作者 睡蓮 
たまには短いものをと5000文字以内を意識して書きました。1時間あるかないかくらいで書いたので他作品に比べてクオリティはお察しください。
本編
「はぁ……！う、うまれりゅ！おちびちゃんうまれそうなのだ！」
「おかあちゃ、しっかりするのだ！」
お、塾帰りに夜の公園に寄ったらずんだ虫の親子がいる。顔真っ赤のお袋の方は産気づいてるな。ガキの方が四つん這いになって力むお袋の上に乗って腹を圧迫している。
近づいて見るが、あっちは集中してるからか僕には気づいてない。耳を澄ませたら複数の産声らしき囁きがお袋のケツから漏れて聞こえてきた。
「い゛ぢゃぁぁ！？あにゃるがさけりゅぅぅ！おちびちゃん、で、でりゅぅっ！」ﾌﾞﾘｩｯ
「おぎゃーのだおぎゃーのだ！おぎゃーおぎゃー！おぎゃのだー！」ﾓｿﾞﾓｿﾞ
「うまれたのだ！おとーとといもーちょがうまれたのだ！かわいいのだ！」
赤ずんは3匹か。たりないはいない。まぁ普通だな。レンゲに載るくらいのサイズのがジタバタ蠢いてて、まるでひっくり返ったカメムシだ。
「のだぁ……ほんとうにかわ、いいのだ……おとうちゃの形見さん……かわ、いいのだ……」
「おかあちゃ？」
お？お袋はだいぶ弱ってるな。出産で力を使いすぎたか、それとも元から体が弱いのかな？力なくぐったりとしてて、向きを変えずに赤ずんの産声だけを聞いて震えている。
「元気にうまれて、よかったのだ……おちびちゃ……は兄ずんになったのだ……おちびちゃ……と、仲よ、くするの……だ……」ﾁｰﾝ
枝豆が垂れ下がって色がくすむ。死んだ。ずんだ虫でも出産は命懸けなんだなぁ。
「おかあちゃ……きょーだいをうんでくれてありがとうなのだ……きょーだいだけはぼくがぜったいにまもりぬくのだ！」
「おぎゃーのだおぎゃーのだ！！おぎゃーのだ！」
だが、兄ずんはそこまで悲しんでない。前からそういう兆候はあったから覚悟はできてたのか？何にせよ健気だな。アイツ1匹で枝豆ミルクも出ないのにどうやって……。
赤ずんのガキどもは母親の死なんか知る由もなくただ思う存分泣き喚いている。
「ちゅっちゅ！ちゅっちゅ！」ｽﾞｽﾞｯ
すると、兄ずんは死んだお袋の枝豆にパクリと噛みつき、中の枝豆ミルクを吸ってそれを赤ずんに1匹ずつ口移しで流し込んだ。なるほどその手があったか。
「のだぁ♪のだのだ♪」
母親の最初で最後の授乳に赤ずん達の顔が綻び、手足を止めて初めての食事に舌なめずりをしている。まだ口はきけないが鳴き声から嬉しいってのが分かる。
「きょーだいがなきやんだのだ！おかあちゃのおかげなのだ！きょーだい！つぎはおかおをなめなめするちゃ！」
ひとまず泣き止んだことに兄ずんは安心した様子で、続いて赤ずんの顔を舐め回してべたつく羊水を拭い取っている。
兄ずん親の代わりに育児頑張ってるなぁ。しかし、何だ。ああいう頑張ってる姿のおちびちゃんを見ると僕は最近無性に。
グチョグチョにしてやりたくなるんだよなぁ。
「ここはあかるくなったらにんげんしゃんがくるのだ……いまのうちにきょーだいたちを「真っ暗でもいるぞ！」
「えっ！？や、やめるのだにんげんしゃん！きょーだいたちにさわらないで！」
僕は木の影から飛び出し、持っていたビニール袋に兄ずんと3匹の赤ずんとついでにお袋の死体を詰め込み、ダッシュで家に向かった。
＊＊＊
「おぎゃーおぎゃーおぎゃー！！」
家に帰ると、僕は机上の虫カゴの中にずんだ虫達をまとめて投げ込んだ。
振り回されて赤ずん達は最初目を回していたが、今は帰る途中で頭や尻尾がちぎれたお袋の死体と一緒にいるのにビビったのか、隅で縮こまってまた泣いている。それを兄ずんが後ろから強く抱きしめて慰めている。
「にんげんしゃんどうしてくれるのだ！きょーだいがまたないちゃったのだ！さっさとおしょとにぼくたちをかえすのだ！おかあちゃのなきがらしゃんもよごしてゆるさないちゃ！」
「おぎゃっおぎゃぁぁぁぁぁぁぁ！！」
「うるさいなぁいいだろ別に。赤ちゃんは泣くのが仕事なんだからさ。ちょうど先週買ったばっかのずん虐道具があるから試せるヤツを探してたんだが、最近ここいら妖精が減ったからなぁ……」
僕は虫カゴを叩いて怒る兄ずんの相手をしながら、机の縁にあるものを挟んだ。兄ずんが訝しむ。
「な、なんなのだそれ？」
「クランプという工具だよ。両手で作業をしたいって時にこれで木材を固定するんだ。ほら、このハンドルを回すとこのプレートが動くだろ？これで木材に合わせて調整できるんだ。そんで、僕ちょっと気になることがあってさ……」
「うわっはなちぇ！」
僕は虫カゴの中を開けて、兄ずんの頭を掴んで持ち上げた。ずんだ虫は頭がデカいくせに手足が短いからこうやって持てば暴れられても問題ない。
「な、なななんなのだ！？やめてほしいのだにんげんしゃん！たちゅけ……やめ、やめちぇ！あたましゃんもみもみやめちぇ！」ﾓﾐﾓﾐ
「お前らの頭って突きたての餅みたいに柔らかいよな。だから……」ｷﾞｭｩｯ
「うぎゅっ……あががががが！！はぁはぁ……いちゃい、いちゃいよぉ……」
「おぎゃーのだぁぁぁ！おぎゃ……え゛っおえっ」ｹﾞﾛｫ
こうやって形が変わるくらい強く握っても力を緩めたらすぐ元通りだ……って泣きすぎて赤ずんが吐きおったわ。まぁ虫カゴだからいいけど。
「おとーとがはいたのだ！おなかしゃんをとんとんしないといけないのだ！」
「んで、まぁアレだ。ちょっと気になってるのは、お前らの頭ってどんくらいの圧力でダメになるのかってのだな」
「えっ？」
僕は目を瞬かせる兄ずんを虫カゴの中に戻した。兄ずんはすぐさま正気を取り戻し、もらいゲロをする兄弟の顔をまた舐め回している。
お袋の死体は乾いた目でそれをじっと眺めている。顔は苦痛がなく安らかな表情だった。
「んじゃ、おちびちゃんお借りしまーす」
僕は虫カゴの中に入れて、ゲロの臭いから逃れようと兄ずんから泣いて離れていく1匹の赤ずんを摘んだ。
「のだぁ！？」
「あっいもーちょ！まつのだにんげんしゃんいもーちょをはなちて！」
すると、不慣れながらも実は飛べたのか兄ずんが中々の速さで上に昇る妹ずんの脚を掴んで引っ張った。
「ぴお゛おお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛！！」ﾌﾞｯﾁ
んで、自分の手で妹ずんの脚を引きちぎった。産まれて間もない妹ずんの全身が激痛で蒼白になったかと思えば瞬く間に薄い赤紫に染まり、よだれを撒き散らして野太い悲鳴を上げた。
「そんな！そんな！いもーちょのあんよしゃんがぁぁぁ！」
「何やってんだお前……」
僕は呆れながら、クランプに足の取れた妹ずんを頭を下に挟んだ。
「おぎゃーおぎゃー！おぎゃーおぎゃー！おぎゃー！」
妹ずんは足をちぎられてもこの場にいる唯一の味方の兄ずんに涙目で助けを求めた。僕はサービスで虫カゴを持って脇に挟み、特等席で妹ずんの3匹を兄ずん達に見せてあげることにした。
「じゃあいくぞー」
「や、やめちぇにんげんしゃん！いもーちょはまだ……」
「ﾌﾟﾌｯ」
すると、ゆっくりハンドルを回したはずなのに妹ずんの頭はシャボン玉みたいにあっさり弾けて割れた。小さすぎていくらずんだ虫でも脆かったか。つまらん。
僕は床に落ちたいもーちょの胴体を拾い上げてティッシュに包んでゴミ箱に入れた。
「あっあっ……いもーちょ……ぼくをおにーちゃとよぶのかあにずんとよぶのかたのしみにして、たのに……」
妹ずんがゴミ箱に投げ入れられるのを、間近で見ていたのに兄ずんは何もできなかった。傾けられてゲロまみれになり、お袋の生首が滑り落ちてくるので赤ずんが声にならない叫びを上げた。
「お、おちつくのだきょーだい！おかあちゃはしんでもおかあちゃなのだ！なにもこわくないのだ！」
僕は次にお袋の頭を掴んでクランプに挟んだ。死後硬直なのか兄ずんほどの柔らかさはなく、例えるならミカンみたいな感触がした。
「や、やめちゃ……おかあちゃのなきがらしゃんはぼくがにまいそーしてあげないとあんしんしててんごくしゃんにいけないのだ！やめちゃーーっ！！」
「ちぁ、ちゅ…やちゃめちゃ！ゃめちゃ！」
「えっ？きょーだい？」
すると、赤ずんどもが泣きながら意味は知らないながらも兄ずんの言葉をオウム返しに喚き出した。やめてやめてがずん生最初の言葉とはな……。
「お、よかったなお前がやめちゃやめちゃ言うからおちびちゃん喋れたじゃん」
兄ずんの目から涙がこぼれた。
「こんなことばしゃんいえても……うれちく、ないちゃ……」
「あっそ」
僕がハンドルを回すと、我が子を産めたことで穏やかな死に顔だったお袋の頭が醜く歪み、頬の皮膚が裂けて圧搾されていった。ダメだ。悲鳴や呪詛がないと全く面白くない。
僕は途中でやめて、潰れた生首を虫カゴに戻した。
「くんくん……めちゃ！やめっのだっ！」
すると、ぐちゃぐちゃになってちょうどずんだっぽくなった親の頭を食べ物と勘違いしたのか、赤ずんが匂いを嗅ぎつけ、頭に群がるや否や歯のない口で噛みつき始めた。け、汚らわしい……。
「きょーだい！だめなのだ！そんなものたべたら……！おかあちゃをたべたらだめなのだ！やめちゃ……やめちぇきょーだい！おかあちゃがかなしむのだ！」
「めちゃ！のっめ゛ちゃ！めやちゃ！やめぢっやめちゃっ……おっお゛お゛ぃぢいーー！」ｽﾞﾙｽﾞﾙ
兄ずんは必死で止めるが、引き剥がす度に赤ずんはまた頭に這いずって滲み出る体液を啜っていく。産まれてからまだ枝豆ミルクを一口飲んだだけだからそりゃ飢えてるだろうな。
赤ずんは産まれて最初の美味に舌鼓を打ち、本能のままにそれを意味する言葉を咽せながら叫んだ。元からあってないような理性を失ったあの顔はもはや野獣だな。
「まぁいいんじゃない？僕ら人間も葬式で死んだ人の骨食べることあるらしいし」
兄ずんが固まって、ぼそりと呟いた。
「ともぐいさんおぼえちゃったのだ……もうまともなよーせいにはなれないちゃ……」
「そうか、じゃあ楽にしてあげないとな」
僕は一心不乱に母の血を啜る2匹を摘んだ。食欲は凄まじく、途中まで顎あたりの肉片を咥えたままだった。
「のぢゃぁ゛あ゛あ……」ﾌﾟﾁｭｩ
「うーんやっぱり赤ずんじゃちょっとした力でもう破裂しちまうな」
今度は全身を頭までクランクに挟み、ハンドルに力を込めたらその時にはもう潰れてしまった。最後の最後に共食いの罪深さに気づいたような悲痛な声を漏らして死んだ。
結局、最初から兄ずんで調べたら赤ずん達は殺す必要なかったな。まぁいいか。
「ころちて、ころちてちゃ……」
この全てを失って生きる気力も失った兄ずんが見れて面白いし。
「きょーだぃぃ゛！おかあちゃぁぁぁぁ！ごめっ、ごめんちゃ！ずんちゃにはきょーだいをそだてられなかったのだ！しあわせなずんせーをみせてあげられなかったちゃ！ﾊﾟｷｯてんごきゅひゃんひぇ、ずんひゃをたっほりしがってぢゃぁぁ……っぽぉ……あ……ぷら、へ」ﾌﾞﾁｮｪｯ
さっきみたいに逆さに頭を挟み、ゆっくりクランプのハンドルを回す。
嘔吐して眼球が飛び出し、少し頭が細長くなったくらいなら元気いっぱい兄弟と母に謝罪していたが、どうやら途中から頭蓋骨に亀裂が入ったのか呂律が回らなくなった。
最後はうわ言のように意味を持たない言葉をうめき、破裂を待たずにあの世に旅立った。脳が先に潰れたようだ。
「ま、ちょっとかわいそうだったから明日庭に埋めよっかな」
ある程度成長した子ずんと赤ずん、死体での実験はできたけど、こうなると成ずんはどのくらい持つのか興味が出てきたぞ。
やはり、ずんだ虫は頭はでかいが頭蓋骨は小さいんだな。それもちょうど頭部の真ん中辺りにある。だから多少の圧力は頭の肉で守れるから全方位からの衝撃に強いんだ。
明日はさっそく成体のずんだ虫を捕獲しに近所の林に行くぞ。
この成果を見せれば、きっとクラスメイトのきりたんさんも僕に興味を持ってくれるはずだ。なんたってきりたんさんは学校1のずんだ虫博士なんだから。
このページへのコメント
「なきがら」なんて冷静な時じゃないと出てこない言葉や...
語彙で妖精さんに負けてしまった...
兄ずんの最後の言葉は、『真田丸』の武田勝頼のオマージュかな。
何故わかったぁ！？(CV和田義盛)
このずん虐、天国のママずんが見たらどう思うでしょうか...?
泣いて喜ぶ
ママずん「このクソガキずんのせいでもうヘコヘコできなくなったちゃ。
ずんだもちも食べれなくなったちゃ。
シャボン玉みたいに割れてて草」
そもそもずんだもんが天国に行けるわけないので問題が成立しないのでは？
そういえばこの話、もしかしてわんわんおさんのずんだ虫シリーズの世界ですかね？
そうなのだ。fairiesに家を包囲されて最期にずん虐を楽しむ鬼威惨にしようかと思ったけど、こっちの方が平和なのだ
作者さん見るとこの子が明日無事に林に行けるのか心配になりますね・・・
１分後に街ごと核で消えてても不思議じゃ（ｒｙ