか？バカバカしい、そう思いながら、人型は父ずんの白みがかった肉を切り分けた。
「森ずんの肉は綺麗な薄ピンク色で美味しそうなのだ。あの薄汚ぇ街ずんとは大違い」
繊維の張った肉に塩と胡椒が振られる。肉全体に味が付くと、人型はそれをバターを広げたフライパンに乗せた。
ジュウウウ
肉が焼ける音と共に、ずんだもんの肉独特の風味が匂いとなって滲み出た。
「おお、いい匂いなのだ」
食べなくとも分かる。このピンクの塊には、肉汁がたっぷり詰め込まれているに違いない。
そんなことを考えている内に、ステーキに焼き色がついてきた。
「裏面も焼くのだ」

ズンテキとなった父ずんが、皿の上に置かれた。
「どうだ母ずん、おちび共。これがぱぱずんだったなんて信じられないだろ？」
フライパンについた肉汁を使ってソースを作りながら、人型はニヤリと笑ってみせた。
「いやぁ！ぱぱずんがごはんさんになってるのだ
！！」
「う、そ……ぱぱ、ずん……」
子ずんたちはしきりに泣き叫び、母ずんに至っては呆然として皿の料理を見つめていた。当然の反応だろう。今まで家族のために尽くしてくれた父が、呆気なく食べ物にされているのだ。
「そんで、『ぱぱずん』にソースをかけて……」
人型は見せしめのように、『ぱぱずん』を残った家族たちに見せつけた。

「ズンテキの出来上がりなのだ」

刺身

「いや！いや！はなちぇ！！」
次に選ばれたのは、長男ずんだ。
長男ずんはダンボールの端を掴み、掴みあげられまいと必死の抵抗をした。
「うるせぇ！食材が喋んな！」
人型は怒鳴りながらダンボールを掴む手を強引に引き剥がし、まな板に叩きつけた。
「いちゃいのだ！」
「さっきから喧しいのだ、食材の癖に」
森ずんの中でも比較的攻撃的とはいえ、あまりにも騒ぎ立てるので人型は苛立っていた。
やがて包丁を拭き終えると、人型はそれを長男ずんの腹へと振り下ろした。

「あがががががががが、かひゅっ、ひゅぅ」
「何とか捌いたのだ。全く、大暴れするから随分と手がかかったのだ。」
溜息をつきながら艶めいた内臓を取り出す。
湯通ししようとコンロに向かった人型の目に、何かが引き寄せられた。
「おﾞ、と……ちゃ……」
しゃがれた声だった。喉の奥から頑張って出したような、そんな声だった。
まさかと思ってまな板に目を向ける。

「おﾞと、ぢゃ……を……がえﾞ、ぜ……」
なんと、内臓を引き抜かれた状態でも、長男ずんは生きていたのだ。
しかも、父ずんがしていたようにピクピクと体を震わせていた。
人型は暫くの間、気を取られていた。

「……勿体ないことをしたのだ」
小声で呟いた。なんだ、生きていたんだ。ならば父ずんもあのまま放置してみて、家族への別れの言葉を聞いてみたかったものだ。
人型は内臓をトレイに入れ、動かなくなった長男ずんに刃を入れて三枚おろしにした。
ハリのあるピンク色がまな板に並び、光沢を帯びていた。
「刺身は食べやすい大きさにカットして、お皿に盛り付けていくのだ。わさびも多めに出しておくのだ。ピリッと辛い味がアクセントになるから」
刺身の盛り付けが終わり、仕上げに醤油皿に並々と注いだ。

「ずんだもんの刺身の出来上がりなのだ」

唐揚げ

人型が次に目をつけたのは、長男より一回り小さい個体だ。
「子ずんでも、ここまで肉がついてるのは初めてなのだ。いいもの食べてきたんだろな」
大ずんの胴体ががっしりと掴まれる。
「やーやー！たべないで！！」

森ずん料理で一番人気ものと言えば、唐揚げだ。なんと言っても、森ずんの体は内臓含め全部食べられるのだ。
体を一口サイズに切り分け、衣をつけて揚げれば完成する代物だ。
勿論その肉も美味な為、手軽に作れて美味しいという理由で、あちらこちらで作られている。

まな板に乗せられた大ずんの視線の先には、刺身にされた兄と『ぱぱずん』が映っていた。
「いや、いや、ごはんさんになりたくないのだ……」
怯えて涙を流す大ずんに、無慈悲にも包丁が入れられる。
「やぁあああ！！いちゃい！」
手始めに腕が切り落とされる。断面からは緑の血が流れ出し、ピクピクと痙攣した筋肉が剥き出しになった。
「やめて！てあしとらないで！！」
次々と四肢が切り落とされる。
「こいつらは天ぷらに使うのだ」
大ずんの枝豆と尻尾を引きちぎると、切り落とした手足と一緒にトレイに入れた。
もはや全ての部位を取られた大ずんは、ほぼ『たりない』に等しかった。
『たりない』大ずんを仰向けに寝転がす。
「ずんぽも天ぷらにするのだ」
人型は胴体にちょこんとついたずんぽを掴み、付け根に包丁を入れる。
「いや！いや！ずんぽは、ずんぽだけは……！！」

「ｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞ」
雄ずんの象徴は、ずんたまの根元からごっそり切り取られた。
切り口からは真っ白な精巣がこちらを覗いている。これは天ぷらにすると絶品なのだ。
「仕上げに入ろう」
ずんぽを取られた痛みで出た悲鳴によって、大ずんの声帯は破壊され、声を出すことすら出来なくなった。
そんな哀れな小動物の体を、包丁が淡々と切り分けていく。
さっきまで大ずんだったものは、やがて小さな肉の塊になってしまった。
「噂に聞いていた通り、簡単だったのだ」
肉の塊は衣に浸され、200℃に熱した油で揚げられた。
カラカラ……
油と肉の匂いが立ち込める部屋で、人型は次のずんだもんをまな板に乗せた。

いよいよ最後の肉が揚がったようだ。
人型はそれを皿に盛り、塩とレモンを傍に置いた。

「唐揚げの出来上がりなのだ」

餡掛け

ずんだもんの餡掛けと言う、変わった食べ物がある。
聞いただけだと、ずんだもんを茹でるなどして上に餡をかけるといった料理を思い浮かべるだろう。しかしこの料理、非常に残酷でグロテスクな過程を経て作られているのだ。

人型はまな板の上のずんだもんをしっかりと掴み、洗浄したばかりの肛門を無理やり広げた。
「いちゃい！なにするのだ！」
穴が塞がないようプラスチックの筒を挿入する。
人型はボウルを持ってくると、冷蔵庫から肉ミンチやらニラやらと言った食材を取り出した。

そう。ずんだもんの餡掛けは、ずんだもんの体内に具材を出来る限り詰め込み、鍋で茹でてそこに餡を掛ける、残酷ながらも美味しい料理なのだ。

肉ミンチと野菜を混ぜ合わせて具材が出来上がると、人型はそれをずんだもんの肛門へ筒を使って流し込んだ。
「あああ！！いちゃい！おなかがいちゃいよ！」
ずんだもんの腸に具材が詰め込まれる。
小さな腹はどんどん膨らみ、やがて妊婦のようにぼこっと突っ張ってしまった。
それでも構わず、人型は流し込み続けた。
「いやぁ！！やめて！おなかさけちゃう！！」

バツン
「うわっ」
ずんだもんの腹から鋭い破裂音が聞こえた。
どうやら腸が圧力に耐えきれずはち切れてしまったようだ。
「やっちまったのだ」
肛門から筒が抜かれる。
折角詰めた具材が出てしまうといけないので、肛門を糸で縫い付けた。
そして枝豆を摘み、煮え立った湯の中にずんだもんを入れてやった。
「ゴボ、ゴボォ」
鍋の中でずんだもんが少し動いたのが見えた。
やはり生命力だけは強いずんだもん。こんなになっても生きているなんて、もはや不死鳥ならぬ、不死ずんかよ。
そう思いながら人型は、ずんだもんに掛ける餡を作っていた。

餡が出来上がると同時に、ずんだもんの色も鮮やかな緑色になった。
「少し具材が漏れたのだ…でもまぁ、これはこれで」
詰め込みすぎたせいか肛門からは具材が出てしまっていた。しかし出てしまったものは仕方がない。
人型はずんだもんをトングで掴んで皿に乗せ、そこにとろりとした餡を掛けた。

「ずんだもんの餡掛けの出来上がりなのだ」

焼肉

「次は焼肉なのだ」
人型は森ずんを取り出して、肉を切る準備を始める……前に、思い出したかのように棚へと顔を向けた。
「森ずんだけだと物足りないのだ……そうだ、ちょうどいいところにこいつらがいるのだ」
棚の扉が開かれる。そこには『街ずん』と書かれたダンボール箱が置かれていた。
人型はそれを持ち上げ、カッターナイフで箱を開けた。

「おいくしょにんげん！！とっととずんだもちよこちゅのだ！！」
「おぎゃー！おぎゃー！」
ダンボールの中には、顔を赤くして怒鳴りつける父ずん、ヘコヘコを待つかのように尻を突き出す母ずん、そして夥しい数の子ずんが入っていた。

いわゆる『街ずん』は、不衛生で荒んだ環境で育ったためか、その殆どが荒々しい性格である。四六時中弱いずんだもんを嬲ったり、他のずんだもんを口汚く罵倒し、餌はそこら辺に落ちているゴミを漁るか、他者から盗んでいくのだ。
特に人間への当たりは強く、出会い頭に「くしょにんげん」と罵倒する有様。その態度の悪さから、一部の人間からは「くずんだもん」と呼ばれている。

「おぎゃー！おなかしゅいちゃのだ！」
子ずんたちが煩く喚き立てる。
「うるちぇーのだ！ぼくのずんちでもくってろなのだ！」
母ずんは見向きもしない所か、子ずんに向けて尻を向け、そこから汚い緑色をひり出した。
「おかあちゃ！くちゃいのだ！」
ダンボールの中には目を覆いたくなるほどの地獄絵図が広がっていた。
やはり、こいつら見てると食欲失せるな…清潔な森ずんの方が美味しいに決まってるだろ。
という思考を巡らせ、人型はずんちをしたばかりの母ずんをがっしり掴む。
「お前、汚ぇのだ。しっかり下準備はさせてもらうのだ」
母ずんの尻にもホースが突っ込まれる。
「くちょにんげん！いましゅぐぬくのだ！ぼくはほーすとへこへこなんてしないのだ！」
汚い言葉遣いで喚く母ずんを無視して、腸内に水が注ぎ込まれた。
「ぎゃああﾞあﾞあﾞあﾞ！！！いちぇーのだ！このかとうしぇーぶちゅが！」

「はぁ、はぁ……くちょ、くちょ……」
「そんなにクソクソ言ってるとお前の口臭くなるのだ」
綺麗に綺麗に洗浄した母ずんと森ずんがまな板に並べられる。
街ずんは栄養状態が悪いため、大人の個体でも森ずんの子供並に小さいのだ。
人型は彼らの肉に包丁を入れ込み、部位ごとに切り分けていく。

「おいやめるのだくちょにんげん！」
「やめて！いちゃい！！」
首、腹、背中と、ありとあらゆる部位に包丁を入れ、肉を切り取っていく。
「なんだか凌遅刑している気分だな」
凌遅刑とは清で行われた処刑方法の一つで、生きている人間の肉を削ぎ落としながら殺すのだ。
まさしくその通りに、ずんだもんの丸々とした体は、肉が削がれてだんだんと細くなった。

やがて内臓も切り落とされ、皿の上に削がれた肉や内臓が盛られた。
森ずんの健康的なピンク色の肉と、街ずんの薄汚くくすんだ色の肉を見れば、どちらが良質な肉かは一目瞭然だ。


「いやはや、見た目は森ずんの方が美味そうだが、味は分からない。楽しみなのだ。」

サラダ

サラダの作り方は単純明快だ。
レタス、トマト、きゅうり、新玉ねぎと言った新鮮な野菜、モッツァレラチーズ、そしてメインの『枝豆』を皿に入れ、フレンチソースとよく混ぜ合わせるのだ。
『枝豆』は、勿論残った子ずん達からもぎ取る。
ずんだもんの枝豆は通常の枝豆と比べてタンパク質や脂質、そしてデンプンなどといった栄養素が多く、健康食品として密かなブームにもなっている。陽の光をたっぷり浴び、美味しい食べ物を食べてきた森ずんの育ちの良さを物語っている。

人型は母ずんと残った子ずん達から一つずつ丁寧に枝豆をもぎ取った。

メリメリ……ブチッ
「ぎゃっ！ひぎぃ、いちゃいよ！」
「もうやめて！かたほうもとらないで！」

かつて枝豆のあった箇所からは血とは違う、半透明の液体が流れ出ていた。人型がそれをスポイトで吸い取る。
「これは隠し味としてドレッシングに混ぜると美味いのだ」

枝豆と他の野菜、モッツァレラチーズをボウルに入れ、先程採集した液体とフレンチソースをよく混ぜ合わせる。
枝豆入りサラダを皿に盛ると、人型はスマホを取り出し、電話をかけた。

「もしもし、めたん、今日はずんだもんパーティやるけど、良かったら来るのだ？
わーい、嬉しいのだ！そうそう、『あれ』、家にまだあるのだ？そう、持ってきて欲しいのだ、やりたい事があるから」

豪華三点盛り……とずんだ餅

「まずは白子ポン酢なのだ」
大ずんよりも一回り小さい個体を取り出す。
それは仰向けに寝かされ、手でしっかりと押さえつけられていた。
「な、なにしゅるのだ……？」
「お前、成長期か？精巣が大きくなってるのだ」
外からでは分からないが、股間部を押すと、二つの硬いものが入っている感触がある。
成長期の雄ずんは、体の発達に合わせて一時的に精巣が大きくなるのだ。成長期ずんだもんの精巣はクリーミーな食感と独特な味わいがウケるのだ。

早速ずんぽが切除される。
ビチ、ビチビチ……
「はぎゃ！いちゃ！！ずんぽいちゃい！！」
ずんぽが完全に切除された。これもまた天ぷらの具材として使われるのだ。
今度は断面から尻尾の前までを切り開く。
精巣を潰さないようにゆっくりと刃を滑らせる。
切開が終わると、中から真っ白な精巣がこちらを覗いた。
人型はそれを体から切り離す。

「すごいな。おいちび、これが自分の体に入ってたんだぞ？誇りに思うだろ？」
人型は精巣を掲げて笑う。
「す、すごいのだ……でも、ぼくにはもうずんぽもずんたまもなくなっちゃったのだ…」
中ずんは自分の体を眺めて静かに泣いている。
精巣はまな板の上でぶつ切りにされ、皿に盛られてポン酢で飾られた。

人型はもう1匹の中ずんを手に取……
「ずんずんずんずん！」「もぐもぐ！」「おいちーのだ！」
「え？」
人型の顔が青くなる。
「ちびども、くしょにんげんをくるしめてやれなのだ！」
どうやら何処からか虫のような声がきこえるのだ。それと同時に何かを齧る音も聞こえる。
嘘、だろ……？まさかあいつら…！！
人型は恐る恐る声の聞こえる方を見た。

「おいち！はっぱおいちーのだ！」
「あ、あぁ、あぁあぁああああ！！！」
人型は顔を押さえてがっくりと崩れ落ちた。なんとさっきまでダンボールにいたはずの街ずんが、レタスの葉に群がっていたのだ。
人型はテーブルの縁に掴まり、足を震わせながら立ち上がった。
「わはは！くしょにんげん！それみたことか！ぼくたちをひどいめにあわせたばちゅなのだ！」
街の父ずんは勝ち誇ったように人型を嘲笑った。
が、人を罵るぐらいの脳しかない街ずんは、力では到底人間には適わないのだ。

がしっ
「な……！？」
街ずんの背中が大きな手に掴まれる。
次の瞬間。
ボゴォ！！！
「ほ、ほぎぃ！！」
街ずんの腹にパンチがぶち込まれる。その拍子に街ずんは口から中身を吐き出した。
「うわ、きったねぇのだ」
腹を抱えて苦しむ父ずんをよそに、人型はおちびを葉から引き離し、すり鉢に入れた。
おちびもまた親譲りの汚い言葉を人型に向かって吐き出す。
「ちね！くしょにんげん！」「なにしゅるきなのだ！」「さっさとごはんさんよこちゅのだ」
「うるせぇ！お前らが『ごはんさん』になるんだよ」

グチャッボキッゴリュュッ
「おぎゃー！」「からだがぁああ！」「ごぼぉぇえ」「たしゅけて！」
おちびの体をすりこぎ棒が無惨に潰していく。
潰れたおちびからはあらゆる穴から臓器や血が噴き出し、グチャグチャと音を立てて他のおちびと混ざっていく。

「いちゃ！つぶしゃないで！おねg」グシャ
最後のおちびが潰される。
彼らの残骸はペースト状で、まるで『ずんだ餡』のようになっていた。
人型はそれを焼いた餅に乗せた。

「どうだ！これがお前の大好きなずんだ餅なのだ！……」
人型は父ずんにも見せてやろうかと思ったが、当の本人はおちびが殺されたという事実も無視して机の縁でへこへこしていた。
「おほぉ！机も悪くないのだ！へこへこ！へこへこ！」ガシッ
「お前は虫かご行きなのだ」
人型は父ずんの体を掴み、虫かごへと放り込んだ。

人型は今度こそもう1匹の中ずんを手に取った。
「切るばっかだと単調なのだ、ここは焼き料理にするのだ」
人型は換気のため窓を開ける。そして中ずんの方に体を向ける。
中ずんの背中に菱状の切り込みが入れられる。
「うぎゃ！せなか、せなかがきれてるのだ！」
中ずんは息を切らし、ぷるぷると震える。
切られた中ずんを七輪に乗せ、炭火を焚いた。
「の、だぁ？あしがあったかいのだ？」
やがて炭火が全体に広がり、ぱちぱちと音が鳴った。中ずんの体も焼かれ始めた。
「ひいっ！あちゅ！あちゅい！体があちゅいのだ！！」
中ずんの体は溶け、網と離れなくなってしまった。引き剥がそうともがけばもがくほど、皮膚が引っ張られてしまう。
「そんなに暴れるな、ほらよ」
中ずんの背中の切り込みにバターが乗せられる。

ジュワッ
「あぁああああ！！！」
傷口にバターが染み、激しい痛みが走った。
「それっ」
「あちゅい！あちゅいよ！」
体の側面にはバーナーが当てられ、皮膚を炙った。
暫くすると、バターと肉の香ばしい香りが広がった。

「ずんだもんのバター焼きの出来上がりなのだ」

次に作るのは、ご飯に乗せるためのなめろうだ。
まな板に置かれたずんだもんに包丁が振り下ろされようとしていた。
「やーやー！こわいよ！たしゅけて！」

内臓ごと食べられる子ずんは、内蔵処理せずとも手軽に食べられるのが特徴だ。
子ずんのなめろうもコスパが良く、ずんだもんを醤油などと一緒に切り刻めばあっという間に出来上がり。

中ずんの体を包丁が叩き嬲っていく。
「いちゃいいちゃいいちゃい！潰れてるのだ！」
小さな体がどんどん原型を失っていく。
細かく叩き切られた中ずんに、醤油や味醂などの調味料が加えられ、さらに叩かれた。

トントン……

なめろうが出来上がった所で、横長の皿に白子ポン酢、バター焼き、なめろうが盛り付けられた。

「豪華三点盛りの出来上がりなのだ」

味噌汁

残ったのは母ずんと子ずん、そして産まれたばかりのおちびだ。
人型は子ずんの尻尾をひょいと摘むと、そのまま容赦なく鍋に入れた。
「ごぼ、ごぼぼ…くるちいのだ……」
鍋に火が着けられる。子ずんで出汁を取っているのだ。
「こいつで出汁を取ったらどうなるか…興味深いのだ」
水が沸騰し始めると、中の子ずんが助けを求めるかのように水中でもがいた。
長らく水中に潜っていても、ずんだもんは微かに生きているのだ。
「ごふっ、もがっ、ぼほっ、くるちい！あちゅいよ！」
いい感じに水が温まった所で、人型は味噌を溶かした。
もはや子ずんは息絶え、動かなくなってしまった。
「しぶとい奴だったのだ…まあ、こいつは具材に使うのだ」
葱やじゃがいも、玉ねぎ。
子ずんの味を楽しみたかった人型は、味噌汁に入れる具材の種類を少なくしたのだ。
お椀に並々と味噌汁が注がれ、表面に枝豆が飾られた。

「味噌汁の出来上がりなのだ」

天ぷら

「おかあちゃ、こわいよ！」「ぼくもごはんさんにされちゃうのだ？」
2匹目の子ずんを連れていかれ、残る子ずんはあと2匹だった。
「おちびちゃん……」
体にしがみつく子ずんたちを見て、母ずんは泣きながら彼らを優しく抱きしめた。
「いますぐ、ここからにげるのだ…」
「えっ？」
子ずんたちは目を丸くした。
「にんげんさんはぼくたちをたすけるきはないのだ…！だから、せめてぼくたちだけでも……
え…っ？」
母ずんが顔を上げると、そこにはもう2匹の姿はなかった。

「いや！いや！あちゅいのやだ！」
衣塗れになった子ずんが、箸に尻尾を摘まれ逆さ吊りにされていた。
揚げ器の傍らには既に調理された枝豆やらずんぽやらが並べられていた。

ジュワーッ
「ぁぁあああ！！だじゅげで！いﾞちゃいﾞ！！」
必死の抵抗むなしく、子ずんが揚げ器に落とされる。カラリと揚がった子ずんは狐色に輝き、いかにも食欲を唆る様な匂いを漂わせていた。
「お、おにいちゃ……」
「いや！だめ！おちびちゃんかえして！！」
死を悲しむ暇も与えられず、次の子ずんが灼熱地獄の底へと突き落とされる。
「素揚げも悪くなさそうなのだ」
油の中でのたうち回る子ずんが、人型にはただの料理にしか見えていないのだ。

3匹の子ずんとその他諸々が皿に積まれる。
それらは自分が「美味しい」ということを、見た目から訴えていた。

「天ぷらの出来上がりなのだ」

串焼き

人型は、いつの間にか長男ずんの内臓の串焼きを作っていた。
それだけでも、肉の油っこい匂いが漂い、肉汁をテカらせていて、見た目匂い共に喉が唸りそうなほどの存在感を醸し出していた。
しかし、人型が本当にやりたかったのはこれではなかった。

「いや！おねがいだから、おちびちゃんは、おちびちゃんはだめ……！」
「黙れ、所詮は食材なんだよ」
人型は最後に残されたおちび4匹を母ずんから強引に奪いあげた。
「あっ、あっ……おちびちゃん…」
絶望的な表情を浮かべる母ずんの目の前に、4匹並んだおちびが見せつけられる。
「おちびの最期、しっかりと見ておくのだ。絶対目を逸らすなよ」
人型は母ずんに竹串を押し付ける。
「え、うそ、まさか……」
母ずんはこれからおちびが何をされるのか、どんな惨い目に遭わされるのか、全てを察した。
が、気付いた時にはもう遅かった。
後方のおちびの尻に、竹串の先端が近づいた。

グサッ
「おぎゃあaゴボッ、オゴ、ゴ……」
グチャグチャと内臓を抉るような音が響き、おちびの肛門から口にかけて、竹串が貫いた。
おちびの中からガスの抜け出る音が漏れる。
「もご、おぉ」「ぅぉお」「ご……」
残りのおちびにも次々と竹串が刺される。
4匹のおちびたちは、まるでムカデのように繋がってしまった。

「あ、あぁ、えっ」
母ずんは目の前で繰り広げられる惨劇を目の当たりにして言葉を失った。
「お、ごぉ」
声を出すことも息をすることも出来ないおちびたちを、ただただ見つめることしか出来なかった。
「お…ちび、ちゃ」
母ずんの視界がくらくらと回る。

自分たちが頑張って育てて、昨日まで元気に生きていた子供たちがこんなにも簡単に死ぬなんて。
自分の体の中で産まれてくるのを楽しみにしていたであろうおちびが、人生を楽しむことすら許されず、こんなにも無惨な最期を迎えるなんて。
自分たちで作り上げていく筈だった幸せが、こんなにもあっさり壊れるなんて。

……自分が子供一人守れもしない、臆病者だったなんて。

次の瞬間、母ずんの喉奥から溢れたのは、ほとんど声にならない悲鳴だった。

部屋の空気を満たすのは、肉が火に舐められる濃厚な匂いだった。
森閑とした雰囲気の中、おちびの串焼きが皿に置かれる音が響く。

「串焼きの出来上がりなのだ」

実食

ピンポーン
「お、来たのだ」
インターホンのチャイムに気づき、人型はドアに向かう。
「はーい」
声の主に返事をし、ドアを開けると、そこにはピンク色の髪の女性が立っていた。
「めたん！遅かったのだ」
「ごめんなさいね、『あれ』を探してたら時間かかっちゃって」
人型は料理していた時の声とは打って変わって、明るく幼い声で接した。
一方の『めたん』は落ち着いた様子で、少し苦笑いをしてみせた。

「ほら、持ってきてあるわよ」
めたんが鞄から出したのは、箱型の機械だった。
「おお、凄いのだ！これがめたん作:『培養機』なのだ？」
人型は無邪気な子供のようにはしゃぐ。
「ええ。この中にずんだもんを入れれば、その枝豆で子ずんを育てる事が出来るの。ずんだもんが過ごしやすい環境も食べる餌も提供されるから、相当良いのが出来るわよ」
めたんはリビングの傍にあった棚にそれを置いた。箱の側面は透明になっており、中の様子が見える仕組みになっている。
「あら？」
めたんはふとキッチンの近くを見る。
「あの虫かごは？」
床には蓋をガムテで閉じられた虫かごが転がっていた。その中には、出ようと暴れている街ずんの姿があった。
「ああ、あいつなのだ？ボクのサラダを子ずんに食わせた上にキッチンまで汚しやがったから、お仕置用に閉じ込めてるのだ」
「あら！それは災難だったわね」
「やっぱり街ずんは類を見ない害獣なのだ」
人型とめたんが顔を合わせて笑い合う。

さて、人型はキッチンの上にある料理を持って来、ダイニングテーブルの上に並べた。
「すごい！こんなに作ってたの？」
めたんが目を輝かせる。
「そう！全部自分で作ったのだ」
「料理本買った甲斐あったわね」
コンロの上に作っておいたモツ鍋を乗せ、準備は万端だ。
「今回は特別にスペシャルゲストもいるのだ」
人型は放心状態の母ずんを抱えると、めたんにも見せた。
「ずんだもんたちのお母さん？なんだか元気なさそうね。ずんだもん料理を食べさせたら元気出るかも」
めたんは母ずんの体をダイニングテーブルに固定してやった。

「と、言う訳で……」

「いただきまーす！！」

……

「うーん、我ながら美味しいのだ！特に刺身は脂たっぷりでとろけるような食感が癖になるのだ！」
人型がほっぺたが落ちそう、とでも言うように頬を抱え、フルフルと首を震わせる。
「私はこの餡掛けが良いわね。調理過程が大変だからこそより一層食べる時の旨みが引き立つのよね」
めたんも顔に笑みを湛えた。
「これが全部ずんだもんだなんて信じられないわ」
「そりゃあ、良質な『森ずん』を使っているからなのだ」
「あぁ、だからか！通りでそこにいるずんだもんがやけに大人しいのね」
二人は項垂れたままの母ずんに目をやった。
「なんか食べさせてみない？」
人型は手を口元に添えて考え込んだ。
「うーむ、やっぱりおちびを食べさせてやりたいのだ。こいつ、おちびを調理した時滅茶苦茶叫んでたから」
人型がおちびの串焼きを手に取る。
「いや、いや……たべたくないのだ…！」
「なんなのだ？おちびは大切じゃなかったのだ？」
歯をガチガチと震わせて拒絶する母ずんに、おちびの串焼きが押し付けられる。
「や、やめ」
「早く食べるのだ」
母ずんは背中を掴まれ、口に『おちび』を押し込まれた。
「むﾞーーー！！んんﾞーーーーー！！！」
小さな手で人型の指を押さえ、必死に抵抗する。
だが母ずんの小さな体では防ぐことが出来なかった。
クチャ……モグ…
母ずんはとうとう『おちび』を食べてしまった。
肉を噛む音が僅かながら聞こえた。
それは食いちぎられたおちびの頭が示していた。
「どうなのだ？美味しいのだ？」
「……ｵﾁﾋﾞﾁｬﾝ…ﾀﾍﾞﾁｬｯﾃｺﾞﾒﾝﾈ……ﾕﾙｼﾃ…」
母ずんはショックのあまりブツブツ独り言を呟いている。
「それ、今度はぱぱずんなのだ」
「た、たべたくnむごごごご」
人型とめたんはありとあらゆるずんだもん料理を母ずんの口に運んだ。
全ての料理を食べさせ終わると、母ずんは満腹になったようだ。
「自分の家族を食べた感想は？」
「お…お……」
母ずんはガタガタ震えたかと思えば、途端に笑顔になった。

「オイシカッタノダ」
おおっ、と二人は歓声をあげる。
「良かったじゃない、喜んでもらえてるわよ」
「母ずんも認めたずんだもん料理なのだ！」
二人はお互いにはしゃぎあった。
「モット……モットゴハンサンタベタイノダ」
母ずんも先程の意気消沈ぶりが嘘のように飛び跳ねた。
まるであの惨劇が嘘かのように、部屋の中は幸せな空気が充満していた。

育成

二人が食事を終えると、森ずん培養の準備を始めた。
「おい！そこのめすずん！へこへこさせるのだ！はやく！！！」
ケースの中では相変わらず街ずんが暴れている。
「あいつどうすんのよ」
「もちろん好きにさせるのだ」
「ええっ、せっかく持ってきたのにあいつに子供作らせるの？」
「まあ見てて欲しいのだ」
人型は蓋に着いていたテープを外して街ずんを解放した。
「うおお！へこへこへこへこ！！」
虫かごから飛び出すや否や、街ずんは幸せそうな母ずんに飛びかかった。
「ノダ？」
母ずんは振り返り、街ずんのずんぽを咥える。
「おほぉ！ふぇらちおなのだ？さすがめすずん、きもちいいの……」

次の瞬間、何かが真ん中でポッキリ折れる音が響いた。
「ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！！？」
街ずんは悲鳴をあげて転げ回った。
股間部から血が流れている。ずんぽを食いちぎられたようだ。
「え！？こ、これってどういう…」
突然の出来事に、めたんは驚きを隠しきれない。
「知ってるのだ？ずんだもんは共食いすると幸せ物質が沢山出るのだ。一旦幸せ物質が出ると、ずんだもんはもっと幸せになりたいって思うのだ。そのためにはもっと共食いをするしかない。仲間の肉に餓えたずんだもんは、そいつらを見つけるなりすかさず食べちゃうのだ」
「……なんだか、人間が薬に手を出した時と似てるわね」
「そうなのだ。共食いを始めたずんだもんはもはや仲間の肉しか食べられなくなって、他のものを食べると拒絶反応を起こすのだ。まあその分子ずんの味も良くなるから良いけど」
そう言いながら、人型は街ずんの傷口を食い荒らす母ずんを引き離した。
「ゴハンサン、ゴハンサン」
「分かったのだ！また出すから」
母ずんを抱いて宥める人型は、まるで赤ちゃんを育てる母親のようだった。

母ずんを抱えた人型とめたんは人型の自室に入った。
「ここに置けばいいのよね？」
めたんは物が散乱したテーブルに培養機を置く。
「おっけー。ちょっと隣片付けて欲しいのだ」
人型は部屋の奥へと走っていく。何やら別の道具もいるらしい。
人型は棚の引き出しから肉挽き機のようなものを取り出した。
「それもしかして餌用？」
「言わずもがななのだ」
肉挽き機が培養機に取り付けられる。
それから人型はリビングに戻り、弱っている街ずんを拾い上げた。
「くしょ……にんげん…ずんぽ、かえちぇ……」
「そんなのずんぽ食った本人に言って欲しいのだ」
街ずんが肉挽き機にセットされた。
街ずんは息切れしながらめたんや人型に向けて罵倒を浴びせた。
「そ、それで壊れたりしない？」
人型がレバーに手をかける。
「ずんだもん専用だから大丈夫なのだ、ほれ」
ゴリッバキッグリュリュビチチチチ
「ｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞ」
骨、肉、内臓などが砕け潰される不快な音が響く。
街ずんの体はたちまち破壊され、激しい痛みに彼は掠れた悲鳴をあげた。
肉挽き機の出口からは街ずんの体の一部たちが混ざりあったものがミンチとなって出てきた。
「思ったよりエグイのね…」
めたんの顔が微かに青くなる。
人型は傍に置かれていた母ずんを持ち上げて、培養機の中にセットした。
「ほら、そこにごはんさんがあるのだ」
培養機の照明スイッチが付けられる。
母ずんは『ごはんさん』を見た瞬間、勢いよくそれにがっついた。
「ゴハン…サン！ゴハンサン！ゴハンサン！」
「物凄い勢いで食いついたのだ…」
あまりの反応の速さに人型も少しばかり驚いた。
「オイチ！オイチ！」
母ずんはごはんさんをあっという間に平らげてしまった。
「そういえば、このずんだもん四つん這いね」
めたんが鋭く指摘する。
「よく気づいたのだ。共食いによって記憶が破壊されてるのだ。もう家族の事も覚えてないんだろうな……」
培養機の準備が終わったようだ。二人は部屋から出ていく。
「十分に楽しませてもらったわ、それじゃあまたね」
玄関のドアの前でめたんは手を振る。
「また来て欲しいのだ！」
人型も手を振り返す。二人はそこで別れた。
「……何匹出来るかな、楽しみなのだ」

……翌日。

「うーん、騒がしいのだ」
人型の部屋にはなにかの鳴き声が響き渡っていた。
もしかして、と思い、人型は培養機を覗く。
「おぎゃ！おぎゃ！」「ずんだ！おいちいのだ！」「おかーちゃ！おなかしゅいた！」
培養機の中はたちまち子ずんで溢れかえっていた。
「オチビチャ……？ボクカラウマレタノダ？スゴイノダ！トッテモカワイイノダ！」
母ずんも嬉しそうに微笑む。自分がかつて、子沢山の母であったのも忘れて……
「完全に家族のこと忘れてるのだ…共食い効果、怖い怖い」
呟きながら人型はしぶとく生きている街ずんを見る。
「おい……いますぐ…ここから…だすのだ…」
街ずんは涙を浮かべて懇願した。
「何言ってるのだ？そもそもお前がサラダに手を出さず、キッチンも汚さなければ楽に始末してやったのに」
「そ、それの何が悪いのだ？」
きょとんとする街ずんの体を、またも肉挽き機がすり潰す。
ゴリッグシャッ
「ｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞ！！！」
街ずんの腸だったものがペーストとなって培養機に出される。子ずんと母ずんはそれを見た途端、餓えた獣のようにに貪り始めた。
「ｼﾃ……ｺﾛｼﾃ…」
街ずんは白目を剥いて涎を垂らしたまま痛みに喘いだ。涎には僅かに血も混じっていた。
人型は培養機の前に座り、一人考えを巡らせた。

今の所はこのクソ害獣がいるから何とかなるが、もしこいつの体が無くなったら、それこそ母ずんはずん肉欲しさに折角産んだおちびを食べてしまうかもしれない。街からずんだもんを狩ってくるのもいいが、集団で襲われて怪我人が出た話も聞くし、なりより無くなる事に外に行くのが面倒だ……何かいい手は無いのだろうか？

ふと人型は何かを思いついた。そして棚へと向かう。中から出したのはパンフレットだ。
そこには『苦豆打虐待倶楽部』と書いてあった。
人型はパンフレットに目を凝らす。

「これだ！」人型は叫ぶ。
「『苦豆打虐待倶楽部』……これ、希望すれば家で虐待する用のずんだもんも貰えるのだ……！？
くずんだもんに制裁を加えられ、且つ餌も貰えるだなんて…一石二鳥なのだ！！」
彼は狂ったようにはしゃぎ回り、ベッドに倒れ込んで足をバタつかせた。

「絶ッ対に入るしかないのだ！次の仕事場は、ここで決まりなのだ！！」
痛みに苦しむ街ずんと虚ろな目の親子とは対照的に、彼の目は希望と決意で満ち溢れていた。
ずんだもん豪華定食 - 【閲覧注意】ｺｯｼｮﾘ枝豆の地下牢【俊虐】 先頭へ
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このページへのコメント

R-18G文章カテゴリにも名作が増えた中で、初期に投稿されたこの作品が今でも何度も読み返してしまうほど好きです。
僕がずん虐に求めている全ての要素がこの作品の中にある。

5
Posted by  zunda_holdings zunda_holdings 2023年04月17日(月) 23:43:39 返信

一番好きな作品。一家殺害の最適解の順番で父ずんからぶっ殺したのがいい

4
Posted by 名無し(ID:F2PzsKS1pw) 2023年02月10日(金) 14:22:49 返信

森ずんと街ずんで環境が違うだけでここまで違うというのが良く分かる
しかし街ずんは良い所、森ずんに勝ってる要素が何一つ無いしガチの害獣だし…定期的に駆除しまくった方が良さそうですね…

7
Posted by 名無し(ID:IuOrgWw+Ow) 2022年12月15日(木) 22:54:13 返信

製作者です
最後の出産シーンについて解説させていただきます
まず、ずんだもんの頭の枝豆は発育すると中の豆が子ずんに発達して育っていく仕組みになっています
その仕組みを利用したのがめたんの「培養機」です
培養機は枝豆のよく育つ環境が完備されているので、豆が子ずんになってすくすく育っていきます
という感じです
説明不足で申し訳ないです

12
Posted by  mamegyakuai mamegyakuai 2022年12月09日(金) 16:06:45 返信

生きたままミンチ、そういえば古代中国には死んだ兵士を入れて擂り潰し食糧にする為の石臼が有ったそうな。
割と直ぐまだ生きている重傷者等も入れる様になったそうだが。

7
Posted by 名無し(ID:tVa6i99WNg) 2022年12月09日(金) 07:38:18 返信

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