作者 睡蓮 
前回のお話はこちら
この話はシリーズものです。下記の話も併せて読むと一層楽しめるかと思われます。ただどれも長いので、読まなくても大丈夫です。しかし、映像の妖世紀はもっと長くなる予定です。
ずんだ虫より醜くなった男 前編
自衛ずんプロジェクト 前編
本当に見逃してもらえた場合 前編
FAIRIESの復讐
個人的に映像の世紀をBGMを流しながら読むと面白く読めるかと思います。オススメは「パリは燃えているか」「神のパッサカリア」「風のリフレイン」「グラン・ボヤージュ」「マネーは踊る」です。
本編
北海道戦に始まり、東北侵攻、仙台戦、レジスタンス鎮圧など度重なる戦争によって戦闘経験を積んだ屈強な妖精も増えましたが、それと同時に戦意喪失した妖精の存在もFAIRIESは無視できなくなりました。
妖精兵が戦う気力を無くした理由は様々です。
『はう……ないのだ。てもあしもしっぽも……こんなんじゃくちょにんげんとはたたかえないちゃ……』
再生不可能な負傷を負った妖精兵。
『ずんぽがないんちゃ！もうたたかうりゆーもいきるりゆーもなくなったのだ！さっさとちにたいちゃ！』
ずんぽを失い、生きる気力を失くした妖精兵。
『せんじょーがあんなにこわいところだとはしらなかったのだ……』
『めのまえでせんゆーがたくさんグチャグチャにされたのだ……それなのにぼくは、じぶんがたすかってホッとしたのだ……』
『パパずんもママずんもおねーちゃもおとーともみんなうちころされちゃったのだ！ずんちゃあんなしにかたしたくないのだ！』
最も多かったのは実際の戦場を目の当たりにしたことによるトラウマを負った妖精兵で、戦意喪失した妖精兵の数は北海道の全妖精兵の5%という膨大な数でした。
こうした妖精兵の中には、生まれた赤ずんを軍の教練に出すことを拒む個体も少なくありませんでした。
これは琴葉茜に提出された、子ずんを兵役に就かせることを拒否する妖精兵が自衛ずんに処刑される映像です。
『おちびちゃんでりゅぅ！』ﾌﾞﾘｨ
『おぎゃーっおぎゃーっ！』
『うまれたのだ！かわいいのだ！なんてかわいらしいおちびちゃんなのだ！』
『こんどこそ、おとなになるまでそだててみせるのだ！』
気張るメスから放り出された生まれたての赤ずんを舐め回す2匹。オスの方は両手を失い、メスの方は枝豆耳と片目を失っています。会話から察するに先の戦争で我が子を失ったようです。
『おはーひゃ！ほほぅひゃ！』
『おちびちゃん！ぼくのとこまでハイハイできるかな？さぁおいで！』
『うんひょ……よいひょ……にょだぁ！？』ﾋｮｲｯ
オスの方が赤ずんにこっちに来るよう呼び寄せると、赤ずんはまだ未成熟な手足に力を込めて一歩ずつ歩き出します。そこにやってきた妖精軍少将シンベーが、オスずんが足で抱っこする寸前で赤ずんを拾い上げます。
『よし、この子は軍隊教育をさせるからもらっていくのだ』スタスタ
『しょんな、このこまであんなじごくに……？』
『あ、え……その……おねがいしまちゅシンベーしゃん！おちびちゃんにはせんそーをしらないまましあわせにいきてほしﾊﾟｧﾝﾊﾟｧﾝあがっ……あ゛あ゛……』
シンベーの足を掴んで引き渡しを嫌がる2匹をシンベーは膝を振って払いのけ、拳銃を抜いて撃ち抜きます。
銃声に驚愕した赤ずんはしばらくの間硬直していましたが、すぐに親が殺されたことを知って張り裂けんばかりに泣き叫びますが、シンベーは気にせず赤ずんを握りしめて立ち去りました。
『非国ずんめ』
『うえーんうえーん！ふひゃ……ほひゃ！ほはーひゃ！』
『まっちぇ、おちびちゃんがわたちをよんで……かえち……』ﾁｰﾝ
このままでは妖精軍の中で厭戦感情が広がり、まだ戦場に出たことがない妖精兵にも恐怖が伝線してしまう。それは琴葉茜が最も恐れる事態でした。
しかし、莫大な数の妖精兵を再教育するには同じくらい莫大な時間と費用がかかります。重傷を負った妖精兵はもはや再教育する値打ちすらありません。
対処を迫られた琴葉茜は、強硬手段に出ます。
戦意喪失した妖精兵約3億匹を粛清したのです。
FAIRIES帯広支社は空爆に備え地下にコンクリートで覆われた膨大な広さの要塞を密かに建造し、そこに設けた幾つもの教練場で、開戦前から妖精兵を密かに育成していました。
『もうたたかえないぼくたちもみすてないでくれている あかねしゃちょーはほんとーにかみしゃまなのだ！』
琴葉茜は使えなくなった妖精兵を直々激励する宴を開くと言い、人間の兵士を用いて妖精兵をそこに呼び寄せます。露呈すれば妖精兵達の指示を失う危険な賭けであり、ずんだもん兵にすらこのことは知られていませんでした。
『あれ？あかねしゃちょーはどこにいるのだ？』
そこに自衛隊に使われないよう各地からかき集めた大量のZUNCHO製ずん取り線香を上層で焚くと、その煙をダクトから流し込んだのです。
『な、なんだか、きぶんがわるくなってきたのだ……』
『ぼくもなのだ。それになんだかとってもねむいちゃ……』
『うーん……』ﾁｰﾝ
1000匹、また1000匹と穏やかに死んでいく妖精兵。
ずん取り線香は動物福祉に配慮した製品で、煙を吸った妖精の中枢神経を麻痺させ眠るように死なせるものでしたが、やがて毒が流されていることを妖精兵は勘付き、自分達が琴葉茜から切り捨てられたことを悟ります。すると、たちまち場内の妖精兵はパニックを起こしました。
「しょんな、 あかねしゃちょー……うそなのだ？げっ！ごぁ……」ﾁｰﾝ
映像には脱出口を探して飛び回るずんだ虫に、反対に地面を掘り進んで煙から逃げようとするずんだ虫。ただ家族で固まって泣き出す個体も映っています。
粛清を行なった人間の中にはスピーカー越しでありながら、あまりの絶叫に鼓膜をやられた者もいました。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛！！しゃちょー！！どうちてこんなことちゅるのだ！ぼくたちいっちょーけんめーたたかったのだ！！』ﾁｰﾝ
『だちぇだちぇだちぇぇぅっ！！よくも！このドピンクおんな！ぶっころちてやるぅぅ゛っ……』ﾁｰﾝ
『あかね゛しゃま！！ぼくらはまだたたかえま、まちゅ！！こころをいれかえまちたからたちけ、て、て……』ﾁｰﾝ
『ぼくはたりないちゃんになってもたたかえますのだ！！ぼくだけはたちけてほしいのだー！』ﾁｰﾝ
出入り口のエレベーターやダクトを血眼で壊そうとする妖精兵達。しかし、核シェルターも兼ねる地下要塞は非常に堅牢で、妖精では傷一つつけられませんでした。
腹いせに琴葉茜を罵倒したり、命乞いをする者が続出しますが、無情にもこの時琴葉姉妹は札幌におり、そもそも帯広にすらいませんでした。
『まだちにたくないちゃ！おちびのせいちょーを……あ、おちびちゃんせんししたんだったのだ』ﾁｰﾝ
『あかねしゃちょーゆるせねーちゃ、さいてーなのだ！がっは！！』ﾁｰﾝ
『あかねしゃちょ……てんごくさんでおちびにあわせてくれるのだ……？さいこーのごほうびさんなの、だ……』ﾁｰﾝ
『くるんじゃなかったのだ……こんなくしょきぎょー……』ﾁｰﾝ
『くちょ……ママ、ずんのおまんずん、を……』ﾁｰﾝ
怒号を喚き散らして暴れ回ってはバタバタと死んでいく妖精兵達を、後にFAIRIES人間部隊の兵士はこう述懐しています。
『それはさながら緑の竜巻のようだった。仙台でこの激しさで暴れることができたなら、コイツらもこんな死に方をせずに済んだだろうに』
ー現場にいたFAIRIES雇用傭兵の発言。
ずん取り線香が燃え尽きた後も生き残った個体を確実に始末するため、5日間教練場は換気もせず封鎖したままでしたが、6日目に兵士が踏み込んだ時にもまだ息のある個体がいたと言われています。
『かえちて……ぼくのずんせい、かえちて……』ﾁｰﾝ
しかし、結局はそんな個体も1匹ずつ介錯され、死体は加工ラインに運ばれてまだ有用な妖精兵達の食糧となっていきました。
この時粛清された妖精兵の数は1億3000万。しかし、琴葉茜はその数を1000万と大幅に少なく偽り配下の妖精兵に伝えた上、粛清理由も妖精兵に自分への忠誠心をより強固なものとするための欺瞞に満ちたものでした。
その時の彼女の肉声が残っています。
『彼らはFAIRIESに背き、ウチらを殺して日本政府に寝返ろうとした。せやからウチは断腸の思いで彼らに懲罰を与えた。輝かしい未来を見せると誓ったずんちゃんをこのような形で失うのはウチも辛い。あのずんちゃん達を恨みはせん。ウチは彼らのことを忘れもせん。しかし、また同じことが起きれば、また同じことをやる』
ー妖精軍全軍に向けて送信された、琴葉茜のオンライン演説による発言
この演説を聞いた妖精兵達は、琴葉茜は不正は身内でも許さない清潔な人間だと知り、ついていくにふさわしい人間だと再認識します。
『あかねしゃちょーをころそーとするせんゆーがいたなんてゆるせないちゃ！いってくれたらぼくたちのてでしょけーしたのだ！』
『のだ！しゃちょーにつらいおもいをさせてもうしわけないちゃ！』
彼女の思惑通り妖精兵の戦意と忠誠心を繋ぎ止めることに成功したのです。
それに一役買ったのは、帯広から送られてきたおびただしい量のずんだ餅の配給でした。
帯広にいずとも、真相はおおよそ知っていた妖精軍大将伊織弓鶴は日記にこう記しています。
『ずんちゃん達が満面の笑みで食べているずんだ餅は、恐らく粛清したずんちゃん達の成れの果てだ。あの量を全ての軍に与えていたとしたら1000万じゃたりない。最低でも10倍はいるだろう。今、俺の膝の上でずんだ餅を食べているおちびちゃん。そのずんだ餅はもしかしたらお前の親兄弟かもしれない。が、言ったところで信じはしないか』
ー伊織弓鶴の日記
第4章 南アルプスの奇跡
お荷物となった妖精兵を消した琴葉茜は、東京占領を今度こそ成功させるために軍の再編を進めます。
『戦争は国家の命運を分つもの。それを理解したウチが見越した妖精戦争の備えは万全やと思っていた。しかしまだ足りなかったんや。戦争が再始動し、日本を迅速かつ完膚なきまでに支配するためには妖精軍は今まで以上に強大にならなアカン』
琴葉茜はFAIRIESの支配圏外地域に潜伏する妖精軍達に召集をかけますが、多くの妖精軍は現地の自衛隊や市民による山狩りで大多数が戦死していました。
『いたぞ！4時の方向にずんだ虫の軍勢だ！殲滅しろ！』
『くちょにんげんにみつかったのだ！やむをえないちゃ！ここをしにばしょとするのだ！！』
この頃、日本政府は自然公園に攻撃ができないのを妖精軍が逆手に取り拠点を構えることを防ぐため『肉を切らせて骨を断つ』作戦を発動しました。
自衛隊に特例で保全地域での強力な駆除剤や銃器を無許可で使用することを認めたのです。多数の希少な自然遺産が損なわれることを承知の上で、日本政府は妖精軍本軍に増援が到着することを阻止したのです。
『のーだのだのだ！くちょじえーたい！ここはこくりつこーえんなのだ！おまえらはここをこーげきできないことはよくしってるのだ！』
『さすがパパずんなのだ！ほーれほーれおちりふりふりwじえーたいのくじゅども！くやちかったらうってみろなn」ﾊﾟﾝ
『えっ？ママママママずん？おいじえーたいめ！ここがどこだt』ﾊﾟｧﾝ
一方的に自衛隊を料理できると思い込んでいた方々の妖精軍は、予想だにしなかった激しい攻撃の前に命を落とします。
妖精戦争前から温存していた精強かつ勇敢な妖精兵の大半を失ったことを配下から伝えられた琴葉茜は、自衛ずんやFAIRIES役員や妖精軍幹部を呼び出し、夕食の皿をひっくり返して怒りを露わにしたと言われています。
『あんな救えないほどワガママでがめついずんちゃんを一端の兵士にするまでウチがどれだけ苦労と時間を費やしたと思ってんねんボケクソが！開戦前から手配していたヤツらは1匹で並の妖精兵30匹分の価値はあったんや！なぜお前らは誰も現場監督を名乗り出なかったんや！』
ー琴葉茜が言ったとされる発言
そうして、各地の妖精兵が奮戦虚しく死んでいく中、ある珍事が起きます。
《南アルプス国立公園集団放火事件》
10月15日。
本来ならやむを得ない森林破壊は自衛隊にのみ許されているのを、どこからか妖精軍掃討のためなら何をしても不問にされると歪曲した形で情報が漏れ、鵜呑みにした暴徒120人が赤石山脈、いわゆる南アルプスの山林各地に火を放ち、200平方キロメートルが焼ける大規模な山火事が発生。
『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ！！やけりゅぅぅぅぅ！！けむいのだあああああ！！』
『とべないヤツはみすてるのだ！それがいやならしぬきでとぶのだ！』
『じえーたいはこんなもったいないことたぶんやらんのだ！きっとバカなくちょにんげんがやったのだ！」
『はぁはぁ……とべないおちびちゃんがわるいのだ！またうんであげるからこんかいはやけしんでね！』ﾎﾟｲｯ
「おかあちゃ、さいてーなのだあ゛あ゛！！あ゛ーー……』ｼﾞｭｯ
ここに潜伏していた妖精兵達は火の粉に巻かれて逃げ惑いますが、ガソリンまで投入した山火事は拡大するばかりか麓の集落まで迫り、自衛隊は妖精兵に構う暇はありませんでした。
『あっ』
『あっ』
そこで、消火活動中の自衛隊と妖精一個小隊400万匹が鉢合わせになります。しかし、妖精軍側が見境なく攻めずに逃げるのを見た自衛隊山梨地方協力本部は、この妖精達は比較的分別があるのではと感じます。
人手も不足し、主要航空機の大半も東北方面に回していた自衛隊は背に腹で、妖精軍に一時停戦と鎮火作業の協力を求めます。
妖精達も焼けてるのが市街地ならともかく、山に住む同胞を見捨てるのは琴葉茜の意思に背くのではないかと思い、リーダー格の妖精大尉は停戦交渉に応じます。
交渉の結果、停戦期間は48時間。それまでに火を消し止められたら空いた時間は自衛隊を攻撃しない限り自衛隊は一切手出しはしない。妖精軍も同じという条件付きの元、両者は停戦に合意しました。
『みんな、ちーちーでひをけすのだ！』
『『のだちーーー』』ﾌﾟｼｬｧｧｧｧ
『タネちゃんブッシャァァァァ！！』
『ちーちーじゃなくてずんちでりゅっ！！』ﾌﾞﾘｭﾌﾞﾘｭ
『ちーちーをだしおわったおちびちゃんは、したでくしょじえーたいがよーいしたおみずさんをのんでまたちーちーをだすのだ！』
『おみずゴクゴク♪なのだ♪』ｺﾞｸｺﾞｸ
妖精兵による消火は消火ヘリ到着までの気休め程度にしかなりませんでしたが、これは妖精戦争において妖精軍と自衛隊が唯一手を組んだ事例として、南アルプスの奇跡と呼ばれています。
『多少協力できたとはいえ騙されてはいけない。コイツらは日本を滅ぼす存在なのだ。しかし、コイツらもずんだ虫なりに役に立つことが分かった。FAIRIESが壊滅したら残存兵力を自衛隊に組み込むのも悪くないかもしれない』
ー現場で妖精兵と消火作業をした3佐の発言
『じえーたいにはじえーたいのせいぎがあるかもしれんのだ。あかねしゃちょーにおあいしたら、このことをつたえてみてもいいかもなのだ』
ー妖精軍大尉の発言
火は停戦開始から42時間後に消し止められ、自衛隊は約束通り6時間は攻撃をしないことを宣言。それどころか、消火に参加した妖精軍を『ずんだ虫の中でも誇りあるずんだ虫』として、道中の水と食糧を分け与えています。
妖精軍側も、何か思うことがあったのか約束を反故にせず南アルプスから北海道に向けて飛び去っていきました。
『たいいどの！アイツらはしょーかさぎょーでヘトヘトなうえにライフルさんをもってないのだ！いまならなぶりごろしにできるのだ！』
『いや……くちょ、せんゆーたち！ここはたいきゃくするのだ！にげてたいぐんでもどってきたら、じえーたいのヤツらをこんどこそミンチさんにするのだ！』
『のだ！』
ﾊﾞｻﾊﾞｻ
『のだ？』
しかし、そんな誇りある妖精兵達を悲劇が襲います。
『あぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛！！！』
南下する渡り鳥の大群との遭遇です。数万匹、下手をすれば数十万匹の鳥達に包囲された妖精軍はひとたまりもなく蹂躙されていきます。
『ちょーどいいのだ！じえーたいのかわりにおまえらを゛っ』
『た、たいいどのが……くわれちゃ……』
『ママずんたちゅけーー！！』
『やめて！おちびちゃんもっていかないで！！おちびちゃんいまたすけるのだ！！ってどこにいったのだ！？』
『おとうちゃきょわいのだぁぁぁぁ！！』
『ぼくもこわいのだ！！こんなのどうすればいいのだ！』
鳥は大抵の場合妖精と同等のサイズで、その場で食われることはなく叩き落とされて地面で瀕死のところを啄まれ、ゆっくりと食べられていきました。
『ママず……た、ちゅけ……』ｶﾞﾘｶﾞﾘ
『おちびちゃ、やっとみつけたのだ……くちょとり、おちびちゃんをくう、な……』ﾁｰﾝ
『ママずんちんじゃだめーー！！ずんちゃをたちゅけてかちにゅのだがっは！！』ﾓｸﾞｯ
『おかあちゃ……あははは……みんなぐちゃぐちゃなのだ……』
『とりしゃんずんぽかえちてくだちゃい！おねがいしまちゅ！！』
この時期、渡り鳥に襲われて死ぬ妖精は例年の500倍以上に跳ね上がり、散乱する死体を片付けるために一足早く除雪車が掃除のために駆り出されました。
『これはちょっと予想してへんかった』
ー側近に向けた琴葉茜の発言
号令をかけた各地の妖精軍は総勢25億匹。しかし、絶えず渡り鳥と自衛隊の追撃に数を減らし、支配圏内の東北、北海道にたどり着けた妖精軍は僅か3億匹ほどでした。
『あおいさま！ふくおかよーせいぐん！そうぜい870まんひき、さんじんいたしましたのだ』
『あれ？一緒に来てる長崎や鹿児島の妖精軍は？』
『ぜんぶ、たして……のだ』
『え？2億匹以上いた九州沖縄のずんちゃん達が、900万以下に……？え？』
琴葉茜が言った通り、これら初代の妖精兵は軍隊としてしっかりした教育を余念なく受けているため、補充のために動員された野良ずん出身の妖精兵よりも士気が高く、これからの戦線の要となる存在でした。
もし彼等が無事に北海道まで辿り着いていたら、妖精戦争はより激化したと言われています。
『はくちょーしゃんたべにゃいで！ずんちゃはくしょまずいの゛』ｺﾞｸﾝ
『おとーとがまるのみにされたのだ！？あっ』ﾊﾟｸｯ
『やめりょぉぉぉ！！ダメダメダメぇぇぇ！ひっぱっちゃ、ちぎれ……』ﾌﾟﾁｨ
『だ、ダメちゃ、おいつかれ……おちびいきて！』ﾎﾟｲｯﾊﾟｸｯ
『ちょ、したはコンクリしゃんんんん゛ぐっ！！」ｸﾞﾁｬｧ
渡り鳥の襲来は北海道も例外ではないどころか北海道の方がむしろ激しく、ロシアからやってきた無数の白鳥とマガンの前に稚内、知床に展開する妖精軍は大打撃を被り、人型・人間部隊によって追い払った時にはすでに妖精兵の死者数は無視できないレベルにまで膨れ上がっていました。
『妖精兵総数が全軍で40億を下回りましたのだ！このままでは戦争は負けますのだ！』
『フハハおもろいことばかり起きるなぁシンベー？なぁ。なぁオイ！！！』
増援はもう来ないため現在の軍勢で対処することになったFAIRIESでしたが、琴葉茜は一瞬激昂こそしたものの依然余裕を見せていました。
『ウチはFAIRIESの当代や。増援を呼ばずともずんちゃんを秒で増やす方法なんていくらでも知っとる。それに数の力で押し潰す戦争はもう終わりや。これからは1匹1匹を鍛え上げていくつもりや』
ー琴葉茜が琴葉葵に語った言葉
『FAIRIESは我々妖精加工産業と異なり、生体販売に特化した企業です。妖精の大量繁殖にかけては我々の及ぶところではありません。つまり、大元を潰さない限りはいくら妖精軍を壊滅させてもイタチごっこにしかなりません』
ーHandZ社長冥鳴ひまりのインタビュー発言
琴葉茜は次なる手を打つために動き出します。
それからしばらくして、遠く離れた東南アジアの島では新たな戦争が幕を開けました。
このページへのコメント
数の力でずんちゃんがそれなりに健闘してるかと思いきや、鳥に食われるのはずんだ虫って感じがして、あくまで弱い存在なんだと再認識しました。
ついに魔の手が国外まで・・・
これで諸外国もずんだ虫の脅威と、生き物としての下劣さを知って日本国内での扱いが納得出来ることでしょう。
コイツらホンマ好戦的やな
茜自身が戦争を知らないからか計算外の事が当たり前に起きるってことを知らないんですね
勝敗はともかく戦は絶対に机上の計算どおりにはいかないもの。
自衛隊でも海外の士官学校でも「常に最悪の事態を想定しておけば被害は最小限で済む」って入校前から口酸っぱく言われるのに…
戦況、趨勢がだいぶ人間側に傾いてきましたね
鳥までもが結果的に味方になるとは
FAIRIESは国外にまでその魔の手を・・・
本気で全人類の敵すぎる
もちろん師団レベル(1億匹)とかだと流石に鳥もビビって逃げるか返り討ちにされますが、1000万以下だと勝てないですね。みんなあにゃるさんダンスで命乞いします。